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「住みながら改修」現場の実態

第4章 「住みながら改修」現場の実態

4−1 本章の概要

4−1−1 本章の目的

 本章では、「住みながら改修」で「耐震補強工事」や「設備配管工事」などを含む総合 的改修を実施した分譲集合住宅の、改修現場の実態を明らかにする。実際に居住者に及ぶ 工事影響を明らかにした上で、前章まで調査・分析した「住みながら改修」の対応業務が、

改修現場では実際に居住者に対してどのように実施され、工事関連主体間でどのような連 携が図られてきたのか。総合的改修を行うことで様々な工事影響が生じるが、それらに対 して行った対応の実態を掘り下げることで、「住みながら改修」計画に求められる対応方 法を導くことを目的とする。

4−1−2 調査方法

 本章は以下のような手順で調査を行った。

①実態調査を行った分譲集合住宅の改修に至る背景や計画の概要を整理するために、設計  監理者が着工前までに作成してきた理事会資料や住民説明会資料などの調査を行った。

②「住みながら改修」現場で行われている工程と、実際に発生した工事影響を明らかにす  るため、主に工程表と現場の工事の様子を照らし合わせながら、工程に対する工事影響  を工事現場より記録した。

③主に施工者が事前に工事影響に対して行った管理対応を明らかにするため、居住者に向  けて行った工事告知や「住みながら改修」で配慮した対応など、工事日報や定例会議で  の報告資料、設計者・施工者・管理会社

注1)

へのヒアリングなどを通し調査した。

④居住者に生じた要求・問題を明らかにするため、定例会議での理事の要望の記録や住民  全体に配布したアンケート調査や、施工者を通して実際に現場対応したクレームや問題  に関して、ヒアリング調査を行った。

⑤主に設計監理者・施工管理者・管理会社に対してヒアリング調査を行うことで、実際に  現場で生じた問題に対して工事関連主体がどのように管理対応を行ったのか、具体的な  事例を抽出し「住みながら改修」現場で求められる対応や役割の場合分けを行った。

 細かな調査概要は各節で述べる。

第4章 「住みながら改修」現場の実態

-46-4−2 改修の概要

4−2−1 建物概要

 図 4-1 に実態調査を実施した対象分譲集合住宅の建物概要を示す。

 その他建物概要に関する図面

4−1)

などに関しては、資料編に掲載している。

 実態調査を行った分譲集合住宅(以下、S マンションと記載する)は、東京都内にある 築 43 年(2013 年時点)の建物である。写真の東側バルコニーは前面道路に面し、内部 共用廊下は裏側の西面にある。1 階北側がピロティで駐車場として活用されており、その 他全住戸分の駐車場が東と西にある。1 階は南面に 2 住戸ある他は、集会所などの共用部 として活用されている。また、築年数の多い建物であることもあり、高齢者や寝たきりの 居住者も多いが、子どもを持つ家庭や賃貸住戸として貸し出している部屋もあり、多種多 様な住民が住んでいる集合住宅である。

 近隣は西側に隣接するマンションがあるため、居住者への配慮に加えて周辺地域への配 慮も当然求められた。また、私立の学校が近くにあるため、子どもの通りもかなり多く、

工事をする際は人通りに対する交通の整理や作業時間の調整などにも気を配る必要があっ た。

名称   S マンション

建物経年 築 43 年(1970 年)

構造   RC 造

階数   地上 7 階 塔屋 2 階 延床面積 6244,51 ㎡

住戸数  43 戸 工事分類 総合的改修

補強方法 RC 柱壁打増し補強 工期   9 ヶ月

図 4-1 対象建物概要と外観写真

第4章 「住みながら改修」現場の実態 4−2−2 改修に至るまでの経緯

 経年変化により建物に支障が出ている箇所があったため、耐震診断を含む建物調査を実 施し、調査を行ったゼネコンが建替え案を提示した。しかし、建替え案では、資金面での 困難が多いことに加え、法規制により各戸の専有部面積が減少するといった問題が生じる ことが判明した。そのため、改修案の設計者が耐震改修工事に関するコンサルティングを 行うこととなった。理事会

注2)

の要望を汲みとった上で、専有部に入ることなく全ての補 強を共用部から行う方法を提案すると共に、住民アンケートの実施を通し耐震改修工事に あわせて、建築工事や設備配管工事、エントランス改修などを行い、既存建物の価値向上 を図る提案を設計者が行った。最終的に、耐震補強を伴う総合的改修を実施することが総 会の決議により決定し、「住みながら改修」を実施するに至る。

 設計者が計画全体を通して行った、コンサルティングを含む業務の流れを図 4-2 に示す。

 事前調査から住民の合意形成を得るまでに約 2 年、改修の実施決定から着工に至るま で約 1 年を要し、その間に設計者は調査結果の報告や設計内容の解説を行う住民説明会 を計 4 回実施している。(議決を得るための総会は別に行っている)また、説明会とは別に、

理事会との協議によって、より細かな改修項目や費用に関して決定をしていった。

 施工者は入札により着工の約 10 ヶ月前に決定し、見積もりとの細かな工程の調整を行っ た。

事前調査 構造調査 耐震診断 耐震補強設計 基本設計

管理組合フォロー・助成金取得など

施工者選定 実施設計 工事監理

図 4-2 設計者が工事実施までに行った主な業務

第4章 「住みながら改修」現場の実態

-48-4−2−3 改修計画概要

 改修計画の設計内容に関する理事会から要望として、「住みながら改修」で耐震補強工 事を含めた「総合的改修」を行うこと、東側バルコニーの外観意匠性を保持した設計とす ること、専有部に立ち入ることのない計画とすること、ということが挙げられる。

 それら要望を踏まえ表 4-1、図 4-3 に示すような「住みながら」による建築工事、耐震 補強、設備配管工事を同時に行う総合的改修を行った。それらの工事に加えて、建物とし ての資産価値を高めるために、エントランス改修や情報通信機器工事などを行っている。

 仮設計画は道路に面した東面バルコニー側は日照の確保や換気を可能にするために、上 下に稼働できるゴンドラ式を採用し、その他の面は仮設足場を組む計画としている。

図 4-3 対象事例の主な改修項目の分類 表 4-1 対象事例の主な改修項目

用 美

耐震補強

既存躯体 RC 補強 既存躯体解体

エントランス改修

建築工事

廊下 サッシ新設

新設 PS 照明工事 屋上・バルコニー

補修防水

設備工事

工事分類 工事項目 改修部位

既存躯体解体 既存躯体補強 共用部格子撤去 配管幹線改修

1 階共用部、2~7 階共用廊下 1 階外部、2~7 階共用廊下

2~7 階共用廊下

1 階共用部、2~5 階共用廊下 耐震補強工事

耐震補強工事 耐震補強工事 設備配管工事

将来用排水縦管新設 1 階外部、2~7 階共用廊下 設備配管工事

照明工事 1 階共用部、2~7 階共用廊下 設備配管工事

屋上バルコニー防水 屋上・各階バルコニー 修繕(建築)工事

外壁塗装 外壁

修繕(建築)工事

外壁シール交換 外壁 修繕(建築)工事

鉄部塗装 各所鉄部

修繕(建築)工事

駐車場舗装整備 駐車場 修繕(建築)工事

エントランス内装改修 エントランス改修 その他

監視カメラシステム 1 階内外共用部 その他

情報通信機器更新 各戸 その他

第4章 「住みながら改修」現場の実態

■.耐震補強工事について

 耐震補強工事に関して、解体部と補強部の概略図を図 4-4 に示す。道路に面した東面バ ルコニー側の外観意匠を保持したいという要望から、長手方向の強度を増すために、各階 で西側屋内共用廊下側に RC 壁打ち増し補強を行っている。その際専有部側ボイラー室の 壁をはつり・解体し、その部分に RC 壁を打ち増していると共に、外壁とサッシを解体し 新設サッシを取り付けることによって通路幅を拡張している。はつり・解体や生コン打設 といった工事を専有部に面した共用廊下で行っているため、施行中は大きな工事影響が発 生することが想定されたが、何よりも「住みながら」耐震補強を行うことができるという ことから、この改修案が採用された。既存建物の Is 値は耐震診断の二次診断によって 1 階から 5 階が 0.6 を下回っていたが、耐震補強によって全階とも 0.6 を上回り、一般的に 必要とされる耐震性を見たいしている。また、1 階外部共用廊下部分は、土間の解体を行っ た上で地中梁の補強を施している。なお、施工順序に関しては、1 階から上階へと順を追っ て施工していく工程となっている。

■.設備配管工事について

 専有部内の設備配管工事は行わないが、ボイラー室内の既存の設備配管を外に出し、

RC 補強部と新設 PS を一体的に設計することで、共用廊下に面しメンテナンス性に優れ た PS を設ける計画としている。共用廊下の専有部側の詳細を図 4-5 に示す。ボイラー室 内には排水縦管をあらかじめ通しておくことで、専有部内にある既存 PS から将来的に排 水管を移設できるようにしている。ボイラー室廻りの工事は専有部に接しているため、居 住者への工事影響は大きくなると考えられるが、住民理解のもとその場しのぎの改修では なく将来性を見越した上で、新設 PS と RC 壁補強を一体的に行うに至った。

改修後 共用廊下 共用廊下

専有部

EM= 電気メーター WM= 水道メーター GM= ガスメーター 灯油ボイラー

灯油ボイラー

新設 PS+RC 補強部 改修前

廊下側RC打増補強 外壁・サッシ

の解体 ボイラー室 廻りの解体

1階 N

基準階

外壁・サッシ の解体

土間解体基礎梁補強 廊下側 RC打増補強

最上階

図 4-4 主な解体・耐震補強箇所 図 4-5 RC 補強部と新設 PS の詳細

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