4. パワーアシスト方式 15
6.4 実験結果
6.4.1 基礎実験 (クランク角と駆動トルクの同期を考慮しない場合) 34
まず,式(39)で与えられる踏力dにおいて d1 = 1.6, d0 = 2
とし,ω0 = 8.38,8.20[rad/sec]に対する実験をおこなった. このときの実測速度の 偏差を図25, 26に示す.
170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 0
1.0 1.2
0.8 0.6 0.4 0.2
-0.2 -0.4 -0.6 -0.8 -1.0 -1.2
time[sec]
velocitydeviation[km/h]
PPC MRC FIRRC
図 25 実測速度の偏差(ω0 = 8.38[rad/sec])
図 25, 26中で,修正繰返し制御法はノッチの中心部では脈動の除去を実現して
いるが,ノッチの中心から離れると著しく性能が低下している. それに対してFIR フィルタ型繰返し制御法ではどちらの周波数でも, ほぼ同等の性能を発揮してい
170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 0
1.0 1.2
0.8 0.6 0.4 0.2
-0.2 -0.4 -0.6 -0.8 -1.0 -1.2
time[sec]
velocitydeviation[km/h]
PPC MRC FIRRC
図 26 実測速度の偏差(ω0 = 8.20[rad/sec])
る. 次に, 従来方式とFIRフィルタ型繰返し制御の実験結果を評価する. まず, ω0 = 8.38[rad/sec]のとき,
EP P C = 1.08, EM RC = 1.02, EF IRRC = 1.01
となり,従来方式EP P Cに対する改善比はEM RCが5.93[%], EF IRRCが6.39[%]と なった. 同様に,ω0 = 8.20[rad/sec]のときは
EP P C = 1.08, EM RC = 1.07, EF IRRC = 1.03
となり,従来方式EP P Cに対する改善比はEM RCが1.73[%], EF IRRCが5.44[%]と なった. この結果より,数値シミュレーションと同様に, FIRフィルタ型繰返し制 御法によるパワーアシストの駆動トルクの周期の変化に対するロバスト性が確認 できた. 上記の実験は駆動トルクを一定周期で印加することのみを想定している ので, 自転車のクランクが回転する周期と駆動トルクの周期が同一でないことか ら,人間が自転車をこぐという現象とそぐわないということ,アシスト方式によっ て速度域が同一でないという問題がある.
6.4.2 入力駆動トルクとクランク角が同期した状態での実験
ここでは, 前述の問題を解決するためにペダリングロボットのモータ軸に取り 付けたロータリーエンコーダによって, 自転車のクランク角を計測し, クランク が一回転する周期と,駆動トルクの周期が同一になるように式(39)のd0を調整し た. 以下に, FIRフィルタ型繰返し制御によるパワーアシストと, 踏力比例制御に よるパワーアシストの実験結果を示す. 2手法の計測速度を図27に示す. また,踏 力比例制法のとき, ペダリングロボットが印加した駆動力の測定値とモータが印 加したアシスト力の指令値,各時刻のクランク角を図 28, 29に,同様に, FIRフィ ルタ型繰返し制御法による場合を図 30, 31に示す. なお, ω0 = 8.38[rad/sec]と し,クランクが半周(180[o ])する間に1周期の正弦波状の駆動力を印加している.
図30より, FIRフィルタ型繰返し制御ではペダリングによる駆動力が小さくなっ ているときにそれを補うアシスト力が印加されていることがわかる.
170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 time[sec]
7.0 8.0
7.5
6.5
6.0
5.5
velocity[km/h]
PPC FIRRC
図 27 計測速度
drive assist
force force
170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 0
10 20 30 40 50 60 70 80
force[N]
time[sec]
図 28 駆動力とアシスト力(踏力比例制御)
170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 time[sec]
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
pedal angle[° ]
図 29 クランク角(踏力比例制御)
170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 0
10 20 30 40 50 60 70 80
time[sec]
force[N]
drive assist
force force
図 30 駆動力とアシスト力(FIRフィルタ型繰返し制御)
170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 0
20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
time[sec]
pedal angle[° ]
図 31 クランク角(FIRフィルタ型繰返し制御)
ここで, 実験結果を前節と同様に評価すると, EP P C = 1.09, EF IRRC = 1.01
となり, 従来方式EP P Cに対する改善比は7.77[%]となった.
7. おわりに
本研究では, エネルギー効率の検証をおこなうためにペダリングロボットを作 成し, それを用いて先行研究の検証実験をおこなった.
先行研究では自転車のペダリングの周期性に着目し, 修正を施した繰返し制御 の電動アシスト自転車への適用と, 人間のペダリングに伴う周波数ゆらぎに対す るロバスト化のためにFIRフィルタ型繰返し制御の電動アシスト自転車への適用 を検討した. これらは,数値シミュレーション上では有効性が示されていたが, 実 機実験にあたっては人間がペダリングをおこなっていたので厳密な検証が困難で あった.
そこで, 本研究では新たにペダリングロボットを製作し, 正確な周期による実験 をおこなった. 繰返し制御を用いた手法では,目標とする周期に正確にペダリング をおこなえば駆動トルクの脈動を打ち消すようにアシストトルクが印加され, 速 度の脈動の除去に有効であるが, 目標とする周期から変化すると急激に性能が低 下することが確認できた. 一方, FIRフィルタを用いた手法では目標とする周期 から変化させても性能が維持されることが確認できた.
そして, 現在市販の電動アシスト自転車に用いられている踏力比例制御による パワーアシストに比べ, FIRフィルタ型繰返し制御によるパワーアシストではエ ネルギー効率が7.77[%]改善された.
8. 今後の課題
今後の課題として, 実用化を考えた場合の課題を述べる.
本研究ではFIRフィルタ型繰返し制御の周波数ゆらぎに対するロバスト性を検 証するために, 二点の周波数において検証をおこなった. 今後は, 人間の運動に みられる非定常ゆらぎの解析[28]に基づき, 連続的にペダリング周期が変化する 駆動トルクをモデル化し, より現実に沿った検証をおこなうことが望ましいと考 える.
次に, 先行研究並びに本研究は, トレーニング用装置を後輪に装着することで 路面抵抗を模擬している. この装置は後輪の回転軸部分で自転車を固定するので, 乗車している人間の重量は抵抗に反映されない. 今後, 実用化を考えた場合は乗 車する人間の重量による負荷も考慮する必要がある.
また,屋外での電動アシスト自転車の実走実験を考えると, まず, I/Oボードや 計算機といった電子機器の電源の確保が必要であると考えられる. さらに, 走行 に伴う振動による故障も考えられるのでそれらの対策も必要である.
謝辞
本研究を進めるにあたり, 多大なるご指導およびご助言を頂いた奈良先端科学 技術大学院大学情報科学研究科応用システム科学講座の杉本謙二教授に深く感謝 致します.
お忙しい中, 副指導教官になって頂き,適切なご助言を頂きましたロボティクス 講座の小笠原司教授に厚くお礼申し上げます.
本研究全般においてご指導をして頂き, 数々の的確なアドバイスを頂きました 平田健太郎准教授に心より感謝致します.
研究へのアドバイスのみならず, 日々の楽しみ方までご指導頂いた小木曽公尚 助教に感謝致します. また, 定例研究会などで他分野からの貴重なご意見を頂い た橘拓至助教に感謝致します.
本研究にあたり, 駆動ユニット部の貸与, 技術情報の提供など多岐にわたり多大 なるご協力いただきましたパナソニックサイクルテック株式会社様に深く感謝致 します.
研究や学内生活のサポートをして頂いた林英子秘書ならびに前秘書の橋本洋子 さんに感謝致します.
研究を進めるにあたり, 疑問点などに快く回答して下さった元博士研究員(現 東京農工大学助教)の中村幸紀さん,博士後期課程の野口慎さんに感謝致します.
共に研究生活を送ってきた卒業されました先輩方, M1のみなさん,そして同期 生のみなさんに感謝致します.
最後に, 大学院生活を支援してくれた家族に感謝します.
参考文献
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