第 3 章 歩行支援のための目標軌道生成
3.1 目標軌道生成の基本概念
3.1.2 健常者歩行パターンによる全軌道追従制御実験の考察
上記2種類の実験結果を踏まえて,この軌道追従実験に関する考察を行う.
健常者による軌道追従実験では,パターンが本人のものであったことと,装着者が健常で あったことで,HALによって提供される歩行パターンの歩行周期や歩幅等に装着者が違和感 を受けにくく,またパターンに自身の動作を適応させやすい状況にあったと言える.これに 対して障害者による軌道追従実験では,表3.1からも分かるように,パターンそのものが身 長や下肢の長さ等の身体的特性が異なる他者から計測されたものであるため,装着者は違和 感を受けやすい.また想定する歩行周期や歩幅等の動作意思を装着者から読み取り,それを 反映する仕組みが存在せず,装着者がパターンの歩行周期が遅いと感じても,それを速める などの調整を行うことができなかった.加えて障害者のため,不慣れな動作パターンにタイ ミング等を合わせることが困難であったと考えられる.
以上のような原因により,ある健常者の歩行動作から獲得した数歩分の歩行動作パターン をそのまま他者特に障害者に,軌道追従制御の目標軌道として適用した場合,装着者に違和 感を与え,所望の動作を実現できないという結果を引き起こしてしまうと考えられる.
なお,上記実験では目標パターンそのものに追従することを目的としていたが,実際に障 害者の歩行支援を行う場合には,健常者の歩行から計測した歩数の範囲内でしか歩行できな いのではなく,装着者が自由に移動できるような目標軌道の提供を行わなければならない.
その場合,目標軌道の生成では,代表的な歩行1周期分のパターンを用意し,それとは別に 動作開始時と終了時のパターンを用意することが考えられる.これによって,定常歩行中に は1周期分の代表パターンを繰り返し利用することができるため,歩数の限界がなくなり自 由な歩行が実現でき,また歩行開始時および停止時の支援にも対応可能となる.
-0.4 0 0.4 0.8 1.2
15 20 25 30 35 40 45
Time [sec]
Angle [rad]
LeftHipAngle refLeftHip
(a) パターン追従状況
-0.4 0 0.4 0.8 1.2
20 20.5 21 21.5 22
Time [sec]
Angle [rad]
LeftHipAngle refLeftHip
(b) 屈曲時の角度変化
-0.4 0 0.4 0.8 1.2
28 29 30 31 32 33
Time [sec]
Angle [rad]
LeftHipAngle refLeftHip
(c) 伸展時の角度変化
図 3.2 目標パターンと全軌道追従制御時の障害者の関節角度変化
-0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
5 7 9 11 13 15 17 19
Time [sec]
Angle [rad]
LeftHipAngle refLeftHip
(a) パターン追従状況
-0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
14 14.2 14.4 14.6 14.8 15
Time [sec]
Angle [rad]
LeftHipAngle refLeftHip
(b) 屈曲時の角度変化
-0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
14.5 15 15.5 16 16.5
Time [sec]
Angle [rad]
LeftHipAngle refLeftHip
(c) 伸展時の角度変化
図 3.3 目標パターンと全軌道追従制御時の健常者の関節角度変化