第 3 章 教員養成におけるデジタルものづくり学習プログラムの開発
3.3 基本となる学習プログラムの提案
前節で述べた学習プログラムの目的・方針に基づき,基本となる学習プログラムを提案 する。基本となる学習プログラムの展開を表3.1に示す。提案する学習プログラムは,授業 の形式として講義と実習,演習を含む。
はじめに,受講生が技術教育との関連性について意識づけるように,技術科教員に必要 なリテラシーあるいは内容論として,デジタルものづくりに関する社会的背景から学校教 育での活用事例までを講義形式で解説した。社会的背景として,工場の自動化とともに発 展してきたCAD/CAM,NC 加工技術という歴史的な概要を述べてから,3次元CADにつ いて解説した。設計時に3次元CADを用いて作られる立体モデルがあることで,自動加工 や解析など設計以外の工程にデジタルものづくりの手法を導入することが可能になる。し たがって,3次元CADを用いた設計が,デジタルものづくりの要となる。3次元CADの 発達によって,製図の目標はコンピュータの中で製品をつくり上げることに変わった。こ れによって設計意図を伝えるという製図工程の役割がより充実し,設計分野以外の人が開 発の初期段階から関われる余地が生まれた。このことが,コンカレントエンジニアリング
(Concurrent Engineering,同時協調型開発)を実現し,設計段階の問題点を早期に明らか にし,結果的にQCD(Quality、Cost、Delivery)の改善を図ることもできる。また,3次元 CADの分かりやすさを支えている自由曲面や自由曲線の描画原理や,容易な設計変更を可
する基本的な知識・技能とその活用方法について学習させる。前述の基本方針に従って,
実習・演習課題は模倣的課題,改作的課題,創作的課題の順に設ける。なお,各実習・演 習課題の詳細については後述する。学習プログラムの終盤では,教材・教具の設計・製作 について発表させる。
さらに,デジタルものづくりに関する新たな問いを持たせ,学習意欲や活用意識が高ま るように,学校教育でのデジタルものづくりの活用がどのような影響をもたらすか議論す る時間を設けている。この演習の際に,受講者から出たアイディアやキーワードを板書す るなどして,議論が深まるように配慮する。
表 3.1 基本となる学習プログラムの展開
学習内容 形式 課題
1. デジタルものづくりの概要と近年の潮流 2. デジタルものづくりの学校教育での活用事例 3. 3次元CAD基本操作
4. 機構の設計・製作
5. 教材の考案・製作など学校教育での活用演習 6. 学校教育での活用に関する議論
講義 講義 実習 講義/
実習 演習 演習
車模型の制作(模倣的課題)
カム機構の設計・製作(改作的課題)
例:教材・教具の設計・製作(創作的課題)
本研究では,技術科教員養成における授業課題として,技術科の学習内容と関連を図り ながら検討し,実習・演習課題を提案した。実習・演習課題として,以下の車模型の制作,
カム機構の設計・製作,教材の設計・製作など学校教育での活用に関する課題を設定した。
また,それぞれの課題で用いる手順書およびテキストを作成した。手順書とテキストは,
巻末に付録として添付する。
制作課題の車模型の外観を図 3.1 に示す。車模型は,車体,車軸,車輪,バンパーの 4 種類の部品から構成されている。それぞれの部品の制作と組み立てを通して,基本的なモ デリングとアセンブリについて学習する。また,この課題は手順書に従って行う。
車体(1 個) 車軸(2 個) 車輪(4 個) バンパー(1 個)
(a) 部品 (b) 組立後
次に,カム機構の設計・製作課題について説明する。カムは任意形状を持った機械要素 であって,その直接接触によって相手側に任意の運動を与えようとするものである。カム の主な種類を,図3.2に示す。様々な形状の中から,ある出力を実現するための形状が選択 される。
(3)直動カム (4)逆カム (8)エンドカム (9)斜板カム (a) 平面カム (b) 立体カム
図 3.2 カムの主な種類89)
また,カムは,きわめて広範囲な機械に組み込まれており,重要かつ基本的な機械要素 である 90)。カム機構には種々の種類があるが,本研究では比較的容易に設計・製作が可能 な板カムを用いる。カム以外の部品は共通であり,受講生はカム部分を設計する。設計の 際,まず,図3.3に示すようなテキストに設けられた図を利用し,カム線図と輪郭形状をか き,カムの出力について構想,検討する。その後,図3.4に示す3次元CADのカムモデリ ング機能を用い,構想したカムのカム線図を基に基本円半径や変位量等を入力しモデリン グする。この時に,圧力角などの動作に関する条件を確認する。確認後,3次元CADでカ ムをモデリングし,他の部品とアセンブリする。次に,シミュレーションにより機構の動 きを確かめる。その後,制作した立体モデルを基に,投影図の作成と自動加工による加工 を行う。受講生は,カム機構の設計・製作を通して,立体モデルの活用と加工データ,自 動加工について学習する。後述する実践事例によって使用する機械が異なるため,具体的 なカム機構は実践事例ごとに異なる。このことから,設計・製作するカム機構の仕様等に ついては,実践事例ごとに説明する。
(1)板カム (2)確動カム (5)円筒カム (6)円すいカム (7)球面カム
(a)カム線図記入欄 (b)輪郭形状記入欄 図 3.3 テキスト内のカム構想ワークシートの一部
図 3.4 3次元CADにおけるのカムの諸条件入力画面
次に,教材の考案・製作など学校教育における活用に関する課題について説明する。こ
製作にあたる活動がよい。教材・教具の設計・製作を行う場合,3次元CADを用いた立体 モデルの制作,NC工作機械もしくは3Dプリンタを用いた加工をする。また,設計・製作 した教材・教具の活用方法を説明する学習指導案などの指導資料を作成する。受講生は,
教材・教具の設計・製作を通して,修得した知識・技能を深めるとともに,学校教育での 活用について考える。