―地域包括支援センターにおける社会資源情報の活用に関する調査から―
第1節 課題の所在と研究方法
【問題意識】
第3章の地域福祉実践現場における社会資源情報の収集・加工・活用の実態(―地域福 祉推進主体の社会資源情報の収集及び活用に関する調査)において、生活圏域単位での社 会資源情報の収集及び活用に関する実態把握(以下、「アンケート調査」と表記)を行ったが、
さらに社会資源情報の収集と活用についての実際と課題をより掘り下げて明確化する必要 性がある。
地域包括支援センターは、介護保険制度改革において、「総合的な介護予防システムの確 立」や「ケアマネジメントの体系的な見直し」を踏まえ、“地域における総合的なマネジメン トを担う中核機関”として、①「総合相談・支援」 ②「介護予防マネジメント」 ③「包括的・
継続的なマネジメント」④「権利擁護事業」という4つの基本機能を担うものとして2006
(平成18)年4月から創設され、全国5,000箇所に整備されることが目標とされているも のである。この地域包括支援センター4 事業を効率的・効果的にすすめるためには、様々 な社会資源が有機的に連携することができる環境整備を行うことが重要として、「地域包括 支援ネットワーク」の構築が求められている。地域包括支援センターは、ワンストップサ ービスを前提に住民個々の福祉課題等に対応することが求められているが、そのためには フォーマルなサービス情報とインフォーマル・サポート情報の収集が必要不可欠である。
【研究方法】
(1)委員会・作業部会の設置・開催、(2)アンケート調査の実施、(3)事例調査、(4) ICTを 活用した社会資源情報の可視化に関するプロトタイプの開発を行った。
【研究全体の枠組み】
研究全体の枠組みは図4-1-1の通りである。
【図4-1-1;調査のフレームワーク(再掲)】
【課題の所在】
①地域特性を踏まえ、地域社会(個人・集団・組織)が抱える諸問題を解決していくた
(4)ICTを活用した社会資源情報の可
視化に関するプロトタイプの開発
(2)アンケート調査 (3)道内事例調
査【A】 (3)
道内事例 調査【B】
(1) 委員会 作業部
会
*研究
全体の 分析及 び検証
抽出 抽出
対比
抽出
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めに、「地域社会のアセスメント(事前評価)」の必要性があるにもかかわらず、その必要 性が現場には十分認識されているとはいえないこと。
②アセスメントの際必要となる地域社会の状態を把握する手法についても未確立であり、
存在したとしてもアナログによるものが主流であること。
③地域社会に存在する有効な社会資源(人・モノ・集団等)に関する情報の可視化が阻 害され、担当者間・組織間での共有が進展しないこと。
④サービス提供あるいは地域社会(人・集団・組織)への有効な介入のためには、標準 化されたアセスメントツールが必要であり、そのアセスメント方法が未確立であること。
【対応策についての検討】
1)サービス提供者あるいは地域社会へ介入する専門家が、担当の地域社会の「固有性」
やニーズを経年的に把握するための情報の収集法、活用するための可視化の有効な手段を 探求する。
2)情報収集及び活用のあるべき姿を実現し、その可視化作業を標準化するためのICT化 の可能性を探求する。
3)特にインフォーマル・サポート情報を蓄積し、効果的な活用を通してのソーシャルサ ポートネットワーク構築の可能性を明らかにする。
【調査方法】
本章では、(3)の事例(ヒアリング)調査結果を中心に言及していく。本調査では、前章の アンケート調査結果を踏まえ、調査対象として、より生活圏域に近いエリア(人口約3万 人に1か所の割合)に設置されている地域包括支援センターを中心に、社会資源情報の収 集および活用度が高く、社会資源情報に対する意識が高いと思われた地域包括支援センタ ーを中心に市町村単位で選定した。
一方、地域包括支援センターは、①市町村直営 ②社会福祉協議会委託 ③社会福祉法 人委託 ④医療法人委託 ⑤その他への委託、が主な運営形態であり、社会福祉協議会等、
古くから地域の住民自治組織と連携している機関は、一定程度のインフォーマルな社会資 源情報の蓄積があるが、医療法人等の場合、これらの蓄積が希薄な中で委託を受け、地域 の社会資源情報の収集・活用について取り組む等、委託先の状況による差異が想定された。
また、委託先によって地域包括支援センターと居宅介護支援事業所、医療機関、社会福祉 協議会等との情報の共有化、連携についても差異が想定された。
そこで、アンケート調査結果をもとに、地域包括支援センターの中から収集・活用につ いての取組が進んでいると思われるものを次のタイプ別に分類し調査先を選定した。さら に、当該地域において地域包括支援センターと連携する居宅介護支援事業所、医療機関等 を11ヶ所抽出し同じく社会資源情報の収集・活用についての調査も実施した。
(表4-1-1参照)
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【表4-1-1 事例(ヒアリング)調査対象事例選定方法】
タイプ 概要 調査先
社協 主導型
社会福祉協議会が地方自治体から地域包 括支援センターを受託して、既存の小地 域ネットワーク等を活用して運営する事 例。社会福祉協議会にはインフォーマル な社会資源情報が蓄積されており、公私 の社会資源情報に強みがある事例
A市B地域包括支援センター
(A市社会福祉協議会受託)
A市社会福祉協議会
居宅介護支援事業所(株)C
行政 社協 一体型
地方自治体と社会福祉協議会が協働した 関係にあり、社会福祉協議会が地域包括 支援センターを受託しているが、その運 営についても一体的な要素が強い事例。
小規模な地方自治体に多いケースで、社 会資源情報の流通と共有化が行政と円滑 にいく事例
D町地域包括支援センター
(D町社会福祉協議会受託)
D町
D町社会福祉協議会
行政 主導型
地方自治体の直営ではないが、第三セク ターに地域包括支援センターを委託し、
委託後も行政関与が強い事例。行政関与 が強い中で、他の機関・団体との協働や 社会資源情報の活用がどのようにすすめ られているかが課題となる事例
E市地域包括支援センター
(E市福祉公社受託)
財団法人E福祉サービス公社 E市社会福祉協議会
医療法人 F病院
医療 主導型
医療法人等の医療関係の法人が地域包括 支援センターを受託している事例。医療 における社会資源情報の収集・活用は強 いが、医療関係者の社会資源情報の収 集・活用の意識を把握、とりわけ住民福 祉活動等のインフォーマルな社会資源情 報に関する実態把握
G総合ケアセンター・G市地域 包括支援センター(社団法人事 業団受託)
調査期間は2011(平成23)年12月~2012(平成24)年2月とし、半構造化面接法に より、①プロフィール、②地域(包括支援)ネットワークの構築(活動)状況、③他機関 等で開催しているネットワーク会議への参加、④情報の収集状況(種類・方法、整理、収 集体制等)、⑤情報の活用について(活用事例、工夫、他機関への提供等)⑥導入している 電算システム、⑦情報の収集及び活用の面で他機関・団体に対する要望、⑧その他、の 8 つのインタビュー項目で訪問ヒアリング調査を実施した。
なお、本調査結果は、藤女子大学(2011)『地域包括ケアの実現に向けた生活圏域単位 での社会資源情報の可視化に関する調査研究事業報告書―平成 23 年度老人保健健康増進 等事業-』(研究代表 小沼春日)の一部を基に筆者が大幅に加筆、再構成したものである。
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第2節 社会福祉協議会主導型:A市における社会資源情報の活用実態調査結果 1.A市の概況
A 市は人口183,622人、世帯数93,964、高齢化率は25.3%(2011年11月末現在)で
ある。2006(平成18)年にH町、I町と合併し、1,362k㎡の広さを持ち豊富な観光資源 を有している。漁業、製紙業を中心とした製造業、炭鉱によって発展した地域であるが、
近年炭鉱は縮小され、漁業、製紙業を中心とした製造業も衰退傾向にある。近年人口は減 少し続け、高齢化率も上昇、長期の不況により、市の生活保護率は年々上昇し、2009(平
成21)年12月現在50.2‰となっている。
旧A市は、2本の川により3地区に区分され、A市が設定している日常生活圏域は、当 初はこの3地域で設定されたが、高齢化の進行とともに、一部を分割し 5地区に再編(J
~N)、現在は、合併町村であるH地区、I地区を加えて7圏域が設定されている。
2.A市B地域包括支援センター(J地区)
1)地区の概要
旧A市の5つの日常生活圏域(2007年度以降)の概要は、表4-2-1のとおりで、日常 生活圏域ごとに地域包括支援センターが設置されている。地域包括支援センターの受託団 体は、社会福祉協議会が1、医療法人が3、社会福祉法人が1となっている。
【表4-2-1 日常生活圏域の概要(旧A市)(2011年9月末現在)】
日常生活圏域 J地区 K地区 L地区 M地区 N地区
面積(Km2) 18.6 13.5 7.0 17.8 159.2
人口 25,951 35,114 27,002 38,735 49,155
高齢者人口 8,528 10,079 7,193 7,828 10,316 高齢化率 32.9% 28.7% 26.6% 20.2% 21.0%
2)A市B地域包括支援センターの概要
職員体制は、所長(社会福祉士)、看護師1名、主任介護支援専門員3名(介護福祉士)、 介護支援専門1名(介護福祉士)、事務員1名の7名である。このうち正規職員は、所長、
看護師の2名である。介護予防の取り扱い件数は、月平均220件から230件で、4人(主 任介護支援専門員、介護支援専門員)で担当している。担当区域内の居宅介護支援事業所 が5か所と少ないために介護予防の委託率は低い。委託する場合には、地域内の居宅介護 支援事業所の受け入れ余地が少ないことから、A市社会福祉協議会(以下「A市社協」と 表記)の居宅介護支援事業所に委託する割合が高い。
3)社会資源情報の収集と活用について
(1)地域包括支援センターにおける情報収集ネットワーク(表4-2-2)
地域包括支援センターとしての情報収集の場は、全市域では、月1回の全市地域包括支 援センター所長会議、市主催の年2回の地域ケア会議があり、担当地域内では、年2回の 地域ケア会議がある。この他に全市的な情報を共有する場としては、地域密着型小規模多 機能施設連絡協議会、介護支援専門員連絡協議会がある。
地域包括支援センターが行う地域ケア会議の運営や内容は、それぞれの地域包括支援セ