地域福祉推進主体の社会資源情報の収集及び活用に関する調査から―
第1節 課題の所在と研究方法
【問題意識】
地域福祉を推進するにあたり、地域(生活圏域単位)において、フォーマル・サービス 及びインフォーマル・サポートが連動することが期待されている。しかしながら、フォー マル・サービスの資源配置も、さらにはインフォーマル・サポートについても、地域(生 活圏域単位)の特性によって異なっているのが現状である。したがって、地域包括ケアを 進めるためには、地域特性を把握する標準的なアセスメント手法の開発が求められる。こ のことが明らかになれば、アセスメントの結果、地域特性に応じた資源配置を組み立てる ことが出来る。フォーマル・サービスの性質上、主に専門職により整理され、実践に必要 な情報共有が一定程度担保されるレディネスは高いと予測される。しかしながら、インフ ォーマル・サービスは非常設(非組織化)であるため、実践内容・項目の指標化が必ずし も実施されておらず、実態把握が極めて困難であることに加え、地域内の他の社会資源と の連動性を意識した取組みが脆弱であり、フォーマル・インフォーマル・サービスの有機 的連動の阻害要因となっていることが考えられる。
先行研究として、平野ら(2011)183による、自治体における介護保険給付実績のデータベ ースを基盤に地域診断の方法に関するものがある。介護保険給付分析と自治体による活用 可能なツール開発に関する研究を基盤とし、既存のデータや資料による要援護高齢者に関 する情報管理ツールの開発及び地域診断の可能性を検討したものである。要援護高齢者の 情報管理ツールについては、要支援者の情報と介護給付データを統合することが可能とな り、介護保険利用の代替性や経緯を共有できることができるが、フォーマル及びインフォ ーマル・サービスの連動部分や潜在的ニーズの把握及び中長期的課題を予測するまでには 至っていない。岡本ら(2010)184による地域包括支援センター業務に必要な地域資源の有効 動員・活用のための潜在的地域社会資源情報の発掘・開拓に関するものがある。収集した 地域資源情報を地図に落とし、GPSを導入し地域情報の収集を可能とした「介護・福祉ナ ビ ゲ ー タ 」 を 作 成 、 蓄 積 さ れ た 情 報 を 「 ソ ー シ ャ ル ネ ッ ト ワ ー ク 分 析 (Tracy &
Whittaker;1996)」、エコマップ、支援フローチャートの3つの手法を採用し、利用者への
インフォームド・コンセントを推進した自己決定、及び関係職種間での情報共有化を目指 したものである。しかしながら、個別のケース対応情報の蓄積による相互扶助ネットワー クの数値化(可視化)と地域資源情報を活用した地域アセスメントの連動性が不明瞭であ り、個別支援のためのツールの域を出ていない。
【研究方法】
183 平野隆之ほか、2011、『地域包括ケア推進のための地域診断の方法と活用事例―平成 22年度老人保健健康増進等事業報告書―』日本福祉大学
184 岡本民夫ほか、2010、『地域包括支援センターにおける地域資源ネットワークの構築状 況等に関する調査研究―平成21年度老人保健健康増進等事業報告書―』宇治市福祉サー ビス公社
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(1)委員会・作業部会の設置・開催、(2)アンケート調査の実施、(3)事例調査、(4) ICTを 活用した社会資源情報の可視化に関するプロトタイプの開発を行った。
【研究全体の枠組み】
研究全体の枠組みは図3-1-1の通りである。
【図3-1-1;調査のフレームワーク】
【課題の所在】
①地域特性を踏まえ、地域社会(個人・集団・組織)が抱える諸問題を解決していくた めに、「地域社会のアセスメント(事前評価)」の必要性があるにもかかわらず、その必要 性が現場には十分認識されているとはいえないこと。
②アセスメントの際必要となる地域社会の状態を把握する手法についても未確立であり、
存在したとしてもアナログによるものが主流であること。
③地域社会に存在する有効な社会資源(人・モノ・集団等)に関する情報の可視化が阻 害され、担当者間・組織間での共有が進展しないこと。
④サービス提供あるいは地域社会(人・集団・組織)への有効な介入のためには、標準 化されたアセスメントツールが必要であり、そのアセスメント方法が未確立であること。
【対応策についての検討】
1)サービス提供者あるいは地域社会へ介入する専門家が、担当の地域社会の「固有性」
やニーズを経年的に把握するための情報の収集法、活用するための可視化の有効な手段を 探求する。
2)情報収集及び活用のあるべき姿を実現し、その可視化作業を標準化するためのICT化 の可能性を探求する。
3)特にインフォーマル・サポート情報を蓄積し、効果的な活用を通してのソーシャルサ ポートネットワーク構築の可能性を明らかにする。
【調査方法】
本章では、(2)のアンケート調査結果を中心に言及していく。調査方法は以下の通りであ る。
(4)ICTを活用した社会資源情報の可
視化に関するプロトタイプの開発
(2)アンケート調査 (3)道内事例調
査【A】 (3)
道内事例 調査【B】
(1) 委員会 作業部
会
*研究
全体の 分析及 び検証
抽出 抽出
対比
抽出
- 80 - 1)調査の概要
本調査は、地域福祉推進のために、各地域(生活圏域単位)で、専門職がどのような情 報を収集し、どのように加工・活用をしているのかの実態把握を目的とし、「生活圏域単位 での社会資源情報の収集及び活用に関する実態調査」として以下の概要で行った。
2)調査対象及び方法
北海道内の社会福祉協議会、地域包括支援センター、病院(地域連携室)、居宅介護支援 事業所を対象とし、質問紙法による郵送(悉皆・標本)調査を合計1,000箇所に行った。
なお、悉皆調査として、北海道内市区町村社会福祉協議会・地域包括支援センター・病院 地域連携室、標本調査として、北海道内居宅介護支援事業所(WMA-NET(2011 年 8月 18日現在)道内介護事業者情報 (但し、取消・廃止・停止・休止及びケアマネ不在箇所 計69か所を除く全1,328箇所の所在地市区町村コード及び実施主体別)に層化二段抽出し た。調査期間は2011年9月1日~9月30日とし、回収率は表3-1-1の通りとなった。
【表3-1-1 調査対象数及び回収率】
なお、本調査結果は、研究代表:小沼春日(2011)『地域包括ケアの実現に向けた生活圏 域単位での社会資源情報の可視化に関する調査研究事業報告書―平成23年度老人保健健康 増進等事業-』(藤女子大学)の一部を基に、筆者が加筆し、小沼春日(2015)「地域包括 ケアの実現に向けた生活圏域単位での社会資源情報の可視化に関する調査研究【その1】
生活圏域単位での社会資源情報の収集及び活用に関する実態調査」、福祉情報研究第10号に 掲載されているものに一部加筆を加えたものである
札幌市 内
札幌市 外 計 市区町村
社会福祉協議会 10 178 188 悉皆 56.9%
地域包括
支援センター 21 235 256 悉皆 48.0%
社会福 祉法人
医療法
人 計 調査
方法 備考 回収率
病院
地域連携室 15 391 406 悉皆
*平成22年9月1日現在 北海 道医療新聞社調査(北海道 医療年鑑2011)より社会福祉 法人及び医療法人(休診中を 除く)悉皆
37.4%
札幌市内 札幌市外 計 居宅介護支援
事業所 合計 332
25.0% 996
75.0% 1328
100.0% 37 113 150
社会福祉法人 計 54 4.1% 286 21.5% 340 25.6% 6 32 38 医療法人計 73 5.5% 154 11.6% 227 17.1% 8 17 26 NPO法人計 14 1.1% 24 1.8% 38 2.9% 2 3 4 営利法人計 163 12.3% 368 27.7% 531 40.0% 18 42 60 行政直営計 0 0.0% 89 6.7% 89 6.7% 0 10 10 上記以外計 28 2.1% 75 5.6% 103 7.8% 3 8 12
回収率
回収率
47.3%
406 札幌市外
235
計
調査 方法
標本 調査
方法 備考
備考
*WMA-NET(2011年8月18日 現在)北海道内介護事業者 情報(但し、取消・廃止・停止・
休止及びケアマネ不在箇所 計69か所を除く全1,328箇所)
の所在地市区町村コード順よ り層化二段抽出
札幌市内 10 21
社会福祉法人 178
実数 調査対象数
札幌市内 札幌市外 計 医療法人
188 256
15 391
計
- 81 - 第2節 地域包括支援センター
1.収集・更新を支援することが必要な社会資源情報分野・内容
先ず、地域福祉実践上、業務上必要と考えられる情報について岡本ら(2010)185におい て使用されて社会資源情報及び、タッチ編集委員会(2004)186において明記されているフ ォーマル及びインフォーマル・サポート項目を検証し、新たに必要と思われる情報を精査 し、最終的には21種類とした(表3-2-1参照)。更に、社会資源情報の『収集の必要性』
と『収集及び更新の難易度』との関連を整理するために、『社会資源情報の収集の必要性』
について「1 必要である」を2点、「2 どちらかと言えば必要だと思う」を1点、「3 どちらかと言えば必要と思わない」を-1点、「4 必要とは思わない」を-2点、「5 無 回答」を0点、『社会資源情報の収集及び更新の難易度』について「1 容易に収集できる」
を2点、「2 比較的容易に収集できる」を1点、「3 どちらかと言えば収集が困難」を
-1点、「4 収集が困難」を-2点、「5 無回答」を0点として点数化を行った。
【表3-2-1 地域福祉推進のための社会資源情報分野・内容】
さらにその点数をもとにして、横軸に『収集の必要性』、縦軸に『収集及び更新の難易度』
をとり、横軸・縦軸のそれぞれの平均値との比較により、4つの象限(ア~エ)にプロッ トした(図 3-2-1)。このうち右上の(ア)に分布する情報分野・内容については、「情報 の必要性が高く、収集更新が困難であるもので、今後、収集・更新を支援することが必要 な情報分野・内容」と考えられる。
185 岡本民夫ほか、2010、『地域包括支援センターにおける地域資源ネットワークの構築状 況等に関する調査研究―平成21年度老人保健健康増進等事業報告書―』宇治市福祉サー ビス公社
186『タッチ』編集委員会、2004、『介護サービス利用のためのガイドブック“タッチ”Ⅳ』
1 - 1 1 - 2 1 - 3 1 - 4 1 - 5 1 - 6 1 - 7 1 - 8 1 - 9 1 - 1 0 1 - 1 1 1 - 1 2 1 - 1 3 1 - 1 4 1 - 1 5 1 - 1 6 1 - 1 7 1 - 1 8 1 - 1 9 1 - 2 0
1 - 2 1 担当地域(圏域)における防災に関する情報
サービス利用者、ケース対象者、患者などの個別のニーズに関する情報
個別のニーズを踏まえた支援のためのイン フォーマル資源のうち、
ボランティアに関する情報 NPOに関する情報
福祉・医療・保健関係団体・組織に関する情報
国の福祉・介護・保健・医療に関する公的施策に関する情報 都道府県の福祉・介護・保健・医療に関する公的施策に関する情報 担当地域(圏域)における介護保険事業所に関する情報
担当地域(圏域)における日常生活自立支援事業・成年後見制度に関する情報 担当地域(圏域)における食事(配食)サービスに関する情報
担当地域(圏域)におけるホームヘルプサービスに関する情報 担当地域(圏域)における理美容サービスに関する情報 担当地域(圏域)におけるミニデイサービス(サロン)に関する情報 担当地域(圏域)における移送サービスに関する情報
担当地域(圏域)における共同住宅に関する情報 担当地域(圏域)における医療に関する情報
担当地域(圏域)における趣味・生きがい・社会参加に関する情報
町内会・自治会活動に関する情報 近隣の助け合いに関する情報 組織化された見守り活動に関する情報
担当地域(圏域)における障害者自立支援法に関する事業所情報