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国立大学法人 長崎大学(拠点設置国:ベトナム)

5. 各研究拠点における評価

5.9. 国立大学法人 長崎大学(拠点設置国:ベトナム)

15℃以上であったことから、ヒトスジシマカは11月から野外で採集されなくなったが、

ネッタイシマカは冬期においてもコンクリートタンクなどで採集され、コンクリートタンク はネッタイシマカにとって好適な越冬場所と考えられた。このことから、ハノイでのデング ウイルス感染にはネッタイシマカが強く関わっていることが示唆された。

その他、公衆衛生への裨益を念頭に、アウトリーチ活動としてハノイ在留邦人向けの市民 公開講座を2度実施し、いずれも好評であった。

人材育成については、長崎大学ベトナム研究拠点では、①若手研究者の積極的登用、②感 染症分野での教育への貢献、③事務職員の育成、を実施している。①に関しては、通算13 名の研究者をプロジェクト経費で雇用(有期)し、大学定員内教員2名(教授、准教授各1 名)への昇任があった。また、ベトナム人研究者の教育に関しては、拠点スタッフとして5 名を雇用し、NIHE職員10名程度をプログラム活動を通じて研究指導している。②に関して は、日本国際保健学会学生部会の「学生の為の熱帯医学フィールドマッチング企画」の参加 学生や、長崎大学の学部生や修士課程学生を受け入れ、感染症に関する指導を行うとともに、

平成24年度からはベトナム拠点において長崎大学医歯薬学総合研究科(博士課程)学生教 育が実施できることとなった。③に関しては、海外拠点において若手事務職員の研修・教育 を行い、感染症研究をロジ面で支える人材の育成に取り組んでいる。

5.9.2. 評価結果

①研究拠点設置の目的について

ベトナムで問題となっている疾患(デング、熱性疾患、ARD、狂犬病、下痢性疾患等)

に対してのベトナム側との共同研究が遂行しており、これらの研究は、ベトナムへの公衆 衛生学的貢献のみならず、東南アジア、さらに日本にとっても重要な貢献に成り得ると考 えられ、長崎大学ベトナム拠点を設置したことは妥当であると考える。

②拠点における実績

研究拠点設置国機関等と連携については、NIHEを通してベトナム保健省と連携し、ベト ナムの保健行政に関与するとともに、病院と直接関連をもっている点も評価されるべきで ある。特に、今回のベトナムに発生した集団皮膚疾患の原因解明に、長崎大学を窓口とし

てJ-GRIDに対し研究協力要請があり、特筆に値する。

しかしながら、ほかの海外拠点との連携が少なく、今後に期待するとの意見もあった。

研究拠点を活用した研究の推進については、全般的に第1期目の基盤成果が活かされ、

第2期目でその発展が見られてきており、ウイルスから細菌、フィールドと実験室と良く 準備された研究体制を取り、ほぼ計画に従った成果を挙げていると考えられる。この成果 がベトナムの公衆衛生行政に直接影響を与えており、相手国の保健政策に対して大いに貢 献しているとともに、市民公開講座の開催などの社会貢献も見られている。

しかしながら、プロジェクトが多すぎるとともに他の拠点との連携が見えにくい、拠点 間での共同研究がスタートしたものもあるが、それがどのように今後発展し、個々のプロ ジェクトに活かされるのかビジョンが良く見えないとの意見もあった。

資金調達については、J-GRIDの活動を活かし、科学技術振興調整費、頭脳循環を活性化 する若手研究者海外派遣プログラム、グローバルCOEプログラム、科学研究費補助金など を確実に確保しており、それらを利用した総合的研究が推進されている。

しかし、公的資金に限られているので、民間や企業からの資金調達も視野に入れると良 いのではとの意見もあった。

人材育成について、熱帯医学研究所の人的リソースを活用しつつ、日本人拠点スタッフ を5名雇用し、カウンターパートであるNIHEの職員10名を現地と長崎大学で教育し、学 位を取得させていることは評価に値する。

若手事務職員の登用をもって、医療研究現場を支える実務者を育てることは、研究者に とっても研究に専念できるメリットは大きいと考えられ将来の研究分野にとって重要な要 素と考えられる。

しかしながら、学部学生教育にも取り組んでいるようであるが、裾野を広げるという点 で意義があるものの、研究者育成には必ずしもつながらないのではとの意見もあった。

5.9.3. 総評

日本側の感染症に関する実力とチームワークの良さが成果の要因と感じられ、人獣共通感 染症について、同一研究拠点で人・獣の双方の側面からの研究が進められているのは有意義 であることから拠点の継続は妥当である。

しかしながら、ベトナムに拠点を置き、継続させることへの明確な説明が必要であるとと もに、ほかのベトナムを拠点とするプログラムとの連携も視野に入れるべきである。

5.10. (独)国立国際医療研究センター(拠点設置国:ベトナム)

代表責任者:岡 慎一(独立行政法人国際医療研究センター センター長)

(単位:千円)

年度 H22 H23 H24 H25 H26 総額

予算額 116,895 113,000 85,000 314,895

5.10.1. 拠点の概要

国立国際医療センターは、今後日本でも増加が予測されるHIV CRF01-AEの薬剤耐性や体格 が日本人に近いアジア人での副作用への対策、薬剤耐性結核の問題解明、鳥インフルエンザ

(H5N1)の包括的な治療法の開発などを目的に研究拠点を設置し、共同研究を行っている。

第2期には、更にこれらの研究を発展させるが、平成24年度からは日本でも散見されるよ うになってきた高度薬剤耐性菌による病院内感染症に関しても、研究を立ち上げることとし た。我が国との交流が多いベトナムでこれら問題に進んで取り組み、臨床研究を共同で実施 し、その結果、感染症対策上のエビデンスを創出することは我が国にも途上国にも大きく裨 益する。

研究拠点設置国機関等と連携については、ハノイ市各群の結核センター・ハノイ市結核病 院・国立肺病院の連携研究を推進させ、地域の結核の疫学的状況を把握し、高度な菌の解析 までを可能にするシステムを構築した。また、H5N1感染に対する疫学調査、住民教育、医療 従事者への教育、治療の為の医療ネットワーク(19の省病院)作り、高度治療介入の導入 を包括的に実施した臨床疫学研究を実施するとともに、この活動により、拠点病院(バクマ イ病院)ではベトナム北部の医療機関の統括者としての役割強化に成功し、それが南部にも 広まってきた。

同拠点における研究事業では、新興呼吸器感染症については、H5N1を中心に研究を推進し、

H5N1発生のリスクファクターを調査し発生を防止するとともに、地域中核病院の医師の教育、

専門医によるコンサルテーションシステムの確立、専門知識の交換・共有、患者の移送の迅 速化を図る医療機関間のネットワークの構築等を実施してきた。結核については、ベトナム 医療従事者の結核感染の現状を把握するため、新規免疫学的診断法を導入し、その蔓延状況 が判明したところであり、この結果は、WHOの提言(use of interferon-gamma release assay in tuberculosis control in low- and middle-income settings 2011)の主資料としても引用されている。

HIVについて、欧米人を対象にした研究を基にして作られたHIV治療ガイドラインがアジアに おいても最適な治療ガイドラインとなるのかを検証するため、ハノイにHIV感染者1,000名の 患者コホートを設立し、応用性の高い臨床研究基盤を整備してきた。このコホートを用い、

治療成績や薬剤耐性出現頻度、副作用の検討などを行っている。

人材育成については、当該プログラムにより、博士号取得(2名)、修士号取得(1名)

者を輩出するとともに、H5N1感染の診療・研究活動の専門家として、バクマイ病院若手医師

2名、日本人医師2名、研究コーディーネーター1名を育成するとともに、また、教育研修 活動参画者の内、現地医師2名がセクションチーフに、日本人医師1名が医長になるととも に、研究員1名が他大学の助教となった。また、バクマイ病院医師がリーダーとなったH5N1 治療・研究ネットワークの構築により、リーダーのICU部長が、平成23年にベトナムICU学 会の会長に就任している。

5.10.2. 評価結果

①研究拠点設置の目的について

拠点の中では臨床研究に重点を置いた数少ない貴重なプログラムであり、HIV/AIDSや結 核研究分野で優れた業績を挙げており、NCGMが長年協力してきたバクマイ病院を始め、

ハノイとホーチミンの複数の病院との共同研究体制は貴重なものだと考えられ、目的は妥 当であると評価できる。

②拠点における実績

研究拠点設置国機関等と連携については、バクマイ病院はじめ、ベトナム北部・南部の 国立病院との関係、鳥インフルエンザに関連する19の省病院との医療ネットワーク構築、

WHOと保健省エイズ対策室との連携・指導など、連携が十分に図られており評価できる。

研究機関との連携は、バクマイ病院内の研究施設のみであり、NIHEとの連携は不明確と の意見もあった。

研究拠点を活用した研究の推進については、ベトナムは死亡例も含む新興呼吸器感染症 の流行地域であり、この点に留意した研究が着実に進められている。特に、HIV/AIDSや結 核、インフルエンザ研究分野で計画に沿って研究が進捗し、有意義な成果が創出されてい る。両疾患の公衆衛生面での影響は大きく、十分な社会貢献が成されていると思われる。

しかしながら、社会・公衆衛生への貢献については、拠点設置の目標の一つとして意識 的に取り組まれているものの、限定的であるとの意見もあった。

資金調達については、熊本大学のグローバルCOEとの連携や、厚労省関連の研究費、企 業からの民間資金の導入など、統合的に研究を展開している。

しかしながら、外部資金を獲得しているものの、公的資金、特に国際医療研究センター に付与されている資金が中心であるとの意見もあった。

人材育成について、大学とは異なる条件にあって、人材育成に配慮した拠点活動が展開 されている。特に現地の臨床の第一線の医師の感染症研究能力、治療能力が上昇すること は、当該国にとっても、また、世界的な感染症流行阻止の面からも評価されるべきことで ある。

しかしながら、現地の人材に対する教育に関して努力の跡が見られるが、日本側の人材 育成が若干物足りなく、技術者・実務家が主体であり、研究者育成は限定的である。さら に、現地参画医師の要職への就任は人材育成の一つと言えるが、今後はこれを契機に裾野 を広げる努力をもって、感染症現場対応能力の底上げにつなげる具体的な施策を構築する

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