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2.6.2 薬理試験の概要文

2.6.3.3 副次的薬理試験

2.6.3.3.1 NMDA受容体を介する作用

資料番号 4.2.1.2.1 報告年 1997

試験の概要 ラットの前脳及び脊髄を用いて,NMDA受容体に対するメサドンの結合作用について 評価した。

生物学的物質 ラット(Sprague-Dawley) 試験方法の

概要

ラット前脳及び脊髄から神経膜を調製した。

放射性リガンドと競合させ,NMDA受容体への結合親和性を検討した。

被験物質

前脳:dl-メサドン,d-及びl-メサドン(1, 3, 10, 100 μM) vs 5 nM [3H]MK-801 脊髄:dl-メサドン,d-及びl-メサドン(0.1, 1, 10, 100, 300 μM) vs 5 nM [3H] MK-801 前脳:dl-メサドン,d-及びl-メサドン( - ) vs 10 nM [3H] CGS-19755

結果

dl-d-及びl-メサドンは,前脳及び脊髄において[3H] MK-801と競合し,NMDA受容 体のグルタミン酸非競合部位に対し親和性を示した。同様に検討を行ったモルヒネ, ハイドロモルフォン及びナルトレキソンは MK-801 を置換しなかった。一方,[3H]

CGS-19755はいずれの薬剤によっても置換されず,メサドンはNMDA受容体のグル

タミン酸結合部位に対しては親和性を示さなかった。

資料番号 4.2.1.2.2 報告年 1997

試験の概要 ラットを用いて,ホルマリン誘発性の疼痛反応に対する作用を評価し,NMDA 受容 体を介した抗侵害受容作用であることを示した。

生物学的物質 ラット(Sprague-Dawley)

試験方法の 概要

d-メサドンを脊髄に投与し,右足蹠にホルマリンを投与した後の疼痛反応を計測し た。同様に,ナロキソンをd-メサドンと同時投与を行った場合についても疼痛反応を 計測した。また,髄腔内にNMDAを投与して起こる侵害反応に対するd-メサドンの 作用を検討した。

被験物質

ホルマリンテスト:32, 160, 320 μg/ラット,

ナロキソン(30 μg/ラット)の拮抗作用検討時:250 μg/ラット 髄腔内NMDA誘発侵害作用検討時:250 μg/ラット

結果

d-メサドンはホルマリン投与10~60分後に起こる2相目の疼痛反応を用量依存的に 抑制し,これはナロキソンにより拮抗されなかった。d-メサドンの 250 μg/ラット投 与は,侵害反応を示すためのNMDAのED50を3倍以上に増加させ,NMDA受容体 拮抗作用による鎮痛作用を持つことが示唆された。一方,同時に実施されたTail-flick テストでは,l-メサドンにみられる鎮痛作用を d-メサドンが示さなかった。l-メサド ンの作用はナロキソンで拮抗された。

メサドン塩酸塩 2.6.3 薬理試験概要表 Page 10

2.6.3.3.2 5-HT及びNA再取り込み阻害作用

資料番号 4.2.1.2.3

報告年 1995

試験の概要 ラットより神経膜を調製し,放射性リガンドと競合させ,オピオイド受容体への結合 阻害定数,5-HT及びNA再取り込み阻害定数を求めた。

生物学的物質 ラット(Wistar)の脳,延髄-橋を摘出し,試験に用いるシナプトソームを調製

試験方法の 概要

大脳皮質あるいは延髄-橋のホモジネートからシナプトソームを調製した。メサドン を含む各オピオイド作動薬(それぞれ 5~10 濃度)及びリガンドとして,[3H]5-HT あるいは[3H]NAをそれぞれ5分あるいは6分間作用させ,それぞれのリガンドの再 取り込み量を測定し,各オピオイドの阻害定数(Ki)を求めた。

被験物質 5-HT再取り込み阻害 NA再取り込み阻害

d-及びl-メサドン(濃度不明)+ 10 nM [3H]5-HT / 5分間

d-及びl-メサドン(濃度不明)+ 10 nM [3H]NA / 6分間

結果

d-及び l-メサドンは,いずれも 5-HT 再取り込み阻害作用を示し,それぞれの Ki

992及び14.1 nMであった。更にd-及びl-メサドンは,いずれもNA再取り込み阻害

作用を示し,それぞれのKiは12700及び702 nMであった。同様に比較を行ったモ ルヒネ,オキシコドン,ブプレノルフィン,ナロキソンなどのテトラヒドロフラン環

を有しC4-C5に橋状酸素を持つオピオイドは,5-HTあるいはNA再取り込み阻害作

用を示さなかった。メサドンと同様に非フェナントレンとして評価を行ったトラマ ドールについては,(±)-,(+)-及び(-)-トラマドールのいずれも 5-HTあるいは NA 再取り込み阻害作用を示し,Kiはそれぞれ992, 528及び2350あるいは785, 2510及

び432 nMであった。

資料番号 4.2.1.2.4 報告年 1997

試験の概要 ラットより神経膜を調製し,放射性リガンドと競合させ,5-HT再取り込み阻害定数 を求めた。また,メサドン皮下投与後における5-HT再取り込みの評価を行った。

生物学的物質 ラット(Sprague-Dawley)の大脳皮質から,試験に用いるシナプトソームを調製

試験方法の 概要

大脳皮質のホモジネートからシナプトソームを調製し,メサドン及びリガンドとして

[3H]5-HT を6分間作用させ,リガンドの再取り込み量を測定し,阻害定数(Ki)を

求めた。ex vivo の試験として,急性投与試験ではメサドンの ED50量もしくは ED90

量を投与した30分後にシナプトソームを調製した。慢性投与試験ではメサドンを15 日間投与し,72 時間後にシナプトソームを調製もしくは24時間後にED90量を投与 し30分後にシナプトソームを調製した。これらを用いて,[3H]5-HT取り込みの評価 を実施した。

被験物質

in vitro 5-HT再取り込み阻害:メサドン(濃度不明)+ 5 nM [3H]5-HT / 6分間

ex vivo試験:それぞれの塩酸塩を生理食塩水に溶解し,皮下投与した。

急性投与試験:メサドン投与量(3.5, 35 mg/kg)

慢性投与試験:メサドン投与量(開始時5 mg/kg,2.5 mg/kg/日増量,最終40 mg/kg)

結果

メサドン及びトラマドールの 5-HT 再取り込み阻害作用における Ki はそれぞれ 270

及び760 nMであった。一方,モルヒネは再取り込み阻害作用を示さなかった。ホッ

トプレート法での ED50を皮下投与した時に,トラマドール処理ラットでは 5-HT の 取り込みが 63%まで阻害されたが,メサドンでは認められなかった。一方,ED90を 投与した際に,5-HT取り込み量がメサドンは52%まで阻害されたが,モルヒネでは 認められなかった。メサドン慢性投与の結果,休薬72時間後に5-HT取り込みが90%

増加したが,トラマドールには認められなかった。一方,24時間後にED90量を作用 させた場合,メサドンによる5-HT再取り込み阻害作用は認められなかった。

メサドン塩酸塩 2.6.3 薬理試験概要表 Page 11

資料番号 4.2.1.2.5

報告年 1974

試験の概要 ラットを用いてメサドンを腹腔内投与し,5-HT 及び 5-hydroxyindole acetic acid

(5-HIAA)の脳内濃度を測定した。

生物学的物質 ラット(Sprague-Dawley)

試験方法の 概要

メサドンを含む各薬物を腹腔内投与し,1時間後に脳を摘出し,5-HT及び5-HIAAの 濃度を測定した。さらに,プロベネシド及びパルギリン併用に対する 5-HIAA 及び 5-HTの変化についても評価を行った。

被験物質 メサドン塩酸塩(10 mg/kg,遊離塩基換算)は生理食塩水に溶解し腹腔内投与した。

結果

メサドン(10 mg/kg)の腹腔内投与により,脳内の5-HT,5-HIAA濃度に変化は認め られなかった。モルヒネ(10及び20 mg/kg)は,5-HT濃度に変化を及ぼさなかった

が,5-HIAA濃度は20 mg/kgの腹腔内投与により有意に増加した。同様に評価を行っ

たペチジン(50 mg/kg)及びクロルイミプラミン(15 mg/kg)では,5-HIAA濃度の 減少が認められた。さらに,プロベネシド及びパルギリン投与により脳内の5-HIAA 及び5-HTの経時的な増加がモルヒネ(20 mg/kg)では亢進されたが,メサドンには 認められなかった。

2.6.3.3.3 催吐作用及び制吐作用

資料番号 4.2.1.2.6

報告年 1986

試験の概要 イヌを用いて,各種オピオイドの覚醒下での催吐及び制吐作用を評価した。

生物学的物質 イヌ(雑種)

試験方法の 概要

アポモルフィン(静脈内投与:0.03 mg/kg)及び硫酸銅(胃内投与:16 mg/kg)によ る催吐作用を確認した。次に,オピオイドを静脈内投与した後,15 分後にアポモル フィン単独あるいは硫酸銅を併用投与し,それから15分後までの嘔吐の有無を観察 した。

被験物質 メサドン(0.2, 0.5, 1 mg/kg)は生理食塩水に溶解し静脈内投与した。

結果

メサドン(0.2, 0.5, 1 mg/kg),フェンタニル(0.005, 0.01 mg/kg)及びモルヒネ(0.3, 1, 2 mg/kg)を静脈内投与した結果,メサドン及びフェンタニルではいずれの投与量に おいても嘔吐は見られなかったが,モルヒネは0.3 mg/kg投与で6匹中6匹,1 mg/kg 投与で5匹中1匹に嘔吐が確認された。以上のことより,メサドンの催吐作用はない か,あってもモルヒネよりも弱いものと考えられた。また,薬剤誘発性の催吐は,オ ピオイドの高用量投与によって抑制された。

メサドン塩酸塩 2.6.3 薬理試験概要表 Page 12

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