第 3 章 回廊効果が深層循環に与える影響 17
4.1 単一海盆
4.1.2 単一海盆の風応力 W2 に対する応答の時間発展
図4.11:[R1C-Tatl-W2]海面流速(ベクトル;cm s−1 )と順圧流線関数の初期値(R1C-Tatl-W0)との差(カラー;Sv).風応力(W2)を与えて(上段)1∼10年後(下段)10∼100 年後.
図 4.12: [R1C-Tatl-W2]海面浮度の初期値(R1C-Tatl-W0)との差(m s−2).風応 力(W2)を与えて(上段)1∼10年後(下段)10∼100年後.
図 4.13: [R1C-Tatl-W2]海面浮度フラックスの初期値(R1C-Tatl-W0)との差(m2 s−3).風応力(W2)を与えて(上段)1∼10年後(下段)10∼100年後.
図 4.14: [R1C-Tatl-W2]表層(525m)における浮度の初期値(R1C-Tatl-W0)との 差(カラー;m s−2).風応力(W2)を与えて(上段)1∼10年後(下段)10∼100年後.
上段の赤い実線は 1 ×10−4 m s−2 の浮度偏差をあらわす.
図 4.15: [R1C-Tatl-W2]鉛直積算した浮度 B の初期値(R1C-Tatl-W0)との差(カ ラー;m2 s−2).風応力(W2)を与えて(上段)1∼10年後(下段)10∼100年後.
図4.16: [R1C-Tatl-W2]東西平均浮度の初期値(R1C-Tatl-W0)との差(m s−2).風 応力(W2)を与えて(上段)1∼9年後(下段)10∼900年後.
図 4.17: [R1C-Tatl-W2]子午面循環(z-ϕ座標上)の初期値(R1C-Tatl-W0)との差
(Sv).風応力(W2)を与えて(上段)1∼9年後(下段)10∼90年後.
図 4.18: [R1C-Tatl-W2]子午面循環(σ-ϕ座標上)の初期値(R1C-Tatl-W0)との差
(Sv).風応力(W2)を与えて(上段)1∼9年後(下段)10∼90年後.
ここで,Borowski et al. (2002) の提案したシアー輸送の診断手法にもとづいて,以下 のようなシアー輸送関数 ΨST を考える.これは傾圧第一モードが支配的な場合に,地衡 流のシアー輸送量を流線関数として水平2次元面上に可視化しようとするものである.
ΨST(x, y) =−1 f
∫ 0
−D
z(b− ⟨b⟩z)dz, (4.1) 温度風の関係:
f∂u
∂z =−∂b
∂y, f∂v
∂z = ∂b
∂x
を仮定すると,次のような鉛直シアーによる輸送量 UST,VST を定義することができる.
UST =−
∫ 0
−D
z∂u
∂zdz = 1 f
∫ 0
−D
z∂b
∂ydz =−∂ΨST
∂y ,
VST =−
∫ 0
−D
z∂v
∂zdz =−1 f
∫ 0
−D
z∂b
∂xdz,= ∂ΨST
∂x . UST, VST の模式図を図4.19にしめす.
-5000 -4000 -3000 -2000 -1000 0
-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5
図 4.19: 鉛直シアー輸送量の模式図.横軸を水平流速,縦軸を水深とする.赤い枠内の面
積は −z(∂u/∂z)δz であり,これを鉛直に積算することで最下層の流速を基準とした正味
の鉛直シアー輸送量 UST を得る.
シアー輸送関数 ΨST は海洋の3次元浮度分布に対応する地衡流に関する情報を平面上 に可視化する.R1C-Tatl-W0と R1C-Tatl-W2 におけるΨSTの分布を図4.20にしめす.
この実験において北半球に風応力は与えられないので,鉛直積算された海水の水平輸送 は低次のオーダーでゼロになる.正の極値の周囲で閉じたΨSTの等値線は上層で時計回 り,下層で反時計回りの循環があることをあらわす.北半球北端では東に行くほど ΨST が大きくなっている.海水は壁を通過できないのでΨSTの等値線が北端境界と交差して いる領域には上層(下層)で側面境界に向かい,そこで沈降(湧昇)して下層(上層)で 境界から離れるような地衡流をもたらす構造がある.図4.20から,R1C-Tatl-W0に W2 の風応力を与えることによって,北半球高緯度では上層で南西から北端–北東角に向かい,
下層で西岸に向かう流れが強まることがわかる.また,回廊域では UST が約 30 Sv 大き くなり,これは海峡通過流量の増加と整合的である.
風応力 W2が与えられてからの ΨST の時間発展を図4.21にしめす.風応力を与えた直 後から海峡の北側に負の ΨST 域(上層で反時計回り)が拡大することがわかる.これは 正の風応力カールによって形成される亜熱帯循環に対応する.海峡付近に生じる正の ΨST 域はしだいに東へ拡大し回廊域以南をおおう.北半球では風応力を与えて50年程度経過 してから,北東角付近に ΨST 正偏差が 1 Sv を超える部分が現れる.この正偏差は北西 角を中心とする弱成層域を右に見ながら西南西方向に拡大し,西岸に達する.
図 4.20: [R1C-Tatl-W0 R1C-Tatl-W2]鉛直シアー輸送関数ΨSTの分布. (左)R1C-Tatl-W0.(右)R1C-Tatl-W2(Sv).正のΨSTは上(下)層で(反)時計回りの循環に対 応する.
図 4.21: [R1C-Tatl-W2]鉛直シアー輸送関数ΨSTの初期値(R1C-Tatl-W0)との差
(カラー;Sv).風応力(W2)を与えて(上段)1∼10年後(下段)10∼100年後.正の ΨSTは上(下)層で(反)時計回りの循環に対応する.