第 3 章 全点間信頼度制約付き構築コスト 最小化問題
3.3 ネットワーク構成の分類
3.3.1 分類の基準
本章では,エッジ数一定のネットワークを分類し,分類されたネットワークの 全点間信頼度の大小比較を行い,最大全点間信頼度を求める.
ここで,本章で分類されるネットワークを図示する際,図中のノードを繋ぐ線 は,複数のエッジが直列で連結されたエッジ集合を表すものとする.図 3-1-1の 右のネットワークにおいて次数が2のノードは,左のネットワークのように省略 し,そのノードが直列に連結しているエッジ集合Ehは 1 本のエッジとして表記 するものとする.
次に,図3-1-2に示したネットワークxとxを考える.この2つのネットワーク
は,エッジ集合E1とE2の配置のみが異なり,その他の要素は同一なネットワー クである.xとxのE1とE2は,それぞれ同じ本数のエッジで構成される.ここ で,xとxの全ノードが連結する事象をそれぞれY,Y,エッジ集合E1の全ての エッジが稼働している事象をF1,i1,2,3,,E(1)に対しE1のうちi本のエッジが 故障している事象をFi1とする.ただし,i2のときPr{Y|Fi1}0となることに注
50
意されたい.このとき,xとxの全点間信頼度は下記で表される.
} Pr{
}
| Pr{
} Pr{
}
| Pr{
)
( Y F1 F1 Y F11 F11
R x
} Pr{
}
| Pr{
} Pr{
}
| Pr{
)
( Y F1 F1 Y F11 F11
R x
上 記 の 2 式 に お い て , Pr{Y|F1}Pr{F1}Pr{Y|F1}Pr{F1} , 0
}
| Pr{
}
|
Pr{Y F11 Y F11 より,R(x)R(x)となる.このことは,ネットワーク のエッジ集合の端点に次数1のノードがある場合,そのネットワーク構成より全 点間信頼度が高くなる構成が存在することを意味する.よって,本論文では,エ ッジ集合Ehの端点に次数 1 のノードが存在するネットワークは信頼度の大小比 較の候補として考えないものとする.
図3-1-1 ネットワーク中のエッジ集合Eh
図3-1-2 エッジ集合Ehの配置
51
図3-2 サイクルの概念
本論文では,ネットワークを分類するための基準をネットワークの分類指標と 呼ぶこととし,ネットワークの分類指標として,隣接サイクル数[61]を提案する.
本章におけるサイクルとは,全て異なるノードが連結された閉歩道となるグラフ
(部分ネットワーク)を意味し,内部に他のサイクルを含まないものとする.ネ ットワーク G に複数のサイクル Si (i1,2,,U, U はサイクル数)が存在す る場合,あるサイクルS1に注目したとき,S1とエッジ集合を共有し,隣り合って いるS1以外のサイクルを隣接サイクルとする.図3-2に例を示す.図のネットワ ークは,S1,S2,S3の 3 つのサイクルを持つネットワークである.サイクルの内部 にサイクルを含むものはサイクルとして考えないので,Sのような複数サイクル の外側を囲むサイクルは数えないものとする.
図 3-2 のサイクルS1がエッジ集合を共有している隣接サイクルはS2,S3の 2 つ である.次にサイクルS2とS3の隣接サイクルは,ともにS1で1つである.また,
U
i1,2,, に対しサイクルSiの隣接サイクル数をsiとする.さらに,siには一 般性を失うことなく次の大小関係があるものとする.
sU
s s
s1 2 3
このとき,サイクルSi は隣接サイクルとしてSi を有することはないので,
1U 1
s が成立する.また,様々な隣接サイクル数の組み合わせを考えた時にs1 が取り得る最大値をsmaxとし,表3-1にsmaxとUの値をまとめた.
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表3-1 サイクル数と隣接サイクル数
エッジ数 U smax
1
n
k 0 -
n
k 1 0
1
n
k 2 1
2
n
k 3 2
3
n
k 4 3
3.3.2 ネットワークの分類
考え得る隣接サイクル数siの値の組み合わせにより,kn1,n2,n3にお いて構成可能なネットワークを列挙する.ここで,siについて以下の性質を示す.
性質3-1
Ui
si 1
が奇数であるネットワークは存在しない.
性質3-2
i s s i U
I # | i max, 1,2,, とする.このとき,iI,I1,,Uにおいて1つで もsi I を満たす場合,そのネットワークは存在しない.
性質3-3
エッジ数kのネットワークにおいて,si (iU)の組み合わせが,既知のエッジ 数k1のネットワークと同じとき,sU 0であれば,そのネットワークは存在し ない.si (iU)の組み合わせが,エッジ数k1のネットワークと異なる場合,
0
sU であればネットワークは存在しない.
性質3-1,性質3-2,性質3-3を利用し,列挙したsiの組み合わせにおいて,ネ
ットワークの存在有無を検討する.性質3-1,性質3-2,性質3-3のいずれかによ って存在しないと判定されたsiの組み合わせには,その根拠を表の判定項目に
(1),(2),(3)で示す.いずれの性質にも該当しない組み合わせについては,Tktとして
図3-3から図3-5にその各タイプTktを示す.以下の表3-2から表3-4において,si にはs1 s2 s3sUの大小関係があるものとする.
53
1) k n1の場合
表3-2 隣接サイクル数によるネットワークパターン(k n1)
パターン s1 s2 判定
1 1 1 Tn21
2 1 0 (1)(2)
3 0 0 Tn11
図3-3 k=n+1のネットワーク
1
n
k のとき,図3-3(a)と(b)に示したTn11とTn21の2種類のネットワークが構 成可能である.表 3-2 における,隣接サイクル数(s1,s2)(1,0)の組み合わせを持 つネットワークは,性質3-1と性質3-2から存在しない.
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2) kn2の場合
表3-3 隣接サイクル数によるネットワークパターン(k n2)
パターン s1 s2 s3 判定
1 2 2 2 Tn42
2 2 2 1 (1)(2)
3 2 2 0 (2)
4 2 1 1 Tn32
5 2 1 0 (1)(2)
6 2 0 0 (2)
7 1 1 1 (1)(3)
8 1 1 0 Tn22
9 1 0 0 (1)(3)
10 0 0 0 Tn12
図3-4 k=n+2のネットワーク
2
n
k のとき,図3-4(a),(b),(c),(d)に示したTn12,Tn22,Tn32,Tn42の4種 類のネットワークが構成可能である.
55
3) kn3の場合
表3-4 隣接サイクル数によるネットワークパターン(k n3)
s1 s2
s
3 s4 判定 s1 s2s
3 s4 判定1 3 3 3 3 Tn93 19 3 1 0 0 (2)
2 3 3 3 2 (1)(2) 20 3 0 0 0 (1)(2)
3 3 3 3 1 (2) 21 2 2 2 2 (3)
4 3 3 3 0 (1)(2) 22 2 2 2 1 (1)(3)
5 3 3 2 2 Tn83 23 2 2 2 0 Tn53
6 3 3 2 1 (1)(2) 24 2 2 1 1 Tn63
7 3 3 2 0 (2) 25 2 2 1 0 (1)(3)
8 3 3 1 1 (2) 26 2 2 0 0 (3)
9 3 3 1 0 (1)(2) 27 2 1 1 1 (1)(3)
10 3 3 0 0 (2) 28 2 1 1 0 Tn43
11 3 2 2 2 (1) 29 2 1 0 0 (1)(3)
12 3 2 2 1 Tn73 30 2 0 0 0 (3)
13 3 2 2 0 (1)(2) 31 1 1 1 1 Tn33
14 3 2 1 1 (1) 32 1 1 1 0 (1)(3)
15 3 2 1 0 (2) 33 1 1 0 0 Tn23
16 3 2 0 0 (1)(2) 34 1 0 0 0 (1)(3)
17 3 1 1 1 Tn103 35 0 0 0 0 Tn13
18 3 1 1 0 (1)(2)
56
図3-5 k=n+3のネットワーク
3
n
k のとき,図3-5に示したTn13からTn103の10種類のネットワークが構成可 能である.次にk n1,n2,n3の分類されたネットワークに対し,全点間信 頼度の大小を検討する.
3.3.3 ファクタリング法
本項では,k n1,n2,n3の分類されたネットワークに対し,全点間信頼度 の大小を検討する. エッジ本数kn2,n3のネットワークに対し,横田他[86]
はkn2のネットワークを4種類に分類,kn3のネットワークは9種類のタ イプに分類した.Kishihata他[32]は横田他[86]の分類をJanのアルゴリズムへ適用
57
し,その効率性について考察を行った.しかしながら,横田他[86]の比較結果は,
n
が小さくエッジ数kが比較的小さいときにしか適用できないという問題があっ た.そこで本章ではChen他[15], Xiao他[60]によるファクタリング法を用いた信 頼度の大小比較を適用する.ファクタリング法は,全点間信頼度を計算する際に,第1章で述べたように計 算対象のネットワークよりエッジ数の少ないネットワークに変形する方法であ る.この手法は,全点間信頼度が既知であるネットワークに変換することで,計 算を容易にできる特徴がある.ネットワークの変換は,あるエッジの状態に注目 して行う.
ここで,kn3のネットワークにて,ファクタリング法の適用例を示す.図 3-6 のネットワーク
x
n3は,E9の状態によって,ネットワークx ˆ
n2とx
n2に変形 することができる.E9のエッジがすべて稼働する場合と,E9のエッジのうち 1 本のみが故障する場合に分け,E9のエッジがすべて稼働する確率をpc(E9),E9 のエッジのうち1本のみが故障する確率をpd(E9)とすると,x
n3の全点間信頼度 は下記で計算できる.) ( ) ( ˆ )
( ) ( )
( n3 pc E9 R n2 pd E9 R n2
R x x x
ここで,図 3-6 のネットワーク
x ˆ
n2の二重線で示したエッジ集合は,エッジ集 合のエッジがすべて稼働の状態,ネットワークx
n2の点線で示したエッジ集合は,エッジ集合のうち1本のみが故障の状態を表している.
このように,ネットワーク
x
n3は,エッジ数の少ないネットワークx ˆ
n2,x
n2で 表すことが可能である.図3-6 ファクタリング法の例
58
3.3.4 ファクタリング法を用いた信頼度比較
3.3.2 項で示した各タイプTktのネットワーク xtk の全点間信頼度の大小関係を
比較し,全点間信頼度が最大となる構成を検討する.
ここでkn1については,Jan[26]によりR(x1n1)R(x2n1)の関係が成り立つこ とが示されている.
次にkn2の場合について下記の関係を導くことができる.
1) k n2の場合
2
Xn のネットワークは図3-4の4つのタイプに分類できる.ここで,それぞれ のネットワークの
(
tn2)
R x
を,R(xtn1),及び既知の全点間信頼度に分割し大小比 較を行う.(1)Tn12とTn22について
図3-7にTn12とTn22のファクタリング法による変形を示す.x1n2Tn12,x2n2Tn22 とする.x1n2のエッジ集合E6に注目し,E6のエッジがすべて稼働する場合と,
E6のエッジのうち 1 本が故障する場合に分ける.E6のエッジがすべて稼働す る場合は,E6のエッジがすべて稼働する確率がpc(E6),変形したネットワー クの全点間信頼度はR(x1n1)pc(E5)となる.一方,E6のエッジのうち 1 本だけ が 故 障 す る 確 率 は p d(E6) , 変 形 し た ネ ッ ト ワ ー ク の 全 点 間 信 頼 度 は ,
) ( ) ( 11 pc E5
R xn となる.Tn22のネットワークx2n2についても同様に場合分けを行 う.よって2つのネットワークの全点間信頼度は下記で求められる.
)) ( ) ( )(
( )) ( ) ( )(
( )
( 1 2 pc E6 R 1 1 pc E5 pd E6 R 1 1 pc E5
R xn xn xn
)) ( ) ( )(
( )) ( ) ( )(
( )
( 2 2 pc E6 R 2 1 pc E5 pd E6 R 2 1 pc E5
R xn xn xn
これよりTn12とTn22のネットワークについて,以下の関係が成り立つ.
) ( )
( 1n1 R 2n1
R x x より,R(x1n2)R(x2n2)
59
図3-7 x1n2とx2n2の変形過程 (2)Tn22とTn32について
図3-8に,Tn22とTn32についてファクタリング法によるネットワーク変形を示 す.x2n2Tn22,x3n2Tn32とする.図 3-8 でx2n2とx3n2のE5の全エッジを稼働状 態としたとき,E5が結ぶノードは1つのノードとして考えることができる.E5 の両端のノードを1つにまとめてネットワークを変形すると,図3-8の同型の ネットワーク A,B になる.よって,2 つのネットワークの全点間信頼度は,
次式で計算される.
0 ) ( ˆ )
( ) ( )
( 22 pc E5 R 22 pd E5
R xn xn
) ( ) ( ˆ )
( ) ( )
( 3n2 pc E5 R 3n2 pd E5 R 2n1
R x x x
これより以下の関係が成り立つ.
) ( )
( 2n2 R 3n2
R x x
60
図3-8 x2n2とx3n2の変形過程
(3) Tn32とTn42について
図3-9に,Tn32とTn42についてファクタリング法によるネットワーク変形を示 す.x3n2Tn32,x4n2Tn42とする.図 3-9 でx3n2とx4n2のE3の全エッジを稼働状 態としたネットワークxˆ3n2とxˆ4n2は,それぞれ図3-9の同型のネットワークA1 と B1 に変形できる.また,x3n2とx4n2のE3のうち 1 本だけが故障状態とした ネットワークはx1n1とx2n1であり,E3を削除し整理するとネットワーク A2 と B2 のようになる.ここで,x1n1とx2n1が取り得る全点間信頼度の最大値を比較 すると,
) ( max ) (
maxR x1n1 R x2n1
となる.よって,2つのネットワークの全点間信頼度は,次式で計算される.
) ( ) ( ˆ )
( ) ( )
( 3n2 pc E3 R 3n2 pd E3 R 1n1
R x x x
) ( ) ( ˆ )
( ) ( )
( 4n2 pc E3 R 4n2 pd E3 R 2n1
R x x x
61
図3-9 x3n2とx4n2の変形過程
これより以下の関係が成り立つ.
) ( )
( 3n2 R 4n2
R x x
全点間信頼度の比較は,図3-7から図3-9に示したようにネットワークを変形 しながら行う.以上の大小関係の比較から,次の定理が成り立つ.
定理3-1
2
n
k において,上記4タイプの信頼度の大小関係は以下のようになる.
3 , 2 ,
1
t に対して,