第 68 回日本交通学会研究報告会 (全国大会) 統一論題
シンポジウム
平成21年10月3日拓殖大学文京キャンパスC401教室で, 第68回日 本交通学会全国大会の統一論題シンポジウムが経研創立50周年記念講演 会として開催された。 今年度のテーマは 「環境と交通」 で, 2009年9月 の国連総会で日本政府がCO290年比25%削減を打ち出した直後だっただ けに注目を集めるテーマとなった。 専修大学教授太田和博氏の司会進行に 基づき, 前半の部は4パネリストのキーノート・スピーチが行われた。 テー マと発表要旨は次の通りである。
① 「グリーン物流の企業動向 企業事例を中心に 」
㈱日本総合研究所上席主任研究員 下村博史氏
トラック輸送から排出されるCO2を削減する方策には, 燃費の改善, 積載効率の向上, 輸送距離の短縮という3つの方向がある。 燃費の改善に 関する代表的な施策としてはエコドライブがある。 積載効率を改善するた めには, 商品設計の段階まで踏み込んで検討する必要がある。 たとえば, 設計部門やマーケティング部門にパレットやトラックの荷台といった物流 特性を十分に伝えておくだけでも改善できる。 輸送距離の短縮は, 使用燃 料の削減を通じて直接CO2削減効果をもたらす。
② 「我が国における交通政策と地球温暖化対策」
国土交通省政策統括官付参事官 山口勝弘氏
地球温暖化に対する自動車・道路交通対策としては, 低公害車の普及促 進, 高速道路の弾力的な料金施策, 環状道路等の整備がある。 またトラッ ク輸送の効率化, 自営転換, モーダルシフト, 鉄道新線の整備等により, 環境負荷の小さい交通体系の構築がなされる。 公共交通の利用促進や物流 効率化を中心とするCO2排出量の削減策に関連して, 既存の税制評価や 排出量取引などの新しい取り組み, 都市構造への対応が求められる。
③ 「地球環境問題と交通における自由 将来世代への責務はあるのか? 」 大阪市立大学大学院経営学研究科教授 西村弘氏
公約達成への交通部門の課題として, 短中期的には自動車の燃費低減に かかわる技術革新の可能性と燃料供給源の選択が, 交通部門のCO2削減 の鍵を握っている。 しかしそれだけでは大幅な削減は困難であり, 交通需 要に変化を促す交通政策が必要不可欠となっている。
④ 「環境と交通」
東京大学公共政策大学院・大学院経済学研究科教授 金本義嗣氏 温暖化ガスの社会的限界費用は地球全体で同じであるので, 世界全体で 同じ税率の炭素税がファーストベスト効率と考えられる。 環境政策を効率
的な交通サービスの提供と両立させる必要がある中で, 自動車税制の再構 築を図ること, 自動車と鉄道, 航空, リニア等との関係を整理すること, 環境税や排出量取引が世界的な動きとなっており, 温暖化ガスに価格をつ ける必要性がある。
統一論題後半の部は, 奈良県立大学地域創造学部准教授 新納克広氏の コーディネートのもと, 「環境と交通」 に関するパネルディスカッション が行われた。 まずフロアから出された質問に各パネリストが回答するかた ちで議論が進行したが, パネリスト共通の問題としては高速道路の無料化 とCO2削減, 地球温暖化問題の将来世代に対する現代世代の責任, 地球 温暖化問題に対する発展途上国, 特に中国と日本との関係についてどう考 えるかの問いかけが行われた。 最も関心を集めたのは現政権が提唱した高 速道路の無料化問題であり, 交通量の少ない区間では効果があっても東名 高速道路など交通量が多い区間では渋滞に拍車をかけるため, 地球温暖化 に対する効果を検証していくことが重要であるという点で意見の一致をみ た。
学会の出席者は3, 4日両日で延べ249名であったが, 統一論題のシン ポジウムには文京区民や日本ロジスティクスシステム協会の会員など12 名に加え, 学生24名の参加があった。 なかには はじめての聴講です。
軽い気持ちで来たのですが, えらい所に来てしまったと思いました。 しか し大変勉強になりました。 むずかしい内容でしたが, わかるところもあり ましたので来てよかったと思っています という59歳の主婦や 楽しく 聞くことができました。 有難うございました という79歳と74歳の高齢 者の姿もあった。 経研創立50周年記念講演会が環境問題の理解を深め, 聴講者にとって思い出深いシンポジウムになれば幸いである。
(文責:芦田 誠)
サッポロビール蜂須賀正章氏の講演会
カーボンフットプリントの先駆的取り組み
平成21年11月14日, 拓殖大学文京キャンパスC301教室で経営経理 研究所50周年記念の公開講座が開催された。 講師は, 2004年に世界のビー ル業界で初めてCO2排出量削減を評価し, 09年2月から実際に黒ラベル でカーボンフットプリント (CFP) の表示試行を行ったこの分野の先駆 的リーダー 「サッポロビール㈱CSR部社会環境室長 蜂須賀正章氏」 で ある。 講演内容は, CFPの意味, 世界と日本の動き, 算定方法, 実施状 況, サッポロビールのCFPへの取り組み, 消費者調査, 今後の課題など であり, 要約すると次のようになる。
CFPとは 「炭素の足跡」 といい, 商品にどれだけのCO2がかかったか レッテルに記載する制度で, 国際的には2011年から国際規約として制定 される予定である。 CFPの長所としては, ①製品の原材料調達, 製造, 流通販売, 使用・維持, 廃棄リサイクルの各サプライチェーンでどれだけ のCO2を排出するか明確となり, 各段階でエネルギーの節約とコスト削