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第三章 下院法案の採択過程

3. 第 14 委員会議決「理由」 126

今回の政府案には、すでに述べたように、「理由」が付されていない。ということから、

ラスカー委員長が「独立の法案として審議されるべきか、補遺として審議されるべきか」

と述べているが、それは彼の真意として、第一次案の補遺と考えていることを窺わせる。

委員会の「理由」も簡素である。委員会は、第二次政府案を、シュルツェ第一次案 (文書番 号第25号)、同第二次案 (文書番号第55号)、第一次政府案 (文書番号第88号) を含めて審 議材料としたが、課題は、ここまで紹介してきた立法過程から明白なように、第二次政府 案に第一次第14委員会決議を対照させその適否を考究することに絞られていた。

第一次委員会決議及び第二次政府案が提出されるに至った事の次第についての記述箇所

126 Anlagen zu den Stenographischen Berichten über die Verhandlungen des Hauses der Abgeordneten, Berlin 1866, SS.502-503.

を紹介するにはもはや及ばないであろう。決議の要点を示すことにする。

組合契約に必須の事項に関する政府案第3条 2、「協同組合の目的、、

」Zweck と、その抜 粋として公示されるべき事項を規定する第5条3、「事業対象、、

」Gegensstandとは平仄が 合わず矛盾しているが、この点に委員会は触れない。第1条第1文のnämlich(すなわち) ともども単純な「印刷ミス」として 12月 18日の本会議の折に訂正動議が政府側から提出 される。委員会決議案が作成される以前に連絡が政府から寄せられていたと考えられる。

すなわち、Zweck はGegensstand に、nämlich(すなわち)は、namentlich (主とし て) に変更される。

「編集版が示すところでは、プロイセン王国政府は、その先の法案とは異なり、委員会 決議のいくばくかを我がものとし、そうすることで、若干の、むろん副次的な相違点を減 らした。

他方で、委員会は、審議過程において、プロイセン王国政府の意向に、二つの点で歩み 寄った。政府の代表者らが相当の重きを置かざるを得ないと指摘している点に」、である。

3-1. 懸案に対する基本的態度

「法案提出者は、(協同組合とは 訳者補) 縁のない、かつ、国家を危殆に晒す目的のた めに協同組合を濫用する気がかりに備える特別の刑罰規定による(国家・社会の 訳者補) 防護を、ある程度は認めてもよいと既に言明している。こういった妥協により法律の成立 が促進されるのであれば、という条件付で、であるが。確かに、経験に拠れば、こういっ た濫用は少しも気遣われ得ないもののようであり、それ故に彼は、原則的に正当化されえ ない刑罰規定から、協同組合にとって何らの実体的不利益がもたらされることを恐れてい ない。彼は、原則を守るということだけで無条件の抵抗を行なうことを欲していない。無 条件の抵抗が法律の公布を遅らせることになるかぎりで、である。ただし、当該の刑罰規 定が、公共の福祉にまったく関係せず取るに足らない、どうでもよい行為に拡張され得る と解されてはならないと彼は言う。法案提出者の便宜的理由に基づき(政府の 訳者補)意を 体する意見表明は、事柄の本性により理由の与えられない特別の刑罰規定に対する原則的 な疑念に基づいた抵抗にであった。しかしながら、委員会の多数は、法案提出者の考慮に 与し、これを3 つの決議により表現した」として、以下、政府案第27条、第 33条及び第 35条に関する決議を報告する。

3-2-1. 政府案第27条処理

ここでは、先の委員会案第26条を補充し、政府により提案されている二つの文の文言を 変更することに決した。1) 「組合契約に掲げられた協同組合の目的とは異なる目的」に換 えて「この法律(第 1 条)に掲げられた事業上の目的とは異なる目的」と、2) 「総会 (複数) で、組合契約に掲げられた組合目的とは異なる目的に向けられた提案」に換えて「総会 (単 数)で、事業目的にではなく公の問題 (1850年3月1日の、法律上での自由を危殆に晒す集 会の権利の濫用に関する命令第1条) に向けられた提案」とすることを決議した。

むろん、双方の差し替えについては、異議が唱えられたことは言うまでもない。前者に 関しては、濫用に対し理事の一身的かつ連帯責任で充分な安全措置が施されている、とい うのがその言い分である。後者に関しては、結社法に関連してというのでは余りに狭くし か捉えられない、つまり、濫用に対する防護措置を、結社法を踏み越えて施せないからで ある、と。委員会の多数は、双方の憂慮を撥ね付けた。

1850年の命令とは、正式には、「法律上の自由及び秩序を危殆に晒す集会・結社の権利の 濫用を予防する事に関する命令」127という。典型的な、集会・結社の取締法であることは 解説に及ばない。よって、「公の問題」とは何であるかを論じる実益もない。それは管区警 察署の特殊な判断にかかっているからである。故に、かかるものを一般的「法」として意 味づけることも無駄である。この点とかかわって、協同組合、それを含む結社と政治、ま たは「共」と「公」との関係という独立の論題が成立することは言うまでもない128。 「当然のことであるが、委員会の側から、政府委員の同意を得て、受け入れられた事柄 は、理事は、理事としての資格において第 1 文で記された行為に着手した場合に限って当 該の行為ゆえに処罰される、ということである」。

3-2-2.

政府案第 33 条に対して、先の委員会案第 32条を撤回し、議事録類の査閲を国の官庁に も認めることとした。第26条の変更議決の結果がここに見られる。

3-2-3.

政府案第35条に関して。これは公安を理由とする協同組合の解散を規定する箇条である

127 .その第1条に、「公の問題が解説され、又は論じられることになる一切の集会に関して、その企画者

(Unternehmer) は、少なくとも集会の開始に先立つ24時間前に、その場所及び目的を記載して当該の

届出を管区警察署に提出しなければならない。当該の官庁は、直ちに、その旨について届出受領書を交付 しなければならない。当該の集会が、届出において記載された刻限より少なくとも1時間遅れて開催され ないときは、遅れて開始される集会は、定めにしたがって届出られたものとは、これを見做すことができ ない。集会が1時間以上にわたり中断された討議を再開する場合も、同様とする」とある。Verordnung über die Verhütung eines die geseßliche Freiheit und Ordnung gefährdenden

Mißbrauchs des Versammlungs und Vereinigungsrechtes,in:Sammlung sämtlichen Drucksache, Berlin 1850, Nt. 569, Zweiter Kammer, S.1.同、第505 (SS.1-27.) に詳細な、「集 会・結社の権利の濫用に関する1849621日の命令の検討委員会報告書」が掲載されているが、これ には、BGB法人章の設計を検討する折に立ち返ることとし、今は、指摘のみに止める。

ただし、ここで言われる「公の問題」という脈絡での「公」が政治権力及び統治行為を示していること は明らかで、ドイツ観念論哲学の系譜での「公」を意味しないことも同様である。当該の系譜に関する入 門書として山脇直司『公共哲学とは何か』ちくま新書、2004年、71-79頁。

128 特定非営利活動促進法第22ニに掲げられる宗教、政治への従事の禁止規定は、一面で、同法第1 に掲げられた「特定非営利活動を行なう団体」の目的規定の曖昧さを反映し、他面で、市民的自治に対す る警戒の念を反映したものである。非営利活動のよってきたる由縁が統治構造、政策と無縁ではないこと を鑑みれば、国家からの自由のみならず国家への自由という見地から見て、あらずもがなの規定という他 はない。

若森章孝が『レギュラシオンの政治経済学』(晃洋書房、1996 年) において「政治的秩序の経済的形態 と国家の有機的循環形態」を論ずるにおいて、国家という「公」による国民の共同事業という「共」の包 摂により、具体的には「公共支出を通じて集団的消費という新しい空間を政治的蓄積のロジックに取り込 む」 (218 頁) ことにより「いわば共的形態の可能性は公的形態の圧倒的優越によって鎮圧された」(222 頁) というのは、福祉国家段階での論理を歴史的過去に投影した論理で、プロイセン協同組合法やわが国 の産業組合法の成立及びその後の展開を解くロジックとはならない。

が、委員会は、上記第27条の特別の刑罰規定と同一の線で処理を行なったとある (S.502.) 。

3-3. 政府案第34条処理

これは、解散原因を規定する。ここでの焦点は、組合員の利益を守るために発意された 委員会案第33条4「協同組合の財産に対する強制執行が不全に終わった後、協同組合の組 合員の申立に基づき行なわれうる商事裁判所の決定により」を残置させるかどうかに懸か っていた。しかし、削除された。

「法務省の代表は、この規定に原則的な重要性を認め、かつ、この規定は、他の組合員 の利益を損なうが故に断固として反対であると言明した。委員会内では誰も前の決議にさ ほど重要な意義を認めず・・・・委員の多数は先の決議を撤回し、政府案を復活させた」

と。

以上が、委員会が歩み寄った点である。論評は、今は措いて、他の対立点についてどの ようなやりとりが行なわれたのか、それだけを確認しておく。

3-4. 州長官による許可

州長官による許可の要件を法律で定義すべしとする提案がされたが、「それは、政府の見 解に照らしても州長官は (法主体性の付与を 訳者補) 願い出る協同組合及びその組合定 款がこの法律の要件に合致しているか否かにかぎって審査できるにすぎない」との見方を 前提とする。この点と関連し州長官に対する訓令により法律を補充できないかという発言 に、「商務省の代表は、法律の文言は、『許可』又は拒否を州長官の自由裁量に委ねている と説明した。委員会の多数は、ついでに言うのだが、法案提出者と共に、行政庁の予防的 干渉の一切を不同意とした。訓令でしばりの規範を下すことを企図したとしても、である」。

3-5. 組合契約の形式

政府委員は、「政府案の文言に拠り、この法律の恩恵を得んとするのであれば、現に存す る協同組合にも公証された契約の締結又は裁判所若しくは公証人の前で古い契約を確証す ることが要求されなければならない」という見解を示した。こういったことは、委員会の メンバーにも、法案提出者にしてみても、現存する組合にとって組合員数が多数にのぼる ことから実行不可能であると思われた。提案された逃げ道、つまり、ほんの少数の者だけ が設立契約を締約し、残余の者は簡易な形式で組合員として同意すれば充分である、とい うものであるが、これでは法的根拠からしても既存の協同組合には不適合となる、なぜな らば、かかる契約関係では原始契約者以外の多くの者にとって、その権利、義務が曖昧に なる、と。

「上に (第1及び第2) 述べた変更を例外として、委員会は、前の決議を至る所で堅持し、

目下の委員会決議の如き法案を採用した」と。委員会は、かくして、上院に対し、委員会 決議版の・・・・法案を採択されるよう推奨する、との立場を明示する。

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