８．１ 政治リスクの検討
マダガスカルは、2014 年のヘリー・ラジャオナリマンピアニア大統領の就任を機に 2009 年から 2013 年までの政治危機を脱し、国際社会の支持を得て安定化に向けた政権 運営を開始、継続した経済成長を達成した。2019 年 1 月には、大きな混乱もなく民主 的な選挙を経て政権移行が行われたが、ラジョエリナ大統領の政治手腕は未知数であり、
政治的・経済的安定が維持されるかどうかについては引き続き注視する必要がある。今 後の協力においては、継続して政治・経済状況をモニタリングしつつ、可能な限り政治 危機に左右されない国造りと JICA としての事業実施体制を目指す必要がある。
８．２ 気候変動・災害リスク
マダガスカルへの協力では重点課題のひとつに農業・農村開発を挙げているが、JICA の重点分野のうち、農業に加えて運輸交通（例えば道路）や教育（小中学校施設）など も気候変動と自然災害の影響を受けやすい分野である。現在は以前に比べ、災害対策に より天気情報がオンタイムに伝えられるなど予防体制が改善され、災害後の評価・支援 も迅速に行う努力がなされている。にもかかわらず、気候変動の影響により干ばつが長 びいたり、豪雨により小中学校等の教育施設が損害を受け臨時の休校を余儀なくされた り、洪水の影響で畑が壊滅する、耐水した道路上の舗装の損傷が急速に進む、突然の雹 により収穫に影響が出るなど、予想を超えた被害に見舞われるリスクが常に存在する。
マダガスカルではこうした状況を念頭に成果の指標設定には十分に注意するとともに、
事業を実施するにあたってはリスク回避を考慮に入れる必要がある。農業では、被害後 次期栽培のための種子不足に対応できるような種子生産・保管システムや災害に耐えう る灌漑施設の建設、栽培の多様化、災害に強い種子の開発などの支援を検討することが 望まれる。
８．３ プロジェクトサイト選定の際の治安条件への留意
マダガスカルでは南部を中心に生存手段が限られており、鉱物や家畜を財としたイン フォーマルな商売が盛んである。そのような中で、家畜泥棒（現地名：ダハロ）は国外 輸出に絡んだ強盗団と化しており、住民の生活を脅かすだけでなく治安部隊との衝突も 深刻である。ダハロの最終目的地は中央部西海岸沿いにあり、通過地点では攻撃を恐れ た農民の経済活動も停滞している。これ以外にも南部地域を含め治安上 JICA として直 接の協力実施が難しい地域が存在することから、プロジェクトサイトを選択する際には 治安条件に十分留意する必要がある。
以上
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