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基底状態の核子密度分布

ドキュメント内 α (ページ 47-51)

議論

4.2 Single Folding Model

4.2.1 基底状態の核子密度分布

光学ポテンシャル、遷移ポテンシャル、α–N 有効相互作用の計算には基底状態の核子密度分布 ρ0(r0)を用いるが、実験によってこれを直接的に決定することはできない。そこで、電子の弾性散乱 実験から決定された電荷分布ρc0(r0)を核子密度分布と関連づけることでこれを決定する[13]

36 4章 議論 電荷分布ρc0(r0)は本来陽子の電荷分布ρc(p)0 (r0)と中性子の電荷分布ρc(n)0 (r0) の和で与えられるが、

ρc(n)0 (r0)は無視できるほど小さいとみなし、以後ρc0(r0)c(p)0 (r0) とする。

ρc0(r0)をガウス型の関数で展開すると、

ρc0(r0) =∑

i

Ai

{ exp

[

(r0−Ri

γ

)2] + exp

[

(r0+Ri

γ

)2]}

(4.11) と書き表せる。γはガウス関数の幅であり、ガウス関数の平均二乗半径RR=γ

3/2という関係 にある。展開係数Aiは、

Ai= ZeQi

3/2γ3 (

1 + 2Rγ2i2

) (4.12)

で与えられる。Qii番目のガウス関数に含まれる電荷の割合を表し、

i

Qi= 1 (4.13)

によって規格化されている。なおρc0(r0)は規格化条件

ρc0(r0)r02dr0=Ze (4.14) を満たすように決定されている。

電荷分布から陽子密度分布(proton density distribution)に変換する。電荷分布の形状因子Fc(q) はρc0(r0)をフーリエ変換することによって得られる。すなわち、

Fc(q) = 4π

ρc0(r0)sin(qr0)

qr0 r02dr0 (4.15)

という関係式が成り立つ。密度分布の形状因子Fp(q)F˜p(q)を用いて

Fp(q) = (Gp(q))1Fc(q) (4.16) という関係がある。ここでqの関数(Gp(q))1Sachsの電磁形状因子と呼ぶ。Gp(q)は寺嶋氏に よって与えられており[14]

Gp(q) = 10.24τ

1 + 10.98τ + 12.82τ2+ 21.97τ3, τ = q2 4mp

(4.17) で与えられる。mpは陽子質量である。これを用いて、陽子密度分布ρp0(r0)は、形状因子をフーリエ 変換した式

ρp0(r0) = 1 2π2

(Gp(q))1F˜p(q)sin(r0q)

r0q q2dq (4.18)

のように書くことができる。

核子密度分布を決定するためには中性子密度分布ρn0(r0) も求める必要があるが、これを直接的に求 めるのは難しい。そこで、N =Z の核においては陽子と中性子の荷電対称性が良く成り立つことに基 づいて、陽子密度分布と中性子密度分布が同じであると仮定する:

ρ0(r0) =ρp0(r0) +ρn0(r0) p0(r0) +N

p0(r0)

= A

p0(r0). (4.19)

4.2 Single Folding Model 37

58NiではN 6=Z であるが、理論計算によれば、陽子と中性子の平均二乗半径の差がほぼ0である。

このことから、58Niでは28個の陽子と30個の中性子が同じ形の密度分布を形成していると考えられ る[14]。従って、58Niにおいても式(4.19)が成り立つとする。

式(4.11)におけるパラメータRRiQiの値は[13]の表4を参照した。これらの値は付録Cの表 C.1C.2に掲載する。

計算した基底状態の核子密度分布ρ0(r0)を図4.2に示す。なお、ρ0(r0)は規格化条件

ρ0(r0)r02dr0=A (4.20)

をみたすように決定されている。

4.2.2 巨視的な標準モデルによる遷移密度の計算

遷移密度は、基底状態の核子密度分布を微分したものとして与える、巨視的な標準モデル(standard macroscopic model)によって計算することができる[15]

λ= 0のとき、ρ(0)J

f,Ji(r0)は、

ρ(0)J

f,Ji(r0) =−δ0

(

3 +r0 d dr0

)

ρ0(r0) (4.21)

と書かれる。δ0は変形長と呼ばれ、

δ02

= 2π~2

AmExhr02i (4.22)

で与えられる。AmExhr2iはそれぞれ標的核の質量数、質量、励起エネルギー、基底状態の核 子密度の平均二乗半径である。

λ= 1のとき、ρ(1)Jf,Ji(r0)は、HarakehおよびDieperinkによって導かれた式 ρ(1)Jf,Ji(r0) = β1

3R [

3r02 d

dr0 + 10r05

3hr02i d dr0 +

( r0 d2

dr02 + 4 d dr0

)]

ρ0(r0) (4.23) で与えられる[16]β1は変形度と呼ばれ、

β12

= 6π~2 AmEx

R2

11hr04i −(25/4)hr02i210hr02i (4.24) と表される。E0E1から決定される値であり、

= ( 4

E2

+ 5 E0

) ~2

3mA (4.25)

と表される。E0E2はそれぞれアイソスカラー巨大単極共鳴(Isoscalor Giant Monopole Resonance:

ISGMR)、アイソスカラー巨大四重極共鳴(Isoscalor Giant Quadrupole Resonance: ISGQR)と 呼ばれるEx = 10–30 MeVに現れる集団励起状態の平均エネルギーであり、E0= 80A1/3 MeV E2= 65A1/3 MeVで与えられる[17]

λ≥2のとき、ρ(λ)Jf,Ji(r0)は、BohrおよびMottelsonによって導かれた式 ρ(λ)Jf,Ji(r0) =−δλ

d

dr0ρ0(r0), (4.26)

38 4章 議論

0 0.1 0.2

0 5

ρ 0 (fm-3 )

r’ (fm) 12

C

0 0.1 0.2

0 5

ρ 0 (fm-3 )

r’ (fm) 16

O

0 0.1 0.2

0 5

ρ 0 (fm-3 )

r’ (fm)

24

Mg

0 0.1 0.2

0 5

ρ 0 (fm-3 )

r’ (fm) 28

Si

0 0.1 0.2

0 5

ρ 0 (fm-3 )

r’ (fm) 40

Ca

0 0.1 0.2

0 5

ρ 0 (fm-3 )

r’ (fm) 58

Ni

4.2 基底状態の核子密度分布

4.2 Single Folding Model 39 によって与えられる。このとき、変形長δλは、

δλ2

= λ(2λ+ 1)2 (λ+ 2)2

2π~2 AmEx

hr02i

hr0λ1i2 (4.27)

と書かれる。

ある遷移モード∆Jπ の遷移強度の総和は、基底状態の波動関数のみによって決められており、こ の法則は和則(Sum Rule)と呼ばれる。式(4.22)(4.24)(4.27)で与えた変形長δλおよび変形度 β1は、あるひとつの遷移の遷移強度が全ての∆Jπ遷移の遷移強度を持つと仮定した場合の値である。

従って、式(4.21)(4.23)(4.26)によって計算された遷移密度δρλ(r0)は、電子散乱によって決定さ れた遷移強度の実験値を再現するように再規格化する必要がある。

遷移密度の計算を行う方法として、巨視的な標準モデルに対して、船木氏のTHSR (Tohsaki-Horiuchi-Schuck-R¨opke) 波動関数を用いた微視的計算や[18][19]、上村氏の微視的3α RGM (res-onating group method)計算なども存在する[7]。これに関する説明および比較を節4.5.2で行う。

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