第 II 部
4.2 地形データを用いた電波エミュレーション
図 4.5: 実験機による電界強度測定結果(平地)
信機のアンテナ地上高100cmおよび15cmのともに100mの計測地点で受信強度の上昇が 見られているが、送信機から100mの計測地点付近に10cmほどの雪面の隆起があった為 だと考えられる。受信機のアンテナ地上高1mの時のRSSIはQOMBによる理論値とほぼ 同じであることから、今回作成したプロトタイプのアンテナ利得とケーブルなどの雑損値 の合計はほぼ0dBであることがわる。
また、森林での実験結果と、平地での実験結果比較を図4.6に示す。森林での実験は、場 所の都合から距離100mまでの実験を行った。受信アンテナの地上高が15cmの場合、森林 では平地の場合より、伝播減衰が大きく、70mで既に20%程度のPacket Lossが発生して いる。また、70m以降ではPacket Loss率に大きな揺れが発生しているが、これは80mの 計測ポイントの近くに樹木があった為、局所的にフレネルゾーンの遮蔽率が大きくなった 為と推測される。
図 4.6: 平地と森林での電界強度の比較
なりやすくなり、その結果、伝播減衰が単純な距離による減衰より大きくなる。
より詳細な電波の伝播シミュレーション手法として、SRTM-3 [24]とLongley-Rice Model [25]
を用いた電波伝播シミュレーションも行われている [26]。しかし、SRTMはアメリカ国内 で解像度10mその他地域で30mである。IEEE 802.15.4の様な近距離通信の伝播距離は
100m〜200mであり、地形情報としての解像度が不足している。これに対し、2007年より
国土地理院が作成、公開している基盤地図情報では全国5mメッシュの標高データ(一部地 域は10m)の地形データが公開されている。既知の電波伝播モデルと国土地理院が公開し ている基盤地図情報を組み合わせてシミュレーションすることで近距離通信技術にも対応 可能なより詳細な電波伝播シミュレーションが行えると期待できる。
4.2.1 電波伝播モデル
電波の送受信の端点間での電波の伝播モデルおよび、障害物の影響は多くの研究と実値 計測により明らかになっている。フレネルゾーンは、図 4.7のような、電波の電波路とし て一般的に用いられるモデルで、d1,d2の和が電波の送受信の端点A,B間の最短の距離よ りも半波長のn−1倍以上でかつn倍以内の範囲を第nフレネルゾーンと呼び、半波長だ
d1 d2 Rn
A B
図 4.7: フレネルゾーン
α1 α2
θ
d1 d2
h
M
A B
図 4.8: ナイフエッジ回折
け長いn = 1い楕円(3次元実空間上では回転楕円体)の内側の範囲を第1フレネルゾーン
と呼ぶ。伝播路の途中にある遮蔽物が、その第1フレネル・ゾーンを遮蔽する程度で、遮 蔽による伝播損失がほぼ決定する。
また、電波の送受信の端点A、Bの間に起伏などの遮蔽物が入った場合の伝播モデルは 図 4.8のナイフエッジ回折モデルとなる。
電波の送受信の端点間に複数の遮蔽物があった場合は、厳密には図 4.9のような複雑な ナイフエッジ積分を含むが、一般的には図 4.10のように複数の遮蔽物をまとめた形で、単 純なナイフエッジモデルとして計算する事が出来る。
QOMBが利用する市街地や山林地域での電波の伝播モデルに、これら地面による遮蔽の
h1 h2 M1
a b c
M2
A B
図 4.9: 二重ナイフエッジ回折
h
A α1 α2 B
M θ
d1 d2
図 4.10: 仮想単一遮蔽ナイフエッジ回折
影響を計算モデルとして導入し、エミュレーション対象地域の地形データを利用すること で、より詳細なワイヤレスネットワークエミュレーションが行える。