第2章 地域ケアを進める
第2節 在宅医療
生活習慣病の増加等疾病構造の変化や高齢化の進展などにより、在宅医療の必要な患者が増 加している。また、患者自身の在宅医療への志向も強い上に、在宅医療技術の向上や各種在宅 医療サービスの制度化などにより、従来は在宅医療が困難であった患者も在宅医療が可能に なっている。平成18年4月の診療報酬改定においては、24時間体制で訪問診療を行う体制を有 する在宅療養支援診療所の制度が創設され、在宅医療体制の充実が図られている。
在宅療養者が生きがいを感じて療養生活を送れるよう、患者のニーズに応えられる在宅医療 の推進を図り、患者のQOLの向上を図る。
現 状
(1) 平成17年10月の患者調査(厚生労働省)によれば、県内において往診や訪問診療などの在 宅医療を受けた推計患者数は、2,660人(一日断面)であり、その8割は75歳以上の高齢者で ある。
在宅医療を受けた患者の疾病分類による内訳は、脳血管疾患が409人(15.3%)、神経系の 疾患が381人(14.3%)、高血圧性疾患が361人(13.6%)、悪性新生物が225人(8.4%)の順となってい る。
(2) 医師(歯科医師)による訪問診療や在宅療養指導管理のほか、看護師による訪問看護や理 学療法士・作業療法士らによる訪問リハビリ、薬剤師による訪問薬剤管理指導等各職種の医 療従事者による在宅サービスが制度化されている。
(3) 県内の病院で、訪問診療を実施しているのは121病院(34.2%)、訪問看護を実施している のは120病院(33.9%)である。(兵庫県「平成19年医療施設実態調査」)
<実施病院の割合が高い圏域>
訪問診療:但馬(61.5%)、西播磨(60.0%)、淡路(41.7%)
訪問看護:淡路(66.7%)、但馬(61.5%)、丹波(50.0%)
(4) 平成16年に実施した兵庫県医療需給調査では、県内の診療所で、訪問診療に対応できるの は、回答のあった2,942診療所(回答率62.4%)中、1,374診療所(46.7%)であった。
<対応可能な診療所の割合が高い圏域>
但馬(75.7%)、丹波(66.0%)、西播磨(62.1%)
(5) 県内の在宅療養支援診療所数:609箇所(平成19年4月1日現在)
(6) 県内の訪問看護ステーション数:348箇所(平成19年4月1日現在)
課 題
(1) 医師(歯科医師)による在宅医療は訪問診療が中心であるが、現状では、訪問診療を必要 とする患者に適切な訪問診療が行われる体制にはなっていない。そこで、訪問診療を行うか かりつけ医(かかりつけ歯科医)の普及・定着及びかかりつけ医(かかりつけ歯科医)を支 援する体制の整備が必要である。
(2) 在宅医療を定着させるためには、在宅医療技術の普及促進を図る必要がある。
(3) 在宅療養を行う患者には、医療とともに、福祉サービスの必要な患者が多い。介護保険制 度の導入により介護保険対象者には総合的なサービスの提供体制が強化されたが、その他の
1 在宅医療
第 2 章
地 域 ケ ア を 進 め る
︵ 第2 節︶
在宅療養者には制度がないことから、今後、介護保険サービスの充実とともに、介護保険対 象外の在宅療養者に対する総合的なサービス提供体制の充実を図る必要がある。
(4) 入院患者が退院する際には、直ちに必要な在宅医療を提供することが重要であり、また、
在宅療養者も症状が悪化した時には入院が必要であることから、入院医療、在宅医療相互の 円滑な移行の確保が求められている。
(5) 在宅医療を円滑に実施するためには、家庭での介護力を強化する必要がある。
(6) 高齢化の進展に加えて、医療制度改革による平均在院日数の短縮や療養病床の削減に伴 い、今後、在宅医療のニーズの大幅な増大が見込まれるため、在宅医療体制の充実が急務と なっている。
主な相談窓口
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(1) 地域におけるかかりつけ医(かかりつけ歯科医)の支援体制を確立するとともに、その必 要性について広報し、普及、定着を促進する。併せて、必要な在宅療養者に対する訪問診療 の提供を促進する。(県、関係団体、医療機関)
(2) 訪問看護、訪問リハビリ、訪問薬剤管理指導についても、サービス提供体制の充実を図 る。(医療機関)
(3) 在宅医療の高度化に対応して、機器の操作方法や医療技術に関する研修を実施する。
(県、関係団体、医療機関)
(4) 在宅医療は、医師、歯科医師、薬剤師、訪問看護師、ケアマネージャー、ヘルパー、ボラ ンティアなどによるチームケアが重要であることから、チームづくりに対する支援を行う。
(県、関係団体)
(5) 病院の地域医療連携室の機能強化や地域包括支援センターの機能の活用、郡市区医師会等 関係団体の協力により、病診連携の促進や医療と介護の一体的なサービス提供を図るととも に、入院医療、在宅医療相互の円滑な移行を促進する。(県、市町、医療機関)
(6) 家庭で在宅療養者の介護がスムーズに行えるよう県民に対する教育、研修の充実を図ると ともに、患者・家族の相談に対応できる体制を確保する。
また、関係団体において、医療機関に関する情報提供を行う。(県、医療機関、関係団体)
第 2 章
地 域 ケ ア を 進 め る
︵ 第2 節︶
最期まで自分らしく生活を送りたいと願う患者にとって、毎日を家族と一緒に過ごせること ほど、心なごませ、勇気づけられることはない。進行がんなどで積極的治療が不適切な状態と なったいわゆる末期患者のうち、病状が安定し、患者が望み、家族にも介護力がある場合に、
できる限り在宅で療養できる在宅ターミナルケア*の医師・訪問看護師・薬剤師・介護支援専門 員らによる地域ネットワークの構築をめざす。
2 在宅ターミナルケア
○ターミナルケア:終末期医療。積極的な治療が有効でなくなった末期がん患者らに対して、患 者の生活の質(QOL)の向上を重視した医療を中心としたケア
現 状
(1) 最後の時期を過ごす場所に関する県民の意向
最後の時期を過ごす場所として、「自宅」を希望する県民は29%、「治療や援助が必要な 場合だけ病院や施設、それ以外は家」を希望する37%あり、併せると66%が在宅で最後の時 を過ごすことを希望している。(平成15年度 家庭問題研究所「ターミナルケアと家族につい ての調査研究報告書」)
しかし、兵庫県における死亡場所の割 合は、病院が78%と圧倒的に多く、自宅 は15%である。
家で看病できない理由として、「容態 急変時にすぐに手当ができない」「専門家 に 任 せ た 方 が よ い 」 「 医 学 的 知 識 が な い」ことが大きいとの調査結果もあり、
医療体制の問題とともに、県民の知識不 足、先入観が阻害要因となっていること が伺われる。
(3) 在宅ターミナルケアの現状
末期がん患者等が病院から退院し、在宅で療養生活を送るには、主として以下のサービス が総合的に提供される必要があり、これらのサービスを提供する様々な職種がチームを組ん で患者・家族のケアに当たる体制が求められる。
(2) 在宅ターミナルケアに関わる制度改正の動き
① 在宅療養支援診療所
在宅医療を支える制度として、平成18年4月から、①24時間体制で往診や訪問看護が可 能、②他の医療機関との連携により在宅療養患者の緊急入院の受入が可能、といった要件 を満たす診療所に手厚い診療報酬を配分する「在宅療養支援診療所」制度が創設された。
② 介護保険制度の特定疾患への末期がん適用
平成18年4月から、40歳から64歳までの末期がん患者についても介護保険の適用対象に追 加され、末期がん患者が在宅で介護保険サービスを活用しながら療養生活が可能となっ た。
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第 2 章
地 域 ケ ア を 進 め る
︵ 第2 節︶
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<訪問看護ステーション>
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(4) 兵庫県の取り組み
兵庫県では、平成19年1月にがん診療連携拠点病院の指定を受けたことを踏まえ、がん診療 拠点病院と地域の医療・介護施設、NPO等が連携した在宅ターミナルケアネットワークの構 築を進めることとし、平成19年度から以下の事業に着手している。
① 圏域における在宅ターミナルケア体制を検討する協議の場の設置
② 在宅ターミナルケアのチームづくりへの支援
③ 患者・家族からの在宅ターミナルケアに関する相談への対応窓口の設置
④ 在宅ターミナルケアの従事者への研修
在宅ターミナルケア患者がいる、あるいは過去にいた訪問看護ステーション173施設(回答の あった222ステーションの約8割)(平成17年3月兵庫県医務課「訪問看護ステーション実態 調査」)
<急変時に入院受入が可能な病院>
181病院(兵庫県医療需給調査H16.10.22)
一方で、「24時間体制」や「診療を交替する医師がいないこと」で末期患者への対応を負 担に感じている診療所が多く、また、訪問看護ステーションにおいても夜間対応・緊急対応 ができる人員の確保が課題との調査結果がある。(平成19年2月兵庫県医師会「在宅ターミナ ルケアに関する調査」、平成19年2月兵庫県看護協会「兵庫県下の訪問看護ステーションと病 院の継続看護における連携の実態調査」)
兵庫県内 609施設(H19.4.1) 県内の一般診療所全体(4,800箇所)の約13%
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第 2 章
地 域 ケ ア を 進 め る
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