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けた人間の少なくとも建て前として、SSSMが圧倒的勝利を収めているとしている。

 SSSMについて、学間の世界で人間研究の基盤になっただけでなく、学者以外の人々 にとってもニュ㎞ス誌やマスメディアを通じて、人間のすべての行動は氏と育ちの相 互作用によって形成されると説いている。そして、長方形の縦と横が面積が決定する のと同じように、氏(遺伝)と育ち(環境)は分かちがたく結びついていると結論づ けている(S、ピンカー(小椋直子訳)下巻199き、261頁)。SSSMの遺伝と環境についてピ ンカーは図に表している。

環     遣

 ピンカー(2004)によると、ブランク・ズレ』トは政治的、倫理的信念の聖典にもな っており、その教義によれば、人種や民族集団や男女や個々人のあいだに見られる違 いは、すべて生まれつきの違いではなく経験から来ているという。さらにブランク・

スレート説による考え方の典型例を紹介している。子どもはみな野蛮人として生まれ る。したがって野蛮人が良い人間になるには十分な教育を受けさせる必要がある。こ れに対して、悪い人間になるには不十分な教育が原因であるとされた(S.ピンカー(山下 篤子訳)上巻200砥、3I頁)。このことからブランク・スレートを語るうえでもっとも重 要なものは、r経験」がすべてという考え方であった。

 ビンカ]の述べていることから、ブランク・スレートの流れを組んでいるSSSMが、

2◎世紀の社会に定着したことで、環境と遺伝、両者の相互影響のいずれかが行動を 決定するという理論が、学習者としての子どもの存在を見失う原因になったとされる。

SSSMによって教育された子どもが、大人になり子育て世代になっていくと、必然的

に子どもは、無知で野蛮な存在だと認識することで人間としては見ていなかっただろ

う。ピンカーは、言語本能諭から遺伝と環境の関係性を引き合いに出し、教育も同じ ように経験だけを重視するのでなく、生得的に備わっているものを認識した上で、子 どもの存在を見直すことが必要だと提言しているのではないだろうか。

 第_節 子どもにとっての環境とは

 子育て中の観世代に対して、近年、子どもを育てる環境の重要性をマスメディアが 頻繁に紹介している。特に多く紹介されているのが、子どもにとって良い家庭環境の 作り方や良い親の接し方などが特集されている。山崎(2003)によると、現在の「教育 環境は、あまりにも意図的になり過ぎ、子どもは精神的・肉一

フ的な面でのゆとりを喪

失している3」と述べている。山崎がいうように教育が意図的になっていることをピン カーも同じく指摘している。ピンカー(2004)によると、高い教育を受けた親のほとん

どが、子どもの運命は親である自分の掌中にあると信じ、子どもを親の望む理想形に 作り上げることを目指して様々な教育を施すことが親の使命、愛情だと考える親が多

くいるとしている。このような親の行動について、渡蓬(2005)によると、伝統的に心

理学では、人間の性格に環境が与える影響を幼児期から児童期、青年期など人間の発 達の比較的初期に限って重視してきた研究があり、子どもの頃にどのような環境で育 ったかが、その後の性格に重大な影響を及ぼすとされてきた。さらに渡蓬(2005)は、

心理学では、家庭環境や親の養育態度4が特に重要だと考えられ、家庭環境などの要因 が性格の発達に与える影響がさまざまに研究されてきたとしている。それらの研究が 一般にも、性格が子ども時代に作られるという考えは広く受け入れられているから、

子どもの養育態度や家庭環境に親がこだわることは仕方のないことであるとしている

(渡違芳之2005,74頁)。

 親のこだわりが生まれた背景としてビンカ」(2004)は、心理言語学者による遺伝と 環境についての論文では、ほとんどが環境を親と同一視しているという。渡擾とピン カーの見解を合わせると、子どもを育てる環境イコール観という形が、一般的に広が

り子育てに関する親のこだわりを生み出した原因であると考えられる。

 しかし、ビンカ](2004)によると、親が作り出すさまざまな家庭環境は、子どもの 人格形成に関係しないとして、親が子どもの人格形成に与える影響の低さを指摘して いる。さらにハリス(2000)も同様に、親は子どもに対してなんらかの形で影響を及ぼ

しているが、親の影響が全てではないと強調している。

 子どもにとって大きな影響を与える環境は、家庭環境では往くどこにあるのか。そ の答えをハリス(2000)は、心理学者の瓦.タークハイマーが行動遺伝学5で発表した「三 法則jに注目して答えている。ピンカー(200雀)によると、タークハイマ㎞の「三法則」

は心理学の歴史のなかでもっとも重要な発見と紹介しているが、多くの心理学者がま だ行動遺伝学の三法則について真剣に取り組んでおらず、行動遺伝学の三法則をしっ かりと理解していないのが現状だとしている。

 それは三法則が難解だからではなく、三法則がブランク・スレート説を踏みにじっ ているからであり、ブランク・スレート説があまりにも社会にしっかりと定着してい るために多くの知識人はそれに代わるものを理解することができず、ましてそれが正 しいか間違っているかを議論するなどなおさらできないからでもある(S.ピンカー(山 下篤子訳)下巻2004,175頁)。

 タークハイマーが行動遺伝学で発表した「三法則」は以下のとおりである

(TURKHEIMERE2000,p160邦訳ピンカー(山下篤子訳)下巻2004,175頁)。

●第一法則 人間の行動特性はすべて遺伝的である。(遺伝子)

○第二法則 同じ家庭で育った影響は、遺伝子の影響よりも小さい。〈共有環境)

●第三法則 複雑な人間の行動特性に見られるばらつきのかなりの部分は、遺伝子や       家庭の影響では説明されない。(独自環境)

 3つの法則についてのピンカー(2004)による説明は、第一法則「人間の行動特性はす べて遺伝的である」ことについては、少し言いすぎであるが、それほど誇張でもないと

している。その理由として、一卵性双生児や二卵性双生児・双子でない兄弟、姉妹や 養子縁組での兄弟、姉妹などの行動がどれほど類似しているか明らかにした遺伝率の 調査により、家庭や文化によって左右される具体的な行動特性、どのような言語を話 すか、どの宗教を信じるか、どの政党に所属するかなどは、遺伝的ではないとされた。

しかし、人間の根底にある能力や気質を反映する行動特性、どのくらい言語に秀でて いるか、どのくらい信心深いか、どのくらいリベラルか、あるいは、保守的かなどは、

遺伝的であるとしている。

 さらに第二法則胴し家庭で育った影響は、遺伝子の影響よりも小さい」とは、第一 法則と同じような調査した結果、成人した兄弟などの類娯性や養子縁組の兄弟などの 類似性は、一緒に育ったものでも別々に育ったものでも変わらない。そして一卵性双 生児は、共有遺伝子の影響から期待されるほどは似ていない。このことから兄弟・姉 妹などが同じ家庭で育つことによってどんな経験を共有するとしても、それはどんな 種類の人間になるかにはほとんど、あるいはまったく差異を生じさせないとしている。

 最後に第三法則「複雑な人間の行動特性に見られるばらつきのかなりの部分は、遺 伝子や家庭の影響では説明されない」とは、第一法則と第二法則から直接導き出せる。

それは、人びとのあいだにみられるばらつきを、遺伝子の影響と共有環境の影響と独 自環境の影響に分けたとき、遺伝子の影響がゼロより大きくユより小さく、共有環境 の影響がゼロの付近にあるとすれば、独自環境の影響はゼロよりも大きいはずだと考 えられる。具体的に言えば、一緒に育つだ一卵性双生児でも、その知能やパーソナリ ティは同一にはほど遠いということであり、遺伝子でも家庭に共通のものでもない原

因があるはずだと考えることから第三法則の何かを探しだすことが重要となるとして

いる。

 ピンカー(2004)は、三法則をまとめると、「遺伝子」の影響が40から50パーセン

ト、「共有環境」の影響が0から10パーセント、ギ独自環境」からの影響が50パー

セントであり、これらの影響を受けて人間は成長していくと考えた。さらに一卵性双

生児は、一緒に育ったか別々に育ったかにかかわらず、50パーセント似ていること が3つの法則から明らかになることだとしている。行動遺伝学の三法則は、行動遺伝

学者たちからみると、心的特性(第一法則)については何年も前から知っていたが、

共有環境の影響がないこと(第二法則)や、独自環境の影響が大きいこと(第三法則)

が重要であると十分に理解するまでは時間がかかった(S.ピンカー(山下篤子訳)下巻 2004,191頁)。

 三法則のなかでも第三法則の独自環境がもっとも子どもにとって影響が大きいとさ れたが、独自環境とは、どのようなものなのか。ピンカー(2004)によると、社会化(人 が社会のなかで機能するうえで必要栓基準や技能を身につけること)は、仲間集団の なかで起こるという。さらに、子どもにも文化があり、大人の文化の一部を吸収する と同時に独自の価値観や基準を発達させる。子どもは大人の真似をしようとするので はなく、よりよい子ども、自分たちの社会のなかでうまく機能する子どもになろうと 努める。人間のパーソナリティは、自分たちの社会のるつぼのなかで形成される(S.

ピンカー(山下篤子訳)下巻2004,210頁)。ハリス(2000)によると、子育てに何十年と時 間をかけるのは、進化的に見るとごく最近の行動であるという。ピンカー(2004)は、

子どもはほかの子どもたちという環境のなかで、日々思考錯誤を繰り返しているとし て、子どもにとっての重要な環境は家庭ではなく、家庭の外に出た・社会が大きな影響 を与える環境であるとしている。

 しかし、家庭を軽視して、親が子育てに関係がないということではない。ピンカー

〈2004〉によると、親は多くの意味で重要である。そのなかでも特に重要なものを二点 挙げている(S.ピンカー(山下篤子訳)下巻2004,226−227頁)。

 第一、親は育児には倫理的な責任感がある。親が子どもを殴ったり、自尊心を傷つ けたり、与えるべきものを与えなかったり、無視したりすることは許されないのは、

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