• 検索結果がありません。

価格の変化の効果

ドキュメント内 ミクロ経済学 講義 (ページ 45-59)

46

当該財の価格変化の効果(1)

財の価格変化の効果を,当該財の価格変化と他の財の価格変化に分け て詳しく見てみよう

まず,当該財の価格が変化したとする

ある財の価格が下落(上昇)したとき,代替効果によってその財の需要は必ず増 える(減る)

→ 代替効果はその財の価格の変化と逆の方向に働く

《スルツキー分解》

 価格変化の効果

   = 相対価格の変化による代替効果 + 実質的な所得変化による所得効果 

ある財の価格が下落(上昇)したとき,実質所得は増加(減少)する.すな わち,実質所得はその財の価格の変化と逆の方向に働く

問題は,実質所得が増減したときに所得効果がどう働くか. 所得効果は,そ の財が上級財か下級財かによって異なる.

→ 上級財なら実質所得と同じ方向に需要が変化する

  下級財なら実質所得と逆の方向に需要が変化する 以上をまとめると

価格が下落(上昇)すると, 上級財なら所得効果によりその財の需要は 増える(減る)

価格が下落(上昇)すると, 下級財なら所得効果によりその財の需要は 減る(増える)

当該財の価格変化の効果(2)

48

代替効果と所得効果を合わせると・・・

上級財の場合,価格が下落すると,代替効果も所得効果も需要を増やす方向 に働く

→ 総合的な効果として,価格が下落すると需要が増える

下級財の場合,価格が下落すると,代替効果は需要を増やし,所得効果は需 要を減らす方向に働く

→ もし「代替効果 < 所得効果」なら,総合的な効果として,価格が下落

 すると需要が減る

常識的な結果

反常識的な結果!

当該財の価格変化の効果(3)

これまでの考察をまとめると下表のようになる

代替効果 所得効果 総合効果

価格上昇

上級財 価格上昇

下級財 価格上昇

下級財

価格下落

上級財 価格下落

下級財 価格下落

下級財

「代替効果>所得効果」なら減

「代替効果<所得効果」なら増

「代替効果>所得効果」なら増

「代替効果<所得効果」なら減

ギッフェン財

当該財の価格変化の効果(4)

当該財の価格変化の効果

50

当該財の価格変化の効果(5)

ギッフェン財とは, 価格が下落(上昇)すれば需要が減る(増える)財のこと で,これは下級財のうち所得効果が代替効果を上回るために生じる現象である

→ 教科書 p.126

の図

11-1

および

p.127

の図

11-2

を参照

ギッフェン財は現実にはほとんど存在しないかあるいは極めて例外的な財である

教科書

p.128

に記載されているアイルランドのジャガイモ飢饉の例は有名であるが,その後の 研究でこのときのジャガイモは実はギッフェン財とは言えないことが統計的に示されている.

その他に,家庭の暖房用灯油やわが国の焼酎などがギッフェン財の候補として挙げられたこと があるが,どれも統計的な証拠が不十分である

きわめて例外的な場合を除いて,「ある財の価格が下落(上昇)すればその需要 が増加(減少)する」という

需要法則

が成り立つことがわかった.つまり,需 要曲線は一般に右下がりであることが裏付けられたことになる

 【演習】図11-2を参考にして,リンゴがギッフェン財である場合の,リンゴ価格が上昇      したときのスルツキー分解を図示しなさい

他の財の価格変化の効果(1)

次に,他の財の価格が変化したとする

他の財の価格が下落(上昇)したとき,代替効果によって価格が変化しない財の  需要は増えることもあれば減ることもある

他の財の価格が下落(上昇)したとき需要が増える(減る)財を補完財という     例:コーヒーとミルク

→ コーヒーの価格が下落するとコーヒーの需要が増え,コーヒーの需要が増

えるとそれに伴ってミルクの需要も増える

他の財の価格が下落(上昇)したとき需要が減る(増える)財を代替財という     例: ペットボトル入りの緑茶とウーロン茶

→ 緑茶の価格が下落すると,ウーロン茶の需要の一部が緑茶へとシフトする

ため,ウーロン茶の需要が減る

52

他の財の価格変化の効果(2)

ここで疑問・・・代替効果とは下図の点

A

から点

B

への変化のこと.この図は 第1財の価格が下落したケースであり,代替効果により第1財の需要が増加し ている.そして,それに伴い第2財の需要は減少している.このように,2財 モデルにおいては,他の財の価格が下落(上昇)したとき,代替効果によって 価格が変化しない財の需要は必ず増える(減る)のではないか?

x

1

x

2

O

A

B

C

他の財の価格変化の効果(3)

答え・・・2財モデルでは確かにそうなる.つまり,世の中に財が2種類しか なければ,原点に対して凸な無差別曲線を想定する限り両財は必ず代替財であ る.これに対して,補完財という概念は財が3種類以上存在する状況を想定し て初めて登場する.教科書

p.129-30

の紅茶,コーヒー,レモンの例を用いて説 明しよう.世の中に紅茶とレモンしか存在しないなら,紅茶の価格が下落すれ ば消費者は紅茶の需要を増やすので,以前と同じ効用水準を保つためにはレモ ンの需要を減らさざるを得ない.ところが,コーヒーが加わることによって事 情は変わる.すなわち,紅茶の価格が下落すれば消費者は紅茶の需要を増やす が,以前と同じ効用水準を保つために,今度は少なくともコーヒーあるいはレ モンどちらかの需要を減らせばよい.この消費者がレモンティーを好むのであ れば,紅茶の需要とともにレモンの需要を増やして,なおかつコーヒーの需要 を以前と同じ効用水準を保つのに必要な分だけ減らすことが可能である.

ちょっと難しいかな?

54

他の財の価格変化の効果(4)

代替財は補完財かは代替効果のみで判断することに注意せよ!

所得効果も含めて他の財の価格変化による需要の変化を判断する場合は,

粗代替財および粗補完財という言葉を用いる

「粗」という言葉は,代替効果だけでなく所得効果を加えて総合的に 見るという意味が込められている.

粗代替財: 代替効果及び所得効果を考慮した場合,他の財の価格の 下落(上昇)によって需要が減少(増加)する財

粗補完財: 代替効果及び所得効果を考慮した場合,他の財の価格の 下落(上昇)によって需要が増加(減少)する財

他の財の価格が変化したときの代替財に関するスルツキー分解を図示する

第2財の価格が下落した

代替効果により第1財の需要は減少

第1財が下級財であるなら(第2財は上級 財),所得効果により第1財の需要は減少 総合的に見て,第2財の価格が減少したとき に第1財の需要は減少しているので,第1財 は粗代替財である

他の財の価格変化の効果(5)

x

1

x

2

O

A B

C

第1財が上級財であるなら,所得効果により 第1財の需要は増加

「代替効果>所得効果」であるなら,総合的 に見て,第2財の価格が減少したときに第1 財の需要は減少しているので,第1財は粗代 替財である

他の財の価格変化の効果(6)

x

1

x

2

O

A B

C

56

「代替効果<所得効果」の場合には,総合的 に見て,第2財の価格が減少したときに第1 財の需要は増加しているので,第1財は粗代 替財ではない

他の財の価格変化の効果(7)

x

1

x

2

O

A

B C

代替効果 所得効果 総合効果

他の財の 価格下落

下級財 他の財の

価格下落 上級財 他の財の

価格下落 上級財

他の財の 価格上昇

下級財 他の財の

価格上昇 上級財 他の財の

価格上昇 上級財

「代替効果>所得効果」なら減

「代替効果<所得効果」なら増

「代替効果>所得効果」なら増

「代替効果<所得効果」なら減

粗代替財でない 他の財の価格変化の効果(代替財の場合)

他の財の価格変化の効果(8)

以上より,代替財に関する他の財の価格変化の効果は次のようにまとめられる

58

ドキュメント内 ミクロ経済学 講義 (ページ 45-59)

関連したドキュメント