十進法と同様の数記法で、基数が10以外の数であるものは単純な数記法と 呼ぶことができるだろう。ここで基数とは十進法のときの10と同じ役割を 果す数で、1より大きな自然数であれば何でもよい。
単純な数記法では、まず、基数と同じ個数の文字をまず定義しなけれな らない。もしも基数が10より小さいときは、十進法の最初の数字のいくつ かを使えばよい。基数が10より大きいときは、新しい文字を付け加え、たと えば、12進法では、10と11をそれぞれaとbであらわさなければならない。
2訳注: 千兆1015
3訳注: 百京1018
4訳注: 10該1021
5訳注: 1033
6訳注: 1036
7訳注: 1039
8訳注: 1042
9訳注: 1063
10訳注: 1093
11訳注: 1012
12訳注: 1018
基数がもっと大きいときは、新しい数字を十進数で表示し括弧でくくるのが 最も簡単なやりかたである。これは、二つのシステムの組み合わせとなる。
なお、基数が10のべきのときには、このやりかたは新しいものとは言えず、
通常の十進表示と全く同じになる。この節で以下考えるのは、あるアルファ ベットの文字しか使わないようなものにかぎるが、これは、アルファベット 的な数記法と呼んでももよかろう。
この中で最も単純なものは2進法で、数字として0と1しか使わない。な お、余談だが、アングロサクソンの国々ではお金の勘定に、この数記法が十 進法と併行して利用されている。たとえば、25ドルや、18セントは、14 や
3
16と呼ばれている。イギリスでは、もっと複雑なシステムが使われていて、
1ルーブルは、20 シリングで、1シリングは12ペンスである。
二進法の話に戻るが、各桁が0であるか1であるかは同じくらい確から しく、それぞれが現れる確率は 12 であると考えるべきである。したがって、
0 と1の間にある実数はコイン投げの結果の可算無限列を表現する、あるい は、ルーレットの赤黒の結果の可算無限列と言ってもよい、ただし、ゼロを 無視するとしてだが。人類が発祥してこのかた、数えきれない人々が、コイ ン投げやルーレットなど、勝ち負けのあるゲームをやってきた。もしも、各 ゲームの結果を0に対応させるか1に対応させるかを決めることができ、さ らに、ゲームを開始時によって時間順に並べることができるとしよう。ゼロ と小数点の後に、ゲームの結果に対応する数字の0または1を時間順に書く と、これを二進小数とみることで、ゲーム全体の結果を0と1の間にある一 つの実数で表すことができる。もちろん、ゲームの数は限られているので、
この二進小数の桁数は有限であるが、人々がゲームを続ける限り毎日新しい 桁をつけ加えていくことにする。このことから、0と1 の間に一つの実数が 存在し、それを二進法で表現すると、過去に行ったゲームの結果と、人類が この星に生き続ける限り続けるであろうゲームの結果の全体を、表すことが わかるのである。
この実数は無作為に抽出されたと考えてよい。というのは、その展開に 次々に現れる数字は、上で考えたゲームの系列の各々のゲームの結果に対応 しているからである。無作為に抽出された数のある桁から先が、すべて0で あったり、すべて1であったりすること、すなわち、2のべきの逆数となる ことは、不可能なこととして排除しなければならない。これは、コイン投げ やルーレットが2人の間で行なれているときに、一方がいつも勝つことは不 可能である、ということと同じことである。ここで注意したことは、ペテル スブルグの逆理と、ペテルスブルグのマルチンゲールの問題13を明らかにす
13筆者の「確率論の基礎」を参照のこと。
るのに役に立つ。
十進法を使って0と1の間の数を無作為に定義するやりかたは、どの単 純な数記法を使っても可能であるが、これらの方法は同等であろうか。こ の問いは次のように表現できる。0と1の間の十進小数を決めるのに、数字 0,1,2,. . . ,9から無作為に抽籤するとする。もちろん、無限回、抽籤すること はできないが、あらかじめ与えた数よりは多い回数行うと想像することは可 能である(これが無限の定義であった)。その後で、かなり面倒ではあるが、
桁数が極端に大きくなければ実行可能な計算で、上で得た十進小数を九進小 数に書換えることができる。こうして得られた九進小数では、小数点以下に 続く数字は9個の数字0,1,2,. . .,8から選ばれている。ここで、次のように問 うことができる。「以上の与えかたに基いて、小数点以下の与えられた桁、た とえば第34桁にある数字が、与えられた数、たとえば7、となる確率を計算 することは可能か。」答はとても簡単で、その確率は九分の一となり、9個の 数字は同じ確率を持つ。
実際、もしも、すべての数が九進法で表されていると考え、さらに、小 数点以下の最初の34 桁にのみ注意すると、34桁目が7の数は933個の区間 を定め、それぞれの長さは9−34であるから、その区間の長さの合計は九分の 一となる。
ここで、十進法の数を無作為に定めるとき、その数に対応する点が与え られた有限個の区間に含まれる確率は、それらの区間の長さの和であること に注意すると、この点が、九進展開の第34桁が7である933個の区間のどれ かに含まれる確率は九分の一となる。
以上のことから、10のような一つの基数について一般的な数は、他のど の基数についても一般的であることがわかる。10個の数からどれでも選ん で良い籤を実行して得られる数が普通の数であることは確実であると言うこ ともできるだろう。しかし、別の推論も可能である。九進法で表現された数 で、たとえば5以外の数字をランダムに選んで得られる、一般的ではない数 αを考えよう。この数αを十進法で表現するとき、証明はかなり難しいと思 うが、きっと一般的な数のように見えるであろう。ここで「一般的な数のよ うに見える」という意味は、10個の数字の出現頻度や、連続する数列の出現 頻度が互いに同じで、数字については出現頻度が101、連続するn桁の出現頻 度が10−nとなる、ということである。この問題については、複雑な数記法 の中で最も単純である分数記法を調べるときに、もう一度取り上げることに する。