(1) 原告が「被告の主張」と称する内容
原告は、「強襲上陸作戦とは、待ち構える敵を強襲し、強行突破 的に上陸する作戦である」(原告第3準備書面・138 頁)とした上で、
被告が、強襲上陸(揚陸)作戦のみが海兵隊、31MEUの任務であ ると主張しているとする。
ア 原告第3準備書面・138 頁
「必ずしも、被告の主張するように、ARGによる強襲揚陸作 戦のみが、第 31海兵遠征部隊(31ST MEU)の任務ではな い」(138 頁)
イ 原告第3準備書面・142 頁
「強襲揚陸に関する事情を根拠として、普天間飛行場の航空部 隊を沖縄県外に移設しても米軍海兵隊の一体性が損なわれるこ とがないとする被告の主張は、結局のところ、米軍海兵隊の任務 の一部のみを捉え」
ウ 原告第3準備書面・144 頁
「強襲揚陸作戦に係る事情を根拠として、『沖縄から海兵隊航 空基地を移設すれば、機動力・即応性が失われるとすることには、
客観的・実証的根拠は認めえない』とし、普天間飛行場の航空部 隊を県外・国外においても米軍海兵隊の一体性が損なわれること にはならない、とする被告の主張には全く理由がない。」
エ 原告第3準備書面・167 頁11
11 ただし、地理的優位性に関する主張。
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「強襲上陸作戦のみが米軍海兵隊の任務ではないから、強襲揚 陸艦の母港との位置関係において、米軍海兵隊にとっての沖縄本 島の地理的優位性を云々することには意味がない」
(2) 実際の被告の主張
しかし、上記は、被告主張のねつ造・すり替えと言わざるを得な いものである。
実際の被告主張は、次のようなものであり、強襲上陸(揚陸)作 戦のみが海兵隊、31MEUの任務であるなどとの主張はしていない。
ア 被告第3準備書面・275~276 頁
「海兵隊の機能等については、『抑止力等の議論を脇において、
海兵隊の機能 あるい は効能 を考え てみる と、言 葉は悪 いです が、
便利屋という ことに なりま す。何 か困っ たとき に、き め細か く、
規模も大きいのから小さいの、軍事力を直接行使する一種乱暴な ものから、ソフトなものまで、いろんなことをやれるということ が、直接的な効能としてあります』12、『沖縄の海兵隊の主力部隊
(歩兵、砲兵、航空)は六ヵ月のローテーションで米本国から派 遣されています。二カ月ほど訓練したあとに長崎県佐世保にある 船に乗り、オーストラリア、タイ、フィリピンなどアジア太平洋 地域の国ぐにをめぐり、その国ぐにの軍隊と共同訓練し、互いの 信頼関係を高めていきます。これら同盟国のチームワークが強い ほど、敵対す る国は 手出し がしに くいだ ろうと 考えら れてお り、
これも抑止効果を向上させる大切な作業だといわれています…
太平洋地域をぐるぐると巡回し、ときには中東にも出かけていき ます。というわけで、海兵隊のホームグランドはアジア太平洋な
12 柳澤協二ほか「抑止力を問う 元防衛高官と防衛スペシャリスト達との 対話」〔山口昇〕132 頁。
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のです…同盟国との共同訓練、人道支援、災害救援をしっかりと 担っていくことで、アジアに安全保障の網を張りめぐらすような 活動をおこなっているわけです』13などとされている。
そこで、以下、海兵隊、普天間飛行場に配備された航空部隊の 実態に即して、普天間飛行場の県外移設等によって機能が損なわ れるものではないこと及び普天間飛行場に駐留している部隊が 沖縄以外に移駐的な意図する地理的必然性が認められないこと について、具体的に述べることとする。
イ 被告第3準備書面・278~279 頁
「沖縄に配備されている第 31 海兵遠征部隊(31MEU)は、上 記の各部隊から、歩兵、砲兵、工兵隊、兵站、航空部隊を集結し、
15日間の作戦行動にあたる。展開手段としては、長崎・佐世保に 駐留する強襲揚陸艦が沖縄に来てその部隊を搭載し、目的地へ派 遣される。1,500 ~ 3,000 人規模の MEUは、民族・宗教紛争や テロリストの鎮圧といった小規模紛争、自然災害などの救援支援、
各国との共同訓練など、多岐にわたる任務を遂行する。たとえば、
海兵ヘリ中隊が半年以上イラクに派遣されたり、韓国、フィリピ ン、タイ、オーストラリアで合同訓練を行ったり、台風被災の支 援活動のために台湾へ派遣されたりしている[U.S. Marine
Corps 2010: 258 ─ 260, 宜野湾市基地渉外課2010]。沖縄へ常
時駐留しているというより、アジア太平洋地域あるいは中東を含 む広範な地域を移動対象とし、積極的に活動している」14もので ある。
13 屋良朝博「誤解だらけの沖縄・米軍基地」(乙D48)76頁。
14 波照間陽「日本政府による海兵隊抑止力議論の展開と沖縄」早稲田大学 琉球・沖縄研究所紀要『琉球・沖縄研究』第4号。海兵隊の機能・実務に ついては乙D48・68~79頁参照。
31 ウ 被告第3準備書面・283 頁
「森本敏元防衛大臣の大臣退任後の著書『オスプレイの謎。そ の真実』77頁にも『普天間基地に配備されるオスプレイを装備し た2個飛行隊(VMM)の主任務は、強襲揚陸艦に搭載されて空 母機動部隊とともに行動し、強襲着上陸・捜索救難・人道支援・
在外民間人救出活動・災害救援などに従事する第 31MEU(海兵 機動展開隊)に対する航空支援である』とされている。」
(3) 小括
以上のとおり、被告は強襲上陸(揚陸)作戦のみが海兵隊、31M EUの任務であるとの主張はしていないものであり、「被告の主張す るように、ARGによる強襲揚陸(上陸)作戦のみが、第 31 海兵 遠征部隊(31ST MEU)の任務ではない」という原告の主張は、
被告主張をねつ造してすり替え、これを批判しているにすぎず、お よそ反論にはなりえていない。
また、海兵隊の任務が強襲揚陸(上陸)作戦だけでないとしても、
それが海兵隊の任務であることは明らかであるが、強襲揚陸艦が長 崎県・佐世保に配備されていることや、洋上展開して即応体制をし ていることについては、なんらの反論もない。強襲揚陸(上陸)作 戦に関して、揚陸艦の母港が沖縄には存在しないということに対し ては、反論をなしえていないものである。
原告の主張は、被告主張のすり替えによって誤魔化しているだけ であり、その不合理性、不誠実性には顕著なものがあると言わなけ ればならない。
2 強襲揚陸(上陸)以外の任務も揚陸艦に搭載されて行われること