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3. 平成 27 年度の実施内容及び成果 10

3.1.2 核分裂片質量数分布の系統的測定

a. タンデム施設における代理反応核分裂実験

平成24〜27年度にかけて、それぞれ18O+238U、18O+232Th、18O+248Cm、18O+237Npの実験 を行った。加速した18O(8+)ビームのエネルギーは、157〜162 MeVとした。1つの反応実験 として、10日を要した。

b. 実験データスペクトル

実験で得られたスペクトルを示す。図3.1.2-1は、シリコン∆E-E検出器で得られた荷電粒子 のスペクトルで、18O+232Th反応(18Oのエネルギーは157MeV)のものである。横軸は、検出 した散乱粒子のエネルギーとした。18Oの弾性散乱に伴う強いピークが観測されている。図に示 すように、1618O、1416N、1214Cといった同位体が分離できているのがわかる。16Oが検出さ れた場合、複合核234Thが生成されたことを意味する。14Nは、236Paの生成を意味する。このよ うに同位体を分離することは、異なる複合核を識別することを意味しており、一度の実験で多く の複合核の核分裂を調べることができることがわかる。

図3.1.2-2は、標的をはさんで対面する2つのMWPCで核分裂片をコインシデンス測定し、こ

の時間差(dT)を示したものである。図の(a)と(b)は複合核 236U、(c)と(d)は235Paの結果で、

いづれも18O+232Thの実験から得た。励起エネルギー1020MeVのスペクトル、すなわち(a)お

よび(c))では、2つの山が顕著に現れている。これは、質量非対称核分裂の特徴を示している。

一方、高励起状態の5060MeVのスペクトルでは、広い分布になっている。すなわち、質量対 称の分布であることを意味している。

図 3.1.2-2: 2台のMWPC間で得られた2つの核分裂片の時間差スペクトル。

m

M

m’, e’

M’, E’

p

p’

P’

q ’ Q ’

図 3.1.2-3: 核子移行反応18O(232Th, X)xの運動学の模式図。

表 3.1.2-1: 核子移行反応(図 3.1.2-3)の運動学におけるパラメータ。

質量 運動量 向き 入射核(18O) m p — 標的核(232Th) M 0 — 散乱粒子 m p θ, ϕ

複合核 M P Θ,Φ c. 核分裂片質量数の決定方法

本実験手法による核分裂片の質量数の決定方法について述べる。図 3.1.2-3に核子移行反応に おける運動学の概略を示す。各粒子のパラメータを表 3.1.2-1にまとめた。運動量とエネルギー の保存則は

p=p+P (3.1) mc2 +M c2+ p2

2m =mc2+Mc2+ p2

2m + P2

2M +E +e (3.2) と書ける。運動量保存則の式から、

P =

p2+p22ppcosθ (3.3) であり、p, p, θは実験で測定しているので、複合核Mの運動量P を求めることができる。ま た、これをエネルギー保存則の式に代入すれば、系の励起エネルギーEx は、

Ex ≡E+e =Q+ p2

2m p2

2m p2+p22ppcosθ

2M (3.4)

のように求めることができる。ここで、Q≡ {(m+M)(m+M)}c2とおいた。散乱粒子m が励起されていないという仮定をすれば、複合核の励起エネルギーはE =Exである。

2体反応であるから、Φ =ϕ+πである。また、p =pPであるから、

p2 =p2+P22pPcos Θ −→cos Θ = p2+P2−p2

2pP (3.5)

によって、複合核の飛ぶ向きΘ,Φを求めることができる。

m ,e

2 2

M’, m’

P’

Q ’ q

1

q

2

m

1

,e

1

p

2

p

1

図 3.1.2-4: 核分裂における運動学の概略。

表 3.1.2-2: 核分裂(図 3.1.2-4)の運動学におけるパラメータ。

質量 運動量 向き 複合核 M P Θ,Φ 核分裂片1 m1 p1 θ1, ϕ1 核分裂片2 m2 p2 θ1, ϕ2

次に、複合核の核分裂の運動学を計算する。図 3.1.2-4に運動学の概略を、また表 3.1.2-2にパ ラメータを示す。運動量およびエネルギー保存則は

P =p1+p2 (3.6) Mc2+ P2

2M +E =m1c2 +m2c2+ p21

2m21 + p22

2m22 +e1+e2 (3.7) と書ける。複合核の運動量ベクトルPから測った、2つの核分裂片の運動量ベクトルp1,p2の 向きを、それぞれθ1, θ2とすれば、運動量保存則は、

P =p1cosθ1 +p2cosθ2 (3.8) 0 =p1sinθ1−p2sinθ2 (3.9) と表され、

p1 = sinθ2

sin(θ1+θ2)P, p2 = sinθ1

sin(θ1+θ2)P (3.10) が得られる。θiはベクトルPpiがなす角であるから、

cosθi = P·pi

Ppi = sin Θcos Φsinθicosϕi+ sin Θsin Φsinθisinϕi+ cos Θcosθi (3.11)

Excitation energy (MeV)

Mass (u) 239

U

*

図 3.1.2-5: 核分裂の質量と複合核(239U)の励起エネルギーの相関。

である。これらを用いれば、核分裂片の運動量の大きさp1, p2を求めることができる。

核分裂片がMWPCで検出されるまでに飛んだ距離をそれぞれl1, l2とする。これらの距離は、

MWPCで得られる位置情報から求められる。2つの核分裂片がMWPCにたどり着くまでの時間 の差は、

τ =τ2−τ1 = l2

v2 l1

v1 = m2l2

p2 −m1l1

p1 (3.12)

と表せる。

複合核の質量Mと核分裂片の質量m1, m2の差B ={M(m1+m2)}c2は200 MeV程度で あり、質量数が240程度の複合核の質量に比べ無視できるほどに小さい。すなわちm1+m2 = M−B/c2 ≈Mである。これと時間差情報τを用いると、

m1 = l2p1M−τ p1p2

l1p2+l2p1 , m2 = l1p2M+τ p1p2

l1p2 +l2p1 (3.13) となり、核分裂片の質量を求めることができる。

図 3.1.2-5に、18O+238U18O+239Uによって生成した239Uの核分裂片の質量数と励起エネル ギーの相関を示した。この図から、励起エネルギーが高くなるに従い、質量数分布の対称成分大 きくなっていくことが見て取れる。

d. 核分裂質量分布の結果

図3.1.2-6、3.1.2-7、3.1.2-8, 3.1.2-9に、それぞれ18O+232Th、18O+238U、18O+248Cm、18O+237Np で得られた核種の核分裂片質量数分布を示す。このうち、234Th、234,235,236Pa、240U、240,241,242Np、

238,243Pu,245,246Am, 247,249Cm,249,250,251Bk,251,253Cf,254,256Es, 255Fm の22核種は、核種として本 研究で初めて測定したデータとなった。また、図ではそれぞれの核種において、励起エネルギー

10MeVのビンごとに図示している。これらスペクトルから、以下のことを明らかにした。

1. 励起エネルギー20MeV以下では、質量数分布は非対称性を有する。

2. 励起エネルギーの増加とともに、質量数分布は非対称から対称に変化していく。これは、核 分裂過程に及ぼす原子核の殻構造が消滅していくことを表していると解釈できる。

3. 特定の元素に対する同位体どうしを比べると、励起エネルギーが一定であっても非対称性 度の大きさが異なる。たとえば、18O+232Th反応の励起エネルギー・ビン 2030 MeVを 見ると、中性子数の多い同位体ほど、非対称性の構造が顕著である。これは、中性子数が 多くなると、中性子数と陽子数の比(N/Z)が、2重魔法数核(132Sn)に接近することによ り、高励起状態であっても非対称度を保つように分裂過程が進むと考えられる。

4. 図3.1.2-10は低励起エネルギーの核分裂から得られたもので、軽および重核分裂片の質量

数重心を与えている。データは、18O+238Uおよび18O+248Cm反応から得たものであるが、

重核分裂片の質量数は、139144と質量数5の変化にとどまっているのに対し、軽核分裂 片では98113と15もの変化がある。重核分裂片が関与する殻構造が核分裂の非対称度を 決めると考察できる。

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