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1 参考資料    トキ野生復帰専門家会合における意見等の概要

ドキュメント内 トキ飼育繁殖野生復帰合同専門家会合資料 (ページ 40-50)

080804トキ飼育繁殖・野生復帰合同専門家会合資料

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項目 回 専門家会合での意見要旨

放鳥の進め方

(試験放鳥とは)

第1回 ・試験放鳥は、しっかりしたモニタリング体制を確保した上で行うべきであり、トキに過重な負担をかけることなく、生息条件がどのくらい満たされているか、ネガティブな要素の洗 い出しのために行うものと認識すべき。

・試験放鳥では人間側が予め想定したネガティブな事象だけが起こるとは限らず想定出来ない事象が発生する。これらに対応していくことがモニタリング体制の確立という意味ではな いか。

・試験放鳥は「トキの目から環境の状況を見てもらう」という位置づけではないか。人の期待する場所とは別の場所に飛んで行くと考えられるので、発想を転換し、トキが飛んで行っ た場所でエサ場作りを進めるといった考え方が必要である。放鳥後に生じる問題点に対応していく中で野生復帰に向けた体制を整えると良いのではないか。

・本放鳥の際は、ある地域・集落に中国で設置したようなケージを作り、そこから放鳥し、自分の集落のトキという認識を持ってもらうのも良い方法。

第2回 ・試験放鳥の期間を決めておくべきである。これをある程度決めておかないと本放鳥までの計画が見えてこない。1 年目をどうする、2年目をどうするといった目先のことではなく、

さらに中長期的な全体の計画が必要である。

・1回の試験放鳥では情報収集が出来ないので、何回かに分けて行うべきである。場当たり的に毎年試験放鳥の実施を検討するのではなく、情報収集量に合わせて柔軟性を持たせつつ、

何年間にわたり何回程度実施するかといった目安が必要である。

・試験放鳥の目的がはっきりしていないので混乱が生じるのではないか。全体の枠組みをはっきりと決めておく必要がある。何の目的でどういった種類のデータを収集するのかが決ま れば、自ずと数や回数も決まってくる。

・試験放鳥では、人に対する反応や野外への順応状況等、様々な情報収集が可能で、それらの情報をフィードバックしていく必要がある。

・試験放鳥は、放鳥した個体が野外で生存できるかどうかの確認が重要。コウノトリでは、その確認でさえ大変な作業と聞いている。トキの場合も、試験放鳥は野外で生存出来るかど うかの一点に的を絞った方が良いのではないか。

・トキが野外で羽ばたいている姿を地元の人々に見せるということも試験放鳥の目的の一つと捉えるべき。試験放鳥で地元住民のトキに対する意識が変化すると思う。

・地元住民への配慮に関し、地域住民の視点にも配慮すべきであり、そのことを基本的考え方にしっかりと位置付けておくべきとのコメントを頂いている。

第3回 ・試験放鳥と本放鳥の区別について検討する必要がある(→  区別しなくても困るわけではないが、いろいろな事故も起こっても失敗と認識されない期間ではないか)。

・人間がトキとどう付き合うのかを訓練する時期が試験放鳥であると考えられる。農業のやり方(代かきの時期、苗の大きさ、中干しの有無など)がトキのエサ場と密接なかかわりを 持ってくるので、これを含めてトキとの共存を探り、新しい農業技術を確立する。それをやるという地域が出てきたら、そこをターゲットに放すのが本放鳥ではないか。

・試験放鳥の時に繁殖が始まったら本放鳥との区別について検討する必要がある。コウノトリの場合、5年間の試験放鳥であったが、野外で繁殖が始まったので、試験放鳥を3年に短 縮、残りの2年は技術検討とするとともに、コウノトリを適切に配置し、安定的に維持していくのを本放鳥と整理している。

・トキが年間を通じてどう動くか掴みきれないので、試験放鳥を行ってみないと計画は作れない。放鳥個体が野外でどのような環境を利用しているのか、季節変化や標高利用、人との 親和性などを見ていくのが試験放鳥の期間なのではないか。

第4回 ・試験放鳥と本放鳥がどう違うか定義されている必要がある。本放鳥の最終的な目標、対象エリアを決めた上で、試験放鳥では、ここまでやるという方がロジカル。試験放鳥時に繁殖 してヒナが生まれた場合はトキが野外に定着するというイメージとなるが、その場合でも試験放鳥と言うのか。(→  トキの本放鳥では、小佐渡東部地域に

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羽を定着させることを 最終的な目標として掲げている。そのため、モニタリング結果が野生順化訓練、生息環境、社会環境の整備に、きちんとフィードバックされるというサイクルが機能しているか確認 する期間を試験放鳥と定義することを提案した。)

・最終目標は明確だとしても、試験放鳥がモニタリング等情報のフィードバックが行われているか確認する期間であるとの説明は、一般の人にはわかりにくい。それより小佐渡東部に

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羽を定着させる技術を作り上げる期間を試験放鳥というのがよいのではないか。

・資料では「フィードバックする体制を確認する」とあるが、「体制を作り上げる」という表現が適切。

・前回会合で、人間がトキに慣れる期間を試験放鳥と位置づけるべきと発言した。トキと人間が対等に共生できることが最終的な目標であり、どういう形で共存できるかを調べる期間 が試験放鳥ではないか。共存の形がわかれば、農家の方から自分の田んぼで何羽放そう、という意見が出るようになる。

・定着させる技術を作り上げた時が本放鳥というのもわかりにくい。広く一般の理解を得るためには、試験放鳥は、例えば3年など、期間を決めた方がよい。

・試験放鳥は本来、トキの環境多様性への反応を類型化するためのデータ収集を行うものであるべき。いくつかの環境の組合せで複数回放鳥して、生き残るかどうか、死なないために は何が必要かを見いだすために試験放鳥を行うという方が明快。

・一般の人が試験放鳥をどう理解するのかが重要。試験放鳥でうまくいかなければ、本放鳥を延期する、あるいは止める可能性もあるといった説明の方がわかりやすい。試験放鳥の実 際の中味がトキの定着技術の確立であるとしても、外向けにはわかりやすい説明が必要である。

・地域住民が放鳥に慣れる期間が必要だが、地域住民がどのような意識をもった時点で合意形成ができたかというのを測るのは困難。何年間といった期間を設定した方がわかりやすい。

・受け入れに合意している集落ならば地域社会の社会環境整備は出来ていると判断できる。しかし、小佐渡東部地域には

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集落程度あって、積極的な集落、一部有志が積極的な集落 など集落間でも温度差があることに留意する必要がある。

・試験放鳥は生物学的な定着技術確立のためだけの放鳥ではない。試験放鳥を始めて、鳥が実際に空を飛ぶと人の気持ちが全く変わり、生物学的に正しいと思うことでも出来なくなる 場合がある。生物学的な定着技術と社会学的な定着技術とは相互に関係するので、これらを切り離して考えるのではなく、一緒に考える必要がある。

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項目 回 専門家会合での意見要旨

放鳥の進め方

(試験放鳥とは)

第5回 ・コウノトリの場合、すでに自然状態で繁殖しているが本格放鳥はそこに居続ける状態になることと考えていて、現状ではまだ試験放鳥の扱い。一般の人には本放鳥との違いがわかり にくく結果的に混乱を招いた。トキの場合も用語の使い方には気をつけたほうが良く、試験放鳥の考え方は提案のままの方が良い。

放鳥個体と数 第2回 ・放鳥個体数等に関し必要十分な個体数を誰がどこで検討するのか示されていない。放鳥個体数も含めた放鳥計画について本会合で大枠を決め、現地検討会等で具体的な検討を行うの が良いのではないか。

・野生順化施設の繁殖ケージは8基。繁殖経験のあるペアが限られている中で、本放鳥させる繁殖ペアを確保しておく必要がある。試験放鳥、本放鳥にそれぞれ何ペア用意するのかと いった配分計画づくりが難しいのではないか。

・繁殖経験個体を放鳥するのが大前提となっているようだが、はじめから繁殖の成功を目標にした試験放鳥は困難ではないか。一方、少数の繁殖可能なペアの試験放鳥では十分な情報 収集が出来ないので、順応的な対応として試験放鳥では繁殖経験のない個体を放鳥し、野生環境への反応等の情報を収集していくことが必要ではないか。

・最初は繁殖経験のない個体を放鳥する方がわかりやすい。また、繁殖ケージで繁殖経験のある個体を放鳥するためには、繁殖ケージから野生順化ケージへ移して順化訓練を行う必要 がある。

・平成20年の放鳥で繁殖ペアを放鳥するのは、スケジュール的にも放鳥までにモニタリングで得られる情報が不足しており、時期尚早。繁殖ペアをどの時期に段階的に放鳥していく のか考えておくことが必要。

第3回 ・普通は2〜3歳の繁殖価最大の個体を放鳥すると効果が高いと考えられる。また、老齢個体は必要ないのではないか。

・未成熟個体を混ぜる必要があるのか。

第4回 ・現在ケージの中には5羽おり、放鳥は

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羽程度となっている。どのような個体を放鳥するのか?(→ 

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月を目処に、現地検討会で検討して、現在いる5羽に

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羽程度追加して、

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羽程度の中から選択する予定。)

放鳥の方法 第1回 ・中国では

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年、2005年に試験放鳥を行っている。佐渡の取組との違いは、中国では野生のトキが生息している場所で実施している点。

・2004年

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月放鳥時に関して、山中に5〜6mのケージを設置し、周囲の環境に慣れるよう飼育したので、放鳥後、トキは周囲の環境に違和感を覚えなかったようだ。半年ぐらいは ケージに戻って来たが、その後戻らなくなった。

・放鳥場所について、順化施設の扉を開放するハードリリースとする場合、誰もいなければ問題ないが、式典を実施すると放鳥後にフェンスに衝突するなどの問題が発生する可能性が ある。

・式典では多くの来客があるので、地域の意向を聞きながら方法を検討する必要がある。放鳥は広い順化ケージ内に

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羽が飛び、ケージの後ろ側から追い立てて出て行くイメージと なるのではないか。施設の扉を開いておけば、夕方になれば戻ってくると思う。

第3回 ・個体を捕獲して放鳥場所の簡易ケージに入れるだけでも、個体にかなりのストレスがかかる。セレモニー目的という人間サイドの事情の数日のために、せっかく順化ケージで慣れた 個体を簡易ケージにいれることが鳥のためにベストか疑問である。もう少し整理したほうが良い。

・簡易ケージでは、数日ではなく2〜3ヶ月順化すれば問題ないのではないか。

第4回 ・放鳥方法はソフトリリース、場所は復帰ステーションの近くとしているが、事務的に環境省が決めて現場に指示するのか、あるいは現場で検討を加えるのか、その場合誰が行うのか。

(→  環境省からは大方針を示し、具体的な部分は現場の自然保護官を中心に県、市と相談しながら決めて行く。)

・初回の放鳥をソフトリリースということを決めると、箱から直接放鳥するような放鳥式典はできなくなるかもしれない。

・1回目の放鳥はソフトリリースともハードリリースとも書かず、現場で検討することとし、資料は「適切な方法で」等の表現に止めておくのが良い。

・ハードリリースとソフトリリースの具体的な方法を専門家会合で検討しておく方がよい。1 回目の放鳥は儀式的なものになるが、その後、様々な場所でトキを定着させるために、ど ういう放鳥方法が必要となるのか検討し、定着技術を開発することが必要である。

地域の人に参加してもらうためにはソフトリリースは良い方法。コウノトリの場合は1羽ずつ放鳥したが、トキの場合は

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羽づつ箱から放すとばらばらとなって、パニックになる 可能性があり、群れで放鳥した方がよいと思う。今から放鳥方法を制約しない方が良い。

・第1回目の放鳥は簡単なケージから出すということに賛成する。具体的にどのようなケージなのか、大きさや場所などを検討する必要がある。  中国では放鳥後3ヶ月程は放鳥場所 に戻ってくることが多かった。放鳥場所周辺にエサ場を作っておいた方がよい。また、この春放鳥した際、戻ってきた個体が勢いよくケージに衝突するケースがあった。中国ではゴ ルフネットを使っており、2度衝突した個体もいたが怪我はなかった。このようにトキが戻って来ることも考えて準備する必要がある。

・中国では放鳥したトキが戻って来たようであるが、本来は戻ってこない方がよい。放鳥場所を良い場所と思わせない方が良い。

放鳥の時期 第3回 ・エサ量がミニマムで、トキが群れる性質の強い時期である秋が良いのではないか。

・実際に放すのは中国産トキであり、放鳥すると春は山の中に入っていくと思う。野生復帰ステーションは平野部に近く、群れになる秋〜冬に放したほうが良いのではないか。

・トキの換羽は6月末に始まり10月始めに終わり、秋には群れ行動を取りはじめる。また、稲刈りは9月下旬頃でエサ場面積が増える。これらを勘案し初秋が良いのではないか。

・個体維持のため、エサ量(主に昆虫)が多い春・夏が良いと思う。生き延びれば3年目くらいから繁殖するのではないか。

ドキュメント内 トキ飼育繁殖野生復帰合同専門家会合資料 (ページ 40-50)

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