の「指針」
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授 日本医師会介護保険委員会副委員長 高木安雄 日医介護保険委員会副委員長として、在宅医療 について、はじめ、介護保険の創設を契機に、診 療所・在宅医療をどうしていくかということで、
日医介護保険委員会の場で検討してきた。日医の 指針についてどのようなものを作るかと、協力し てきたので説明する。今回の研修会の目的と、今
平成 21 年度 平成 21 年度
在宅医療支援のための医師研修会 在宅医療支援のための医師研修会
と き 平成 22 年 3 月 28 日(日)9:30 〜 16:55 と き 平成 22 年 3 月 28 日(日)9:30 〜 16:55 ところ 日本医師会館大講堂
ところ 日本医師会館大講堂
報告 : 常任理事 西村 公一 常任理事 弘山 直滋 理事 河村 康明
後の方向をお話しできればと思っている。
4 月からの診療報酬改定は、外来に関しては、
厳しい改定だと思っているが、在宅医療・地域連 携の関連に関しては、いくつか新しい芽を作り、
病院の退院等調整に関してもケアマネジメントの 大切さのための点数を作っている。そういう点で は、厳しい中でも在宅医療・地域連携に関しては、
いくつかの新しい評価の点数ができたということ は是非ご留意いただきたいと思っている。
介護保険は、2000 年にできたが、戦後の高齢 者の医療及び介護の歴史を振り返ってみると、福 祉から保険へという流れである。1950 年、生活 保護の中でいわゆる養老院が作られ、次に、老人 福祉が一番最後に立ち上がり、老人医療費無料化、
介護保険制度へと続く。ある意味では、医療の中 で高齢者の福祉的な部分を担ってきた。その反省 から、老人保健制度・介護保険制度を新しい流れ として解決しようとしている。
2000 年の介護保険制度創設の目的は、保険を 軸に解決しようということで、①国民皆で支える 仕組み、②社会保険方式で給付と負担の関係が理 解できる、③さらに従来の縦割り制度を保健医療 サービス・福祉サービスを統合的に受け入れられ るように再編成、④介護を軸に医療保険から切り 離して社会保障構造改革の皮切りとした。さらに、
2008 年後期高齢者医療制度を創設したが、残念な がら上手くいってなくて、今、見直しの時期にある。
現在、底流として、現金給付の問題・家族の介 護の問題が残っているのではあるが、介護保険制 度の特徴・課題として、①保険原理による高齢者 の保険料負担、②ゲートキーパーをきっちりして、
要介護認定による現物給付を行う、③これが、介 護保険の一番大きな意味で、介護の始まりが主治 医意見書、終わりが死亡診断書で、この間が長い が、それをみていくのが、かかりつけ医師の管理 による主治医意見書制度と身体的項目の要介護認 定で行われる、④保険者(市町村)による負担と サービス、⑤ケアプランの作成、⑥「社会化」に よる費用増加などの特徴をもって、介護保険はス タートした。
高齢者医療・介護をとりまく課題
医療偏重の高齢者ケアが作られ、その結果、在
宅での死亡率が減少した。介護保険制度によって、
高齢者の入院割合が低下し、1973 年の老人医療 費無料化で、入院・医療が増加し、2000 年の介 護保険制度創設で、介護施設が増加している。
高齢者のための住宅整備が始まったが、施設・
在宅の中間的住居の整備が遅れているが、現在、
医療施設から軽費老人ホーム・有料老人ホームな どへの転換が始まったところである。
場所別の死亡数年次推移は、1973 年の老人医 療費無料化で在宅死亡が急激に減少した。また、
病院での死亡に比し、在宅死は 13.9%にすぎず、
ナーシングホームなどの施設は、デンマーク、ス ウェーデンで 30%以上あるのに比して、高齢者 の住宅整備は、2.4%にしかない。この意味では 高齢者にふさわしい住まいを考えていくことが次 の課題となっている。
医療・介護におけるチームケアのあり方
医療専門職(医師・看護師等)と社会福祉専 門職(社会福祉士・介護福祉士)の連携による全 人的ケアの実現が重要であるが、本人の意向は無 視できず、一番の専門家は当事者であるという視 点を忘れてはならない。Life を生命又は生活又は 人生のいずれと解釈するか、この重層的構造をそ れぞれの専門職の異なる視点で広くとらえていく 必要がある。
日本医師会は、かかりつけ医機能の充実のた めの在宅医療・介護に関する指針(2007 年 1 月)
を作成した。
将来ビジョンは、
1. 尊厳と安心を創造する医療 2. 暮らしを支援する医療
3. 地域の中で健やかな老いを支える医療 の 3 つのビジョンを示し、具体的提言を 7 項 目にまとめた。
1. 高齢者の尊厳の具現化に取り組もう。
2. 病状に応じた適切な医療提供、あるいは橋 渡しをも担い、利用者の安心を創造しよう。
3. 高齢者の医療・介護のサービス提供によっ て、生活機能の維持・改善に努めよう。
4. 多職種連携によるケアマネジメントに参加 しよう。
5. 住まい・居宅(多様な施設)と連携しよう。
6. 壮年期・高齢期にわたっての健康管理・予 防に係っていこう。
7. 高齢者が安心して暮らせる地域づくり、地 域ケア体制整備に努めよう。
それらをふまえて、2008 年 3 月に介護保険委 員会としての答申をわかり易くまとめた。2010 年 3 月に、さらに介護保険委員会の答申がまと まったが、2 年後の医療・介護の同時改定に向け た提言をする形になっているので、理解をお願い したい。
まとめ
・地域医師会の責務として、医師の意識改革と団 結が必要で、医療・介護の協働する地域ケア体制 整備が必要である。
・患者の住み慣れた地域での生活を支えるために、
切れ目のない医療連携が必要である。
・切れ目のない医療連携は、ケアカンファレンス で実現できる。
[ 報告:理事 河村 康明 ]
在宅医療に必要な基礎知識 〜高齢者の病態と治療〜
杏林大学医学部高齢医学准教授 神﨑恒一 日本医科大学附属病院老年内科准教授 中野博司 高齢者の症状・疾患の特徴として、①多病性、
②非定型性、③精神・神経症状が出現し易い、④ 慢性化し易い、⑤個人差が大きい、⑥恒常性維持 機能の易破綻性、⑦合併症の併発、⑧薬物副作用 が出現し易い、⑨社会の影響が出易い、が挙げら れる。
高齢者に出現頻度の高い老年症候群として、① 失神、②頭痛、③不眠、④めまい、⑤便秘、⑥脱 水、⑦浮腫、⑧誤嚥、⑨低栄養、を挙げ、それぞ れの病態と鑑別診断に必要な検査について解説が あった。
医療・看護・介護において多職種連携を進め る上で、総合的機能評価の重要性を訴え、疾患評 価だけでなく、個別性を重視したケアを提供する ために、①日常生活活動度:基本的 ADL 、②家 庭での生活手段の自立:手段的 ADL 、③物忘れ、
認知症の程度:MMSE 、HDS − R 、④行動異常 の程度:認知症の行動異常の尺度、⑤抑鬱など気
分障害、意欲:GDS15 、vitality index 、⑥家族 の介護能力、介護負担、:Zarit 負担尺度、⑦在宅 環境、などを総合的に評価する必要がある。
廃用症候群を予防することと早期リハビリテー ションの必要性について触れ、医学的リハビリ テーションの開始は、早ければ早いほど良い。一 般に、高齢者にはより長い訓練期間が必要となる。
ただし、リハビリテーションが漫然と長期化する と、訓練そのものが目的化し、病院や療法士への 依存を生じ、かえって自宅での生活基盤を喪失し かねないので、現実的な時間枠を設けた上で、実 現可能性の高いゴールを設定することが特に重要 であり、ゴールの定期的な見直しも不可欠である。
高齢者の薬物療法について、高齢者は多くの疾 患をもっていることが多い。例えば、糖尿病、心 房細動、骨粗鬆症、過活動膀胱、白内障を合併し ている患者が認知症になった場合、臓器別管理を するよりも一元管理している方が、処方変更も容 易であり、一元管理の重要性を強調した。
薬物有害事象については、75 歳以上で 15% 以 上と若年者に比べて増加している。高齢者の薬物 有害事象の特徴として、①重症例が多い(医原性 疾患)、②多臓器障害を引き起こす、③長期入院 の原因となる、が挙げられ、症状があれば内服薬 をチェックするという姿勢が大事である。薬物動 態から見た対処法として、①最大血中濃度の増加 については投与量を減らす、②半減期の延長につ いては投与回数を減らす、③臓器機能(腎、肝)
の測定、④血中濃度の測定。全般的には少量投与 から開始する、ということが勧められる。薬剤を 減らすための対処法として、①薬効が確立してい るか、②訴える症状すべてに処方していないか、
③慢性疾患に観察期間を設けているか、④与薬適 応の優先順位を考えているか、⑤薬物療法以外の 手段はないか等を考えてみる必要がある。
「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物 のリスト」(日本老年学会、2005)については、
日本老年学会のホームページからみることができ る。
[ 報告:常任理事 弘山 直滋 ]