1.地場・産地産業の衰退
バブルの後遺症は想像以上に大きく、しかも長引いている。それもバブルの崩壊ではなく、バブ ル自体の悪影響である。
「1985~92年にモノづくりの現場は自失していた。以降、地域産業は衰退した。とくに基 礎技術部門(鍛造、鋳造、メッキなど)の脆弱化が進行した」147。地場産業全体のデータは見出 せないので、以下、主に産地のデータを検討することにしよう。
産地の多くは衰退した(図4-1)。例えば、大川家具産地や有田焼産地などの生産額の低下は 著しい。
出典:中小企業庁 『平成14年度産地概況調査結果表』、全国中小企業団体中央会『全国の産地-平成 17年度産地概況調査結果-』平成18年3月により補足。
『2005年度産地概況調査集計結果表』によれば、産地数は
486、
企業数は41,656、従業者数
は年間総生産額67,872
億円、 輸出額2,661
億円(輸出比率3.9%)であった。中小製造業全体に
占める割合はそれぞれ15.6%、6.5%、4.7%、3.0%である
148。『2015年度産地概況調査集計結果表』によれば、産地数
252、企業数 12,938、従業者数
123,953
人、年間総生産額15,750
億円、輸出額1,600
億円(輸出比率10.2%)である。輸出比率
147 関満博『地域産業に学べ!』日本評論社、2008、4-7頁。
148 出典:『全国の産地』 2005年版、76頁。原資料は「平成17年度産地概況調査」、経済産業省
「工業統計表」平成16年、財務省「貿易統計」。但し、各項目の産地数は異なる(企業数480、従業者数
413、年間生産額406、輸出額406)。
0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000
0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000
1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 億 人
円
図4-1 全国産地の従業員、生産額、輸出額の推移
生産額(全体)
輸出額 従業員数
128
を除き大幅に減った。中小製造業全体に占める割合はそれぞれ、6.2%、1.7%、0.5%、1.8%であ る149。
2015年頃には域内分業体制の維持が更に難しくなっている。5年前と比較すると、「産地内 での分業が一部困難となり、製造に支障が出ている」産地が34.8%となっている。 次いで「産 地内の分業は変化せず残っている」が25.2% であり、「産地外を含めた分業 体制の見直しや合 理化により支障はない」は5.2%にとどまる。「もともと分業体制はない」とする産地も34.
8%あるが、この5年間に分業が困難になり製造に支障が出ている産地が多い150。 表4-
1
産地内に立地する企業間の分業体制回答数
3年前と現在の比較
分業体制に
支障 変化なし 分業体制 は向上
そもそも 分業体制 はない
無回答
合 計 513 98 265 23 127 23
100 19.1 51.7 4.5 24.8
業
種
別
食 料 品 81 8 35 3 35 7
% 100 9.9 43.2 3.7 43.2
繊維 ・ 衣服合計 146 46 69 6 25 6
% 100 31.5 47.3 4.1 17.1
うち繊維 115 39 56 4 16 4
% 100 33.9 48.7 3.5 13.9
衣服・他の繊維製品 31 7 13 2 9 2
% 100 22.6 41.9 6.5 29
木 工 ・ 家 具 77 10 49 3 15 4
% 100 13 63.6 3.9 19.5
窯 業 ・ 土 石 57 12 23 3 19 3
% 100 21.1 40.4 5.3 33.3
機 械 ・ 金 属 57 7 32 3 15 0
% 100 12.3 56.1 5.3 26.3
雑 貨 ・ その他 95 15 57 5 18 3
% 100 15.8 60 5.3 18.9
出典:『平成14年度産地概況調査結果表』32表
地場産業関連地域の特徴である、多数の中小企業間の地域内分業体制は依然として健在ではあ るが、幾分綻びを見せている所もある。特に繊維・アパレル関連がそうである。ただ、その主な 原因は倒産・廃業や事業縮小であるから、分業体制そのものの問題というよりは地場産業全体の 停滞の問題であろう。アウトソーシングを活用している企業は
2
割に留まる。149 出典:『全国の産地』 2015年版、82頁。現資料と注は05年版と類似の内容である。
150 日本総合研究所『全国の産地-平成27年度産地概況調査結果-』平成28年3月、12-3、82 頁。
129
表4-2 アウトソーシングを活用している企業の有無
出典:『平成14年度産地概況調査結果表』31表
2015年、産地外企業との連携については、「まだ少ない」とする産地が52.8%と最も多い が、「近年、増えている」とする産地は16.9%に留まる。「以前から多い」とする産地は5.6%
にすぎない。また「連携を行っている企業はない」とする産地も24.7%ある。産地外企業との 連携は、まだ広がっていない151。
他産地との連携内容では「他産地との連携を行っていない」とする産地が49.8%と多いが、
「国内の販路開拓を連携して行っている」も39.3%にのぼる。「海外への販路開拓を連携して行 っている産地」は7.6%にとどまる。連携は
3
大都市圏では多い。幾分増加している傾向はある152。共同販売(共同受注)については、「産地内企業の一部が共同販売(共同受注)を行ってい る」産地が25.9%である。多くの産地では「共同販売(共同受注)は行われていない」(68.
5%)153。
こうして、一部産地産業を除き、全体としては急激に衰退していった。
151 『全国の産地-平成27年度産地概況調査結果-』15、96頁。
152 同上16、97頁。
153 同上38、118頁。
回答数 ある ない 無回答 合計
合 計 524 105 419 12 536
100 20 80
業 種 別
食 料 品 86 11 75 2 88
% 100 12.8 87.2
繊維 ・ 衣服合計 151 40 111 1 152
% 100 26.5 73.5
繊 維 118 25 93 1 119
% 100 21.2 78.8
衣服・他の繊維製品 33 15 18 0 33
% 100 45.5 54.5
木 工 ・ 家 具 76 14 62 5 81
% 100 18.4 81.6
窯 業 ・ 土 石 59 7 52 1 60
% 100 11.9 88.1
機 械 ・ 金 属 57 10 47 0 57
% 100 17.5 82.5
雑 貨 ・ その他 95 23 72 3 98
% 100 24.2 75.8