第2章 各科目
第5節 地理A
5 (1) 科目の性格
「地理A」は,地理歴史科の中に設けられた標準単位数2単位の科目であり,その目標は 「現, 代世界の地理的な諸課題を地域性や歴史的背景,日常生活との関連を踏まえて考察し,現代世界の 地理的認識を養うとともに,地理的な見方や考え方を培い,国際社会に主体的に生きる日本国民と しての自覚と資質を養う」と示されている。この目標を達成するために,内容は 「(1) 現代世界,
10 の特色と諸課題の地理的考察 「(2) 生活圏の諸課題の地理的考察」の二つの大項目で構成されて」, おり,これらの大項目は共に三つの中項目から成り立っている。
「地理A」は,グローバル化の進展,国際情勢や地球環境の変化などに伴う現代世界が抱える諸 課題と,生活圏などの地域にみられる諸課題を地理的に考察する科目である。そのために,この科
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目は 作業的 体験的な学習をより一層重視して 様々な諸課題を日常生活と関連付けて取り扱い
15 地理的技能を身に付けさせるとともに,地理学習の有用性に気付かせ,生徒の学習意欲を高めるこ とに配慮した内容や方法を工夫している。現代世界や生活圏の諸課題について,主に主題的な方法 を基にして学習できるようにしているのも,そうした点を踏まえたものである。
(2) 目 標
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現代世界の地理的な諸課題を地域性や歴史的背景,日常生活との関連を踏まえて考察し,現 代世界の地理的認識を養うとともに,地理的な見方や考え方を培い,国際社会に主体的に生き る日本国民としての自覚と資質を養う。
25 「地理A」の目標は,現代世界の諸課題を地理的に考察することに重点を置いて,現代世界の地 理的認識を深めさせるとともに地理的な見方や考え方などを身に付けさせるというこの科目の基本 的なねらいと,この学習を通して育成しようとする能力や態度にかかわるねらいを示している。ま た,それは,中学校社会科の目標との関連付けを図ること,高等学校における地理教育の専門性を 重視することなどの点を考慮し,最終的には地理歴史科の目標の達成を目指して設定したものであ
30 る。
目標は,次の各部分から構成されている。
第1の部分は 「現代世界の地理的な諸課題を地域性や歴史的背景,日常生活との関連を踏まえ, て考察し」までであり,ここでは「地理A」の学習対象と基本的な考察方法を示している 「現代。
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世界 とは 高等学校の地理の学習が現代の日本を含む世界を対象にしていることを意味している
35 すなわち,中学校社会科地理的分野では広い視野に立って我が国の国土及び世界の諸地域を対象と して,我が国の国土及び世界の諸地域に関する地理的認識を養うことを目指しているが,高等学校 の「地理A」では現代世界の地理的事象を主な対象として現代世界の地理的認識の育成を目指すこ とを示している 「地理的な諸課題」とは,現代世界が取り組んでいる諸課題のうち,地域性を踏。 まえて考察することによって問題の所在や解決の見通しなどが,より明確になる課題のことを意味
40 している。
「地域性や歴史的背景,…を踏まえて考察し」とは,現代世界に生起している諸事象を地理的事 象として認識し,地域という枠組みの中でとらえるとともに,地域の歴史的背景を考慮し,空間軸 と時間軸の両面から現代世界の地理的認識を深めることを示している。また 「日常生活との関連, を踏まえて考察し」とは,今回の改訂において「地理A」では身の回りにある地図を取り上げた学
45 習や防災に関する学習,生活圏の地域調査など日常生活との関連を重視した内容も取り入れられて いることから,その意味を明らかにしたものである。なお 「地理A」では,系統地理的又は地誌, 的な方法による内容構成をとっておらず,主に主題的な方法を基にして学習できるような内容構成
となっている。このため,特に地域という枠組みの中で,地域を単位にして地理的にとらえること を踏まえて学習内容を構成する必要があり,地域の概念や地域的まとまりから諸事象を考察する方 向性を明確に示すよう配慮した。
第2の部分は 「現代世界の地理的認識を養うとともに」までであり,ここでは「地理A」で育,
5 成を目指している能力のうち,内容的な面にかかわるものを示している。ここでいう「現代世界の 地理的認識」とは,主に現代世界が抱えている諸課題を地理的に考察する学習を通して深める世界 認識を意味している。現代世界の諸課題の中には,地域を越えて世界の諸地域に出現しているが,
その現れ方は各地域によって異なっているという課題が多くみられ,深刻の度合いを深めているも のも少なくない。そのため,それらの課題の解決に当たっては,地域性を踏まえて取り組むととも
10 に,国を越えての国際協力がますます必要となっている。また,そうした地域性を踏まえた取組や 国際協力によってその解決に取り組むことで,持続可能な社会の構築を目指すことが強く求められ ている。
第3の部分は 「地理的な見方や考え方を培い」までであり,ここでは「地理A」で育成を目指, している能力のうち,方法的な面にかかわるものを示している 「地理的な見方」と「地理的な考。
15 え方」は相互に関係があり,本来は地理的な見方や考え方として一体的にとらえるものである。し かし,あえて学習の過程を考慮して整理すれば 「地理的な見方」とは,日本や世界にみられる諸, 事象を位置や空間的な広がりとのかかわりで地理的事象として見いだすことであり 「地理的な考, え方」とは,それらの事象を地域という枠組みの中で考察することであるということができる。
このことについては,より構造的にとらえると,おおむね次の①から⑤のように整理することが
20 できる。すなわち,①が「地理的な見方」の基本,②が「地理的な考え方」の基本,③から⑤はそ の「地理的な考え方」を構成する主要な柱であるといえる。
① どこに,どのようなものが,どのように広がっているのか,諸事象を位置や空間的な広がりと のかかわりでとらえ,地理的事象として見いだすこと。また,そうした地理的事象にはどのよう な空間的な規則性や傾向性がみられるのか,地理的事象を距離や空間的な配置に留意してとらえ
25 ること。
② そうした地理的事象がなぜそこでそのようにみられるのか,また,なぜそのように分布したり 移り変わったりするのか,地理的事象やその空間的な配置,秩序などを成り立たせている背景や 要因を,地域という枠組みの中で,地域の環境条件や他地域との結び付きなどと人間の営みとの かかわりに着目して追究し,とらえること。
30 ③ そうした地理的事象は,そこでしかみられないのか,他の地域にもみられるのか,諸地域を比 較し関連付けて,地域性を一般的共通性と地方的特殊性の視点から追究し,とらえること。
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④ そうした地理的事象がみられるところは どのようなより大きな地域に属し含まれているのか 逆にどのようなより小さな地域から構成されているのか,大小様々な地域が部分と全体とを構成 する関係で重層的になっていることを踏まえて地域性をとらえ,考えること。
35 ⑤ そのような地理的事象はその地域でいつごろからみられたのか,これから先もみられるのか,
地域の変容をとらえ,地域の課題や将来像について考えること。
中学校社会科地理的分野の目標の(1)には「地理的な見方や考え方の基礎を培い」と示されてい るが 「地理A」の目標には「地理的な見方や考え方を培い」と示されており 「基礎」が削除され, , ている。したがって 「地理A」においては生徒の発達の段階を考慮して,中学校で培われてきた,
40 「地理的な見方や考え方の基礎」を踏まえて,さらにその習熟の程度を高めるよう工夫することが 大切である。
第4の部分は 「国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質を養う」という最後の, 部分である。ここでは 「地理A」の最終的なねらいを示している。すなわち 「地理A」では,現, , 代世界の地理的認識を深めるとともに地理的な見方や考え方を培う学習を通して,最終的には国際
45 社会に主体的に対応して生きるとともに,平和で民主的な国家・社会を形成する日本国民としての 自覚と資質を養うことを目指している。