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2

つの確率変数

X , Y

が正規分布に従うとき,その同時分布は多変量正規分布として表されたが,

X , Y

が安定 分布に従う場合には,その同時分布は多変量安定分布とよばれる.多変量正規分布のパラメータは期待値ベク トルと共分散行列だけであり,比較的単純なものであるが,多変量安定分布の場合にはそれがやや複雑なもの になる.これは安定分布に従う

2

つの確率変数の関係性に対して,線形関係以外にも様々なパターンが考えら れるためである.

定義

25 (

多変量安定分布

). n

次元確率ベクトル

X

の特性関数

ϕ X (u)

がパラメータ

α ∈ (0, 2] , δ ∈ R n

n − 1

次 元単位球面

S n 1 = { x ∈ R n || x | = 1 }

上の有限な測度

Λ

を用いて,

ϕ X (u) = exp −

Z

S n−1 u T s α

1 − isgn u T s

ψ α u T s

d Λ (s)

! + iu T δ

!

(42)

と与えられるとき,

X

が従う分布を多変量安定分布(

multivariate stable distribution

)といい,

X

が多変量安定 分布に従うことを

X ∼ S n ( α, Λ, δ )

と表す.なお,

ψ α (u)

は定義

19

におけるものと同一である.とくに,

Λ

が離散測度であるとき,その分布を離 散多変量安定分布(

discrete multivariate stable distribution

)という.

多変量安定分布に関する詳細は

Nolan (2008)

に詳しい.この多変量安定分布のパラメータのうち

α

δ

安定分布の場合と同じように機能する.つまり,

α

が分布の裾の厚さを定め,

δ

が分布の位置を定めている.一 方で,安定分布における

β

γ

に相当するパラメータは,多変量安定分布では測度

Λ

が同様の役割を果たして いる.式

(42)

の被積分関数は,式

(37)

の指数関数の中身に

β = 1 , γ = 1 , δ = 0

を代入して符号を変えたものに なっているが,これを測度

Λ

に関して積分することで,各

s ∈ S n 1

に応じて異なるパラメータ

β, γ

をもつ安定 分布の特性関数を

S n 1

上で積分するのと同じことを実現している.つまり,各

s ∈ S n 1

に対応する安定分布 のパラメータ

γ

d Λ (s)

の大きさによって定まり,パラメータ

β

d Λ (s)

d Λ ( − s)

の比率によって定まる.

n

次元確率ベクトル

X

X ∼ S ( α, Λ, δ )

であるとき,

X

の各成分が安定分布に従うだけでなく,任意の

n

次 元ベクトル

t

に対して

t T X

も安定分布に従う.そのとき,

α

はすべて同一であるが,

β, γ, δ

t

に依存する.

そこで,多変量安定分布に対してパラメータ関数とよばれるものが定義される.すなわち,パラメータ関数

β X (t) , γ X (t) , δ X (t)

R n

から

[ − 1 , 1] , (0 , ∞ ) , ( −∞, ∞ )

への関数であり,それぞれ

t T X

が従う安定分布のパラ

メータ

β, γ, δ

を返すものである.実際にそれらがどのような関数となるかを調べるために,

t T X

の特性関数を

計算すると,

ϕ t T X (u) = E h exp

iu t T X i

= E h exp

i (ut) T X i

= exp − Z

S n−1 (ut) T s α

1 − isgn (ut) T s

ψ α (ut) T s

d Λ (s)

!

+ i (ut) T δ

!

= exp − | u | α Z

S n−1 t T s α 1 − isgn (u) sgn t T s

ψ α (u) − δ α, 1

2

π ln t T s !!

d Λ (s)

! + it T δ u

!

= exp − | u | α Z

S n−1 t T s α d Λ (s)

!

isgn (u) ψ α (u) Z

S n−1 t T s α sgn t T s

d Λ (s)

!!

−δ α, 1 iu 2 π

Z

S n−1

t T s ln t T s d Λ (s)

! + it δ u

!

= exp

 

 − Z

S n−1 t T s α d Λ (s)

!

| u | α

 

 1 − i

 



R

S n−1 t T s α sgn t T s

d Λ (s) R

S n−1 t T s α d Λ (s)

 

 sgn (u) ψ α (u)

 



+ i t T δ − δ α, 1

2 π

Z

S n−1

t T s ln t T s d Λ (s)

!!

u

!

となる.

5

つ目の等号が成立するために,

δ α, 1

が掛かっている項は

α = 1

と評価していることに注意.した がって,

β X (t) = γ X (t) −α Z

S n−1 t T s α sgn t T s

d Λ (s) γ X (t) =

Z

S n−1 t T s α d Λ (s)

! 1 /α

δ X (t) = t T δ − δ α, 1

2 π

Z

S n−1 t T s ln t T s d Λ (s)

である.

非整数安定過程の増分

h L α,β, H (t)

をいくつか集めた確率ベクトルはこのような多変量安定分布に従ってい ると考えられる.たとえば,

L α,β, H (0)

L α,β, H (1)

からなる

2

次元確率ベクトル

X

X ∼ S 2 ( α, Λ, 0)

であ るとする.このとき,

(1, 1) X = ∆ 2 L α,β, H (0)

である.

X

2

次元確率ベクトルであるから,パラメータ関数で 積分する範囲は単位円上であり,

Λ (S )

に対して

S

を極座標系に変換することで

[0 , 2 π )

上に定義される測度を

Λ ˜ ( θ )

とおくと,非整数安定過程の条件を満たすためには,

γ X

(1, 0) T

= Z 2 π

0

| cos ( θ ) | α d Λ ˜ ( θ )

! 1 /α

= 1

γ X

(0, 1) T

= Z 2 π

0

| sin ( θ ) | α d Λ ˜ ( θ )

! 1 /α

= 1

γ X

(1, 1) T

= Z 2 π

0

| cos ( θ ) + sin ( θ ) | α d Λ ˜ ( θ )

! 1 /α

= 2 H + 1 /α− 1 / 2

が少なくとも満たされなければならないことがわかる.一方で,ミンコフスキーの不等式より,

α ≥ 1

のとき,

2 H + 1 /α− 1 / 2 = Z 2 π

0

| cos ( θ ) + sin ( θ ) | α d Λ ˜ ( θ )

! 1 /α

≤ Z 2 π

0

| cos ( θ ) | α d Λ ˜ ( θ )

! 1 /α

+ Z 2 π

0

| sin ( θ ) | α d Λ ˜ ( θ )

! 1 /α

= 2

であるから,このとき

H

の取り得る範囲は

H ≤ 3 / 2 − 1 /α

に制限される.

α > 1

のとき

0 < E hL α,β, H (1)i < ∞

であるから,

α = 1

の場合を除き,この結果は定理

2

による

H

の制限よりも厳しい.なお,この他にも

β

(1 , 0) T

= β (0 , 1) T

= β (1 , 1) T

= β

を満たさなければならない.

多変量安定分布に関する分析は測度

Λ

に関する積分を伴うため,どうしても複雑になる.しかし,この測度

Λ

を離散測度に制限した離散多変量安定分布は簡単な分析で様々な性質が得られるうえ,それに従う乱数を生 成することも容易である.そこで,

n

次元確率ベクトル

X

が離散多変量安定分布に従い,

N

個の正の実数

k }

S n 1

上の点

{ s k }

に対して,

Λ (S ) = X N k = 1

λ k δ s k (S )

と与えられる

S n 1

上の離散測度

Λ

を用いて

X ∼ S n ( α, Λ, δ )

であるとする.ただし,

δ s (S )

はディラック測度 であり,

sS

ならば

δ s (S ) = 1

s < S

ならば

δ s (S ) = 0

である.このとき,

X

の特性関数は,

ϕ X (u) = exp

 

 −

 

 X N k = 1

λ k u T s k α

1 − isgn u T s k

ψ α u T s k



 + iu T δ

 

=

 

 Y N

k = 1

exp

−λ k u T s k α

1 − isgn u T s k

ψ α u T s k



 exp iu T δ

=

 

 Y N

k = 1

exp − λ 1 k u T s k α 1 − isgn

λ 1 k u T s k

ψ α

λ 1 k u T s k

+ δ α, 1

2

π ln ( λ k ) !!!  exp iu T δ

=

 

 Y N

k = 1

exp

− λ 1 k u T s k α

1 − isgn

λ 1 k u T s k

ψ α

λ 1 k u T s k



 exp

 

iu T

 

 δ + δ α, 1

2 π

X N k = 1

λ k s k ln ( λ k )

 

 

と表すことができるが,ここで,

(n × N)

行列

M

n λ 1 k s k

o

を横に並べた行列として定め,すなわち,

M i , j = λ 1 j s j

i

と定め,定数部分を簡単にするため,

δ ˜ = δ + δ α, 1

2 π

X N k = 1

λ k s k ln ( λ k )

とおき,

Z

を各成分が独立に

β = 1 , γ = 1 , δ = 0

の安定分布に従う

N

次元確率ベクトルとすれば,すなわち,

Z 1 , . . . , Z N ∼ S ( α, 1 , 1 , 0)

とすれば,

ϕ X (u) = exp

iu T δ ˜ Y N

k = 1

ϕ Z k

λ 1 k u T s k

= exp

iu T δ ˜ Y N

k = 1

E h exp

i λ 1 k u T s k Z k

i

= exp iu T δ ˜

E

 

 exp

 

i X N

k = 1

λ 1 k u T s k Z k

 

 

 = exp iu T δ ˜

E

 

 exp

 

i X N k = 1

X n l = 1

u l λ 1 k (s k ) l Z k

 

 

= exp iu T δ ˜

E h exp

iu T MZ i

= E h exp

iu T

MZ + δ ˜ i

= ϕ MZ + δ ˜ (u)

となる.つまり,

X

Z

のアフィン変換で表すことができ,

X = d MZ + δ ˜ (43)

である.反対に,

Z

の任意のアフィン変換は適当な離散多変量安定分布に従い,さらには任意の離散多変量安 定分布に従う確率ベクトルのアフィン変換もまた適当な離散多変量安定分布に従うことがわかる.そして,多 変量安定分布に従う乱数を生成することは一般に容易ではないが,離散多変量安定分布の場合,この関係を用 いて簡単に乱数を生成できる.

一般に,

N

次元確率ベクトル

Z

の共分散行列が

Σ

で与えられるならば,任意の

(n × N)

行列

M

に対して,

X = MZ

の共分散行列は

M Σ M T

となる.とくに

Σ

が単位行列であるならば

X

の共分散行列は

M M T

であり,

相関行列の各成分は

M

の各行ベクトル同士が成す角の余弦に等しい.つまり,

X i

X j

の相関係数は

M

i

行目のベクトルと

j

行目のベクトルが成す角の余弦となる.実際,離散多変量安定分布は,

α = 2

のとき,平 均ベクトル

δ

共分散行列

2 M M T

の多変量正規分布に等しく,

M M T

が変わらない限り分布は

M

の選び方によ らない.このことから,

0 < α < 2

のとき,多変量安定分布には共分散行列が存在しないものの,式

(41)

に 従って計算される相関行列が存在するならば,それは式

(43)

の表現における行列

M

によって定まることが期 待される.とくに

M

の行ベクトル同士の成す角が重要であると考えられる.ただし,

0 < α < 2

の場合には,

M M T

が同一であっても

M

に応じて分布自体は異なる.なお,行列

M

k

列目のベクトルを

M , k

と表せば,

X

のパラメータ関数は,

β X (t) = γ X (t) −α X N

k = 1

λ k t T s k α sgn t T s k

= γ X (t) −α X N k = 1

t T M , k α sgn t T M , k

γ X (t) =

 

 X N k = 1

λ k t T s k α



1 /α

=

 

 X N k = 1

t T M , k α



1 /α

δ X (t) = t T δ − δ α, 1

2 π

X N k = 1

λ k t T s k ln t T s k = t T δ ˜ − δ α, 1

2 π

X N k = 1

t T M , k ln t T M , k

となる.

多変量安定分布に従う確率ベクトルにおいて,式

(41)

が計算可能な例が少なからず存在することを確かめる ために,さらに計算が容易な非常に特殊な離散多変量安定分布に従う確率ベクトル

X

を考える.すなわち,

X

2

次元確率ベクトルであり,式

(43)

の形式で表現したとき,

δ ˜ = 0

となり,

M

(2 × 4)

行列であって,パ

ラメータ

θ ∈ (0, π ) , β ∈ [ − 1 , 1]

を用いて,

M = c 1 cos ( θ 1 ) c 1 cos ( θ 2 ) c 2 cos ( θ 1 ) c 2 cos ( θ 2 ) c 1 sin ( θ 1 ) c 1 sin ( θ 2 ) c 2 sin ( θ 1 ) c 2 sin ( θ 2 )

!

θ 1 = π

4 − θ

2 , θ 2 = π

4 + θ

2 , c 1 = 1 + β 2

! 1 /α

, c 2 = − 1 − β

2

! 1 /α

と与えられる場合である.ただし,定数部分に関する議論を避けるため,

α = 1

ならば

β = 0

であるとする.

このとき,分布は

X 1 = X 2

に対して対称であり,

X 1 , X 2 ∼

 



 S

α, β, ( | cos ( θ 1 ) | α + | cos ( θ 2 ) | α ) 1 , 0

0 < θ ≤ π 2 S α, β | cos ( θ 1 ) | α − | cos ( θ 2 ) | α

| cos ( θ 1 ) | α + | cos ( θ 2 ) | α , ( | cos ( θ 1 ) | α + | cos ( θ 2 ) | α ) 1 , 0

! π

2 < θ < π (44)

となる.

X

は独立に安定分布に従う確率ベクトル

Z

M

による線形変換で表されるが,このように

M

の列ベ クトルの中にちょうど対極を向くものが存在するならば,

Z

が従う分布を修正することで

Z

M

の次元を削 減できる.つまり,この場合,独立な

2

次元確率ベクトル

Z ˜

Z ˜ 1 , Z ˜ 2 ∼ S ( α, β, 1 , 0)

として,

(2 × 2)

行列

M ˜

M ˜ = cos ( θ 1 ) cos ( θ 2 ) sin ( θ 1 ) sin ( θ 2 )

!

とすれば,

X = d M ˜ Z ˜

となる.このとき,

X

の成分間の相関関係

R [X 1 , X 2 ]

M ˜

1

行目のベクトルと

2

行目の ベクトルの成す角の余弦に等しいことが期待されるが,

θ 1 , θ 2

π/ 4 ∓ θ/ 2

と選んでいるため,

M ˜

1

行目と

2

行目の成す角は

1

列目と

2

列目の成す角,すなわち

θ

に等しい.そして,

cos( θ ) < 0

であって負の相関関係が 存在すると期待されるとき,すなわち

θ ∈ ( π/ 2 , π )

であるとき,

X 1 , X 2

の分布は式

(44)

のように与えられるた め,この形で表される離散多変量安定分布では

X 1 , X 2

が従う分布のパラメータ

β

が一定の範囲に制限されるこ とになる.しかし,これは自然な結果である.なぜならば,安定分布において

β , 0

であるという状況は一方 の裾が相対的に厚いことを示すが,そのような分布と負の相関関係をもたせるためには,反対側の裾を厚くし なければならず,同じ

β

の値を維持することが難しくなるためである.このことは,自己相関関数が負になる ような非整数安定過程において,分布が対称でないケースが極めて稀であるか,あるいは存在しない可能性を 示唆する.

実際に

R [X 1 , X 2 ]

を計算して

R [X 1 , X 2 ] = cos ( θ )

となるか否かをみるためには

X

の同時確率密度関数

f X (x 1 , x 2 )

を求める必要がある.

X = d M ˜ Z ˜

であることを利用して,

  X 1 = d cos ( θ 1 ) Z 1 + cos ( θ 2 ) Z 2 X 2

= d sin ( θ 1 ) Z 1 + sin ( θ 2 ) Z 2

Z 1 , Z 2

について解くと,

 



Z 1 = d sin ( θ 2 ) X 1 − cos ( θ 2 ) X 2

cos ( θ 1 ) sin ( θ 2 ) − cos ( θ 2 ) sin ( θ 1 ) = sin ( θ 2 ) X 1 − cos ( θ 2 ) X 2

sin ( θ ) Z 2 = d cos ( θ 1 ) X 2 − sin ( θ 1 ) X 1

cos ( θ 1 ) sin ( θ 2 ) − cos ( θ 2 ) sin ( θ 1 ) = cos ( θ 1 ) X 2 − sin ( θ 1 ) X 1

sin ( θ )

であり,

M ˜ = cos ( θ 1 ) sin (θ 2 ) − cos ( θ 2 ) sin (θ 1 ) = sin ( θ )

であるから,

Z 1 , Z 2

の独立性より,

f X (x 1 , x 2 ) = 1 sin ( θ ) f Z 1

sin ( θ 2 ) x 1 − cos ( θ 2 ) x 2 sin ( θ )

! f Z 2

cos ( θ 1 ) x 2 − sin ( θ 1 ) x 1 sin ( θ )

!

を得る.つまり,安定分布の確率密度関数が計算できるならば,

X

のような離散多変量安定分布の確率密度関 数も容易に得られることになる.図

10

にはこの確率密度関数の等確率曲線の例を示した.直線は

M ˜

の列ベク トルを示している.各ベクトルに沿って指定の安定分布が広がっている様子が観察できる.

この確率密度関数を用いて,いくつかの

α, β, θ

に対して,実際に

R [X 1 , X 2 ]

を近似的に計算した結果を図

11

に示す.図中の破線は

cos ( θ )

の水準を示している.少なくとも

β = 0

である場合には安定的に収束していって おり,しかも,期待された通り,収束していく先が

cos ( θ )

であることがわかる.また,

β , 0

の場合でも,

r

が小さいときには不安定な変動を示すものの,

r

を大きくするに従って次第に安定的に

cos ( θ )

に収束していく ようになる.パラメータ

α

が分布の裾の厚さを定めていたことから推察できるように,同一の

β

に対しては

α

が大きいほど急速に収束している.ちなみに,ここでは

β ≥ 0

のケースしか計算していないが,

β

の符号を反 転しても

X 1 = − X 2

を軸に反転した分布になるだけであるから,

β

の符号は

R [X 1 , X 2 ]

の値に影響しない.この 結果から,多変量安定分布に対して相関関係を表す指標

R [X 1 , X 2 ]

が定義できるケースが存在するようである ことが確認できた.したがって,無限大の分散をもつ非整数安定過程を考える場合でも,その自己相関関数に 関する議論がまったく無益なものではないといえる.

−6

−3 0 3 6

−6 −3 0 3 6

X 1

X 2

alpha=1.2,beta=0.3,theta=1.0 alpha=1.2,beta=0.3,theta=2.0

10

離散多変量安定分布の確率密度関数

18

18

安定分布の確率密度関数は

libstableR

パッケージ(ver. 1.0.2)の

stable pdf

関数による.

α = 0.8 α = 1.2 α = 1.6

β = 0.0 β = 0.4 β = 0.8

1 10 100 1 10 100 1 10 100

−1.0

−0.5 0.0 0.5 1.0

−1.0

−0.5 0.0 0.5 1.0

−1.0

−0.5 0.0 0.5 1.0

r

R [ X 1 , X 2 ] cos ( θ )

−0.9

−0.3 0.3 0.9

11 R [X 1 , X 2 ]

の近似計算結果

19

6 非整数階積分による表現 6.1 非整数階積分

ここまで自己相似過程には非整数ブラウン運動や安定過程など,様々なものが存在することを述べてきた.

それらはその確率過程がもつ性質によって定義してきたが,その性質を満たすような確率過程はホワイトノイ ズ,あるいはそれに類するノイズの非整数階積分(

fractional integral

)によって表現することができる.ブラウ ン運動がガウシアンホワイトノイズの積分として与えられることは広く知られているが,この積分を非整数階 に拡張すると非整数ブラウン運動が得られ,さらにホワイトノイズの分布を変えると安定過程や非整数安定過 程が得られる.このことを確認するために,まず非整数階積分について整理していく.以下に述べるような非 整数階積分やその自己相似過程との関係については

Mishura (2008)

Fallahgoul, Focardi and Fabozzi (2016)

杉本

(2016)

等に詳しい.

19

安定分布の確率密度関数は

libstableR

パッケージ(

ver. 1.0.2

)の

stable pdf

関数による.また,数値積分は

stats

パッケージ(

ver.

3.6.1)の integrate

関数による.

非整数階積分は反復積分に関するコーシーの公式の一般化として導入される.

R

上で定義された関数

f (t)

の 区間

[t 0 , t]

に対する定積分を

f t ( 1)

0 (t) =

Z t t 0

f (t 1 ) dt 1

と表すと,関数

f t ( 0 1) (t)

の区間

[t 0 , t]

に対する定積分

f t ( 0 2) (t)

は,

f t ( 0 2) (t) = Z t

t 0

f t ( 0 1) (t 2 ) dt 2 = Z t

t 0

Z t 2 t 0

f (t 1 ) dt 1 dt 2 = Z t

t 0

Z t t 1

f (t 1 ) dt 2 dt 1 = Z t

t 0

(t − t 1 ) f (t 1 ) dt 1

であり,同様に,関数

f t ( 2)

0 (t)

の区間

[t 0 , t]

に対する定積分

f t ( 3)

0 (t)

は,

f t ( 3)

0 (t) =

Z t t 0

f t ( 2)

0 (t 3 ) dt 3 = Z t

t 0

Z t 3 t 0

(t 3t 1 ) f (t 1 ) dt 1 dt 3 = Z t

t 0

Z t t 1

(t 3t 1 ) f (t 1 ) dt 3 dt 1 = 1 2

Z t t 0

(t − t 1 ) 2 f (t 1 ) dt 1

である.したがって,これを同じように

n

回繰り返して得られる

f (t)

n

階積分

f t ( 0 n) (t)

は,

f t ( 0 n) (t) = 1 (n − 1)!

Z t t 0

(t − s) n 1 f (s) ds

となる.これが反復積分に関するコーシーの公式である.ここで,積分範囲の下限を

t 0 = −∞

としたものを

f ( n) (t) = f −∞ ( n) (t)

と表せば,任意の区間

[a , b]

に対する

f (t)

n

階積分は,

f a ( n) (b) = f ( n) (b) − f ( n) (a)

と表すことができる.この

f ( n) (t)

に関して,階乗をガンマ関数で置き換えて

n

を自然数から実数に拡張した ものが非整数階積分である.つまり,関数

f (t)

α

階積分

f ( −α ) (t)

は,

f ( −α ) (t) = 1 Γ ( α )

Z t

−∞ (t − s) α− 1 f (s) ds (45)

である

20

.この非整数階積分は反復積分の一般化として満たされるべき性質,すなわち,

α

階積分の

β

階積分

α + β

階積分に等しいという性質を満たす.実際,

f ( −α ) ( −β )

(t) = 1

Γ ( β ) Z t

−∞

(t − s 2 ) β− 1 f ( −α ) (s 2 ) ds 2 = 1 Γ ( β )

Z t

−∞

(t − s 2 ) β− 1 1 Γ ( α )

Z s 2

−∞

(s 2s 1 ) α− 1 f (s 1 ) ds 1

! ds 2

= 1

Γ ( β ) Γ ( α ) Z t

−∞

Z t s 1

(t − s 2 ) β− 1 (s 2 − s 1 ) α− 1 f (s 1 ) ds 2 ds 1

= 1

Γ ( β ) Γ ( α ) Z t

−∞ (t − s 1 ) α+β− 1 f (s 1 ) Z 1

0

s α− 0 1 (1 − s 0 ) β− 1 ds 0 ds 1

= 1

Γ ( β ) Γ ( α ) Z t

−∞

(t − s 1 ) α+β− 1 f (s 1 ) B (α, β ) ds 1 = 1 Γ ( β ) Γ ( α )

Γ ( α ) Γ ( β ) Γ ( α + β )

Z t

−∞

(t − s 1 ) α+β− 1 f (s 1 ) ds 1

= 1

Γ ( α + β ) Z t

−∞ (t − s 1 ) α+β− 1 f (s 1 ) ds 1 = f ( −α−β ) (t)

である.なお,

4

つ目の等号は

s 0 = (s 2 − s 1 ) / (t − s 1 )

の変数変換による.また,

B (x , y)

はベータ関数であり,

B (x , y) = Z 1

0

t x 1 (1 − t) y 1 dt = Γ (x) Γ (y) Γ (x + y)

である.一方で,

α

階積分の微分は,

d

dt f ( −α ) (t) = f ( −α ) (1)

(t) = 1

Γ ( α ) d dt

Z t

−∞

(t − s) α− 1 f (s) ds = 1 Γ ( α )

Z t

−∞

d

dt (t − s) α− 1 f (s)

! ds

= 1 Γ ( α )

Z t

−∞

( α − 1) (t − s) α− 2 f (s)

ds = 1 Γ ( α − 1)

Z t

−∞

(t − s) α− 2 f (s) ds = f (1 −α ) (t)

20

(45)

の積分はとくに

Riemann-Liouville

積分とよばれる.非整数階積分という語は,積分の反復回数を実数に拡張した演算全般 を指す場合があるが,本稿では一貫して

Riemann-Liouville

積分を指すものとする.

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