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―大学生と地域の人たちによる博物館での世代間交流―

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保持されてきたという来歴が示唆されている」のである。婚礼衣装については、着物のみでなく着 用されている当時の写真が残されている例もあり、着物と写真が併せて展示された。本展はものと しての着物を味わうと同時に、人が着、人が受け継いできたという来歴を感じさせる展示になって いた。

2.ミュージアムサロンのデザイン

きもの展のサロンは、これまでのサロンと同様に1)展示や資料を活用し、2)学生と地域の 方が交流できる仕組みを用意することを前提としてデザインを行なった。展示との関わりから、じっ くり観賞してもらうことと、来歴に思いを馳せることを企図し、そこに参加者の経験を重ねること で、「ものとしての着物」と「人と着物の関わり」の2つの視点から着物と向き合うことにした。

展覧会の観賞に加えて、自己の着物について参加者間で語る機会を設け、参加者の眼差しと経験を 通して、われわれのまわりにある着物の現在が描かれることが予想された。

2-1)活動の流れと人

ワークショップは2時間で、活動は2つに大別できる。前半は展覧会の観賞で、後半は自分と 着物との関わりをテーマとした対話のサロンである。

1)挨拶、全体の説明

  展覧会の概要、サロンの趣旨と活動の流れなどを説明し、展示会場へ案内した。

2)展覧会「ハレの日のきもの」観賞

学生は3名程度のグループで、ワークシートに記入しながら鑑賞することとした。一般の参 加者は、ワークシートの記入や鑑賞グループなどの制限は求めず、自由に見ることとした。

学生らの鑑賞を支援するために、武庫川女子大学の学生数名がファシリテーターとして対話 に加わった。

3)サロン1 グループで「着物との関わり」を語る

学生と一般参加者4名程度で世代をまたがる小グループを作った。持参した着物着用の写真 や、その日に着てきた着物について来歴や思い出などをグループごとに語り合う場とした。

ここでは、各自にワークシートを用意した。一般参加者には、対話を支援する項目の提供と して活用してもらうことにし、記入は自由とした。

4)サロン2 全体で「着物との関わり」を語る グループごとの対話の内容を全体で共有した。

2-2)道具

展示場で:ミュージアムサロンでは毎回、武庫川女子大学附属総合ミュージアムが収蔵してい るコレクションを活用する。今回は展示されている着物のうち何点かをじっくり鑑賞することとし た。深い鑑賞を支援するためにワークシートを用意した。先にも述べたように、これは主として学 生に生地の質感や色、文様に着目して観賞することをうながし、気づきをとどめておくことを目的 としている。またどの着物についての記録なのかがわかりやすいようにシートには着物の画像を配 し、そこから線を引くなどの記入も可能な構成とした。ワークシートに採用した展示物は8点で、

 横川公子「序-裾文様をめぐる諸相」展覧会図録『2019年度武庫川女子大学附属総合ミュージアム接地準 備室秋季節展覧会『ハレの日のきもの-近代の裾文様-』2019年9月18日、3-6pp

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ることで、学生がひとつの展示物の前に集中することなく観賞できるようにした。シートを記入し ていく際に、文様のモチーフとなっているものが何なのかを判別したり、モチーフの草花の名前を 調べたりするために資料となる書籍を用意した。モノクロのシートに観察しながら着色できるよう に色鉛筆も準備したが、文様の観察と全体の観賞に時間を要したこと、着物の地色部分が黒っぽく 印刷されたため着色しづらかったことから、実際は色を塗るには至らなかった。

サロンで:サロンでは、自分の具体的な着物経験についての語りをもとに対話を行うことにし たため、手がかりとなる写真を用意してもらうように求めた。写真をもとに話をする際、スムーズ に話題には入っていくための問いと、それについて記入するために、ワークシートを用意した。ワー クシートには、いつ誰が着用しているのか、どのような来歴の着物でどのような特徴がありどのよ うな思い出があるかを記入する欄が設けられている。

2-3)会場のしつらえ

会場は、小グループで輪になって話ができるように椅子を用意した。正面を設けず、ランダム にその輪を配置するようにした。

3.学生が鑑賞から得たこと

学生らは、どのように鑑賞したのだろうか。活動の様子では、文様として描かれているものが 何なのかがわからず、苦戦しているように見受けられた。文様になっている草花は写実的なことも あるが、モチーフをかなりデザイン化していることもあり、参考資料と照らし合わすのにも時間を 要していた。

学生らが着物をじっくり鑑賞することで得た気づきをワークシートからみていこう。ワークシー トは、色への注目からはじめて、文様をみて、全体を通しての気づきを書き込むようにデザインさ れている。

色については、「渋く彩度と明度の低い色」、「葉の色がグラデーション」などのほか、「地色か ら地味に見えたが文様の色から全体としては鮮やかで明るい」など、文様部分の色彩への注目が多 かった。

文様については、全員がモチーフが何かを調べて記入していた。図案化された花をイラストで 表している学生も数名あった。ワークシートで取り上げた着物は、松竹梅や秋の七草など、きっか けがつかめれば言葉から調べることも可能なものがあったが、ある程度知識が必要となる。モチー

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かあった。また、「具体的な絵と抽象的な絵がまざっている」、「草を表しているような白線がを大 きく見せているような気がした」など、構成への気づきもあった。生地については、「地紋が表さ れている」、「ちりめんのしぼが大きい」などのコメントが見られた。

ほか注目すべきは、表現と技術の組み合わせによる記述が多く見られたことである。「葉に白が 使われていることで光が当たっていることがわかる」、「太い刺繍が所々に使われていてアクセント が加えられている」、「花に刺繍が小さくほどこされている」、「花の輪郭に刺繍のあるものとないも のがある」、「金色の刺繍が光にあたって立体的に見えた」など、刺繍とその用い方が見え方にある 役割を果たしていることへの気づきが記述されていた。

このように、時間をかけて鑑賞することで、学生らが細かな技術など「見てわかること」をしっ かり捉えている様子がシートからうかがえた。また、「袖の内側には茶色が使用されていて、袖が 風でなびいたときなど綺麗に見えそう」「松の木にとまったオナガドリが着物を着ていると一羽で あるが、着物を飾ると二羽が現れるというデザインは面白みがあって素晴らしい」など、展示され ている状態にとどまらず、実際に着用されている様子を想像して鑑賞していることが伝わってくる コメントもあった。目の前にある着物をものとしてよく観ることに加えて、人がまとうものである ことを意識して鑑賞していることがわかる。

サロン全体の振り返りコメントでは、「洋服は色や形で個性を出したりするが、着物は描かれて いる柄やその色使いで季節感やどんな時に着るものなのかを感じさせ伝える」、「描かれているお花 に理由があることを初めて知りました」、「ぱっと見では似た印象の着物でも、よく見てみると全く 違うものが描かれていることがわかりました」、「季節や場面で柄や生地が考えられていることを知 りました」、「描かれているものを調べることで、その着物の歴史、使われた季節が予想できて面白 かった」など、文様に込められた意味に着目したものが多い。「成人式の振袖を選ぶ前にこのよう な経験ができていたらもっと楽しめた」、「特徴的な柄の名前や深い意味に大変興味がわいたので、

成人式で着用した着物の柄について調べてみようと思った」など、鑑賞から知り得たことを自分ご とにつなげているコメントもあり、鑑賞を通して「着物の模様には意味がある」ということが学生 らに浸透した印象を受けた。

着物をじっくり鑑賞すること、自らの着物との関わりをきっかけに対話をすることがもたらし た学びは、「直感で選ぶのではなくしっかりと見て考えて選ぼうと思いました」「着物の楽しい見方 を学べた」との感想から読み取れる。

4. 学生の語る着物との関わり

参加者のうち、応募による一般の方々は着物への関心が参加動機に含まれていただろう。着物 を着て来場している方も複数名あった。いっぽうゼミから参加した学生らは、日常に着物が入り込 んでいるわけではない。世代のみならず、着物への関心度も異なる両者であったが、サロンでの語 りは活気を帯びていた。これまでのサロンでは地域の方が自分の経験を語り、それを学生が聞き取 りすることが多かったが、着物経験をテーマにした今回は、学生の経験を一般参加者が興味深く質 問しながら聞く場面も多かった。

ここでは主に学生の着物との関わりを見ていくことにしよう。ワークシートへの記入でもっと も多かったのが振袖で10事例、次いで多かったのが観光地でレンタルしたという例で7件、そし て七五三2件、浴衣2件であった。