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信号処理及びデータ解析方法

第 3 章 実験方法 39

3.3 アルファ線による電離・発光収量の測定

3.3.2 信号処理及びデータ解析方法

3章 実験方法 61

表 3.3: 実験に使用した光電子増倍管(Hamamatsu Photonics R1080)の印加電 圧と利得の関係。

電圧(V) 利得 500 4.23×103 750 9.24×104 1000 6.93×105 1250 2.96×106

62 3章 実験方法

整形した。密度0.1 g/cm3以上における電子-イオン対の再結合特性時間(半減期)

は5 µs以下と考えられるので[21]、この整形時間はシンチレーション光を完全に 収集するために十分な長さである。整形された信号はマルチチャネルアナライザ

(MCA; CLEAR PULSE 1114A)でデジタル化し、コンピュータに記録した。ま た、電荷の較正には較正されたパルスジェネレータ(ORTEC 419)とチャージ ターミネータを組み合わせて用い、MCAのチャンネルと電荷の関係を取得するこ とで、MCAのチャンネルから電荷への変換を行った。

0 20 40 60 80 100 120 140 160

0 200 400 600 800 1000

Counts

Pulse height (channel)

図 3.19: 5.49 MeVのアルファ線によるシンチレーション信号の典型的な波高分

布。キセノン密度は0.82 g/cm3、換算電場は0.38 Tdである。

図3.19に、シンチレーション信号の典型的な波高分布を示す。この時の実験条 件は、キセノン密度0.82 g/cm3、換算電場0.38 Tdである。平均の波高値は、ピー ク領域をガウス分布でフィッティングすることで決定した。その後、電荷較正に より、平均の波高値をPMT出力電子数Ne,pmtに変換した。シンチレーション発 光の光子数Npは以下のように導出できる。

Np = Ne,pmt

GpmtQpmtpmt (3.13)

ここで、GpmtはPMTの利得、Qpmtはキセノンのシンチレーション発光に対する PMTの平均量子効率、ΩpmtはPMTの光電陰極におけるシンチレーション光子の 平均収集効率である。3.3.1章に述べた通り、本実験ではGpmt = 3.79×104であ

3章 実験方法 63

る。実験中の再現性試験により、実験期間中のGpmtの変動が十分小さいことを確 認している。Qpmtは、図3.17に示した波長λに対する量子効率qと既知のシンチ レーション発光スペクトルI(λ) [20]を用いて、以下のように求めた。

Qpmt =

I(λ)q(λ)dλ

I(λ)dλ (3.14)

式(3.14)の計算はシンプソン法による数値積分によって行い、Qpmt = 15.1%と決

定した。

pmtには、シンチレーション光源がPMTの光電陰極に対して張る立体角、グ リッド状陽極の透過率、ビューポートの透過率を含んでいる。立体角は、密度に よるアルファ線の飛程の違いを考慮し、実験を行った各密度においてモンテカル ロ計算を行って決定した。計算に用いた仮定は、まず、アルファ線は線源面から 直線的な飛跡で等方的に放出され、飛跡に沿ってシンチレーション光が発生する とした。さらに、シンチレーション光は、キセノンのアルファ線に対する阻止能 に比例して発生し、等方的に放出されるとした。阻止能は、SRIMコード [4]で 計算した。チェンバー内のステンレスあるいはセラミックスの表面における反射 はここでは無視している。計算の結果、立体角は密度によってわずかに変化する が、平均で約0.91%であった。また、グリッド状電極の透過率は、先に述べた通

り90%である。ビューポートの平均透過率Twinは、図3.17に示した波長λに対す

る透過率twinと既知のシンチレーション発光スペクトルI(λ) [20]を用いて、以下 のように求めた。

Twin =

I(λ)twin(λ)dλ

I(λ)dλ (3.15)

シンチレーション光は、ある一定の割合でビューポートに対して斜めに入射し、そ の場合透過率が減少することが考えられるが、ここではその影響は小さいとして 無視した。式(3.14)と同様に、式(3.15)の計算はシンプソン法による数値積分に よって行い、Twin = 89.2%と決定した。

また、Ws値は、定義より以下のように求められる。

Ws =Ec/Np (3.16)

ここで、Ecは荷電粒子のエネルギーであり、本実験ではアルファ線のエネルギー 5.49 MeVを用いた。

次に、電離電子の計測について述べる。キセノン中で発生した電離電子は、陰 極に負の高電圧を印加することで陽極に収集され、信号は減衰時定数1.8 msの電 荷有感型前置増幅器に導かれる。前置増幅器出力は整形時定数25 µsの波形整形

64 3章 実験方法

増幅器(CLEAR PULSE 4016A)でセミガウス波形に整形した。シンチレーショ ン信号と同様に、整形された信号はMCA(CLEAR PULSE 1114A)でデジタル 化してコンピュータに記録した。

0 50 100 150 200 250 300

0 200 400 600 800 1000

Counts

Pulse height (channel)

The channel at the upper end of FWHM FWHM

図3.20: 5.49 MeVのアルファ線による電離信号の典型的な波高分布。キセノン密

度は0.82 g/cm3、換算電場は0.38 Tdである。下向きの矢印は半値幅の上端を表

し、電離電子数と比例する最大波高値とみなした。

図3.20に、電離信号の典型的な波高分布を示す。この時の実験条件は、図3.19 と同じく、キセノン密度0.82 g/cm3、換算電場0.38 Tdである。本実験における 整形時定数25 µsにおいては、キセノン陽イオンはほとんど電極に収集されない ため、電離信号の波高分布はアルファ線の飛程と放出角度に依存することになり、

原理的にガウス分布にはならない。アルファ線が電極と平行方向に放出された場 合、電離電子のドリフト距離は電極間隔と一致し、陽イオンのドリフト距離は0 となる。この時、電離信号の波高値は最大となり、この最大波高値が電離電子数 に比例する。実際には、電子数の統計的な揺らぎや回路の電子雑音により波高は ガウス分布となるため、波高分布における半値幅の上端を最大波高値とみなした。

その後、シンチレーション信号と同様に電荷の較正を行い、MCAのチャンネルか ら収集された電離電子数Neへの変換を行った。

3章 実験方法 65