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学校で配慮と支援が必要なLGBTsの子どもたち

日高 庸晴

(宝塚大学看護学部)

 人口の5~8%は存在すると推定されているLGBTをはじめとするセクシュアルマイノリティ(LGBTs)

に関する国や自治体、企業などの取り組みが概ね2015年を境に増え始め、その報道がされるようになってき た。性的指向と性自認の多様性が尊重されるようになりつつあるが、まだその取組は緒に就いたばかりであ る。看護師・保健師・助産師養成課程のカリキュラムにおいてもLGBTsについてしっかり盛り込んでいる 養成所は多くはなく、今後さらなる取組が求められる。

 LGBTsの彼らが小・中・高の学齢期に学校で様々な困難に直面する経験率が高いことが国内外の研究で示 され、繰り返し再現性のある研究結果が示されるようになっている。筆者は1990年代後半からのHIV感染 の拡大とその流行に合わせ、ゲイ・バイセクシュアル男性を対象にした行動疫学調査を継続して実施してい る。2016年には約1万5千人のLGBTsを対象にした全国インターネット調査を実施し、これまでの研究参加 者数は約10万人弱に達している。20年来に渡る一連の国内最大規模の疫学調査で示されたことは、当事者 の多くが学齢期早期から様々な困難なライフイベントに直面している実態である。

 学校教育の現場で同性愛や性同一性障害について否定的な情報が伝えられていることや、いじめ被害率・

不登校率・自傷行為率の高さがLGBTs全般にあり、性暴力被害率の高さも明らかになっている。また、HIV 予防教育は性教育の一環で実施されることがあるが、異性間の男女を前提にした男女間の感染予防に終始す る場合が圧倒的に多く、男性同性間の予防教育が十分に実施されておらず、セクシュアリティの多様性への 配慮が不足していることも明らかになった。

 当日はこれまでに蓄積された実証データをもとに、当該集団の現状と課題について報告する。

   会長講演/特別講演/教育講演

271 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 33, No. 3, 2020

日高 庸晴

(宝塚大学看護学部 教授)

【現職】

宝塚大学看護学部 教授、日本思春期学会 理事

【略歴】

京都大学大学院医学研究科で博士号(社会健康医学)取得。カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部エイズ 予防研究センター研究員、公益財団法人エイズ予防財団リサーチレジデントなどを経て現職。

法務省企画の人権啓発ビデオの監修や、文部科学省が2016年4月に発表した性的指向と性自認に関する教職員向け 資料の作成協力、文部科学省幹部職員研修、法務省の国家公務員人権研修、人事院のハラスメント研修などの講師 を務め、国や自治体の人権啓発事業に従事している。厚生労働省エイズ動向委員会委員を10年務める。

   会長講演/特別講演/教育講演

シンポジウム

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