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個人情報に対する受入補償額の計測

ドキュメント内 Empirical study of the value of information security (ページ 109-115)

本章においては、第5章で行った個人情報に対する慰謝料としての受入補償額に対する 分析結果をさらに検証するため、第6章のアンケート調査と同時に実施した調査から得ら れたデータを用いて、CVMによりWTA推定を行う。7.1節において抵抗回答について 説明した上で、7.2節で実証分析を行い、7.3節で受入補償額の推定結果を示す。

なお、アンケート実施において回答者に提示した金額は、第6章の表6-3のとおりで ある。

7.1 抵抗回答

抵抗回答と除外した回答数を表7-1に示す。

一方、反対理由のうち「慰謝料としての金額が少なすぎる」、「慰謝料はいくら多くも らっても満足できない」、「金額の問題でない」は、たとえシナリオを変更しても回答が 変更する可能性がないため、通常の支払拒否回答とみなした。その結果、分析対象とした 回答数は表7-2のとおりである。

表7-1 抵抗回答

医療 金融

基本 身体

情報 情報

抵抗回答 情報 情報

質問の意味がわからない 9 11 19 7

情報漏洩については気にならないから、慰謝料はいらない 3 7 4 3 妥当な金額がわからない、金額の算出根拠がわからない 0 4 1 1

3 1 4 1

事業者が漏洩しないようにすべき、事業者の対策を示すべき

漏洩した情報の内容や被害による 7 7 5 0

その他 7 3 3 0

計 29 33 36 12

表7-2 分析対象データ

種別 回収数 抵抗回答 % 分析対象数

基本情報 538 29 5.4 509

医療情報 538 33 6.1 505

金融情報 532 36 6.8 496

身体情報 539 12 2.2 527

7.2 実証分析

全有効回答について得られた回答パターンをCVM.xlsに代入し、ランダム効用モデル に基づいた対数線形ロジット分析による推定を行った[1]。個人情報別に、推定した結果、

および図7-1~7-4に受諾率分布と受諾率曲線に示す。いずれも1%水準有意であ った。

(1) 基本情報

変数 係数 t値 p値

constant -2.975 -3.025 0.003***

ln(Bid) 0.267 3.118 0.002***

n 509 対数尤度 -346.646

****1%水準有意)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

280,000 250,000 220,000 190,000 160,000 130,000 100,000 70,000 40,000 10,000

YES NO

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

0 10,000

40,000 70,000

100,000 130,000

160,000 190,000

220,000 250,000

280,000

図7-1 受諾率分布および受諾率曲線(基本情報)

(2) 身体情報

変数 係数 t値 p値

constant -6.071 -4.539 0.000***

ln(Bid) 0.491 4.492 0.000***

n 527 対数尤度 -353.602

****1%水準有意)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

470,000 420,000 370,000 320,000 270,000 220,000 170,000 120,000

YES NO

70,000 000 20,

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

\0 20,000

70,000 120,000

170,000 220,000

270,000 320,000

370,000 420,000

470,000

図7-2 受諾率分布および受諾率曲線(身体情報)

(3)医療情報

変数 係数 t値 p値

constant -4.517 -4.184 0.000***

ln(Bid) 0.356 4.329 0.000***

n 505 対数尤度 -338.928

****1%水準有意)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

0 30,000

180,000 330,000

480,000 630,000

780,000 930,000

1,080,000 1,230,000

1,380,000

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1,380,000 1,230,000 1,080,000 930,000 780,000 630,000 480,000 330,000 180,000 30,000

YES NO

図7-3 受諾率分布および受諾率曲線(医療情報)

(4)金融情報

変数 係数 t値 p値

constant -5.348 -6.082 0.000***

ln(Bid) 0.461 6.834 0.000***

n 496 対数尤度 -294.812

****1%水準有意)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1,540,000 1,370,000 1,200,000 1,030,000 860,000 690,000 520,000 350,000 180,000 10,000

YES NO

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

0 10,000

180,000 350,000

520,000 690,000

860,000 1,030,000

1,200,000 1,370,000

1,540,000

図7-4 受諾率分布および受諾率曲線(金融情報)

7.3 受入補償額推定結果のまとめ

表7-3に推定したWTA推定額を示す。中央値は半数の回答者がYESと答え、残りの 半数がNOと答える提示額に相当し、平均値は受諾率曲線の上側の面積をもとに計算する ものである。平均値は、WTAの場合膨大な金額が算出されることから、最大提示額で裾 切りを行った。

また、表7-4に受諾率によるWTA推定額を示す。受諾率50%が中央値に当たる。

基本情報の提示額は10,000円から280,000円であることから、およそ60%タイルが最大 提示額に近い金額となっている。身体情報の提示額は20,000円から470,000円であり、58% タイルが最大提示額に近い金額である。医療情報の提示額は30,000円から1,380,000円で、

62%タイルが最大提示額に近い。最後に、金融情報の提示額は10,000円から1,540,000円 であり、77%タイルが最大提示額に近い金額となっている。

本分析から導出された推定値については、第5章の結果と合わせて、次章で考察を行う。

表7-3 WTA推定値

(円)

種別 平均値 中央値

基本情報 147,022 63,552

身体情報 219,546 235,410

医療情報 742,653 329,123

金融情報 1,040,650 108,704

表7-4 受諾率によるWTA推定額

(円)

受諾率 種別

50% 58% 60% 62% 70% 77%

基本情報 63,552 269,511 1,301,061 身体情報 235,410 454,387 537,768 1,322,965

医療情報 329,123 1,029,424 1,304,049 3,566,575

金融情報 108,704 261,855 682,532 1,493,069

脚 注

[1] モデルは、栗山「EXCELでできるCVM」(2007)を利用した。

ドキュメント内 Empirical study of the value of information security (ページ 109-115)