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4 省庁におけるタイムスタンプのニーズ調査

4.3 調査結果

4.3.2 国税庁

①  「国税電子申告・納税システム(

e-Tax

)」について

国税庁では、納税者の利便性向上を目的として「国税電子申告・納税シス テム(

e-Tax

)」の開発を進めている(図

4.3-2

)。

e-Tax

では、現在書面を用いて行われている以下のような申告、納税及び申

請・届出等について、インターネット等から利用することが可能になる。

e-Tax

では、以下の手続を利用することができる。

z

申告:

  所得税(死亡した場合のいわゆる準確定申告を除く。以下同じ。)、 法人税(連結納税に係る申告を除く。以下同じ。)及び消費税(地方消 費税を含む。以下同じ。)に係る申告

z

納税:

  全税目に係る納税(源泉所得税の納付や納税証明書の発行のための 手数料の納付を含む。)

z

申請・届出等:

  青色申告の承認申請、納税地の異動届及び納税証明書の交付請求等 の申請・届出等

e-Tax

は、平成

16

2

月から段階的に運用開始され、名古屋国税局管内の

納税者及び委任を受けた税理士等からの開始届出書の受付が開始された。

4.3-2

  国税電子申告・納税システム(

e-Tax

)(出典:国税庁)29

②  納税証明書について

納税証明書とは、課税額の納付状況の証明であり、納税額、所得金額、未 納の有無等を税務署長等が証明するものである。納税者は、金融機関からの 融資や保証人の審査、各種施設等への入園・入居申請、軽自動車の継続審査 といった民間、行政との取引や手続において、納税証明書が求められる場合 がある。

ヒアリング応対者の説明によると、国税庁から電子的な納税証明書を発行 しようとする場合、納税者に正しい発行時刻を示すために、第三者機関を利 用した証明の必要性について検討がなされた経緯があるという。また、納税 者の側からみた時刻証明のニーズとして、オンラインで申請を行った際に回 線や国税庁側のセンターの障害があって申請書が送信できなかった場合に、

申請の時刻を証明したいという動機は考えられるとのことである。しかし、

いずれのケースについても、設計時点における時刻証明という技術の動向や

29 http://www.e-tax.nta.go.jp/gaiyou/gaiyou3.html

国税庁が対象とする広範なユーザが負担すべき利用コスト等を考慮し実現に は至っていない。

電子的な納税証明書に関する論点としては、署名や証明書の有効期限や失 効の問題もある。納税証明書は、上記のような民

-

民の間の契約において使用 する場合等において、納税者の求めに応じて税務署長等の署名がなされた納 税証明書として発行される。

納税証明書を電子化した場合、書面の場合に対応して税務署長等の電子署 名と証明書が付与されるが、発行された納税証明書が相当期間を経て流通し た場合、流通の過程でこの証明書が失効した場合にそれをどう扱うべきか、

また、証明書の有効期限を延長させることが必要になるかといった事項が問 題になる。納税証明書発行時点で有効であることが確認されている納税証明 書が、相当期間を経て流通し、その流通の過程で証明書が失効したことで、

納税証明書が無効になることはないと思われるがそれを受領した第三者がど のように確認をするかが多少気になる部分ではある。

③  国税庁への申請の到達と納税者への通知にかかる問題

時刻証明にも関係する問題として、納税者から国税庁への電子申請の到達、

ならびに、国税庁から納税者への電子的な通知、それぞれにおける処理の方 法に関する事項がある。

税務手続における期間、期限等の取り扱いについては国税通則法で定めら れている。ヒアリング応対者の説明によると、納税者から電子申請があった 場合、申請書が作成した時刻そのものよりも、いつシステムに到達したかが 重要となる。現在のシステムでは、システムの内部時間(

UTC

(協定世界時)

を使用)と到着順で管理されており、タイムスタンプ技術を採用するには至 っていない。申告に関して係争になった場合でも、現在のシステムで対応は 可能であると考えているという。

また、申告書を郵送する場合は、消印等による発信日付が提出日であると の適用を受けているが、電子申告の場合に、民間の第三者機関による公証シ ステムで代用できるかについては、論点の一つになると考えられる。

国税に係る係争については、「処分通知を受け取っていない」あるいは「見 ていない」といった、行政処分に関するものの方が圧倒的に多いとのことで ある。処分通知を電子化した場合、相手方が通知を見たということをどのよ うに証明するかが問題となるが、技術的にも難しい課題であると認識されて いる。現時点では、処分通知の電子化は行われていない。

④  タイムスタンプ技術へのニーズと課題

国税庁におけるタイムスタンプ技術へのニーズについては、国税庁(税務 署)から納税者へ発行される納税証明書や納税者から国税庁への申請の電子 化において、顕在化してくる可能性がある。

ヒアリング応対者の説明によると、以前に商用のタイムスタンプ関連サー ビスの利用可能性について検討したことがあるが、一番の問題はコストにあ ったという。確定申告の場合、個人

2,000

万件、法人

300

万件の膨大な申告 を処理する必要があり、しかも処理のピークが特定の日に集中する。

このような膨大な税務関係の電子データの長期保存には多大なコストがか かる。なお、行政で扱う文書へのタイムスタンプの付与と長期保存について は、省庁横断的に行うべきとする意見もあり、議論が必要である。

また、国による電子政府の実現に先駆けて

IT

化に取り組んできた国税庁に おいては、タイムスタンプを含む

PKI

関連技術の動向を今後も注視する必要 があるという。また、証明書の失効確認等、実装可能な仕様がベンダー間で 統一化されていない現状においては、自システムでの実装と流通をどのよう に考えていくかが必要であるとの意見が聞かれた。