これは残りの多くの部門が相当する。5カ国・地域グループまでグループ化できた部門と,
3〜4カ国でのグループ化にとどめたものもある。一般に前者の方がグループ化しやすい
(安定的である)が,中には5カ国までしか階層的探索と独立的探索の結果が一致しないも のも存在している。なお前期の1995年と比較して大きく変化した部門は以下のようになる。
Sec.24:Timber,Sec.26:Other wooden products,Sec.37:Other rubber products,Sec. 45:General machinery,Sec.51:Shipbuildingの各部門では,前期の1995年にはグループは 検出できなかったが,2000年には新たにグループ化されている。
また,Sec.19:Weaving and dyeing,Sec.29:Synthetic resins and fiber,Sec.31: Chemi-cal fertilizers and pesticidesでは前期は複数のグループであったものが単一化している。
なお,表9に示した,特に緊密な初期ペアが1995年・2000年の両期を通じ同じであった,
Sec.16:Beverage(MS),Sec.18:Spinning(CK),Sec.19:Weaving and dyeing(CJ),
Sec.21:Wearing apparel(SU),Sec.25:Wooden furniture(JU),Sec.28:Printing and publishing(JU),Sec.35:Plastic products(ST),Sec.44:Boilers, Engines and turbines
(JU)はすべてこの単一グループ化の部門に属している。
グループが単一として検出されるには,極めて密接な2カ国・地域が核となって初期ペア を形成することが不可欠である。
図21 グループが明確に検出されない部門(Sec.20,Sec.43,Sec.48,Sec.34)
図22 単一のグループが検出される部門(Sec.13,Sec.15,Sec.17,Sec.18,Sec.19,Sec.21)
図23 単一のグループが検出される部門(Sec.24,Sec.25,Sec.26,Sec.28,Sec.29,Sec.31)
図24 単一のグループが検出される部門(Sec.33,Sec.35,Sec37,Sec.40,Sec.41,Sec.42)
図25 単一のグループが検出される部門(Sec.44,Sec.45,Sec49,Sec.50,Sec.51,Sec.52)
7 おわりに
本稿は各国別の非競争型の産業連関表を用いてvertical specialization share(VS)を提示 したHummels et al.(1999,2001) の研究,およびそれをアジア国際産業連関表を用いて拡 張した藤田(2006,2007)の成果を,VSの計測から応用へ発展させたものである。
元来のHummelsらによるVS導出は,国別の非競争輸入型の産業連関表を用いることに
より,一国に関して中間財輸入の効果が輸出にどのような影響を及ぼしているかを計測する ものであった。著者はすでに国際産業連関表を用いることによって複数国間の連鎖的なVS の計測を可能にし,VSの応用範囲を拡大してきたが,さらに本稿ではVSの新たな応用分 野として,中間財取引に関して緊密な関係をもつ国・地域のグルーピングに適用可能である ことを示すことができた。
輸出に含まれる輸入中間財の強度を測るVSの定義から,多国間の産業連関表を統合させ ると輸入中間財が内部の投入としてカウントされるため国・地域グループとしてのVSの水 準は低下することになる。このことを逆に応用して,中間財生産の分業について密接な関係 にある国同士の統合された産業連関表から導出されるVSの値は,関係が粗である国同士の それよりも小さくなることから,重要な多国間関係を検出できると考えた。またその検出過 程でグループ内の構造も明らかにできるはずである。
膨大な数になる国・地域の組合せの処理,構成国数の同じグループ間のVSの比較可能性,
さらに構成国数の異なるグループ間のVSの比較可能性について,gV/minVSという一種 の正規化された指標に変換することにより,VSの持つ各国別・産業別の相違性を回避し,
それらを実現できることを示した。
この結果,ほとんどの産業部門で密接な中間財取引がある重要な多国間関係をグルーピン グでき,またそれは統一された手法で実現できることを示すことができた。
また,数値の洪水になりがちなVSの要素還元にはグラフ化技術を駆使した可視化が不可 欠である。本稿では本来の用途は異なるグラフ化アプリケーションを利用することにより,
分析結果を可視化する試みを行った。
この研究成果はさらに多くの適用可能な研究分野が想定される。例えば国際産業連関表と 国内の地域間産業連関表の接続などにより,わが国の企業群による東アジア・ASEANを中 心とした海外直接投資が各国にだけでなく,わが国の地方レベルにどのような影響を及ぼし ているかといった分析に新たな手段を提供できるのではないかと考えている。特に労働再配 分ショック増幅効果分析への適用を考えている。
今後は,2005年表のリリースを待ってこれまでの研究成果のリバイズを行うとともに,上 記のようなVSのさらなる拡張や応用分野の拡大についても引き続き研究を進めていきた い。
補 論
本稿では64部門に統合して分析しているが,2000年表ではマレーシアの国産分の投入構造 AMにおいて,対角要素のみの第64部門:Unclassifiedの値が1となり,第64列ベクトルの 他の非対角要素が零値のために逆行列(I−AD)−1を直接求めることが出きないという問題 が生じている。すなわち(I−AD)の第64列ベクトルが零ベクトルになってしまい,full rank ではなくなる。
これは元の取引額表が以下(表18)のような状態であるためである。
表18 2000年表マレーシア投入産出構造
輸入および輸出は原表では各国別に集計されているが,表18では国外はすべて統合して示 している。
第64部門:Unclassifiedの輸出額合計と統計不突合が相殺されていること,付加価値無し で産出されていることなど不自然であり,データ作成上,何らかの理由があってこのような 形に計上されていると考えられる。
このような場合,逆行列を求めるためには,この第64部門をさらにいずれかの部門に統合 して,63部門化するなどにするべきであるが,そうするとマレーシア以外の国・地域にも影 響が生じることになり,また貴重な情報も縮退することになる。
藤田(2007)および本稿では以下の考え方により,この問題を回避している。
まず,取引額表の構造から,マレーシアの国内投入構造を第64列・第64行とそれ以外をブ ロック化し,さらに以下のADの極限として考える。α≠0 のとき,(I−AD)はfull rankで ある。
]^ _
A63×63 01×63
063×1
1
`a
b64×64=limα→0 ]^ _ A
0 0 1−α
`a b=limα→0A
D , AD=]
^_ A
0 0 1−α
`a b
さらに輸入分の投入構造,輸出を以下のように設定する。ブロック化はADに対応してい る。
AM=]
^_ M63×63
01×63
063×1
0
`a
b , E= ]^ _
e63×1 ε
`a b=
]^
^^ _ ]^ _ e1 e⁝63 ε
`a b
`a aa b
, E=
Σ
i ei+ε中間財輸入および輸出は表18同様に,各国別を統合して1本化している。また,AMの形 は実際の2000年表のマレーシアの輸入分の投入構造に従っている。するとVSは以下のよう に計算できる。単位行列Iはそれぞれのブロックで適切なサイズであるとする。なお式中の 小行列(I−A)はfull rankとする。
I−AD=]
^_ I−A
0
0 1−(1−α)
`a b=
]^ _
I−A 0
0 α
`a b (I−AD)−1=]
^_
(I−A)−1 0
0 1 α
`a b AM・(I−AD)−1=]
^_ M
0 0 0
`a b・
]^ _
(I−A)−1 0
0 1 α
`a b=
]^ _
M(I−A)−1 0
0 0
`a b VS=1
EAM(I−AD)−1E=1 E ]^ _
M(I−A)−1 0
0 0
`a b ]^ _ e ε
`a b=
1 E ]^ _
M(I−A)−1e 0
`a b VSの定義から,第64列および第64行が零ベクトルであるAMを左からかける途中ではキ ャンセルされてしまうので,
lim
α→0VS=VS
になる。すなわち,VSの計算においては,国内のどの部門も他国の第64部門からの輸入に よる投入が無く(AMの第64行ベクトルは零ベクトル),同時に国内の第64部門は他国の他 部門から輸入による投入が無い(AMの第64列ベクトルは零ベクトル)というAMの形状か ら,ADにおける第64部門の問題は消えてしまう。そもそもVSは輸出財に含まれる輸入中 間財の一種のシェア概念であるので,当該部門にかかわる輸入が全くなければそのVS要素 はゼロになることに対応している。
これは,ADの第64列ベクトルを零ベクトルでマスクした行列ADを用いて計算した結果 と同一になる。
AD=]
^_ A
0 0 0
`a b I−AD=]
^_ I−A
0 0 1−0
`a b=
]^ _
I−A 0
0 1
`a b (I−AD)−1=]
^_
(I−A)−1 0
0 1
`a b AM・(I−AD)−1=]
^_ M
0 0 0
`a b・
]^ _
(I−A)−1 0
0 1
`a b=
]^ _
M(I−A)−1 0
0 0
`a b
1
EAM(I−AD)−1E=1 E ]^ _
M(I−A)−1 0
0 0
`a b ]^ _ e ε
`a b=
1 E ]^ _
M(I−A)−1e 0
`a b=VS
以上から実際の計算においてはマレーシアの国内投入構造ADの第64列ベクトルを零列ベ クトルでマスクしてVSを導出している。マレーシアを含む複数の国・地域によるグループ 化の場合も同様である。ただしこれが可能なのは実際の輸入による投入構造AMの性質・形 状によっていることに注意しなければならない。たとえば2000年表からマレーシア部分を抜 き出してマレーシアに関する波及効果分析などを試みる場合には直接(I−AD)−1の計算が 必要になるため,適切に部門の再統合が必要になるだろう。
本補論は本来,藤田(2007)に付加するべきものであったが,脱落していたものである。
環太平洋産業連関分析学会第20回大会の報告(2009年10月31日)において,討論者の横浜国 立大学Nagendra Shrestha氏から上記2000年表におけるマレーシア国内投入構造の問題点 について質疑があり,2006年当時の計算処理過程を失念し即答ができなかったものであるが,
それにより本補論の脱落に気づいた経緯があった。あらためて本稿において補論を掲載した 次第である。
付 記
本稿は上記の環太平洋産業連関分析学会第20回(2009年度)大会(2009年10月31日,函館 市)における研究報告をもとに継続作成されたものである。討論者となっていただいた横浜
国立大学Nagendra Shrestha氏からは非常に貴重なコメントをいただいた。ここに深く感
謝の意を表したい。なお,当然のことであるが,本稿におけるあり得うべき誤りはすべて筆 者の責に帰するものである。
また,アジア産業連関表データの入手に当たっては,本学東南アジア研究所が日本貿易振 興会アジア経済研究所の会員であることから,研究費の効率的な執行が可能になった。財団 法人長崎大学東南アジア研究助成会に感謝の意を表したい。
なお本論文は科学研究費補助金(藤田:科学研究費補助金,課題番号21530228:基盤研究
(C))の研究成果の一部である。
参 考 文 献
Balassa, Bela(1967)Trade Liberalization Among Industrial Countries, New York:McGrawHill.
Baldwin, Carliss Y. and Kim B. Clark(2000)Design Rules, Volume1: The Power of Modularity, Cambridge, MA:The MIT Press.
Feenstra, Robert C. and Gordon H. Hanson(1995) Foreign Investment, Outsourcing and RelativeWages, Working Paper w5121,NBER.
― (1997) Foreign Direct Investment and Relative Wages:Evidence from Mexico's Maquiladoras, Journal of International Economics, Vol.42,pp.371‑394,May.