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単為結果性トマトの種子形成に関与する要因

第1節 交配親の組み合わせおよび交配時期が単為結果性トマトの種子形成に及 ぼす影響

合成オーキシン処理や訪花昆虫による受粉を必要としない PA(単為結果性ト マト)は,施設栽培における省力化と低コスト化に貢献できる可能性が高い.第 1 章において,単為結果性遺伝子 pat-2 の導入により育成された PA である‘ル ネッサンス’は,NP(非単為結果性品種)に比べて環境ストレス条件下におけ る栽培適応性が広く,生産性の高い栽培が可能と考えられた.

しかし,pat-2遺伝子を持つPA のF1 採種における種子生産量は,pat-2遺伝子 を持たない NP に比べて少なく,かつ,安定していない(Kataoka ら,2008).

そのため,通常の F1 品種より採種労力が多く,種子生産コストが高くなり,PA の栽培を普及するうえで問題となっている.そこで,PA の種子形成に関与する 要因を明らかにして採種効率を向上させるため,本節では,まず,交配親の組み 合わせを相互に替えて,種子親または花粉親のどちらに原因があるかを探ろうと した.次に,開花の前後における子房の大きさの変化を調査し,さらに,蕾時,

開花時および開花2日後に交配した場合に種子形成にどのような影響を及ぼすか を比較した.

材料および方法

試験1 交配親の組み合わせが種子形成に及ぼす影響

供試材料は,PA の F 品種 ‘ ルネッサンス ’ の母親系統 ‘PASK-1’(単為結果

性,固定系統),父親系統 ‘PF811K’(単為結果性,固定系統)および NP の F1 品種 ‘ 桃太郎ヨーク ’の 3品種・系統で,それぞれを種子親または花粉親とする 9 つの組み合わせの交配を行った.供試した‘PASK-1’および ‘PF811K’は,劣性 の単為結果性遺伝子 pat-2 をホモで保有する固定系統である.種子親は開花前に 除雄し,開花時に当日開花した花粉親の花粉を交配した.3 品種・系統とも,

2004 年 4 月 1 日に播種,5 月 5 日に隔離ベッドに定植し,複合液肥(OK-F-2, 大塚化学(株)製,N:P2O5:K2O=14:8:16)を用いて養液土耕栽培を行った.種子親が

‘PASK-1’ と ‘PF811K’では第 1 花房と第 2 花房を,‘ 桃太郎ヨーク ’ では他 2 系 統よりも開花が早かったために第1花房は切除して第2花房と第3花房を用いた.

種子親が ‘PASK-1’と ‘PF811K’ では第 2 花房上の 2 葉を残し,‘ 桃太郎ヨーク ’ では第3花房上の2葉を残して摘心した.花房当たりの処理花数は3花で,その 他の花はすべて除去し,1 組み合わせ当たり 18果を調査した.換気温度は28 ℃,

最低温度は15℃で管理した.

試験2 開花の前後における子房の大きさの変化

供試材料は,pat-2遺伝子をホモで持つPAの‘ルネッサンス’,pat-2遺伝子を 持たない NP の ‘ 桃太郎ヨーク ’ とした.調査時期は,両品種とも蕾時(開花 2

~3日前を目標),開花時,開花2日後の3回とした.各時期に花を摘除し,花 から花弁と葯を分離して,子房の横径および縦径をデジタルノギスで測定した.

なお,両品種とも開花時と開花2日後に調査する子房は,受精による肥大を防ぐ ため予め蕾時に除雄した.2004 年 9 月 3 日に播種,9 月 13 日に 3.5 号ポットに

供試材料は,試験2と同様にした.‘ルネッサンス ’はF1 品種であるが,母親

系統 ‘PASK-1’ および父親系統 ‘PF811K’ と同様に劣性の単為結果性遺伝子 pat-2

をホモで保有することから供試材料として選択した.両品種とも,交配時期を蕾 時(開花2~3日前を目標),開花時,開花2日後とする3処理区を設けた.い ずれも開花前に除雄し,所定の交配時期に当日開花した同一品種の花粉を交配し た.試験は,春季と秋季の 2 回行った.春季試験では,2004 年 4 月 1 日に播種,

5 月 5 日 に 7 号 ポ ッ ト に 定 植 し , 複 合 液 肥 (OK-F-2, 大 塚 化 学(株)製,

N:P2O5:K2O=14:8:16)を用いて養液土耕栽培を行った.換気温度は 28 ℃,最低温 度は 15 ℃で管理し,2 段摘心栽培とした.花房当たりの処理花数は 3 花で,そ の他の花はすべて除去し,1 組み合わせ当たり 24 果を調査した.秋季試験では,

2004 年9月3 日に播種,9月 13日に3.5 号ポットに鉢上げし,10月6 日に地床 に定植した.3段摘心栽培の第1花房を供試し,1組み合わせ当たり15果を調査 した.第 2,第3 花房については‘ルネッサンス ’は放任とし,‘桃太郎ヨーク ’ は 4CPA 液(15 mg・L-1)の処理を行って着果させた.その他の耕種概要は春季 試験と同様とした.

結 果

試験1 交配親の組み合わせが種子形成に及ぼす影響

‘ ルネッサンス ’ の母親および父親系統で PA の ‘PASK-1’ および ‘PF811K’ と NP の ‘桃太郎ヨーク ’を用いた交配親の組み合わせが,着果率,有種子果率,1 果重および種子数に及ぼす影響を第 2-1 表に示した.着果率は,1 組み合わせ

(‘PF811K’בPASK-1’)を除きいずれも 100 %であった.有種子果率は,NP の ‘ 桃太郎ヨーク ’を種子親とした場合には花粉親の種類に関係なくいずれも 100%

結果性および非単為結果性を異にした交配親の組み合わせが着果率,有種子果率 1果重および種子数に及ぼす影 着果率 有種子果率 1果重種子数 花粉親 (%)(%)(g)(粒/果 ) PASK-110072214±15 27.9±12.1 ×PF811K10089221±1215.5±4.6 桃太郎ヨーク10078214±167.6±2.5 PASK-19494267±1522.4±5.8 ×PF811K10089263±818.7±4.2 桃太郎ヨーク10094262±1029.9±4.4 ークPASK-1100100238±16183.2±17.1 ×PF811K100100247±11210.6±11.4 桃太郎ヨーク100100267±11175.4±15.9 :為結果性固定系統(単為結果F品種ルネッサンスの母統) 果性固定系統(単為結果性F品種ルネッサの父 :非単為結果F品種 花数×100 /着果数×100 SE(n=17~18)

‘PF811K’ では 89 %,‘ 桃太郎ヨーク ’ では 78 %の有種子果率であった.PA の

‘PF811K’を種子親とした場合,花粉親が ‘PASK-1’では 94%,‘PF811K’では 89

%,‘ 桃太郎ヨーク ’では 94 %の有種子果率であった.1 果重は,種子親が同一 の場合,花粉親の違いによる影響はみられなかった.1 果当たりの種子数は,

‘PASK-1’ を種子親とした場合,花粉親が ‘PASK-1’ では 27.9 粒,‘PF811K’ では 15.5 粒,‘ 桃太郎ヨーク ’ では 7.6 粒であった.‘PF811K’ を種子親とした場合,

花粉親が ‘PASK-1’ では 22.4 粒,‘PF811K’ では 18.7 粒,‘ 桃太郎ヨーク ’ では 29.9 粒 で あ っ た . 一方 ,‘ 桃 太 郎 ヨ ーク ’ を 種 子 親 とし た場 合 ,花 粉親 が

‘PASK-1’ では 183.2 粒,‘PF811K’では 210.6 粒,‘ 桃太郎ヨーク ’ では 175.4 粒 と,いずれの花粉親との組み合わせも前記2系統を種子親とする場合に比べて明 らかに多かった.

試験2 開花の前後における子房の大きさの変化

子房の横径は,PAの‘ルネッサンス’では蕾時2.73 mm,開花時3.16 mm,開

花2日後4.14 mmと時間の経過に伴って増加したのに対し,NPの‘桃太郎ヨー

ク’では蕾時2.65 mm,開花時2.60 mm,開花2日後2.75 mmと変化はなかった

(第 2-1図).子房の縦径も,‘ ルネッサンス’では蕾時2.27 mm,開花時2.85

mm,開花2日後4.04 mmと時間の経過に伴って増加したのに対し,‘桃太郎ヨ

ーク’では蕾時1.70 mm,開花時1.62 mm,開花2日後1.76 mmと変化はなかっ た.

試験3 交配時期が種子形成に及ぼす影響

春季における交配時期が,着果率,有種子果率,1 果重および種子数に及ぼす 影響を第 2-2 表に示した.開花 2 ~ 3 日前を目標にした蕾時の交配時期は,PA の ‘ルネッサンス ’ が開花2.8 日前,NPの‘ 桃太郎ヨーク ’が開花 2.3日前であ った.着果率は,両品種ともいずれの交配時期でも 96 %以上であった.有種子

おける単為結果性および非単為結果性トマトの子房の横径および縦径の変化 ンス’:単為結果性F品種 ーク’:非単為結果F品種 品種内の異なるアルファベット間に5%水準で有意差ありTukey-Kramertest

横径縦径 日後蕾時開花時開花2日後 ‘桃太郎ヨーク’

01234

5 蕾時開花時開花2日後蕾時開花時開花2日後

子房の縦径(mm)

‘ルネッサンス’‘桃太郎ヨーク’

b aa

2-2における単為結果性および非単為結果性トマトの交が着果率,有種子果率 1果重および種子数に及ぼす影 着果率 有種子果率 1果重種子数 品種交配時期 (%)(%)(g)(粒/果 ) ルネッサンス蕾時 9696148±8 40.9±6.2 開花時10096164±938.3±5.9 開花2日後1008163±100.8±0.6 桃太郎ヨーク蕾時 96100154±981.0±11.4 開花時100100183±7218.5±10.6 開花2日後96100178±12100.4±11.7 ルネッサンス’:単為結果F品種 桃太郎ヨーク’:非単為結果性F品種 着果数/開花数×100 有種子果数/着果数×100 着果数 ±SE(n=23~24 2.8日 2.3日

ネッサンス ’ は蕾時と開花時では96 %であったが,開花 2 日後では 8 %と著し く低かった.1 果重は,両品種とも交配時期による差異はみられなかった.1 果 当たりの種子数は,‘桃太郎ヨーク’が開花時218.5 粒,開花2日後100.4 粒,蕾 時 81.0 粒の順であったが,‘ ルネッサンス ’ は蕾時が 40.9 粒,開花時が 38.3 粒 で,有種子果率の低かった開花2日後は0.8粒であった.

秋季における交配時期が,着果率,有種子果率,1 果重および種子数に及ぼす 影響を第 2-3 表に示した.開花2 ~ 3 日前を目標にした蕾時の交配時期は,‘ ル ネッサンス ’が開花2.5 日前,‘桃太郎ヨーク’が開花2.8 日前であった.着果率 は,両品種ともいずれの交配時期でも 100%であった.有種子果率は‘ 桃太郎ヨ ーク ’ がいずれの交配時期でも 100 %であったのに対し,‘ ルネッサンス ’ は蕾 時では 100%,開花時では87%,開花 2日後では33%であった.1果重は,両 品種とも交配時期による差異はみられなかった.1 果当たりの種子数は,‘ 桃太 郎ヨーク ’ が蕾時 138.8 粒,開花時 179.4 粒,開花 2日後 145.1 粒であったが,‘

ルネッサンス ’ は蕾時 35.7 粒,開花時 51.1 粒で,有種子果率の低かった開花 2 日後は4.0粒であった.

考 察

わが国の実用的な F1 品種の採種では,1 果当たり 200 粒程度(関口,1988) の種子が生産される.本試験での交配親の組み合わせにおいても,種子親を NP

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