Ⅲ.北太平洋物流ネ ッ トワーク と日本海 ・東海 BRI Cs 分業構想
このよ うに、九州 ・中国 ・四国な どいわゆ る西 日本 を中心 に して、 日本 の地方部 と東 アジア諸 国 ・地 域 との間で東 ア ジア地域 ネ ッ トワー クが始動 し始 めているのであるが、 そ うした中では、 日本海沿岸地 域 にとって も、 日本海 ・東海 を有効 に活用 して国際物流 ネ ッ トワー クを形成 しさ らにそれを通 じて新 た な国際分業 のあ り方 を模索す ることが極 めて重要な課題 とな って きつつ ある。 国際分業 が国際物流ネ ッ トワークと表裏の関係 にある以上、その ことは当然であろう。そこで ここでは、北太平洋物流ネ ッ トワー ク形成及 びそれを通 じて可能 にな る 日本海 ・東海
BRI Cs
分業構想 につ いて検討 してみ ることに しよ う。1
同心 円的 経 済 圏 と して の 日本 海 ・東 海BRI Cs
分業 (1)「北東 ア ジア経済 圏」 か ら 「北太平洋経済圏」へ日本海沿岸地域 における国際物流 ネ ッ トワー クのあ り方 を考 え るのに先立 ち、北東 ア ジア経済 圏につ いて触れておかなければな らない。 日本海 ・東海物流 ネ ッ トワー クのあ り方 は、 そ もそ も北東 ア ジア経 済 圏のあ り方 に深 く関わ っているか らだ。
北東 ア ジア経済圏はア ジアは無論 の こと世界の中で も最 も重要 な経済 圏の一つ と して捉え られ るべ き である。 その ことは、北東 ア ジアを構成す る 日中韓三 国 に係わ るデータを一 瞥す るだけで も容易 に理解 され よ う。人 口規模 は三 国全体 で
1 4
億5 , 0 0 0
万人( 2 0 01
年末現在) でア ジア (国連 区分) の3 9%
、世界 の2 4%
を 占めてい る。GDP
は同 じく5
兆6, 9 6 9
億 ドル( 2 0 0 2
年) で ア ジア (世銀 区分 ;2 4
カ国) の8 0 . 3
%、世界 の
1 8%
を 占めている。貿易額 で も同 じく2
兆7 7 6
億 ドル( 2 0 0 3
年) で ア ジア (束 ア ジア ;ア ジ アNI ES+AS EAN
+中国 + 日本) の4 8 . 0%
、世界 の1 3 . 6%
を 占めている。最後 に外貨準備 も同 じく1
兆5 , 0 3 8
億 ドル( 2 0 0 3
年末現在、 但 し韓 国 は同年1 1
月末現在) で ア ジア (同) の5 6 . 3% ( 2 0 0 3
年7
月末現 荏) を占めている。要す るに、 その経済力 だけか ら云 って も、北東 ア ジア経済 圏抜 きには、 ア ジア経済 圏はおろか世界経済す らもそ もそ も成 り立 たない と云 って も決 して過言 ではないのである。加えて、 この地域が他方では北太平洋 に属す る地域で もあるとい う地政的条件 を考慮すれば、それは、
単 にア ジアにおける一地域 であ るばか りで はな く、 ア ジア太平洋 における重要地域で もある (注 1)、
とい うことにな る。つ ま り、「北東 ア ジア経済圏」 は同時 に 「北太平洋経済 圏」 で もあ るとい う点で、
その重要性 は一層高 め られ ることにな るのだ。
(2
)北東 ア ジア分業 と北太平洋分業 の リンケー ジによる 日本海 ・東海BRI Cs
分業では、 日本 の 日本海沿岸地域 に とって、北東 ア ジア経済 圏 と北太平洋経済 圏 とでは どのような違 いが 生 じるのか、すなわち北太平洋経済 圏は 日本海沿岸地域 に とって何故重要 なのか。 この点を検討す るた めに、 まず、「日本海沿岸地域」 (注
2
) の対北東 ア ジア関係4
カ国 (注3)
貿易の現状 をチ ェック して み よ う。 まず輸 出か らみてみ る。2 0 0 2
年 における 日本海沿岸地域 の対4
カ国輸 出額 は1
兆2 , 6 5 7
億5 , 5 0 0
万 円であ った。他方、 同年 における同地域 の対世界輸 出総額 は5
兆5 5 0
億3 , 8 0 0
万 円であ った。従 って、日本海沿岸地域 にとって対北東 ア ジア輸 出は同地域 の輸 出総額 の
2 5 . 0%
に過 ぎない とい うことになる。輸入 につ いては どうか。 や は り
2 0 0 2
年 における日本海沿岸地域 の対4
カ国輸入額 は1
兆3 , 9 3 8
億1 , 7 0 0
万 円であ った。他方、 同年 における同地域 の対世界輸入総額 は3
兆8 , 9 8 9
億7 , 9 0 0
万 円で あ ったわ けだから、対北東 ア ジア輸入比率 は
3 5 . 8%
に達 しているとい うことにな る。以上 か らも明 らかなよ うに、 日本海沿岸地域貿易 に とって対北東 ア ジア依存度 は必ず しも高 い訳 では
‑ 3 1‑
(
な く、 とりわけ輸 出に関 して
厄2 5%
に止 まっている。′そのことは、 日本海沿岸地域 にとっては、国際分 業の対象を北東 アジア経済圏に止 めてお くよ りも、それを、一方では汎アジア経済圏すなわち東南アジ アか らさらにイ ン ドを も含む地域 にまで拡大す るとともに、他方では 「北太平洋経済圏」すなわち北米 を も含めた地域 にまで広 げること‑そのことはブラジルをは じめとす る南米諸国の市場開拓 にも繋がる ということを意味 している‑の方が遥かに有利であ り、かつ輸 出拡大のためにはそ うした市場戦略が不 可欠である、 ということを意味 しているのである。尤 もそれは、そ もそ も日本海沿岸地域 としては、 い わゆる 「同心 円的経済圏」の形成 に他な らないのである。 そ して、 この 日本海沿岸地域版 「同心円的経 済圏」が前述 した少子化時代 に迫 られているボーダ レスな広域化論 と軌を一 に した ものであるということは云 うまで もないであろう。つま り、「北太平洋経済圏」 とは、前述 した 日本海沿岸地域の広域化 ・ ボーダ レス化の延長線上 に浮上す る 「同心円的経済圏」 に他な らないということだ。
だが この ことは、「北東 アジア経済圏分業」 を 「北太平洋経済圏分業」 に代替すべ きだ と主張 してい る訳ではない。逆 に、北東 アジア経済圏分業を北太平洋経済圏分業 に リンクさせ ることによって、北東 アジア分業すなわち北東 アジア
4
カ国分業 自体を一層発展 させ ることができるということを示唆 してい るのである。 とくに重要なのは対 ロシア貿易である。北太平洋航路が シベ リア鉄道経由の 「ラン ドプリッr ジ」構想 (後掲の図表 Ⅲ‑6‑
[図‑2 4 ]
「北陸地方 ・基幹航路を中心 とした国際物流ネ ッ トワークの 将来像」参照) (注4)と結 びつ くな らば、 日本海沿岸地域の対 ロシア貿易 は飛躍的な発展が期待でき るか らだ。同様の ことは、 日本海沿岸地域の対束 アジア経済圏分業 さらにはイ ン ドを も含む汎アジア経 済圏分業 について も云える。その意味で、北東 アジア経済圏分業 と北太平洋経済圏分業 との リンケージ 効果 は、BRICs分業のみな らず北東 アジア分業 自体 において も期待できるのである。北東 アジア経済 圏分業 と北太平洋経済圏分業 とを リンクさせ ることは、それを通 じて、 日本海沿岸地域を して、中国を は じめ、 ロシア、 イ ン ドさらにはブラジルな どいわゆるBRICs諸国 との相互依存関係形成 を可能 に し、さ らにそれが北東 アジア分業 の深化 に繋が るとい う訳だ。 いわゆる日本海 ・東海版BRICs分業論 (注
5
)である。要す るに、 日本海 ・東海BRICs分業論 は、 日本海地域 にとっては、「同心 円的経済圏」形成を通 じて の北東 アジア経済圏の発展 ‑すなわちその下での北東 アジア分業の拡大 と深化 ‑を意味 しているのであ るが、「北太平洋経済圏」 はこうした同心 円的経済圏形成のカギを握 っているのである。 その意味で、
われわれは 「北太平洋経済圏」問題 に対 して もっと注意を払 ってお く必要だあると云えよう (注
6
)。か くして、 日本海沿岸地域 にとっては、北東 アジア経済圏分業を北太平洋経済圏分業 に リンクさせ る ことのメ リッ トは極めて大 きいのであるが、そ うしたメ リッ トを享受す るためには両経済圏の リンケー ジを可能 にす るための 「北太平洋物流ネ ッ トワーク」 の創 出が不可欠である。そ もそ も日本海 ・東海B RICs分業構想 は、「北太平洋物流ネ ッ トワーク」形成抜 きには成 り立たないか らである。
2
「日本海 ・東海物流ネ ッ トワーク」 と 「北太平洋物流ネ ッ トワーク」 との リンケージ か くして 「日本海 ・東海物流ネ ッ トワーク」 もまた 「北太平洋物流ネ ッ トワーク」 との リンケージが 必要 になるが、では、その実現性は果た してあるのだろうか。次 にこの間題を取 り上 げてみよう。その 際、まず 日本海 ・東海物流ネ ッ トワークの現状 と問題点 について検討 しておかなければな らないであろう 。
(1
) 日本海 ・東海物流ネ ットワークの問題点ところでわれわれは、物流ネ ッ トワーク論 に入 る前 に、 日本海沿岸地域 においては、国際物流ネ ッ ト ワーク自体が大 きな問題を抱えているという現実を直視 してお く必要があるということをまず指摘 して おこう。
そこでまず現在の 日本海 ・東海物流ネ ッ トワークの問題点か らみておこう。確かに、 日本海 ・東海物 流ネ ッ トワークも東アジア物流ネ ッ トワークの発展の余波を受 け、近年 目覚ま しく発展 していることは 認めなければな らない。例えば、北陸 ・新潟地方の港湾別国際 コンテナ取扱量の推移をみてみると、
1 9 9
0年代後半以降、新潟港を中心に して著 しい伸びを記録 している (図表Ⅲ‑ 1参照) (注7)。また航空 路について も同様の傾向がみ られる。例えば、やは り北陸 ・新潟地方の空港を利用 した目的別乗降人員 の推移をみてみると、1 9 9 8
年度以降、対 ソウル行 きを中心 にして増大傾向を辿 っているのである (図表Ⅲ‑ 2参照)。
だが、 こうした発展にも係わ らず、 日本海 ・東海物流ネ ッ トワークには依然 として大 きな陥葬が存在 しているということを見逃す訳 にはいかない。すなわちそれは、産業構造 と国際物流構造における二重 の ミスマ ッチの存在である。
まず、 日本海沿岸地域 自体の 日本海沿岸港の低利用状況を指摘 しなければな らない。例えば、北陸 ・ 新潟地方 において生産 ・消費 される貨物の北陸 ・新潟地方港湾輸出入利用率をみてみると、輸入の場合
こそ
5 1 . 8% ( 2 0 0 3
年度) と辛 うじて5 0 %
を上回っているが、輸出に至 っては2 5
.4% (同) に過 ぎないの である (図表Ⅲ‑ 3参照)。つま り、北陸 ・新潟地方で生産 ・消費 される貨物 に関 してはその大半がい まなお太平洋側港湾を利用 しているという訳だ。図表 Ⅲ‑ 1
北陸地方の港湾別国際コンテナ取扱量の推移 (輸出入計) (1.000トン)貨 物
3,500 3.000 2.500 2.000 畳 1,500 1.000 500 0
卿 敦賀港 Eユ 金沢港
⊂コ 伏木富山港 l■一 直江津港 [=コ 新潟港
1 1
(資料)港湾管理者資料
(出所)国土交通省 ・北陸地方整備局 『北陸港湾 ・空港 ビジョ■ン
』p. 3
より。ー 33‑