【解説】
簡易発電システムとして,これまで発電に利用されてこなかった発電用ダム(河川維 持流量),砂防ダム,農業用水利施設,上水道・工業用水利施設および下水道水利施設 の水など,落差・流量が小さくこれまで発電に利用されてこなかった領域を対象とし たことから,コストダウンを図る土木施設の要素技術として上記3施設について,水 道や農業分野の実態を含めて調査・検討を行った。
これらの施設における要素技術の採用にあたっては,各施設の設定条件にあわせて その機能と安全性を十分に検討したうえ,イニシャルコストとランニングコストの両 面に配慮して,総合的なコストダウンを図るものとする。
なお,その他,沈砂池,導水路,ヘッドタンク,余水路などの主要施設についても,
従前の事例や検討結果などを参考にコストダウンに努めるものとする。
本的に以下の 3 つの設備とする。
① 取水設備
② 水圧管路
③ 発電所基礎・建屋
【解説】
簡易発電システムにおける取水設備は, 少ない水をいかに効率よく取水するか と いう命題に対応したものとなる。このため,これまで発電で実績を挙げている渓流取 水設備に加え, 少量の取水に対して実績の持つ水道分野や農業分野における実績を航 路して,効果的な取水形式を選択する必要がある。
また,平成 16 年度に実施したモニタリング調査では,取水設備の選定における配慮 事項として,以下の 3 項目を挙げている。
1) 土砂や塵芥などへの対応
2) 保守のしやすや(流入土砂,塵芥を排除しやすい構造)
3) 管理の状況(対応人員,管理所との距離,など)
これらの事項はいずれもランニングコストに影響する事項であり,簡易発電システム の管理に大きく影響する問題でもある。
従って,取水設備については,上記の事項に十分配慮したうえ,維持管理の容易さ とイニシャルコストを勘案して,総合的なコストダウンとなるような形式を選択しな ければならない。
2.1.1 取水方式
【解説】
水道分野における取水施設は,「水道施設設置指針・解説(1990 厚生省監修)」によ れば,
① 取水施設は,水源の種類にかかわらず年間通じて計画取水量を確実に取水 できること
② 水質が良好であって,将来も汚濁のない地点に設置すること
れてきた方式に加え,少量の取水に対して実績の持つ水道分野や農業分野におけ る実績も考慮し,ランニングコストを含めた総合的なコストダウンとなるような 形式を採用するものとする。
簡易発電システムにおける取水方式としては,表Ⅳ‑2.1 に示す取水方式を参考 に,現地状況に合わせて適切な方式を選定する。
択するのが一般的である。さらに,河川水を水源とする場合で,水路勾配が急で巨石 の流下などが流下する可能性があり,土砂の堆積が著しくて,みお筋や取水位の確保 を十分に検討する必要があるような渓流取水の場合は,特に水クッション方式やバー スクリーン方式を採用することが多い。
水道分野における渓流取水方式は,一般に次のように分類される。
図Ⅳ‑2.1 水道分野の渓流取水方式の分類
一方,農業分野では「土地改良事業計画設計基準・設計「頭首工」(平成 7 年 7 月 農 林水産省構造改善局)」に渓流取水の要件として,
① 急激な流量変化に対して,安定した計画取水ができること
② 流下土砂礫,種々の浮遊落下物によって,取水障害が起こりにくいこと
③ 流石,流木等に対して堅牢であること
④ 構造が簡単で,維持管理が容易であり,その費用が低廉であること
⑤ 取水制限流量等の取水規則がある場合には,その条件を確実に満たし得る 措置を講じること
⑥ 冬季,積雪,凍結のあるところでも取水障害が起こりにくく,損壊しにくい こと
⑦ 周辺の景観や,河川環境を損ねないものであること
⑧ 魚族の棲息する渓流河川では,その環境を保証し得るものであること
自然取水方式
( 渓 流 取 水 方 式 ) 底部取水方式(チロリアン)
後方取水方式 複合方式 バースクリーン方式
側方取水方式
集水管(槽)方式 水クッション方式
図Ⅳ‑1.2 農業分野の渓流取水方式の分類
簡易発電システムにおける取水方式の例を,上記水道分野および農業分野の実績に 発電分野の実績を加え,表Ⅳ‑2.1 取水方式一覧」に整理した。
簡易発電システムにおける取水方式としては,表Ⅳ‑2.1 に示す取水方式を参考に, 現地状況に合わせて適切な方式を選定する。
渓 流 取 水 方 式
底部取水方式(チロリアン)
後方取水方式
複合方式 バースクリーン方式
側方取水方式
集水管(槽)方式 水クッション方式
取水堰方式
スクープタイプ(scoop type)
越流水俯角面付着取水堰方式
Ⅳ‑2.5
表Ⅳ‑2.1(1) 簡易発電システムにおける取水方式の参考例
採用事例等
取水方式 取水規模 分 類 概念図 概 要
採用状況 備 考
多孔管
河床内の透水層に多孔塩ビ管等を設置し、
浸透した流水を取水する方法。堆砂した砂 防ダムに適用できる。
中国電力㈱周布川第一発電所
(Q=0.30m3/s)
集水管方式
(集水暗渠)
渓流の河床面下に集水管を埋設し取水す
る方法。
長所:0.05m3/s 程度の小規模取水では安定 した取水が期待できる。
短所:取水量が大きくなると暗渠が大きく なり、取水地点が制限される。一般 には維持管理は難しい。
東京電力㈱ 信濃川発電所
(Q=0.12m3/s)
中国電力㈱ 安蔵川発電所
(Q=0.35m3/s)
透水マット
透水マットがフィルターの役目を果たし、
水頭差を利用して取水する方法。
中部電力㈱春日発電所
ヘチマロン:プラスチック立体網状成形品
浸透水取水方式
小流量 0.002m3/s/m2 程度
フトン籠
取水口などにフトン籠を配置し、流水をろ 過する方法。
九州電力㈱ 槇之口発電所
(Q=0.16m3/s)
その他、砂防ダム等
(ふとん篭+集水管)
(ふとん篭+集水管)
越 流 水 付 着 水 取 水
小流量
0.016 m3/s/m ―――
円弧状の堰頂部を流下する水を付着力に
よって俯角面に沿って取水溝に導く方法。
長所:土砂礫、流木等の流下物は分離され、
除塵効果は高い。
金沢市企業局 新内川第二発電所
(Q=0.13m3/s)
中部電力㈱ 松川発電所
(Q=0.10m3/s)
北電技術コンサルタント㈱
平成 8 年 8 月実用新案登録
導水管 平 面 図
透水層
多孔塩ビ管
ダム等
透 水 マ ッ ト ( フ ィ ル タ グレーチング敷設
Ⅳ‑2.6
表Ⅳ‑2.1(2) 簡易発電システムにおける取水方式の参考例
採用事例等
取水方式 取水規模 分 類 概念図 概 要
採用状況 備 考
表流水
堰または落差工の上流河床部に半円(矩 形)状の集水井をつくり、構造物を有孔加 工して取水する方法。
集水井方式 小流量
伏流水
井戸底部付近に多孔集水管を放射線状に
配置して取水する方法。
伏流水の流況が良ければ、安定した取水が 可能。
(集水井) (導水管)
側 方 取 水 方 式
越流水は水クッション部で常流状態とな
り、水路側面にある取水口から取水する方 法。
東 北 電 力 ㈱ 実 川 発 電 所
(Q=0.35m3/s)
中国電力㈱ 新大呂発電所
(Q=0.09m3/s)
ス ク ー プ 方 式
下流側流出口(デフレクター)の敷高を流 入口よりも高くし、水クッション部に沈積 した土砂礫を下流へ掃流しながら、水路側 壁に設けた取水口から取水する方法。
長所:比較的小粒の土砂礫に対する掃流効 果は高い。
短所:水利模型実験を行い、最適形状を確 認する必要がある。
水クッション方式 小〜中流量
集水槽方式
水クッション底床部に集水槽を設置した
取水方法。流水を水クッション内で常流に 保ち、ろ過層の浸透性を利用する。
集水井
平 面 図
導水管
砂防ダム 集水井
導水管 断 面 図
Ⅳ‑2.7
表Ⅳ‑2.1(3) 簡易発電システムにおける取水方式の参考例
採用事例等
取水方式 取水規模 分 類 概念図 概 要
採用状況 備 考
底 部 取 水 方 式
(チロリアン)
固定堰越流部や落差工等に設定されたバ
ースクリーンによって土砂礫、流木等を排 除し、流入水を集水路に導く方法。
長所:構造が簡素で、取水効率に優れる。
短所:流木、浮遊流下物による目詰まりが 生じやすい。
後 方 取 水 方 式
傾斜部にバースクリーンを配置し、水クッ ション部で常流状態となった流水を背面 から取水する方法。
長所:土砂礫、浮遊流下物による目詰まり が起き難い。
短所:チロリアンに比べて構造が複雑。
富 士 川 水 系 琴 川 取 水 堰
(Q=0.232m3/s)
:後方取水方式
バ ー ス ク リ ー ン 方 式
中〜大流量 0.1〜0.3 m3/s/m
(単位幅当り)
複合方式
浮遊流下物等によるバースクリーンの目
詰まりを防ぐために、スクリーンの取付け 角を 45〜50°とし、越流水の取水と水叩き 部からの背面取水を見込んだ取水方法。
長所:取水効率が良く、洪水時の取水にも 適する。
短所:チロリアンに比べて構造が複雑。
嵩上げ取水方式 中〜大流量 ―――
既設ダムの嵩上げにより得られた容量を
利用し、取水口を設置して取水する方法。
:ゴムダムによる嵩上げ
水 路 落 差 工 取 水 方
式 中〜大流量 ―――
既設水路内の落差工を利用する取水方法。
河川や水路などの流れの方向に対して、側
面部に取水口を設けて取水する方法。
嵩上げ