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周波数特性

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フーリエ変換

5.4 周波数特性

このように,システムは,入力信号に含まれるさまざまな極に対応した成分に対し,シス テムの極に近い成分を強め,零点に近いものを弱めるなど,入力のそれぞれの成分の大きさ を変化させる.

システムの安定性 伝達関数H(s)において,s平面の右半面,すなわち原点よりも右側にあ る極に対応する成分は減衰ではなく発散する.このようなシステムでは,入力信号が有界で あっても,システムの出力信号は発散する.任意の有界な入力x(t)に対し,出力y(t)も有界 となるシステムを安定であるという.安定ではないシステムを不安定という.システムが安 定であるための必要十分条件は,システムのインパルス応答h(t)が次式を満たすことである.

−∞|h(t)|dt < (5.26)

つまり,システムが安定であるためには,伝達関数のすべての極がs平面の左半面に存在し ていなければならない.一つでもs平面の右半面に極が存在すると,システムは不安定にな る.虚軸上に単純極が存在する場合,その虚部の値に応じた周波数で一定振幅の正弦波(余 弦波)を永久に出力し続けることになる.これを発振現象という.

伝達関数H(s)の分母多項式と初期状態に依存するG(s)の分母多項式は等しい.つまり,

これらは等しい極をもつ.システムが安定ならば,G(s)の成分も収束する波形であり,十分 な時間を経た後はゼロになり,初期状態に依存するG(s)I(s)を無視することができる.

極の伝搬 最後に,極のおもしろい性質を紹介する.伝達関数H1(s)をもつシステムの後ろに 伝達関数H2(s)をもつシステムが接続されている場合,システム全体の伝達関数H(s)は,

これらの積

H(s) =H1(s)H2(s)

で表現される.また,伝達関数H1(s)をもつシステムと伝達関数H2(s)をもつシステムが並 列に接続されている場合,システム全体の伝達関数H(s)は,これらの和

H(s) =H1(s) +H2(s)

となる.これらのいずれも,H1(s)やH2(s)の極はH(s)でも保存されている,いいかえる と,極は和で増えていく.信号x(t)が伝達関数Hn(s),n= 1,2, . . . , Nをもつシステムを経 由していき,y(t)として観測されるとする.極と同じ位置にある零点により打ち消されない 限り,y(t)のラプラス変換Y(s)の極は,最初の入力信号X(s)と経由してきたシステムの

伝達関数Hn(s),n= 1,2, . . . , Nの極のすべてをもっている.つまり,ある信号のラプラス

変換の極を調べれば,その信号が作られた歴史を紐解くことが可能になるのである.

5.4 周波数特性

安定で因果的な線形時不変システムに複素指数関数(あるいは余弦波,正弦波)が入力され た場合,十分な時間が経った後では,起点をもつ信号成分,つまり過渡応答はゼロになり,

入力された複素指数関数の振幅と位相を変化させるだけのはたらきになる.このようなはた らきについて考えてみよう.

安定で因果的な線形時不変システムに余弦波や正弦波を入力し,十分な時間が経った後に はどのような出力が得られるのだろうか.余弦波や正弦波は,複素平面上に複素共役の関係 にある二つの極をもつので,簡単化のため,そのうちの一つの極に対応する複素指数関数 x(t) = eiωtを入力する場合を考える.

複素指数関数x(t) = eiωtのラプラス変換は,X(s) = 1/(s−iω)である.システムの伝達 関数をH(s)とすると,出力y(t)の伝達関数は,

Y(s) =H(s)X(s) +G(s)I(s)

= H(s)

s−iω+G(s)I(s) (5.27)

となるが,安定なシステムで十分な時間が経った後なので,右辺第2項は無視してかまわな い.第1項を部分分数分解すると,入力の極のほかに,伝達関数H(s)の極の成分が現れ るが,安定なシステムで十分な時間が経った後では,すべて減衰してしまうので無視してか まわない.すなわち,

Y(s) = A

s−iω, ただし,t0 (5.28)

だけが残る.ここで,係数Aは,式(4.27)より,

A= H(s)

s−iω(s−iω)))

s=iω=H(s)))

s=iω (5.29)

となる.式(5.28)を逆ラプラス変換することにより,

y(t) =H(s)))

s=iωeiωt, ただし,t0 (5.30)

が得られる.

式(5.30)において,H(s)|s=iωは,システムのインパルス応答h(t)のラプラス変換H(s)s=とおいたもの,つまりフーリエ変換H(ω)である.H(ω)は時刻tに無関係で,周 波数ωに依存した複素数である.したがって,2.6節で学んだように,複素指数関数eiωtを 因果的な線形時不変システムに入力した際の出力は,同じ周波数の複素指数関数となるが,

振幅は|H(ω)|倍,位相はargH(ω)だけ変化する.H(ω)は,因果的な線形時不変システム に複素指数関数を入力した際の出力の振幅や位相の変化を表しており,周波数伝達関数,あ るいは周波数特性,周波数応答などという.また,絶対値|H(ω)|は振幅特性,利得,ゲイ ン,偏角argH(ω)は位相特性,あるいは単に位相という.

例題5.9

例題5.8において,システムの極に依存する応答と入力の極に依存する応答を答えよ.ただ し,システムは安定,つまりa <0とする.また,システムの極に依存する応答は,十分な時 間が経った後はどのようになるかを答えよ.さらに,周波数特性H(ω)を求めよ.

解答 例題5.8の式(a)において,右辺第一項 eat

iω−a がシステムの極に依存する応答部分,第二 eiωt

iω−a が入力の極に依存する応答となる.a <0なので,第一項は,t→ ∞でゼロとなる.周 波数特性は,第二項において複素指数関数eiωtにかかる係数なので,H(ω) = 1/(iω−a)となる.

5.4 周波数特性 73

例題5.8,5.9において,式(a)の右辺第二項は,同じ入力が続く限り永続的に現れる成分

であることから定常応答という.これに対し,第一項はt= 0で入力が加わったことにより 一時的に現れる成分であることから過渡応答という.第4章では,これを起点をもつ信号と よんだのである.

式(5.30)と同様の結果は,直接,フーリエ変換を利用しても導かれる.因果的か否かにか かわらず線形時不変システムでは,入力と出力の関係は,

y(t) =

−∞

h(τ)x(t−τ) dτ (5.31)

と表される.y(t)h(t)x(t)のフーリエ変換をそれぞれY(ω),H(ω)X(ω)で表すと,式

(5.31)の右辺は畳み込み積分であり,フーリエ変換後は積になるので,

Y(ω) =H(ω)X(ω) (5.32)

となる.X(ω)は入力における周波数ωの成分量であり,これがH(ω)倍されて,出力Y(ω) になることを意味している.H(ω)は複素数なので,H(ω)倍するとは,振幅が|H(ω)|倍,

位相がargH(ω)だけ変化することを意味する.信号を周波数成分に分解して表現し,その 成分ごとに受ける作用を明らかにすることにより,システムの動作が直観的にわかるように なるのである.

安定な線形システムの定常応答においては,入力の各周波数成分の振幅と位相が変化する だけで,新たな周波数成分が増えることは決してない.本書では非線形システムについては 扱わないものの,多少でも非線形システムを知っておくと線形システムについても理解が深 まるので,一例を紹介する.入力x(t)に対し,y(t) =x2(t)を出力するシステムは,式(5.5) の条件を満たさないので非線形システムである.仮に,入力が角周波数1 [rad/s]の余弦波 x(t) = cos(t)とすると,倍角の公式により,出力はy(t) = (cos(2t) + 1)/2となり,入力に は存在していなかった角周波数2 [rad/s]の余弦波が新たに出現する.線形システムの場合,

このようなことは決して起こらない.

例題5.10

次式で示されるインパルス応答をもつ因果的線形時不変システムの伝達関数H(s),周波数特 H(ω)を求めよ.また,振幅特性|H(ω)|の概形を図示せよ.

h(t) =

(1, 0≤t≤T

0, そのほか

解答 与えられたインパルス応答h(t)をラプラス変換の定義式に代入してラプラス変換すること により,伝達関数

H(s) = Z T

0 1·e−stdt= 1

s(1esT)

を得る.伝達関数H(s)s=を代入することにより,周波数特性 H(ω) = 1

(1eiωT) を得る.上式の絶対値をとると,

|H(ω)|= 1

|ω||1−eiωT|

となる.1/|ω||1eiωT|は,それぞれ図5.10a),b)に示すものとなる.したがって,振幅特 |H(ω)|は,それらの積になるので,ω→0での極限に注意すれば,図(c)に示すものとなる.

5.10 振幅特性|H(ω)|の概形

例題5.11

 図5.11のような電気回路はRC直列回路とよばれ,電気工 学で頻出する電気回路の一つである(演習問題4.4参照).A vA(t)なる電圧を加えた際,回路に流れる電流をi(t)Bで観 測される電圧をvB(t)とすると,これらには次の微分方程式の 関係がある.

vA(t) = 1 C

Zt

−∞i(τ) dτ+Ri(t) vB(t) =Ri(t)

vA(t)を入力,vB(t)を出力とし,それらの間の伝達関数H(s)と周波数特性H(ω)を求めよ.さ らに,R= 106[Ω]C= 10−6[F]として振幅特性|H(ω)|,位相特性argH(ω)の概形を描け.

5.11 CR回路

5.4 周波数特性 75

解答 問題式をそれぞれラプラス変換し,すべての初期状態に依存する項をゼロとおくと,

VA(s) =

„ 1 sC+R

«

I(s), VB(s) =RI(s) となる.これらの連立方程式を解くと,伝達関数

H(s) = VB(s)

VA(s) = R

1/(sC) +R = 1 1 + 1/(sRC)

が得られる.伝達関数にs=を代入することにより,周波数特性は,

H(ω) = 1 1 + 1/(iωRC) となる.振幅特性は,

|H(ω)|= 1

p1 + 1/(|ω|2R2C2)

であるが,|ω| 1/(RC)ならば|H(ω)| 1|ω| 1/(RC)ならば|H(ω)| |ω|RCとなる.

つまり,|ω| 1では|ω||ω| 1では1となる.図5.12a)に振幅特性を示す.一方,位相特 性は,

argH(ω) = arg 1arg

„ 1 + 1

iωRC

«

= 0arg

„ 1 i

ωRC

«

=tan−1

1 ωRC

«

= tan−1

„ 1 ωRC

« となる(図(b)).

5.12 振幅特性|H(ω)|と位相特性argH(ω)の概形

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