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増ちょう剤構造の観察法

ドキュメント内 潤滑グリースの流動特性と軸受性能への影響 (ページ 136-139)

第 4 章 増ちょう剤繊維による三次元構造とグリースの流動特性 …

4.2 試験方法

4.2.2 増ちょう剤構造の観察法

増ちょう剤分子はグリース中で繊維状の結晶を形成し,この繊維が三次元的に構造を形 成していると考えられる.また,増ちょう剤繊維はグリース中で不均一に存在すると考え られる.

この増ちょう剤構造を観察するため,増ちょう剤のマクロな分散状態を光学顕微鏡およ びラマン分光分析で,ミクロな繊維構造をSEMおよびAFMで観察した.更に,増ちょう 剤構造をグリース状態で直接観察するため,共焦点レーザー蛍光顕微鏡(Confocal Laser Fluorescence Microscope, CLFM)およびCryo FIB-SEMでの観察を試みた.ここで,SEM観 察を除く各観察はグリース状態で実施し,SEM観察はグリースを脱脂した状態で行った.

4.2.2.1 光学顕微鏡による観察法

マクロな増ちょう剤構造を光学顕微鏡で観察した.増ちょう剤構造はせん断により変化 すると考えられるため,グリースを一定のせん断速度でせん断した面を作製した.観察面 の作製は,試験グリースを2枚のカバーガラスの間に厚さ1 mmではさみ,上方のカバーガ ラスを卓上塗工機により,せん断速度5 s-1で1回掃引することにより行った.カバーガラ スの掃引は100 gの分銅を載せた状態で行い,カバーガラスに付着したグリースを観察した.

光学顕微鏡観察は,落射照明を行ったときの表面観察を200倍で行った.

4.2.2.2 ラマン分光分析法

光学顕微鏡観察では増ちょう剤の同定が困難であるため,ラマン分光分析法でのマッピ ング測定により,マクロな増ちょう剤分布を評価した.分析条件は,レーザー波長455 nm,

レーザー出力2 mW,ビーム径 約0.6 mとした.

予備試験として増ちょう剤粉末,基油およびグリースの測定を行った結果,増ちょう剤 に特徴的なラマンピークが得られ,グリース状態で増ちょう剤の同定ができることを確認 した.グリース表面の増ちょう剤分布をマッピングし,同一観察場所の光学顕微鏡像と比 較を行った.

分析に用いたグリースサンプルの調製は,スライドガラスにグリースを塗布した後,表 面が平滑になるようにカバーガラスで1回伸ばした.この際,せん断速度の制御は行って いない.

4.2.2.3 SEMによる観察法

増ちょう剤繊維の形状および凝集状態を観察するため,SEM観察を行った.SEM観察用 の試料は,カバーガラスに塗布したグリースを,n-ヘキサンおよびアセトン中に静置するこ とにより基油を脱脂した後,白金蒸着して調製した.塗布に際して,せん断速度の制御は 行っていない.

脱脂の前にグリースを基油で薄めて,増ちょう剤繊維を意図的に分散させた試料(以下 分散法とする)と,基油で薄めず,意図的な分散を行わない試料58)(以下未分散法とする)

の2種類を2万倍で観察した.

4.2.2.4 AFMによる観察法

光学顕微鏡観察に用いたグリース試料と同様,せん断速度5 s-1で調製した観察試料を用 いて,AFMにより表面のミクロな増ちょう剤構造を観察した.

AFM測定は窒化ケイ素製カンチレバーを用い,ノンコンタクトモード,周波数1Hzおよ び室温で行い,位相像および形状像を,10m四方および1m四方のスケールで取得した.

AFM測定の概略図をFig.4-1に示す.

位相像は,加振波形と応答波形の位相差を画像化したものであり,主に観察部の粘弾性 を反映するが,局所的な表面の高低差の影響も受けていると考えられる.形状像は,表面 の傾斜等を含めた実測像であり,傾き補正は行っていない.

4.2.2.5 共焦点レーザー蛍光顕微鏡(CLFM)による観察法

増ちょう剤構造をグリース状態で観察するため,CLFMによるグリースの観察を試みた.

本手法では,レーザー光の焦点を試料中の狭い領域に合わせ,その部分の蛍光像を三次元 で取得することにより,蛍光物質の三次元像を得ることができる.

試料はE10OH29を用い,(株)ニコン製A1+&N-SIMを用いて観察した.予備試験より グリースから蛍光が得られなかったため,蛍光剤として,ローダミンBおよびクマリン6 をそれぞれ,0.1 ppmおよび1 ppm添加したグリースを観察した.入射光の波長は561 nm であり,ローダミンBでは590±25 nm,クマリン6では525±25 nmの蛍光を観察した.観 察像の分解能は,1 m程度である.

4.2.2.6 Cryo FIB-SEMによる観察法

増ちょう剤構造を高空間分解能で観察するため,グリースのCryo FIB-SEM観察を試みた.

観察には(株)日立ハイテクノロジーズ社製NB5000を用いた.グリースは室温状態では FIB加工が出来ない為,供試グリースを -120℃で冷却し,Cryo FIB加工を行った.FIB加 工条件をTable 4-3に示す.加工断面のSEM観察は加速電圧2 kV,観測倍率8000倍で行い,

反射電子像を取得した.Cryo FIB-SEMによる観察法のイメージをFig.4-2に示す.

グリース中の増ちょう剤をSEM観察するためには,増ちょう剤と基油を識別する必要が ある.予備調査として,E10OH29を凍結し,グリースのへき開面とFIB加工面をSEM観察 した結果,リチウムセッケンを増ちょう剤としたグリースでは,基油と増ちょう剤のコン

トラストが弱く,基油と増ちょう剤を判別できなかった.このため,増ちょう剤と基油の 強いコントラストを得るため,供試グリースには,増ちょう剤に原子番号の大きいバリウ ムが含む,バリウムコンプレックスセッケンを増ちょう剤としたグリース(Table 4-2)を用 いた.

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