(平成25年4月から平成27年3月)
[試験研究期間]平成18年度〜平成27年度
[担当者]戸井田伸一
(3) 経常試験研究費 ア 地域課題研究費
(ア) 基礎試験研究費
a ワカサギ放流技術開発研究
[目 的]
芦ノ湖産ワカサギ卵の放流効果を明らかにするとともに、安定した釣果が期待できるよ
うに、初期減耗対策技術を開発し、効果的な放流方法等を提言する。[方 法]
北原式定量ネット(口径22.5cm、側長80cm、目合NXX13)を用いて、平成26年11月12日 と12月18日の2回、湖内3地点において、10m垂直曳きによる採集(濾水量約0.4m3)を行っ た。採集した動物プランクトンは、ゴミ等を取り除いた後に沈殿させ、20mLに濃縮した後 に、1mL中の種類と個体数を調べた。
また、芦ノ湖の環境調査として、白浜沖、深良水門沖、養魚場沖の3地点において、抽 水植物を採集し、種判別すると共に、透明度、水温を記録した。
抽水植物は、自作の採集機を用いて1箇所あたり5回(ロープ長約10m)採集機を投入し、
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3月
飛来数 ( 羽 ) H24年度
H25年度 H26年度
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3月
飛来数 ( 羽 ) H24年度
H25年度
H26年度
湖底をゆっくり曳きながら抽水植物を採集した(調査面積:5m×5m=25㎡)
[結 果]
芦ノ湖で確認した動物プランクトンは14種類であった。湖内3地点の平均個体数は11月
にケンミジンコ(316個体)、ダフニア類(50個体)、オナガミジンコ(18個体)、その 他のミジンコ(16個体)、フクロワムシ(151個体)、トゲナガワムシ(14個体)、ワム シ類(14個体)、ケラチウム(渦鞭毛藻類、30個体)。12月は、ケンミジンコ(131個体)、ダフニア類(17個体)、オナガミジンコ(2個体)、その他のミジンコ(5個体)、トゲナ ガワムシ(15個体)、ワムシ類(23個体)、ケラチウム(56個体)であった。
平成25年度までは、ケラチウムの出現はごくわずかであったが、11月と12月の調査では、
ケラチウム(渦鞭毛藻類)が増加している上、平成25年4月には、トゲナガワムシの大量発 生がみられたことから、今後ワカサギの孵化が増加する4月以降のケラチウムとトゲナガ ワムシの発生状況に留意する必要がある。
図5−3 2014年11月と12月に芦ノ湖で調査した動物プランクトン及びケラチウム(渦鞭毛 藻類)
図5−4 芦ノ湖における11月の動物プランクトン季節変化
図5−4 芦ノ湖における動物プランクトン出現状況
図5−5 棘があり、初期餌料に適さないトゲナガワムシ(左)とケラチウム(中、右)
2014年11月12日 2014年12月18日
ケンミジンコ ダフニア類 オナガミジンコ その他ミジンコ フクロワムシ トゲナガワムシ ワムシ類 ケラチウム ケラチウム
ケラチウム
平成26年11月12日 平成26年12月18日
芦ノ湖における抽水植物は、トリゲモ(Red List Ⅱ類)、イトモ(準絶滅危惧)、イバ
ラモ、ヒロハノエビモ、クロモ、セキショウモ、センニンモ、ササバモ、エビモの9種類が 確認された。また、車軸藻類のシャジクモとフラスコモ属が確認された。ブラウン‑ブランケ植性調査法に準じ、被度階級:5(75‑100%)、4(50‑75%)、3(25‑
50%)、2(10‑25%)、1(1‑10%)、+1%以下 に分け、被度階級が4(被度50%以上)
の抽水植物を調べたところ、8月はセキショウモとクロモ、11月と12月がセキショウモであ った。
年月日 調査地点 水温(℃) 透明度(m) 水深(m) H26/8/21
白浜沖 23.6 4.7 8.5 深良水門沖 22.5 4.9 8.1 養魚場沖 23.4 4.5 7.9 H26/11/12
白浜沖 14.9 5.7 8.0 深良水門沖 14.7 5.7 9.0 養魚場沖 15.1 5.5 8.0 H26/12/18
白浜沖 8.6 5.7 7.5 深良水門沖 8.5 5.7 8.5 養魚場沖 8.9 5.5 8.0
表5−1 芦ノ湖における、水温・透明度・水深
[試験研究期間]平成19年度〜平成27年度
[担当者]戸井田伸一、山本裕康
b 河川環境等復元研究
[目 的]
内水面水域の健全な生態系を保全・復元し、生物多様性を維持するため、絶滅危惧種等の生 息地を復元するとともに、飼育下での継代飼育による遺伝子の保存を図る。また、近年、魚類 保護のため、実施されている魚道の整備・改良や多自然型護岸等の「魚に優しい川づくり」事 業に技術支援を行う。
[方 法]
○自然水域における希少魚の分布・生態調査
相模川水の支流において、絶滅危惧IA類のギバチの分布調査を実施した。
○希少魚の飼育技術開発試験および種苗生産技術開発試験
県内産メダカを屋外200L水槽と屋内45cm水槽において人工水草に自然産卵させ、稚魚 を育成した。
○希少魚の水辺ビオトープおよび自然水域における復元研究
全長3,000cm、直径10cmのスタミナトンネルを用いて、ギバチの遊泳能力実験を実施し、
巡航速度と突進速度を明らかにした。また、カオリナイトを懸濁物質とした濁水暴露実 験を実施し、濁水が本種の生存に与える影響を検討した。
○自然型護岸や魚道の調査研究および魚に優しい川づくりの助言指導
○市民団体等の河川調査、外来種駆除および観察会の助言指導 [結 果]
○自然水域における希少魚の分布・生態調査
エレクトリックフィッシャーを用いた調査を5月と10月の2回実施したところ、ヤマメ、
ホトケドジョウ、カジカ、アブラハヤ、ウグイ、シマドジョウの絶滅危惧種が採捕された が、ギバチは確認できなかった。
○希少魚の飼育技術開発試験および種苗生産技術開発試験
県内産メダカの8系統について種苗生産を行い、計約1万尾を継代飼育するとともに、地 域の小学校の環境教育や市民団体の実施する自然保護活動などに活用した。
○希少魚の水辺ビオトープおよび自然水域における復元研究
ギバチの巡航速度と突進速度は、体長50mm以下のサイズがそれぞれ21.3cm/s、46.9cm/s、
51〜100mmサイズが26.1cm/s、52.1cm/s、101〜105mmサイズが34.0cm/s、48.6cm/s、151mm 以上サイズが37.6cm/s、70.7cm/sで、体長が大きいほど遊泳力も大きくなる傾向が見られ た。濁水暴露実験では、懸濁濃度が10、18、32、56、100g/ℓの試験区にそれぞれ48時間暴 露したところ、100g/ℓ区において供試魚10個体のうち1個体が斃死したのみであった。懸 濁物質として用いたカオリンの粒径は4μm未満であり、ギバチの二次鰓弁の間隔よりも約 1/10と小さかったため、呼吸阻害などの短期的な悪影響が発現し難かったものと考えられ た。
○自然型護岸や魚道の調査研究および魚に優しい川づくりの助言指導
国の河川事務所や県土整備局が実施する河川調査等について助言・指導を行った。
○市民団体等の河川調査、外来種駆除、観察会の助言指導
メダカやホトケドジョウの市民団体、河川や谷戸の保全団体やNPOが実施する調査や観 察会に対して、調査方法や生物査定、結果のとりまとめ等の助言指導を実施した。
[試験研究期間]平成26年度〜平成30年度
[担当者]内水面試験場 井塚 隆・住倉 英孝・西巻多香子
(イ) 生物工学研究費
a アユ資源管理研究
[目 的]
アユ増殖手法はこれまで種苗放流を主体として実施されてきたが、遺伝的多様性の保全に配 慮した増殖を行うためには、天然アユを増やすことを目的としてそれぞれの河川にあった産卵 場造成技術を確立する必要がある。
平成24年度から一般財団法人神奈川県内水面漁業振興会と相模川漁業協同組合連合会は、相 模川にアユの産卵場を造成している。相模川における産卵場造成技術を確立するためには、産 卵場造成前後の様々な諸データを蓄積しておくことが重要と考えられることから調査を実施し た。
[方 法]
造成エリアに10m間隔で5箇所の定点を設定し、水深、流速および貫入度を測定するととも に、産着卵の計数や河床の状態を撮影した。
水深は河床から水面までを5㎝単位で、流速はプロペラ式流速計(ケネック製:G20&GRT‑
400)を用いて水面からの60%の深さにおいて、0.1cm/s単位で10秒平均値をそれぞれ測定し た。貫入度は河床の柔らかさを判断する指標として、先端角度を45°に尖らせた直径1.3cm、
全長150cmの鋼製丸棒を河床に垂直にたて、5kgの錘を50cmの高さから自由落下させた衝撃で 丸棒先端が河床に貫入する深さを0.5㎝単位で計測した。また、産着卵の確認は、定点を設置 した区間において、ランダムに複数個所の川底の礫や砂礫をタモ網で約500ml採取し、目視に より産着卵数(未発眼卵、発眼卵、死卵)を計数した。
[結 果]
当初、産卵場造成は10月中旬に予定されていたが、台風18、19号の襲来に伴う増水のため 11月12日に延期となった。しかし、既に相模川の各所で産着卵が確認されていたため、天然の 産卵場に悪影響を与えないために造成場所等を変更することとなり、海老名市中野地先に約 3,238m2の産卵場が造成された。
造成は、天然の産卵場へのダメージを最小限にするため、重機を使用せず鋤簾による耕耘 で礫間の泥を洗い流すとともに拳大の石を取り除き、アユが嫌う河床の凹凸を整地する方法を
採用した。
造成前後で水深、流速および貫入度に変化は見られなかった。また、石の表面に付着した 藻類は除去された場所もあったが、拳大の石は依然として多く存在していた。造成日から6日 目、13日目、20日目に産着卵の確認を行ったが、何れも少量の産着卵が確認できたのみで流下 卵の可能性が高いことから、当該造成地で産卵があったとは考え難かった。
[試験研究期間]平成23年度〜平成27年度
[担当者]蓑宮 敦
b アユ種苗生産親魚養成・発眼卵供給事業
[目 的]
県内河川への放流用アユ種苗は、県が(財)神奈川県内水面漁業振興会に委託して、内水面 種苗生産施設において生産している。内水面試験場はアユの親魚を養成し、アユ種苗生産に必 要な発眼卵を同振興会に供給するとともに技術指導を行った。
[方 法]
平成25年度に当場及び内水面種苗生産施設で生産した人工産アユ(F1、F3及びF11)を親魚 候補として50t水槽8面で飼育した。1日4回に分けて、魚体重の4%相当のアユ用配合飼料を 給餌した。採卵時期を調整するため、LED電灯(20W及び32W型)1〜2台/面を用いて、表5−2 のとおり6月11日から9月15日にかけて電照飼育を行った。9月19日から雌雄選別を行い、10 月上旬より採卵した。受精は搾出乾導法で行い、卵は円筒型孵化器で管理した。
[結 果]
F11では電照終了1ヶ月後、F3では2ヶ月後、F1では2ヶ月半後に採卵のピークとなった
(表5−2)。採卵結果は表5−3のとおりとなった。10月10日〜10月14日に採卵した発眼卵 4ロット合計400万粒を供給した。発眼卵の供給後は、選別方法等についての技術指導を行っ た。なお、F11及びF3の発眼卵は同施設へ供給せず、翌年の親魚候補として当場で種苗生産を 行った。
表 5−2 アユ親魚の電照期間と採卵時期
親魚の系統 電照期間 雌雄選別 採卵のピーク
*前年の採卵のピーク
**F11 6/20〜9/15 9/26 10/17 10/3 F3 7/1〜8/20 10/14 10/14 10/18 F1 6/11〜8/1 9/19 10/10 10/29
*:排卵個体が最も多かった日
**:飼育池ごとの排卵個体が最も多かった日
表5−3 アユ採卵結果(内水面種苗生産施設への供給分)
採卵 使用親魚
系統 雌(尾) 雄(尾)
採卵総数 (千粒)
1尾当たりの 採卵数(粒)
g当たり 卵数(粒)
発眼率
(%)
雌親 体重(g) 月日
H26.10.10 F1 782 240 15,715 20,096 2,167 49.7 102.9 10.14 F1 354 103 6,536 18,463 2,229 57.8 121.5
合計
1136 343 22,251