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児童養護施設経験者への支援-制度と先行研究レビュー-

ドキュメント内 学位の分野 社会福祉学 (ページ 30-77)

第1章では、児童養護施設経験者(以下、施設経験者)への支援に関する先行研究とそ れに伴い制度の展開を見ていくことにより、施設経験者への支援の到達点と課題を明らか にする。

(1)児童養護施設経験者への支援展開

1)児童養護施設の「保護」から「自立支援」への基本理念の転換

日本における近代児童養護は、1887(明治20)年、石井十次が岡山孤児院を開設したこ とが始まりとされ、産業革命による失業問題や都市下層階級の貧困問題による養育困難か らの児童保護事業として拡大していった。当初は、篤志家による個人事業であり、慈善事 業であったが、国家政策としての救済事業、社会事業へと展開していった。そのような中 でも、児童養護の対象は、親のいない児童及び遺棄された児童であり、「孤児院」という名 称通り孤児が対象であった。第二次世界大戦後では、戦災孤児や浮浪児、引き揚げ孤児と いった戦争の影響を受けた子どもの保護が中心であったが、1960年代の高度経済成長期で は、親の死による孤児や棄児から、経済的貧困による養育困難となっていった。その後、

1970年代では、都市化による核家族化や少子化などによる子育て困難や家族間の人間関係 による家族問題が主な入所理由となった。そのため、1960年代以降の児童養護は、不適切 な養育環境から子どもを保護し、子どもの生活や発達を保障する方向へと展開していくと ともに、複雑多様化する子どもの成育歴や措置理由、発達課題に対応するためにより個別 化、専門化した養護が求められるようになった。そのような中で、施設経験者への支援が 議論されるようになったのは、1997(平成9)年の児童福祉法改正において、児童福祉の 改革の基本的方向性として、子どもの「自立支援」という理念が提起され、これにより、

「自立支援」が施設の目的に加わり、施設の役割は、「保護」から「自立支援」へと大きく 転換したことによる。さらに、1998(平成10)年、施設における入所者の自立支援計画の 作成が義務付けられ30、従来の処遇計画より退所までを見据えた長期的な視野において支 援計画を作成することが求められるようになり、2004(平成 16)年の児童福祉法改正で、

「退所した者に対する相談その他の援助を行うこと」が付け加えられた。これにより、施 設における実践や施設運営のあり方を子どもの「自立支援」という役割の観点から検討す る必要に迫られた。つまり、施設の子どもの「自立」をどうとらえるのか、そして、「自立」

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を「支援」するとはどういうことなのかが議論の対象となり、「自立」支援が検討されてき た。

2)児童養護施設における「自立支援」の拡充-施設経験者への量的実態調査か らの提言を受けて-

施設における支援に「自立」の文言が明記されたのは、1967(昭和42)年の「児童福祉 施設退所児童指導実施要綱」においてであり、施設の入所児童への支援目標として、「施設 退所後の社会生活に適応させ、健全な社会人として自立し得るよう育成すること」が掲げ られた。

施設経験者の退所後の自立の困難さについては、1980年代より量的調査における実態調 査研究が行われ、問題視され始めている。序章で述べた通り、天野(1983)31、大嶋(198932・ 199733)は、施設退所後の生活の厳しさを明らかとした。高齢男子の退所後の生活において は、中学卒業時の職業の選択肢が極めて乏しく、学歴による機会損失が大きい中で、就労 自立が要求される社会制度及び支援体制の乏しさがあり、「強いられた自立」であることを 問題とした。さらに、高齢女子には就労自立だけでなく「産む性」としての母親となる可 能性を視野に入れた自立を視野に入れた支援の必要性を主張している。このような状況に 対しては、まず、高校への進学による措置継続の保障、退所後の支援として、自立援助ホ ームと位置付けている。

2000年代以降に、施設経験者の量的調査が行われ始めている。主な調査は表1-1のと おりである。

表1-1 施設経験者に関する主な実態調査

2006(平成18)年 「児童養護施設における子どもたちの自立支援の充実に向けて

―平成17年度児童養護施設入所児童の進路に関する調査報告書」

全国児童養護施設協議会調査部編

2008(平成20)年 「児童養護施設経験者に関する調査研究 2007年度報告書」部落

解放・人権研究所

2011(平成23)年 「東京都における児童養護施設等退所者へのアンケート調査報

告書」東京都福祉保健局

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2012(平成24)年 「社会的養護等および里親出身者の実態調査概要報告書」(全国

調査)特定非営利活動法人ふたばふらっとホーム

2016(平成28)年 「全国児童養護施設調査2016 社会的自立に向けた支援に関

する調査」NPO法人ブリッジフォースマイル調査チーム

2016(平成28)年 「社会的養護施設等の退所児童に関する支援の実態把握等調査

研究事業報告書」社会福祉法人全国社会福祉協議会全国退所児 童等支援事業連絡会

2017(平成29)年 「社会的養護施設等の退所児童に関する支援の実態把握等調査

研究等事業報告書」全国社会福祉協議会全国退所児童等支援事 業連絡会

2017(平成29)年 「東京都における児童養護施設等退所者の実態調査報告書」東

京都福祉保健局

表1-1の量的調査の他、東京都や各自治体における施設経験者の実態に関する量的調 査が継続して実施されている。また、これらの調査においては、児童養護施設経験者のほ か、里子経験者も含まれている調査もある。

施設経験者の実態に関する量的調査から、彼らの退所後の困難な生活状況が明らかとな り、課題として挙げられた問題に対応する形で、「自立支援」制度が拡充されていった。施 設における「自立支援」にかかわる主な制度の拡充と全国児童養護施設協議会の方針を表 1-2に示す。

表1-2 「自立支援」に関する主な制度 1973(昭

和43)年

「養護施設入所児童の高等学校への進学の実施について」通知 公立高校への進学支援として「特別育成費」が計上

1988(昭 和63)年

「自立相談援助事業の実施について」の通知

養護施設等退所児童自立援助総合対策概念図が提示され、措置の継続、自立 相談援助事業、アフターケア事業、再措置の徹底が方針として出された。

児童自立相談事業として、自立援助ホームが位置づけられ、自立援助ホーム に補助金が給付されることとなった。34

1992(平 成4)年

「養護施設分園型自活訓練の実施について」通知

施設を退所する予定の子どもに、「生活体験を行い、社会人としての必要な知 識・能力を高めること」を目的として、施設での生活空間とは離れた場所で、

職員の指導を受けながら、ひとり暮らしの準備を実施(リービング・ケア)

1995(平 「養護施設の近未来像」

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成7)年 ①「児童の権利に関する条約」を基盤にすえた改革=「児童の最善の利益 のため」の改革(児童中心主義)、②利用者側にたったサービス提供、③地域 資源としての施設=地域貢献するサービス提供を理念として掲げ、「戦後 50 年余にわたる戦後処理時代からの養護施設に決別」するとしている。

在宅や通所などの「養護サービスの多元化」や「養護サービスの地域化」、そ して、「養護サービスの総合化と専門化」を目指すとともに、「家庭養育代替 型施設」として分園型グループホームを提示している。

1997(平 成9)年

児童福祉法改正

入所者の「自立支援」の文言追加 2003(平

成15)年

「児童養護施設近未来像Ⅱ」

· 児童虐待への対応への施設の役割を明確化し、家庭養育への支援と介入 について、その困難度に応じて、養護の多機能化を提起している。

· 施設ケアについては、「これまでの集団処遇型のケアから個人の自立を 尊重したケアの転換」を図るとして、「ケア単位の小規模化と家庭的養護 環境を確保する方向にすすむべきである」とし、集団を細分化してケア 単位を小規模化し、個別ケアが可能な体制を整え、「ユニットケア」から

「地域分散型養護」への移行を提起している。

· 「保護から自立支援へ」という理念が改革の方向性として提起され、フ ァミリーソーシャルワーカー、アフターケアワーカー、コミュニティワ ーカー、学習指導員、セラピストなどの配置を提起し、「自立支援」に向 けた専門職配置が提起されている。

子どもの生活を支援する児童指導員の専門性については、「生活総合性に 視点を当てた専門性を明確にしてかなければならない」という課題を提示し ているだけで、専門職としての位置づけや具体的なケアの方針は提起されて いず、その役割は曖昧なままであった。

2004(平 成16)年

児童福祉法改正

「退所した者に対する相談、その他の自立のための援助を行うこと」と明記 され、退所後3年間の支援と自立支援計画の策定の義務化が示された。

2007(平 「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」の中間とりま

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