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2.6.2 薬理試験の概要文

2.6.3.2 効力を裏付ける試験

2.6.3.2.1 オピオイド受容体への結合親和性

資料番号 4.2.1.1.1 報告年 1995 試験の概要

ウシの脳・尾状核を用い,放射性リガンドと競合させ,l-メサドン(R-メサドン),

d-メサドン(S-メサドン),dl-メサドン及びモルヒネのオピオイド受容体への結合親 和性を検討した。

生物学的物質 ウシの脳・尾状核を摘出し,試験に用いるホモジネートを調製 試験方法の

概要

ホモジネートを用いて,オピオイド受容体のそれぞれの放射性リガンド{[3H]DADL

(μ1),[3H]DAGO(μ2),[3H]DPDPE(δ)及び[3H]U69593(κ)}に対する,l-メサド ン,d-メサドン,dl-メサドン及びモルヒネの50%阻害濃度(IC50)を求めた。

被験物質 それぞれ10の異なる濃度のl-メサドン,d-メサドン,dl-メサドン及びモルヒネを,

放射性リガンドを添加したホモジネートとインキュベーションした。

結果

dl-d-及びl-メサドンのうち l-メサドンが μ1オピオイド受容体に対する親和性が一 番高く,IC50 = 3.01 ± 0.18 nMを示した。l-メサドンのμ1,μ2オピオイド受容体に対 する親和性はd-メサドンの約10倍,dl-メサドンの2倍高く,モルヒネと同程度であ った。

資料番号 4.2.1.1.2 報告年 2006

試験の概要 オピオイド受容体の形質移入細胞を用いて,メサドンと他のオピオイドの結合力価を 評価した。またμオピオイド受容体へのGTP結合作用をDAMGOと比較した。

生物学的物質 C6μ, C6δ及びCHOκ形質移入細胞,ラット(Sprague-Dawley)脳視床スライス標本

試験方法の 概要

C6細胞にμ又はδ,CHO細胞にκを形質移入し,調製した細胞膜に対するメサドン を含むオピオイド作動薬と0.2 nM [3H]diprenorphineとの拮抗試験から結合親和性を 評価した。また,作動薬を C6μ 細胞に 60 分間作用させ,[35S]GTPγS 結合活性を

DAMGOと比較した。脳スライスについては,20 μm厚の切片に40 pM [35S]GTPγS

と作動薬を2時間作用させた後,放射活性を調べた。

被験物質

C6μ,C6δ,CHOκ細胞由来細胞膜 拮抗試験:0.3 nM~1 μM

C6μ細胞 [35S] GTPγS 活性試験:0.001~10 μM

脳スライス[35S] GTPγS オートラジオグラフィー:10 μM

結果

細胞膜での結合試験においてメサドンは μオピオイド受容体に対し高い選択性を示 し,フェンタニル,モルヒネ及びオキシコドンと比べても高かった。μ オピオイド 受容体へのGTP結合試験として,C6μ細胞でのDAMGOと[35S]GTPγSの結合比を算 出したとき,メサドンはDAMGOに対し,100 ± 7.0%の活性を示した。これは,モ ルヒネ,フェンタニル及びオキシコドンよりも高く,更にラット視床スライス標本

での[35S]GTPγS の結合も,対 DAMGO 比で,フェンタニル(♂),モルヒネ(♂・

♀)及びオキシコドン(♂・♀)より高い値を示した。

メサドン塩酸塩 2.6.3 薬理試験概要表 Page 6

資料番号 4.2.1.1.3

報告年 2000

試験の概要

ラット髄腔内にd-メサドン,dl-メサドンを投与し,電気的刺激による脊髄後角ニュー ロンの侵害神経活動に対する抑制作用を検討し,ナロキソンによる拮抗作用につい ても検討した。

生物学的物質 ラット(Sprague-Dawley)

試験方法の 概要

ラットの脊髄(L4 - L5)をハロセン麻酔下で露出させ,脊髄後角に細胞外記録電極 を挿入し,後肢電気刺激後に得られるC-及びA-線維を経由した脊髄後角ニューロン の単一細胞活動を記録した。刺激は,C-線維閾値の3倍の電気刺激(2 ms幅,0.5 Hz,

16回)の入力を行った。d-メサドン(5, 25, 50, 250 及び500 μg/50 μL)及びdl-メサ ドン(5, 25, 50 及び250 μg/50 μL)を露出させた脊髄に投与し,神経活動の変化を測 定した。また,dl-メサドン(250 μg/50 μL)及びd-メサドン(500 μg/50 μL)投与状 態におけるナロキソンの拮抗作用を評価した。

被験物質 d-メサドン(5, 25, 50, 250 及び500 μg)又は dl-メサドン(5, 25, 50 及び 250 μg)は

50 μLの生理食塩水に溶解し,髄腔内投与した。

結果

dl-メサドンは後肢への電気的な侵害刺激に対して,25 μg/50 μL以上の濃度でC-線維 誘発による反応(90~300 ms),Aβ-線維誘発による反応(0~20 ms),Aδ-線維誘発に よる反応(20~90 ms),50 μg/50 μL以上ではinput(初回刺激の反応)を,250 μg/50 μLでは後発射(300~800 ms)を有意に抑制した。また,C-線維誘発による反応及び 後発射の16回の累積回数とinputの比較から算出されたワインドアップは,25 μg/50 μLの投与により有意に減少した。dl-メサドン(250 μg/50 μL)によるC-線維誘発に よる反応,Aβ-線維誘発による反応及びAδ-線維誘発による反応の抑制作用は1 μgの ナロキソンで,input,後発射及びワインドアップの抑制作用は5 μg のナロキソンで 打ち消された。また,d-メサドンは250 μg/50 μL以上の濃度でC-線維誘発による反 応を抑制し,500 μg/50 μLでinput,後発射,ワインドアップ及びAδ-線維誘発による 反応を有意に抑制したが,これらの効力は dl-メサドンに比べて弱く Aβ-線維誘発に よる反応については抑制しなかった。d-及び dl-メサドンの阻害作用は,ナロキソン により可逆的に拮抗されたことから,この抗侵害受容作用は主にオピオイド受容体 を介したものであると考えられた。

2.6.3.2.2 鎮痛作用

資料番号 4.2.1.1.4

報告年 2006

試験の概要 モルヒネ,オキシコドン,dl-メサドン,l-メサドン,d-メサドンの疼痛反応抑制作用 を複数の疼痛モデルにて評価した。

生物学的物質 ラット(Sprague-Dawley) 試験方法の

概要

Tail flickテスト,Hot plateテスト,Paw pressureテストを実施した。SNLモデルにつ いて,抗アロディニア作用(機械刺激誘発性及び冷感刺激性アロディニア)を評価し た。

被験物質 それぞれの塩酸塩を生理食塩水に溶解し,皮下投与した。

結果

モルヒネ,オキシコドン,dl-メサドン,l-メサドンはTail flickテスト,Hot plateテス

ト,Paw pressureテストで用量依存性の疼痛反応抑制作用を示した。100%MPEを示し

た遊離塩基換算での最小用量は,l-メサドンは,2.24 mg/kg(Tail flickテスト及びHot

plateテスト),4.47 mg/kg(Paw pressureテスト)であった。d-メサドンはどのテスト

においても抗侵害受容作用を示さなかった。機械刺激誘発性又は冷感刺激性アロディ ニアに対してモルヒネ,オキシコドン,dl-メサドン及びl-メサドンは用量依存性の抗 アロディニア作用を示し,いずれもl-メサドンの効果が最も強かった。d-メサドンは 抗アロディニア作用を示さなかった。

メサドン塩酸塩 2.6.3 薬理試験概要表 Page 7

資料番号 4.2.1.1.2

報告年 2006

試験の概要 雌雄ラットを用いて,メサドンと他のオピオイドの皮下投与による鎮痛力価を評価し た。

生物学的物質 ラット(Sprague-Dawley)

試験方法の 概要

薬物を皮下投与し,30分後に50℃の温水に尾部を浸漬し,そこからの回避時間を計 測した。脳のスライス標本を用いてオピオイド存在下での[35S]GTPγS結合活性を雌雄 で比較した。

被験物質 滅菌水に溶解し,皮下投与。

[35S]GTPγSオートラジオグラフィーは10 μMの濃度で作用させた。

結果

メサドンのED50は雄で1.49 ± 0.20 mg/kg,雌では1.81 ± 0.37 mg/kgであり,オキシコ ドンと同程度で,モルヒネ,ハイドロコドンよりも強いことが示唆された。また,メ サドンのED50において性差は確認されなかった。[35S]GTPγS結合活性でもメサドン を含む被験物質で性差は見られず,メサドンは DAMGO に対する比活性が最も大き かった。

資料番号 4.2.1.1.5

報告年 1971

試験の概要 ラットを用いて,EDDP及びEMDPについて皮下あるいは経口投与による鎮痛効果を評 価した。

生物学的物質 ラット(系統・週齢不明)

試験方法の 概要

薬物を皮下あるいは経口投与し,30及び60分後に尾部熱刺激に対する回避時間を計 測した(tail-jerk assay)。EDDPはモルヒネに対する拮抗作用,EMDPはdl-メサドン に対する拮抗作用を評価した。

被験物質

皮下あるいは経口投与。

それぞれ単独の効果の評価には,皮下(100 mg/kg)あるいは経口(200 mg/kg)投与 を用いた。

結果

EDDP及びEMDPのいずれも,投与経路によらず投与30及び60分後の評価において 鎮痛作用を示さなかった。

EDDP(100 mg/kg皮下あるいは200 mg/kg経口投与)は,モルヒネ(1.0 mg/kg皮下投 与)による鎮痛効果に拮抗せず,EMDP(100 mg/kg 皮下あるいは経口投与)は, dl-メサドン(0.05 mg/kg皮下投与)による鎮痛作用に対し拮抗しなかった。

2.6.3.2.3 モルヒネ耐性に対する作用

資料番号 4.2.1.1.6 報告年 2002

試験の概要 坐骨神経を傷害したラット神経障害性疼痛モデルを用いて,モルヒネとメサドンの交 差耐性について検討を行った。

生物学的物質 ラット(Sprague-Dawley)

試験方法の 概要

機械刺激誘発性の痛覚過敏反応を測定し,耐性形成を評価した。更に,それぞれの最 終投与翌日に薬物を交差投与し交差耐性の評価を行った。

被験物質 1日2回,メサドン塩酸塩(5 mg/kg,21日間)もしくはモルヒネ塩酸塩(10 mg/kg, 14日間)を皮下投与した。

結果

メサドンにより,完全な鎮痛作用の発現は9日間継続したが,その後,鎮痛作用は減 弱しラットに耐性形成が認められた。モルヒネでは,3日目から完全な鎮痛作用が見 られなくなり,メサドンよりも早期から耐性形成が認められた。耐性形成後に交差投 与を行った結果,モルヒネ耐性形成を示したラットに対し,メサドンは鎮痛効果を示 したが,メサドン耐性形成を示したラットに対し,モルヒネは無効であった。

メサドン塩酸塩 2.6.3 薬理試験概要表 Page 8

資料番号 4.2.1.1.7

報告年 1992

試験の概要 モルヒネ,フェンタニル及びメペリジンを1週間持続投与し,その前後における各オ ピオイドの疼痛反応抑制作用を評価した。

生物学的物質 ラット(Sprague-Dawley)

試験方法の 概要

疼痛反応の測定には Tail flick テストを用いた。浸透圧ポンプを用いてモルヒネ等を

(1/4 ED50)/時間で1週間皮下投与し,これらの処理前及びポンプ摘出24時間後に 各オピオイドのED50を算出し,ED50を比較したRelative Potency (RP)を求めた。

被験物質 それぞれのオピオイドを塩形態で生理食塩水に溶解し,皮下投与した。

結果

モルヒネ処理に対するRPは,モルヒネ及びフェンタニルが0.54及び 0.70となり,

ED50が有意に増加した。一方,メサドンはRP 0.78と用量の有意な増加を示さなかっ た。フェンタニル処理に対しては,モルヒネ,フェンタニル及びメサドンのRPが,

0.99,1.27及び0.98 を示し,いずれの薬剤もED50の有意な増加を認めなかった。メ

ペリジン処理に対しては,モルヒネ,フェンタニル及びメサドンのRPが,0.40,0.49 及び0.51を示し,いずれの薬剤もED50が有意に増加した。

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