第 4 章
6.2 安全性定期報告(施行規則第 63 条) 65
ICHでの定期的安全性最新報告制度(PSUR)の合意を 踏まえて、1997年4月の薬事法改正を機に、「安全性定期報 告制度」が法制化された。なお、PSURは、2013年5月、定期 的ベネフィット・リスク評価報告(PBRER)が取りまとめられたこ とに伴い、PBRERに変更されている。
本報告の報告期限の起算日にはPBRERでの国際誕生日の 概念が導入され、これを踏まえて厚生労働大臣が承認の際に 指定する日を起算日とする。報告頻度は、この日から起算して2 年間は半年毎、それ以降の再審査期間中は1年毎である。適 用されるのは再審査指定を受けた医療用医薬品(医療機器 は従来とおりの年次報告)であり、海外にて薬剤が販売されて いる場合には当該国における副作用や規制措置情報を含めて 報告しなければならなくない。なお、外国の企業でPBRERが作 成されている場合は、我が国の安全性定期報告の「調査結果 を踏まえた今後の安全対策」の項において使用成績調査等で 得られた情報と併せて検討し提出するか、PBRERの内容を我 が国の安全性定期報告に加えて編集して一報として提出する か、いずれでも可とされている。提出すべき報告事項の概略は次 のとおりである。
・ 調査期間
・ 調査症例数
・ 出荷数量
・ 使用成績調査等の調査実施状況
・ 調査結果の概要及び解析結果
・ 副作用等の種類別発現状況
・ 副作用等の発現症例一覧
・ 使用上の注意の改訂等適正な使用を確保するために 取られた措置
・ 添付文書
・ 調査結果を踏まえた今後の安全対策 6.3 再審査申請に必要な資料及び再審査の手続
再審査申請に必要な使用成績調査、特定使用成績調査、
製造販売後臨床試験等の製造販売後調査等に係る資料は、
GPSP(製造販売後臨床試験はGCPを含む)を遵守して実 施し、かつこの基準に沿って収集、作成されたものでなければな らない。
再審査の申請は、指定の期間を経過した日から起算して3ヶ 月以内の期間に行わなければならない。提出すべき資料及びそ の構成については、おおむね下記のとおりであるが、申請に係る 医薬品の特定使用成績調査及び製造販売後臨床試験に関 する資料が中心となり、その他当該医薬品の効能・効果、安全 性に関し承認後に得られた研究報告に関する資料、再審査申 請日の直近に提出した安全性定期報告を添付するとされてい る。 ① 再審査申請資料概要
申請品目の概要、再審査申請迄の経緯(出荷の数量 及び金額の推移、推定患者数、外国における承認・市販状 況等)、製造販売後調査の概要、安全性・有効性に関す る検討、まとめ、引用文献
② 再審査申請添付資料
使用成績調査、特定使用成績調査及び製造販売後臨 床試験に関する資料、副作用・感染症報告に関する資料、
研究報告に関する資料、国内外の措置に関する事項、重篤 な有害事象の発現に関する資料
③ 適合性調査資料
GPSP等適合性調査資料及び必要に応じてGCP適合性
調査資料、GLP適合性調査資料
④ 参考資料
使用成績調査等に用いた調査票等、再審査申請時の添 付文書、回答概要、審査報告書、承認申請時の資料概要
(部会用)、承認書の写し、再審査申請日の直近に提出 した安全性定期報告
再審査は、上記の申請資料に基づき、図15.(再審査の フローチャート) の流れで進められる。即ち、申請受付後、
「機構」においてGPSP等適合性の調査と品質、有効性及び 安全性に関する調査が行われた後、薬事・食品衛生審議 会・薬事分科会での審議と答申を経て、審査結果が公表さ れる。再審査の結果は、法第14条第2項第3号の3つの承 認拒否事由(①申請された効能・効果があると認められない 時、②効能・効果に比して著しく有害な作用を有することによ り、使用価値がないと認められる時、③性状又は品質が保健 衛生上著しく不適当な時)に照らして、次の3区分で示さ れ、必要な措置がとられる。
* 指定区分
[I]承認不可
(製造・販売中止、承認取消)
[II]承認事項変更
(指示に従い承認事項の変更)
[III]承認
(再審査申請とおり)
7.再評価制度(法第14条の6,23条の 31)
医薬品の再評価は、既に承認された医薬品について、現時 点の医学・薬学の学問水準から有効性及び安全性を見直す 制度である。本制度は、1971年7月7日付薬発第610号「薬 効問題懇談会の答申について」に基づく同年12月からの行政 指導による再評価の実施に始まり、1985年1月からの薬事法 に基づく再評価、更に1988年5月からの新再評価制度へと経 過してきている。
新再評価制度: すべての医療用医薬品の有効性、安 全性を繰り返し見直す制度が1988年5月に通知された。
この再評価は、薬事・食品衛生審議会で審議し、必要が あれば薬事法に基づき再評価を実施するという方法がとら れている(図16. 再評価のフローチャート)。
新再評価指定は1990年2月より行われた。
旧厚生省は後発医薬品のあり方について「21世紀の医薬品 のあり方に関する懇談会」の最終報告(1993年5月28日)
において、先発品を含めた薬剤の製造管理・品質管理の徹底 の必要性が示唆され、それらを確認する日常的な方法として溶 出試験法が提言された。これを受け、1997年2月、「品質再評 価」が開始され、溶出試験が規定されていない先発医薬品につ いて試験条件・規格等を設定し、それとの同等性を確認するこ とにより後発医薬品の品質を確保することを目的としている。
その後、先発医薬品に対する後発医薬品の治療学的な同 等性を保証することを目的とした「後発医薬品の生物学的同等 性試験ガイドライン」が1997年12月22日に通知され、2001 年5月31日(医薬審発第786号)、2006年11月24日
(薬食審査発第1124004号)及び2012年2月29日薬食 審査発0229第10号に一部改正の通知が出された。
品質再評価が終了し、それに伴い溶出試験が設定された品 目は「公的溶出試験」として「日本薬局方外医薬品規格第三 部」(1999年3月23日に創設)に収載されている。
66
P M S GVP, GPSP (GCP)
副作用・感染症報告制度
医薬関係者による医薬品・医療機器等安 全性情報報告制度
企業による副作用・感染症報告制度
WHO国際医薬品モニタリング制度
再審査制度
再審査申請
安全性定期報告 - ICH・PBRER 再評価制度
図 12 医薬品の PMS
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使用成績調査・特定使用成績調査・製造販売後臨床試験
市販直後調査 実施 計画書の作成
発売
6ヵ月納入前 MR 訪問
説明と協力依頼
市 販 直 後 調 査
訪問、手紙、FAX、E-mailによる定期的な注意喚起 副 作 用 等
医 薬 品 等 安 全 性 情 報 報 告 制 度 企 業 報 告 制 度
図 13 医薬品の市販後安全性情報の収集、報告、措置
68
・WHO国際医薬品モニタリング制度 ・FDA等外国行政当局
情報交換
厚生労働省
医師会 情報伝達 評価 薬事・
歯科医師会 (独)医薬品医療機器総合機構 食品衛生審議会 薬剤師会 (企業報告の収集、分析、評価 検討
等を担う)
医薬品等安全性 ・副作用・感染症報告
情報報告 ・安全性定期報告
・再審査
・再評価 行政措置
指導
情報収集 情報交換
病院、診療所 製造販売業者 外国企業
歯科医院、薬局 伝達 ・副作用
・PBRER
・規制情報
図 14 医薬品の安全性情報の収集、報告、措置
69
( 本 省 ) ( 機 構 )
再審査申請受付
申請資料の適合性調査
・GPSP実地調査
・適合性書面調査
品質,有効性及び安全性に関する調査
再審査報告書の確認 再審査報告書の作成
提出 薬事・食品衛生審議会・薬事分科会
(関連部会)への諮問、審議(又は 報告)、答申
再審査結果の公表
図 15 再審査のフローチャート
70
(本 省) (機 構)
再評価成分及び項目の選定
機構での調査 薬事・食品衛生審議会・薬事分科会
(関連部会)への諮問、審議、答申
再評価指定 再評価申請受付
申請資料の適合性調査
・GPSP調査
・原データからの検証
品質,有効性及び安全性に関する調査
再評価報告書の確認 再評価報告書の作成 提出
薬事・食品衛生審議会・薬事分科会
(医薬品関連部会)への諮問、審議、
答申
再評価結果の公表
図 16 再評価のフローチャート
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