第5章 円孔周辺の放射状き裂の面内問題解析
5.5 数値計算例
本研究では図‑5.6、図‑5.7に示す2種類の解析モデルに対しての数値計算例を 示す。数値計算例により求めた応力と変位の状態を、図化することにより解析法の 特性を調べることとする。
要素関数は重調和関数であるから2次元問題の解であることには異論がない。し たがって、これを重ね合わせて目的とする境界条件を満足させることができれば正 解と認められる。図上で条件の整合性を確認することがここに得られた関数が正解
に近似している程度を確認することになる。その妥当性を確認するために、 2次元 の応力および変形状態を描画して開口部の境界条件が乱れていないことを検証する。
5.5.1き裂4本のモデル
解析条件は,き裂長さ2a‑0.9cm,プロセスゾーンb2=0.05cm、円孔半径ra=1.Ocm、
円孔周辺に作用する膨張圧に相当する一様圧縮応力は、 Pu=11 kd/cm2、母材側の 無限板の弾性係数E=210,000kd/cm2、ポアソン比v=0.167とする。また、完全に
開口しているき裂長さ(2a部分)とプロセスゾーン(b2部分)は、発生するき裂全 てに共通で同一長さとする。すなわち、全て同一長さのき裂が放射状(半径方向)に 発生するものとする。
求めた結果のうち放射状き裂近傍の領域(r=1.Ocm‑2.15cmの範囲)における変 位γβの状態を図‑5.8および図‑5.9に示す。応力分布に関しては、次項で詳細な
検討を行うため割愛する。
図‑5.8 vβ 図‑5.9 vβ拡大図
5.5.2 き裂3本のモデル
図‑5.7 に示す解析モデルにおいて、き裂長さ2a=8.0 cm、プロセスゾーン bl=b2=1.0 cm、き裂を3本として計算した変位u,,vcと応力q,,Jc,T,cの状態を図
‑5.10‑図‑5.17に示す。このとき、重ね合わせに用いた要素関数の数、種類、配
置と未定計数値は表‑5.1、表‑5.2に示すデータを活用して計算した。なお、母材 の物理定数および荷重条件は、 5.5. 1項の条件と同じである。
表‑5.1円周上で完全な開口を示すモデルの入力値と 未定係数Cj(k) (図‑5・8、図‑5・9参照)
円孔半径㍍(cm) 1
重ね合わせる要素関数の数 4
要素関数 入力データ 未定計数値
Cj(k) Yc(cm) α(cm) あ(cm) ∂2(Cm)
W1 ‑4.628
W2 1.45 0.45 0.03 ‑0.405
W3 1.45 0.45 0.03 0.03
W4 1.45 0.45 0.05 ‑0.0264
Wl :一様応力が作用する円孔の無い無限板
W2 :一様内圧が作用する円孔を有する無限板 W3:面内引張り型クラック形状を有する無限板 W4:面内曲げ型クラック形状を有する無限板
Yc :円孔中心から各要素き裂の中心までの距離(cm)
2α :き裂長さ(cm)
bl,b2 :プロセスゾーン長さ(cm)
Cj(k) :未定係数値
表‑5.2 円周上で閉じた開口を示すモデルの入力値と 未定係数Cj(k) (図‑5.10‑図‑5・17参照)
円孔半径㍍(cm) 10
重ね合わせる要素関数の数 5
要素関数 入力データ 未定計数値
Cj(k) Yc(cm) α(cm) あ(cm) ∂2(Cm)
W1 25.976
W2 ‑0.274
W3 15 4 1 0.6 0.361
W3 15 4 0.85 1 1.174
W4 15 4 1 0.8 0.0237
ただし、これらの解析結果はき裂近傍の開口や応力の特性を表示することが目的 であるから詳しいスケールは省略するが、開口量や応力の最大値を図中に示す。膨 張剤が充填された円孔の円周上に発生する開口は、完全な開口を示すもの(図‑5.8、
図‑5.9参照)であり、鉄筋などの剛な材料が円孔に装填されて、腐食膨張によっ て体積増加が発生して‑アーき裂を形成する場合の円孔上の開口は、円周上で閉じ た開口の場合である(図‑5.16、図‑5.17参照)
。閉じた開口を示す場合のき裂部 分の応力は、次のような特性が見られる。すなわち、 cTcは図‑5.13 に見られるよ
うに、き裂部分では応力は0、プロセスゾーンで引張応力が見られるが、 cT,はき裂 部分で圧縮応力が現れている(図‑5.11参照)
。これは体積増加によって放射方向 にひずみが増大している状況にあることと、円孔周辺に回転角方向の変形がき裂部
分で拘束(vc=0)されているため、 g,の円孔周辺に圧縮応力が作用したためと考え られる。
図‑5.10 J,
図15.12 cTo
図‑5.1l o・,拡大図
図‑5.13 o・c拡大図
図‑5.14 T,e
図‑5.16 vβ 図‑5.17 vβ拡大図