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―在宅医療における薬剤師の役割―

ドキュメント内 .... (ページ 47-52)

要介護者の数はすでに200万人を超え,介護保 険導入に伴い,在宅療養の高齢者が増加すると推 測されます2)

平成4年の医療法改正に伴い,医療が行われる 場の1つとして,在宅が導入されました。患者の QOL向上という観点から,患者が入院せずに在 宅にて医療を受けられる在宅医療の果たす役割 は,今後ますます増大すると予想されます。在宅 医療とは,医療と看護・介護と生活の三者が一体 となった医療と言えます。しかし,病院や医療施 設と異なり,在宅医療は療養するための設備,環 境が十分でなく,医療専門職が常時かかわってい るわけではありません。

在宅訪問薬剤管理指導(居宅療養管理指 導)

薬剤師も在宅で療養する患者の心身の状況に応

じて活躍することが在宅訪問薬剤管理業務として 期待されています。日本薬剤師会による平成10年 度在宅患者訪問薬剤管理指導の届け出薬局が,全 保険薬局の約半数の1万8千件しかないと報告 し,日病薬の平成10年度の調査では対象施設4036 施設中,在宅患者訪問薬剤管理指導を実施してい る施設は365件で,施設の月平均請求件数を全部 足しても月149.3件しかない現状です。

条件付薬剤配達

平成10年12月厚生省は「条件付で薬剤配達許可」

の通知を行いました。薬剤師が医薬品の宅配を行 ってよい状況として1)患者が寝たきり,または 歩行困難である場合,2)患者が老人で一人で暮 らしまたは看護者が開局中に来訪ができない場 合,3)連続携行式自己腹膜透析療法(CAPD)

透析液等容積・重量の面で患者等が運搬すること が困難なものが処方された場合,4)遠隔診療に 基づき薬剤が処方された場合の4パターンを規定 しました。また,薬剤師が訪問した際,「処方の 確認」,「必要な情報の提供」を行うことが義務付 けられています。さらに「薬剤師以外の薬局従事 者」による配達を条件付ながら認められました。

訪問薬剤管理指導の重要性

在宅において,高齢者は自分の問題を周りの人 に話さず,有害事象がでていても介護者,医療従 事者は気づかず,そのことは介護者,医療従事者 の責任であると報告されています3)。日本看護協 会も在宅要介護高齢者の56.9%に服薬指導,薬歴 管理が必要と報告していますが,在宅訪問服薬指 導を実施している薬局,病院はまだ少ないです。

コンプライアンスは薬剤適正使用を推進するに あたり重要であり,薬剤師による服薬指導はコン

―在宅医療における薬剤師の役割―

筑波大学大学院 医学研究科 博士課程 薬剤師

おく

じゅん

□□ 特集 薬剤師の役割を考える □□

プライアンスを改善する効果的な方法と言われて いますが,薬剤師の在宅医療における役割が見え ていません。

在宅要介護高齢者の在宅医療の現状 著者は薬剤師による訪問服薬指導が在宅要介護 高齢者の服薬コンプライアンスに影響を及ぼすの かどうか4),さらに,いろいろな職種が関わるな かで薬剤師の宅配・訪問服薬指導がコンプライア ンスに影響するかどうか在宅要介護高齢者を対象 に調査研究を行いました5)

茨城県つくば市とその周辺の2市に在住する在 宅要介護高齢者宅を訪問し,属性,自立度,処方 薬剤数,副作用の経験,通院回数,介護者の有無,

薬剤師による薬剤の配達の有無,訪問服薬指導の 有無,薬剤を取って来る人・持って来る人,コン プライアンスを面接聞き取り調査しました。この 3市は全国平均の高齢化率より低く,既存の町村 に新住民が入ってきた都市型・農村型の混合した 地区です。

対象者の平均年齢は78.8歳で女性は65%を占 め,4年以上薬剤を服用している高齢者は63.2%,

脳血管障害を患っている人は45.0%いました。厚 生省の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準

(これは介護保険でも使用)によるJ・Aランクは 56.4%で,寝たきり起きたり,寝たきりのB・C ランクの高齢者は43.6%でした。一人暮らしの高 齢者は13.5%おり,昼間一人でいる高齢者(多く は呼び寄せ老人)が13.0%いました。主介護者は 配偶者が37.4%で,嫁21.5%,娘16.6%で女性が 大半でした。介護者が薬剤を管理している場合は 43.0%と多く,食事を1日3回とっていない高齢 者が10%近くいました。薬剤師による訪問薬剤管 理指導を受けているものは約18%いました。

高齢者にコンプライアンスを確認する際,「飲 んでいますか」と質問すると多くの方は「飲んで います」と答えます。しかし,在宅訪問し,残薬 を見せてもらいながら確認をすると,「飲んでい るよ」と答えるのは,自分で飲むと決めた薬剤の ことであり,自分で必要ないと思った薬剤は飲ん でいませんでした。多くの高齢者は薬剤を処方ど うり飲んでいないことが確認できました。このこ とからも処方された薬剤のうちどれだけきちんと

飲んでいるか,残薬から算定しコンプライアンス を%で求めました。

在宅要介護高齢者の服薬コンプライアン スへ影響する因子4)

一般的にコンプライアンスに影響するといわれ ている自立度,薬剤の数,飲み方,副作用の経験 等はコンプライアンスと関係がありませんでし た。在宅要介護高齢者のノンコンプライアンスに 影響するものは①一人で暮らしている場合,②薬 剤管理を要介護高齢者本人が全面的に行っている 場合,③年齢が80歳以上の場合,④食事を3回取 っていない場合,⑤薬剤師による訪問服薬管理指 導が行われていない場合でした。①,②の場合,

声をかけてくれる人がいないと飲み忘れることが 多く,③の場合は加齢と伴に物忘れが多くなり,

飲んだか飲まなかったか判らなくなります。④の 場合も食事を3回取っていない場合,食事をして いないということで薬を飲む回数を食事の回数に 合わせて薬を服用しないことがあります。⑤は薬 剤師が訪問服薬指導することで,服薬コンプライ アンスが有意に高くなっていることは,ただ処方 された薬剤を飲ませているということではないと 思います。在宅を訪問し,高齢者の生活状況を把 握し,薬学的観点から副作用,相互作用を検討し,

服薬がきちんと行われているか,きちんと飲まれ ていなければその原因を確認し,患者さん,医師 と連携をとり,本人の生活状況にあった処方に変 更してもらった結果だと思います。

また在宅高齢者は自分で病院へ行く足がなかっ たり,家から出られない方が多く,医療機関へ2 ヶ月以上も定期的な診察がなされていない方が 23.1%(図1)もいました。長い人は3年以上も 医師の診察を受けておらず,家族が薬剤のみもら って来る状況でした。本人が直接病院,調剤薬局 で薬剤を受け取れる人は25%で,それ以外の者は 次の方たちが関わっていました。関わった人は介 護者47%,ヘルパー3%,看護婦2%,薬剤師 23%でした(図2)。なかには,自分で病院,調 剤薬局へ行けず介護者の協力が必要な場合,薬剤 が足りなくなっても介護者の都合に合わせて残っ ている薬剤を調整し,間に合わせている場合があ りました。また,介護者の中には薬剤を飲んでも

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飲まなくても変わりないと思っている非協力的な 人もいました。こういう場合には家族等の介護者 へ薬剤を飲む必要性を理解してもらい,要介護高 齢者には薬剤師が薬剤の配達,訪問服薬指導をす ることが必要と思われました。

介護保険導入後の居宅療養管理指導 介護保険の導入により,いろいろな職種が高齢 者の生活援助と称し服薬に関わってきます。服薬 に関して,薬剤を飲ませること,薬剤を取りに行 くことが高齢者の薬剤管理と思っている医療従事 者や介護者がいます。また高齢者本人,家族介護 者も薬剤管理をコストの安いヘルパーにお願いす ることで良しとする傾向が見られます。ここにい たった背景には,薬剤師自身が今まで他職種を含 め,在宅高齢者や家族に薬剤の管理に薬剤師の関 わりが大切であることをアピールしてこなかった ためではないかと思われます。先日も著者が住ん でいるつくば地区の地域ケアカンファレンスで,

薬剤のきちんと飲まれていない在宅高齢者の服薬 に関して,薬剤師の居宅療養管理指導をケアプラ ンに入れるのではなく,ヘルパーに服薬介助また は援助をお願いしたいという案がでました。服薬 管理という言葉は使えません(居宅療養管理指導 を行う事ができるのは,医師,歯科医師,薬剤師 です)ので,服薬援助という言葉を使っていまし

たが,薬剤師が訪問服薬管理を多くの地区で行い 実績を作っていれば,その重要性が認識され,ケ アプランの中に取り入れてもらえたと思います が,薬剤に関するケアは誰でも変わらないという 介護者,他職種の考えに押されたように思いまし た。

服薬コンプライアンスに影響する他職種 の関わり5)

そこで,著者は薬剤師が薬剤の配達・服薬指導 を行う事により薬剤適正使用(服薬コンプライア ンス)が行われているかどうか,他の職種の関わ りが服薬コンプライアンスにどう影響しているか 検討しました。

薬剤を直接薬剤師から渡されることで,なんら かの薬剤情報が本人へ伝えられ,薬剤の知識,コ ンプライアンスが変わるのではないかということ より,薬を取って来る人,持って来る人により要 介護高齢者の薬剤知識,コンプライアンスを比較 検討しました。

要介護高齢者の薬剤の知識(薬剤名,用法用量,

効能効果)はヘルパーが関わった場合一番低く,

コンプライアンスも誰が薬剤を取って来るかで差 が見られました。薬剤師が関わった場合(薬剤の 配達のみ行う場合と配達し訪問服薬指導した場合 を 合 わ せ た 場 合 ) は 服 薬 コ ン プ ラ イ ア ン ス が 86.7%で,ヘルパーが取りに行った場合の57.2%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

8.6%

 

 

 

 

 

 

10

12  

  20.2%

47.2%

6.7% 7.4%

4.3% 3.7%

1.0%

図1 要介護高齢者の通院回数

0%

10%

20%

30%

40%

50%

3%

 

 

 

 

  47%

25% 23%

5% 2%

15%

25%

35%

45%

図2 薬を取って来る人,持って来る人の割合

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