• 検索結果がありません。

in vitro (培養細胞) における発光活性評価

本項の計算結果を踏まえ、前項で生物発光波長と化学発光波長が大きく異なっており、生物 発光で長波長化したことを考察する。

垣内らの報告 38によると、ジメチルアミノオキシルシフェリンは、非極性条件では短波長 化し、極性条件では長波長化する。ホタル生物発光反応における発光波長は、発光体である オキシ体の励起状態の置かれている極性環境に依存する38。つまり、AkaLumine アナログ

25–27 の生物発光波長と化学発光波長の差は、オキシ49–52 の励起状態が置かれている極

性環境の差であるといえる。生物発光は緩衝液(KPB) 中で、化学発光は DMF 中でそれぞ れ測定しているので、これら測定溶媒の極性の違いが発光波長に影響している。ここにさら に、生物発光の場合、酵素活性部位の極性環境も寄与している。よって、生物発光波長は酵 素内の極性環境が重要な要素であり、この極性も考慮した基質デザインを行うことで、発光 波長をより正確に制御できる可能性もある。

Figure 3-9. 細胞の発光特性評価 LLC/luc 細胞に表記濃度の基質1, 8, 25, 26 を添加し、

そのときの発光強度を測定した。n=3, *P<0.05. 誤差棒は標準誤差を示している。

1 は濃度に比例して発光強度が増大していき、8 の発光強度は濃度に依存せず低濃度(0.25

M) で飽和していた。

26 を投与した細胞の発光強度は、8 を投与したときの細胞の発光強度と同じような発光強 度を示した。低濃度条件下では26 は濃度依存的に発光強度が増大した。このときの発光強 度は1 よりも強かった。

25 8 と同様に、発光強度は濃度依存的に増大せずに、低濃度条件下ですでに発光強度は 飽和していた。

動物のイメージングでは基質を大量に何度も投与する必要があり、25 26 のように低濃 度で十分な発光活性が得られることは、動物への健康を考慮すると非常に有用な性質であ る。

続いて、各基質の細胞毒性を、様々な濃度の基質を添加した時の培養細胞の生存率から評価 することにした。

Figure 3-10-A に示すように、まずLLC の培養細胞にウミホタルルシフェラーゼ(RLuc 8.6)

を恒常的に発現するLLC/Rluc 細胞に各基質1, 8, 25, 26 を2.5–1000 M の濃度で添加し、

さらに24 時間培養した。その後、各細胞を破砕・回収し、ここにRluc の発光基質である

セレンテラジン(3) を添加し、発光量を測定した。Rluc の発光量は生細胞数に比例するた め、この発光量を比較することで培養細胞の生存率を評価した。

Yehらが以前に報告39していたように、8 は高濃度(> 500M) 条件下では細胞の生存数が 減少したことから細胞に毒性が確認された。25 8 と同じように高濃度条件下で毒性が 観察された。一方、26 は高濃度条件下においても、細胞の生存数には影響がなく、毒性が 確認されなかった (Figure 3-10-B)。

これらの結果は、各基質の疎水性及び親水性が関与していると想定される。疎水性化合物は 細胞膜を透過しやすく、親水性化合物は細胞膜を透過しにくい。つまり、8 25 が細胞膜 の透過性が高く、細胞内に過剰に取り込まれたことで細胞生存率の低下を招いたと考えら れる。

この細胞毒性評価実験の結果から、25 よりも26 の方が細胞への毒性がなく、イメージン グ材料として大きなメリットであるため、動物実験で26 の更なる評価を実施した。

Figure 3-10. 培養細胞の生存率を用いた各基質の細胞毒性の評価 (A) 細胞毒性の評価の 実験方法の概略図。1) 各発光基質1, 8, 25, 26 の添加、2) 24 時間培養、3) セレンテラジ ンの添加による生細胞からの発光活性測定。(B) それぞれの異なる濃度で基質を投与したと

きのLLC/luc 細胞の生存数を評価した。n=3, *P<0.05. 誤差棒は標準誤差を示している。