第 3 章 教員養成におけるデジタルものづくり学習プログラムの開発
3.5 授業実践の結果と考察
3.5.1 卓上加工機械活用事例
3.5 授業実践の結果と考察
表 3.9 卓上加工機械活用事例のアンケート項目 No. 種
別 質問項目 回答方法
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
⑮ 授 業 内 容
コンピュータを使った設計・製作に興味はあるか
デジタルものづくりにおける3次元CADの役割が分かるか デジタルものづくりにおけるCAMなど加工準備の役割が分かるか デジタルものづくりにおける自動加工の役割が分かるか
図面や立体モデルなど設計情報の利用のされ方が分かるか
コンカレント・エンジニアリングとQCDの改善の関係が分かるか 自由曲線の描画原理が分かるか
パラメトリック設計とは何か分かるか
シミュレーションとQCDの改善の関係が分かるか 3次元CADを用いて製作品の構造を検討できるか 3次元CADを用いて図面を作成できるか
シミュレーションを用いて加工データの確認ができるか 加工のためのデータを作ることができるか
デジタルものづくりを教材開発に活用することができるか デジタルものづくりを授業に活用することができるか
5件法 5件法 5件法 5件法 5件法 5件法 5件法 5件法 5件法 5件法 5件法 5件法 5件法 5件法 5件法
⑯
⑰
⑱
⑲
⑳
㉑ 授 業 評 価
新しい知識,手法,技能などを修得できたか ※ 学習活動は楽しかったか ※
授業内容についてさらに学習したいか ※
授業内容は教科指導や教材開発に活かせるものだったか ※ 授業内容はわかりやすく整理されていたか ※
この授業の難易度は適切だったか ※
5件法 5件法 5件法 5件法 5件法 5件法
※事後のみ調査
アンケート調査結果を表 3.10 に示す。5 件法で求めた回答は,肯定的な回答から順に 5 点,4点,3点,2点,1点と得点化し,平均と標準偏差を求めた。また,事前と事後で同 一の項目である授業内容に関する項目に対して,t検定(両側検定)を行い,事後調査の値 と事前調査の値の差を調べた。
①のコンピュータを使った設計・製作への興味は,事前調査時に高い値を示している。
このことから受講生は,デジタルものづくりについて興味が高い状態であったことがわか る。また,事後調査の結果より,実践後においても興味の高さが維持されていることが示 された。②~④のデジタルものづくりの役割については,事前調査と事後調査の結果を比 較すると,事後調査時に高い値へ収束していることがわかる。また,加工準備に関しては,
事前調査の結果と比較して有意に上昇した。⑤~⑨のデジタルものづくりの効果や原理に ついては,事前調査時に⑤の設計情報の利用のされ方に関して高い値を示している。これ は,受講生の過半数が3次元CADなどを利用したことがあるためと推察される。事後調査 では,⑤を除く,⑥~⑨の全ての項目で事前調査の結果と比較して有意に上昇した。この ことから,事前調査では低い値だったデジタルものづくりの効果や原理についても理解が 深まったと考えられる。また,⑤は事後調査でも高い値を示し,偏差も小さくなっている。
⑩~⑬のデジタルものづくりの技能に関しては,事前調査時に⑩,⑪の3次元CADに関
たりすることについて技能の向上があったと考えられる。
⑭,⑮の学校教育での活用については,いずれの項目も事後調査で高い値に収束してい る。特に,教材開発に関する項目で,有意に上昇している。受講生は,創作的課題として,
教材・教具の考案・作成および,その活用方法を説明する指導資料を作成している。この 課題によって教材開発の具体的なイメージを持つことができ,学校教育での活用に自信が ついたと考えられる。
授業評価の結果では,いずれの項目も平均値 3.9以上の高い値を示した。特に,「新しい 知識,技能などの修得」,「楽しさ」,「学習意欲」の項目では,平均値5.0と顕著に高い値を 示している。このことより,新しい知識,技能を修得した後,学習を継続させるために重 要な要素についても本実践を通して十分に喚起させることができたと推察される。また,
「授業内容」と「難易度」に関する自由記述では,「製作の流れに沿った内容であり分かり やすかった」,「中学校技術の授業を想定した授業だったので,難しいけれど必要な物だと 感じた」など,前述の本プログラムの基本方針に従って配慮した点の効果が示された。一 方で,「まだまだ使い勝手の面では,直接的に教育の現場に活かすのは難しい」という意見 がみられた。このことから,教育利用に適した加工機械やソフトウェアの開発や具体的な 活用事例の必要性があると考えられる
表 3.10 卓上加工機械活用事例の事前・事後調査の結果
№ 事前(n=8) 事後(n=7) t検定
平均 S.D. 平均 S.D. (両側検定)
① 4.9 0.3 4.9 0.3 ns
② 3.1 1.5 4.3 0.5 ns
③ 1.9 1.3 3.9 0.6 **
④ 3.5 1.1 4.0 0.9 ns
⑤ 3.1 1.5 4.0 0.8 ns
⑥ 1.8 0.8 3.0 0.8 *
⑦ 1.8 1.1 3.0 0.9 *
⑧ 1.6 0.7 2.9 1.0 *
⑨ 1.5 0.7 3.3 0.9 **
⑩ 2.8 1.6 3.9 1.1 ns
⑪ 3.1 1.8 4.0 1.1 ns
⑫ 1.5 1.0 4.0 0.5 **
⑬ 1.5 1.0 4.3 0.5 **
⑭ 1.7 1.2 4.6 0.5 **
⑮ 3.1 1.7 3.7 1.0 ns
⑯ - - 5.0 0.0 -
⑰ - - 5.0 0.0 -
⑱ - - 5.0 0.0 -
⑲ - - 3.9 1.0 -
⑳ - - 4.6 0.5 -
㉑ - - 4.3 0.7 -
(2)受講生の製作品
受講生の製作品から,知識・技能の活用に関して考察する。次に,演習課題について述 べる。受講生全員が,板カムを設計・製作することができた。受講生が設計・製作したカ ム機構の一例を図3.15に示す。受講生の作品から,デジタルものづくりの設計から製作ま での基本的な知識・技能を修得できたことが分かった。また,演習課題ではデジタルもの づくりの手法を活用した教材・教具のアイディアを考えた。その後,1人1つの3次元CAD データの制作および,3次元CADデータを基にした卓上NC工作機械や卓上3Dプリンタ による製作を行なった。受講生の作品例を図3.16に示す。この作品は,遊星歯車模型であ り,演示教材として製作されたものである。さらに,それぞれの製作品の学校教育におけ る活用法を示した指導資料を作成することができた。これにより,受講生は,教材・教具 の考案・作成にデジタルものづくりを活用できることが分かった。また,2015 年 10 月~
2016年2月に同様の実践を行った。その際の受講生の作品例を図3.17に示す。この作品は,
動力伝達機構のシミュレーションを活用した動画教材である。このようにシミュレーショ ンを活用することで,複数の機構の動画教材を作ることに活用できることが分かった。ま た,これらの動画教材における機構の条件は,3次元CAD上で用意に編集が可能である。
(a)NC 工作機械で加工したカム (b)カム機構(実物)
図 3.15 受講生が設計・製作したカム機構の一例
図 3.17 演習課題における作品例(動力伝達機構の動画)