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結果

ドキュメント内 1.青年期と家族 (ページ 132-141)

これまでは日本人作成者8名中国人作成者4名計12名作成者の各回のセッシ ョンおよび表現された家族イメージの表現プロセスをまとめた。これからは 各々作成者に見られた特徴について全体的な検討を行う。

4-1 日本の場合

4-1-1 家族の箱庭のテーマ

箱庭は認知世界の具体的,現象的把握を目指すものであるが,それは単に家 族に対する過去の出来事や現状の再現にとどまるものではなく,言葉ではうま く言い表しがたい漠然とした家族のイメージやファンタジー,ヴィジョンとい ったものの表現をも可能にする媒体である。そこでそうした特性を生かし,こ れを把握するために家族の箱庭のモチーフから「Ⅰ.家族の具体的な出来事の回 想,家族の現状の再現」と「Ⅱ.心に描いたイメージ上の家族,ヴィジョン」と いう 2 つのメインカテゴリーを設定した。そしてこの 2 つのカテゴリーを基準 に80セッションすべてについて類似したテーマごとにまとめて分類したところ,

計6つのサブカテゴリーが抽出された(表5)。

5 4つのメインカテゴリーと6つのサブカテゴリー

Ⅰ.家族の具体的な出来事の回想,家族状況の再現

サブ 1.家族の風景:過去の家族の回想や日常の再現など

2.家族のイベント:家族や自分にとって意味ある出来事,経験など 3.家族の相互関係:家族の関係構造,家族内葛藤など

Ⅱ.心に描いたイメージ上の家族,ヴィジョン

サブ 4.家族や自己の意味付け:家族の独自性,自己の存在理由など

5.家族や自己の将来,ヴィジョン:家族の未来,理想の家族など 6.イメージ上の家族:心に描く想像の家族,ファンタジーなど

この 2 つのメインカテゴリーと 6 つのサブカテゴリーに基づき,全セッショ

ンについてその分布を表示したのが表6である。例えば,作成者A はセッショ ン1では「1.家族の風景」,セッション2では「2.家族イベント」について示 していた。全体としては48セッション(60%)がメインカテゴリーⅠ,つまり昔,

家族で出かけた海や高原,動物園などでの楽しい思い出,それに両親や兄弟と の葛藤や競争心,嫉妬などをリアルに展開させるなど,家族の具体的な出来事 を回想したり,日常の家族関係などを再現した家族イメージであることがわか る。これに対して 32 セッション(40%)は,家族成員のそれぞれが小人や動物の キャラクターに置き換えられて海底や深い森を探索したり,未来の家族,ある いは理想の家族が活き活きと描かれたりするなど,メインカテゴリーⅡに分類 されている。作成者も含め家族成員一人ひとりが具体的な人形ではなく,彼ら を象徴する動物などに置き換えられ,それを素材にして家族イメージを創作し ていた箱庭が数ケース見られたのも,このカテゴリーⅡに含まれる箱庭の特徴 でもある。また個人的には,メインカテゴリーⅠが 7 割以上を占める作成者

(A.B.C.D)と,反対にメインカテゴリーⅡが 7 割以上あった作成者(G.H)もいる

ことから,明らかに個人差も認められる。家族イメージの作品には,作成者の 自分の家族に対する主観的な認識がさまざまな形で表現される。しかもこれを シリーズとして続けていると,つまり個人内の家族イメージの変容のプロセス として追ってみると箱庭の中で一定の流れが生じ,独自のプロセスが進行して いくことが多いことがわかる。このとき家族イメージ作品のモチーフとなるの は,その家族の過去のイベントや現状についての回想,再現といったものばか りではない。心に描いたイメージ上の家族,将来の家族,理想の家族などのモ チーフも出現している。

6 テーマの推移

セッション メイン

作成者 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Ⅰ Ⅱ

サブ A 1 2 2 2 2 1 2 1 2 1 10 0

B 1 3 3 2 2 2 4 2 3 4 8 2

C 1 1 1 2 6 6 2 2 2 2 8 2

D 1 1 6 1 2 1 5 4 1 1 7 3

E 5 1 2 3 3 3 4 3 5 4 6 4

F 1 2 3 6 6 5 2 6 6 4 4 6

G 4 6 6 6 6 2 2 6 6 1 3 7

H 2 1 6 6 6 6 6 6 6 6 2 8

計 48 32

またこれを回数を追って検討してみると,全体として前半よりもセッション を重ねた後半になるにつれ家族のモチーフは日常の具体的な事象から離れ,心 に描かれたイメージとしての家族がモチーフになっていく傾向にあることが認 められた。表 7 は家族イメージの作品の制作を継続していくにつれ,テーマそ のものにもどのような変化が生じているかをとらえるために,最初の 3 セッシ ョンと最後の 3 セッションについて各カテゴリーの出現頻度を示したものであ る。その結果,メインカテゴリーⅠは前半と比べ後半はやや減少する傾向にあ り,反対にメインカテゴリーⅡは後半でやや増加している傾向にあることがわ かる(χ2=3.2, df=1, p<.1)。サブカテゴリーのなかでは「1.家族の風景 : 過去の家 族の回想や日常の再現など」の後半での減少が特徴的である。事例数が少ない ので,一般化はできないが,10 回のうち,メインカテゴリーⅠが7割以上を占 める《作成者A, B, C, D》は,総じて現実の家族関係や出来事を基盤に,そこか らイメージを展開させて家族や自分の将来,夢を箱庭で表現しようとする傾向 が窺えた。これに対して,メインカテゴリーⅡが 7 割以上あった《作成者 G》

は,家族のイメージを自由に浮かべ,そのなかで自分が主体的に行動しようと したり,家族を展開させていくような動きが見られたが,反対に《作成者 H》

は,できるだけ現実に触れることは避け,空想やイメージの世界でなら自分の

気持ちや夢,将来など表現できるといった傾向が窺え,作成者 G とは異なる反 応を示していた。

7 カテゴリーの(前後3回)出現頻度

カテゴリー 前3回 後3回

1 10 5

2 5 5

3 3 2

計 18 12

4 1 4

5 1 1

6 4 7

計 6 12

また個々の作成者の作品のテーマを追ってみると,メインカテゴリーⅠ,あ るいはⅡのどちらか一方に偏っているといった個人差は認められるものの,1名 を除くほとんどの作成者のモチーフはこの両方のカテゴリーに及んでいる。

例えば《作成者D》 は,前半では子どもの頃の思い出や家族の日常,それに 町の風景といったことがテーマの中心になっていた。やがて中盤になると,背 景では依然として‘家族旅行’という現実的な家族関係を展開させながらも,これ までの親の躾や道徳観に対する不満や疑問を本人のコマに「本当かよ!」と本音 で語らせている(セッション 5)。そしてセッション 6 では‘これからの家族’とい うタイトルをつけ,頑丈な家の柵の中にいる自分が両親との死別の不安を実感 しつつも,同時に自立への気持ちも強いことを自覚するようになっている。こ れがセッション7になるとテーマは未来の家族がメインとなる(図1)。上部中央 の橋を渡っていくとそこが未来の家族。「両親はあと数年で入ることになるお墓 に向かって歩いている」と説明する。そこは自分がこれからやりたいことがい っぱいある世界なのだが,困難もたくさんあって頼れる人もいない。そんな不 安は 5 匹の蛇を配置することで表現している。セッション 8 では,背景はビル や神社が建っている現代の街並みなのだが,そこには家族の他にもすでに亡く なっている祖先も来ている。今,自分がここにいられること,これから挑戦し ようと思えることは「すべて祖先や家族のおかげ」だと思えるので,これらす

している(タイトル‘自分がここにいる理由’)。こうしてセッション 9 では再び家 族との楽しい思い出を回想してコンパクトに再現するとともに,最後のセッシ ョンには‘いつもの家族’というタイトルをつけ,それぞれ個性を持つ家族成員が 家族という枠を共有しながら生活しているという家族の日常を描いている。こ のように個人差はあるものの,家族の箱庭を10回連続して作成していく過程で は,テーマは様々に展開していくということが明らかになった。

1 作成者Dのセッション7

4-1-2 コマの使用

家族成員を表すコマに限定して検討してみると,人間のコマ,つまり人形を 家族成員に見立てて配置しているセッションは全体の 61%,動物に置き換えて 表現しているのが 31%,その他,人形と動物を混在させたり,家族成員を象徴 するコマがまったく登場していないセッションも8%認められた。こうしたこと から,作成者は家族成員のコマを画一的に当てはめたり,特定の家族成員に一 度使用すると,そのコマをいつまでも固定化させて用いるのではなく,それぞ れのテーマごとにキャラクターに合ったコマを工夫して探し,家族の箱庭を作 成していると推測できる。

例えば《作成者F》などは他の家族成員は人形を用いて表現しているにもかか わらず,本人とおぼしき人物についてはしばしば宇宙人として登場させている。

いずれの場合も,家族が一緒に遊んだり行動しているとき,宇宙人(本人,男性)

はその流れに入れず,少し距離を置いたところから眺めているといった状況は 共通している。男子の人形ではなく宇宙人としての登場は,家族からの距離感 や孤立感を実感するのを少しは緩和させてくれる機能を果たしているものと考 えられる。やがてセッションを重ね 8 回目ともなると,親や姉妹との心理的距 離は縮まり,自分の輪郭も少しは明確になってきて,宇宙人はいつの間にか皆 と楽しく遊ぶ男の子の人形に変わっているのである。また《作成者 B》では,

わがままな姉への不満や反発心から日頃からリアルな葛藤を繰り広げていたが,

いよいよその姉の出産を控えたとき,家族をそれまでの人形から象(父),羊(母),

馬と鹿(2人の姉),それに豚(本人)に変身させることで,家族が皆で暖かく姉を 支え,出産を見守っている光景が展開できるようになっている(セッション6)。

4-1-3 作品作成に伴う気づき,課題の自覚

ここで言う「箱庭作成による気づき,課題の自覚」とは,作成過程での体験 を含め,作成者が新たに気づいたこと,今後の課題を自覚したことなどについて 言語化した内容のことである。作成者から得られた内省は主に‘自己’について語 られたものか,‘家族’に関する事柄かということで分けてみると,家族の出来事 や現状が箱庭のモチーフとなっている場合は,「家族に頼って安心している自分,

家から自立したがっている自分,親の躾や価値観に縛られていた自分」に改め て気づかされたり,「家族への思いやり,親の支えになる,家族とのコミュニケ ーション」といったことをこれからの自分の課題としてあげるなど,自分に焦 点化して語られたのは50%であった。同様に,「家族は離れていてもお互いのこ とを考えている」ことに気づいたり,「それぞれがもっと適切な距離を取れるよ うにならなければ」と家族のこれからの課題を自覚するなど,家族そのものに 対する事柄について述べたものも47.9%いて差は認められない。

ところが,イメージ上の家族やヴィジョンなどがモチーフになっている箱庭 では,自己についての気づきや課題を報告したのは 62.5%と多く,反対に家族 への気づきや課題に言及したものは 37.5%と少ない。この結果からすると,家 族の現状から離れてイメージ上で思いを巡らすときのほうが,「自立に伴う解放 感と淋しさを実感した」とか,「この社会でいかに自分の価値を実現するか」と いったように,家族とのかかわりの中で自己の様態に意識を向け,正面からじ っくりと吟味してみようとする動きが起きやすい傾向にあることがみて取れる。

ドキュメント内 1.青年期と家族 (ページ 132-141)

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