第6章 生体卵胞内卵子と性選別精液の体外受精によるウシ性判別胚の生産
6.6 図表
日 9:00 16:00
0 CIDR留置
5 直径8 mm以上の卵胞の吸引
6 FSH
7 FSH FSH
8 FSH FSH, PG
9 FSH, CIDR抜去 FSH
10 FSH, GnRH
11 OPU(10:00, GnRH後25~26時間)
図6.1 SOV処理雌ウシに対するホルモン処理スケジュール CIDR:腟内留置型黄体ホルモン製剤
FSH:卵胞刺激ホルモン製剤
PG:プロスタグランジンF2α製剤
GnRH:性腺刺激ホルモン放出ホルモン製剤 OPU:卵胞吸引
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日 9:00 16:00
0 直径3 mm以上の卵胞の吸引
5 直径5 mm以上の卵胞の吸引 CIDR留置
7 FSH FSH
8 FSH FSH
9 FSH, PG FSH
10 FSH FSH
11 CIDR抜去, OPU(11:00)
図6.2 FGT処理雌ウシに対するホルモン処理スケジュール CIDR:腟内留置型黄体ホルモン製剤
FSH:卵胞刺激ホルモン製剤
PG:プロスタグランジンF2α製剤
OPU:卵胞吸引
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図6.3 採取した卵子の形態
上:膨化した卵丘細胞の付着する卵子 下:緊密な卵丘細胞の付着する卵子 スケールバー:50 µm
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表6.1 ウシ生体内卵子の採取成績
試験区 頭数
OPU時の卵胞数 直径8mm以上 27.1 ± 5.4 20.1 ± 2.6 直径5-8mm 2.9 ± 0.7 5.1 ± 0.7 直径5mm未満 1.6 ± 1.1 3.3 ± 0.4 合計 31.6 ± 4.8 28.6 ± 2.2 吸引 30 ± 5.2 25.3 ± 2.6 卵子数 合計 21.1 ± 3.9 15.1 ± 1.6 成熟卵子 11.6 ± 2.5 0.0 ± 0.0 未成熟卵子 8.4 ± 2.4 13.1 ± 1.6 成熟卵子率(%) 62.1 ± 8.4 0.0 ± 0.0 採取率(%) 71.7 ± 4.0 66.3 ± 8.0 平均値±標準誤差
SOV区 FGT区
14 14
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表6.2 ウシ生体内卵子からの胚生産成績
試験区
頭数 頭
培養卵子 個 20.1 ± 3.7 11.6 ± 2.5 10.7 ± 2.6 13.1 ± 1.6 卵割胚 % 77.4 ± 3.9 70.7 ± 9.1 64.8 ± 8.0 59.4 ± 8.0 5細胞期以上 % 60.6 ± 5.1 63.6 ± 9.0 a 33.0 ± 7.4 b 34.1 ± 7.9 b 胚盤胞期胚 総数 個 6.3 ± 1.4 c 4.3 ± 1.4 2.5 ± 0.8 2.2 ± 0.2 d
% 34.0 ± 4.3 34.8 ± 6.0 20.7 ± 6.9 21.8 ± 7.3 Good胚数 個 5.1 ± 1.2 3.3 ± 1.0 2.4 ± 0.8 1.9 ± 0.6
% 28.5 ± 5.0 28.7 ± 6.6 18.1 ± 7.1 18.7 ± 7.3 ab間およびcd間に有意差あり(p<0.05)
SOV区
合計 成熟卵子 未成熟卵子
FGT区
14 14 11 14
未成熟卵子
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表6.3 ウシ性判別胚の移植成績
試験区 胚区分 移植頭数 受胎頭数 受胎率(%)
SOV区 新鮮胚 6 3 50.0
凍結胚 36 13 36.1
ガラス化胚 4 2 50.0
合計 46 18 37.5
FGT区 新鮮胚 13 6 46.2
凍結胚 14 4 28.6
ガラス化胚 1 0 0.0
合計 28 10 35.7
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表6.4 子ウシ生産成績
雌 雄 雌率(%)
FGT区 6 6 0 100.0 276.2 ± 1.7 41.8 ± 3.1
SOV区 14 13 1 92.9 278.9 ± 1.4 45.3 ± 1.7
合計 20 19 1 95.0 278.1 ± 1.1 44.5 ± 1.5
平均値±標準誤差
試験区 産子数 性別
在胎日数 生時体重(kg)
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第7章 総括
わが国における酪農業は国民の食生活を支える重要な産業として位置づけら れているが、輸入飼料の価格は高止まりの傾向が続いており、今後さらに高騰 することが懸念されている。このような情勢のなか、穀物相場に翻弄されない 足腰の強い酪農経営を目指すために、飼料自給率の一層の向上や乳牛の生涯生 産性の向上に努めながら、能力と体型の改良を着実に進める必要があり、新た な改良手法や繁殖技術の活用に努めるとともに、基本的な繁殖・飼養管理技術 の高位平準化の取り組みが求められている。
ウシの胚移植技術は、優良後継牛の生産や黒毛和種肥育素ウシの生産を実現 する技術として国内の農家に広く普及しており、近年では移植後の受胎率は全
国平均で50%に近づき、年間20,000頭を超える子ウシが生産されている。しか
しながら、胚移植により生産される子牛は全国で生産される子ウシ総数のわず か1%程度を占めるに過ぎず、技術利用の一層の拡大が求められている。ウシの 胚移植技術は、供胚牛の過剰排卵処理、人工授精、採胚、胚の保存、受胚牛へ の移植の一連の技術から構成されている。現在、国内で実施される胚移植のお よそ 8 割は凍結胚移植で占められており、緩慢凍結胚を受胚牛の移植適期に合 わせて農場内で融解し直ちに移植する方法が一般的である。このような超低温 保存胚の利用方法はダイレクトトランスファー法とよばれ、人工授精と同様の シンプルな融解操作および移植操作で利用できることから、受胚牛の発情周期 に合わせた移植や胚を供給するセンターから遠隔地で飼養される受胚牛への移 植に広く利用されている。
胚移植の利用による付加価値を高めるために、性判別胚を利用した雌雄産み 分け技術が開発されており、確実な後継牛生産を可能にするとともに、後継牛 生産に仕向けない雌ウシから交雑種生産や胚移植による黒毛和種生産を行うこ とにより子ウシ販売による収入確保を可能にする点でも酪農経営の収益性向上 を可能にするものと考えられる。
家畜をはじめとする哺乳動物の性別は、受精に至った精子の性染色体によっ て決定する。すなわち、Y 染色体を持つ精子と X 染色体を持つ精子のどちらが 卵子と受精するかにより性別が決定される。そこで、あらかじめ性別を判定し た胚を移植に用いることで胚移植を利用した雌雄産み分けが可能となっている。
これまでに、家畜胚の性別判定は様々な方法が試みられてきたが、性別判定ま での所要時間の短さや判定精度の高さなどから、現在ではバイオプシーした胚 細胞から雄特異的 DNA を検出し性別を判定する方法が広く普及している
(Bredback ら 1994; Hirayama ら 2004)。
性判別胚を用いて計画的な子ウシ生産を農家段階で実用化するためには、性
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判別胚を超低温保存し、受胚牛の移植適期に合わせて融解し利用できる技術体 系の確立が不可欠である。性判別胚はバイオプシー操作により胚細胞の一部が 切除されるとともに透明帯が除去されている。これまでに、緩慢凍結により保 存された性判別胚において新鮮胚と同等の受胎性を確認した報告(Tominaga
2004; 沼辺ら 1995)がある一方で、インタクト(非バイオプシー)胚と比べて
耐凍性や受胎性が低下する(Thibier とNibart 1995; Hasler ら 2002)ことも報 告されている。一方、性判別胚をガラス化保存した場合には新鮮胚に近い受胎 率の得られることが報告されている(Agca ら 1998; Tominaga 2004; Vajta ら 1997)。
ガラス化保存は、高濃度の耐凍剤を含む溶液に平衡した胚を極めて急速に冷 却することにより細胞内外に氷晶形成を伴わない超低温保存法であり、緩慢凍 結と比較して、植氷やプログラムフリーザーを用いた冷却が不要なばかりでな く、適切な条件で処理されれば、胚の生存性低下が極めて少ないことから、性 判別胚、体外生産胚、核移植胚等の耐凍性の低い胚や卵子の超低温保存に利用 されている。
ガラス化保存では、細胞外液に氷晶を形成させないために、緩慢凍結に比べ て高濃度の耐凍剤を含む溶液が用いられており、加温後は低濃度の耐凍剤や糖 類を添加した溶液に胚を移し替えて、できるだけ早期に耐凍剤を希釈すること が、耐凍剤の化学的毒性を抑制するために必要とされている(Kasai 1997)。し かしながら、ガラス化保存ではダイレクトトランスファー法やワンステップス ト ロ ー 法 の よ う に 加 温 後 直 ち に 受 胚 牛 に 移 植 し た 報 告 は 少 な い (Van Wagtendonk-de Leeuwら 1997; Saha ら 1996)。
これらのことから、牛の雌雄産み分け技術を農家段階で普及するために、超低 温保存した性判別胚を農家の庭先で融解し、一般的な胚移植と同様の簡単な操 作で受胚牛へ移植できる方法(Dochi ら1998; Voelkel とHu 1992; Massip ら 1987)の確立が望まれる。
本研究では、ウシバイオプシー胚および性判別胚の超低温保存後の生存性と 受胎性を明らかにし、野外におけるウシの雌雄産み分け技術の普及の可能性を 考察することを目的として、緩慢凍結およびガラス化保存における保存方法や 融解、加温方法の影響を調査した。
近年、フローサイトメーターとセルソーターを利用して精子頭部のDNA量の 違い か ら X 精 子お よび Y 精子を 分取することが可能となり、人工 授精
(Andersson ら 2006; Hayakawa ら 2009)、 多 排 卵 処 理 に よ る 胚 採 取
(Hayakawaら2009)、体外受精および顕微授精(Hamano 2007)による胚 生産に利用可能なことが報告されている。しかしながら、性選別精液は非選別 精液に比べてストロー内に封入された精子数が少ないこと精子の生存性が低下
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していること)など(Hayakawaら2009; Peippoら2009; Larsonら2010)か ら、人工授精後の受胎率が低いこと(Andersson ら 2006; DeJarnett ら 2008;
Schenkら2009; DeJarnetteら2011)や、多排卵処理後に採取した胚の移植可 能胚率が低いこと(Hayakawaら2009; Peippoら2009; Larsonら2010)など が指摘されている。
一方、超音波画像診断装置と腟内挿入型探触子を用いてウシの生体卵巣から 排卵前の卵子を採取し、体外受精後に移植可能胚を生産する生体内卵子吸引(以 下、OPU)-体外受精技術(Pietersら1988)は、多排卵処理後に子宮灌流によ り胚を生産する方法を補完する胚生産技術として利用可能であるとともに、従 来の方法では胚生産の対象とすることができない供卵牛おいても移植可能胚の 生産が多数報告されている(坂口ら1995; 大谷ら 2005; Imaiら 2006; 今井と 田川2006)。
本研究では、新しい性判別胚生産システムの構築を目指して、OPU技術で採 取した体内成熟卵子と性選別精液の体外受精による性判別胚の生産と得られた 性判別胚を利用した雌雄産み分けの可能性について調査した。
第2章ではウシバイオプシー胚の緩慢凍結方法が胚の生存性と受胎性に及ぼ す影響を調査した。その結果、インタクト胚の受胎率は処理方法の間には有意 差は認められなかったが、バイオプシー胚では10E1S-DRが新鮮胚、10G-SWお
よび10G25S-DRに比べて有意に受胎率が低かった。また、いずれの方法におい
てもバイオプシー胚の受胎率はインタクト胚に比べて低い成績となり、バイオ プシー胚に適した緩慢凍結方法について更なる検討が必要と推察された。また、
10G-ISD で凍結保存したインタクト胚の移植により双子分娩が確認された事例
から、牛における自然発生的な一卵性双子の発生様式を検討した。
第3章では、ガラス化保存したウシ胚をストロー内希釈後に直接移植する方 法を農家段階で実用化するために、加温温度、加温後の保持時間および希釈液 の組成が加温後の胚の生存性に及ぼす影響を調査した。その結果、加温温度20℃
と30℃、あるいは希釈液の組成の違いにおいて胚の生存胚率および透明帯脱出
胚率に差は認められなかったが、ストロー内希釈後の保持時間の延長に伴って 胚の生存胚率と透明帯脱出胚率の有意な低下が認められた。このことから、ガ ラス化保存したウシ胚をストロー内希釈し直接移植する方法において加温から 移植終了までの時間が延長した場合には胚の生存性が低下する可能性があるこ とが示された。
第4章では、性別判定のためにバイオプシーを施した胚(バイオプシー胚)
のガラス化保存後の受胎性を調査した。その結果、ストロー内希釈後にストロ ーから取り出し胚の生存性を確認して移植したISD 区と、ストローから胚を取