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会話文における意志表明と述べ立て

ドキュメント内 史的変遷 : 意志表現の定着と相互比較 (ページ 32-38)

3.7  意志表現のモダリティ

3.7.4  モダリティの種類による用例分布と分析

3.7.4.1  会話文における意志表明と述べ立て

 「〜(よ)うと+思考動詞基本形」について、【表 4】(3.6.3)では、用例出現の安定 性は会話文の第二期で得られるが、独立する節より従属する節のほうが優勢であるた め、定着時期については認定に至らなかった。さらに、第四期では、地の文の独立す る節の用例数が会話文の独立する節の用例数を上回っており、これらのことは、「〜(よ)

うと+思考動詞基本形」が、他の二表現と異なるモダリティ性を持つことを推測させた。

そこで、三表現それぞれのモダリティ性を明らかにして、「〜(よ)うと+思考動詞基 本形」の定着時期の認定を試みる。

 まず、「〜(よ)うと+思考動詞基本形」の独立する節の劣勢は、会話文における現 象であるので、会話文の意志表明と述べ立てを、三表現それぞれについて比較する。

(1)会話文における意志表明と述べ立ての推移

表現

文の種類 地の文 地の文 地の文

モダリティの種類

跖婦人伝 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

遊子方言 1 0 0 1 2 0 0 2 0 1 0 1 4

見徳一炊夢 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1

江戸生艶氣樺焼 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1

通言総籬 1 0 0 1 1 0 0 1 0 0 0 0 2

古契三唱 0 1 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 2

繁千話 0 2 0 2 0 1 1 2 0 0 0 0 4

小 計 3 3 1 7 3 1 1 5 0 2 0 2 14

東海道中膝栗毛 5 1 0 6 0 3 0 3 0 0 0 0 9

浮世風呂 3 1 0 4 4 2 0 6 0 1 0 1 11

浮世床 4 0 0 4 2 0 0 2 0 0 0 0 6

清談峯初花 2 0 0 2 0 1 0 1 0 0 1 1 4

花暦八笑人 0 1 0 1 1 2 1 4 1 1 0 2 7

假名文章娘節用 1 0 0 1 4 3 6 13 0 2 0 2 16

春色梅兒譽美 2 2 2 6 0 1 0 1 0 1 0 1 8

閑情末摘花 3 2 0 5 4 6 0 10 1 1 0 2 17

妙竹林話 七偏人 14 0 0 14 5 4 1 10 0 1 0 1 25

小 計 34 7 2 43 20 22 8 50 2 7 1 10 103

安愚樂鍋 7 2 1 10 0 2 0 2 1 0 1 2 14

開明小説 春雨文庫 5 0 0 5 0 3 0 3 3 0 0 3 11

怪談牡丹燈籠 13 2 1 16 2 6 1 9 2 3 1 6 31

浮雲 6 0 0 6 4 1 3 8 2 2 0 4 18

白玉蘭 0 5 0 5 1 0 0 1 0 0 0 0 6

金色夜叉 4 1 0 5 11 5 3 19 1 2 0 3 27

虞美人草 21 6 3 30 3 2 2 7 3 3 0 6 43

青年 0 0 3 3 6 2 11 19 1 0 1 2 24

小 計 56 16 8 80 27 21 20 68 13 10 3 26 174

或る女のグリンプス 3 3 3 9 1 0 0 1 2 0 1 3 13

腕くらべ 3 0 2 5 1 1 5 7 3 2 2 7 19

或る女 後編 2 2 0 4 0 2 4 6 0 0 1 1 11

友情 3 0 0 3 6 6 3 15 3 0 0 3 21

暗夜行路 20 2 10 32 11 1 22 34 4 1 3 8 74

子を貸し屋 1 0 0 1 0 0 3 3 2 0 0 2 6

伸子 7 2 3 12 5 2 3 10 2 0 0 2 24

蓼喰う蟲 8 2 1 11 0 0 1 1 0 0 0 0 12

新編 路傍の石 9 3 3 15 0 0 15 15 2 4 2 8 38

小 計 56 14 22 92 24 12 56 92 18 7 9 34 218 合 計 149 40 33 222 74 56 85 215 33 26 13 72 509

【表6】モダリティを独立して有する節におけるモダリティの種類別用例数

「~するつもりだ」 「~(よ)うと+思考動詞基本 形」

「~(よ)うと+思考動詞てい る形」

 

※会話文には、独話・心話文、手紙を含む。

会話文 会話文 会話文

 【表 6】から、会話文における「〜するつもりだ」の、各期における意志表明と述べ 立ての割合と用例数を示すと、次のようになる。

【第一期】 意志表明

50.0%(3 例)

述べ立て

50.0%(3 例)

【第二期】 意志表明

82.9%(34 例)

述べ立て

17.1%(7 例)

【第三期】 意志表明

77.8%(56 例)

述べ立て

22.2%(16 例)

【第四期】 意志表明

80.0%(56 例)

述べ立て

20.0%(14 例)

 第一期は用例数が少ないため、第二期以降を考察する。第二期以降は、意志表明が 8 割前後を占めて優勢を維持している。

 次に、会話文における「〜(よ)うと+思考動詞基本形」の、各期における意志表 明と述べ立ての割合と用例数を示す。

【第一期】 意志表明

75.0%(3 例)

述べ立て

25.0%(1 例)

【第二期】 意志表明

47.6%(20 例)

述べ立て

52.4%(22 例)

【第三期】 意志表明

56.3%(27 例)

述べ立て

43.8%(21 例)

【第四期】 意志表明

66.7%(24 例)

述べ立て

33.3%(12 例)

 第一期では意志表明が優勢であるが、用例数が少ないため、第二期以降を考察する。

第二期では述べ立てが意志表明をわずかに上回るが、優勢であるとみるより拮抗して いるとみるのが妥当であろう。第三期から第四期にかけては意志表明の優位性が増す が、意志表明と述べ立ての差は、「〜するつもりだ」ほど大きくはない。

 最後に、会話文における「〜(よ)うと+思考動詞ている形」の、各期における意 志表明と述べ立ての割合と用例数を示す。

【第一期】 意志表明

0.0% (0 例)

述べ立て

100.0%(2 例)

【第二期】 意志表明

22.2%(2 例)

述べ立て

77.8% (7 例)

【第三期】 意志表明

56.5%(13 例)

述べ立て

43.5% (10 例)

【第四期】 意志表明

72.0%(18 例)

述べ立て

28.0% (7 例)

 第一期は用例数が少ないため、第二期以降を考察する。第二期では述べ立てが優勢 であるが、第三期には、意志表明が述べ立てを上回って増えることによって、意志表 明が優勢に転じ、第四期でさらにその優位性を増していく。

(2)三表現の比較

 三表現の会話文におけるモダリティは、第三期以降、すべて意志表明が述べ立てに 対して優勢であるという結果となった。すなわち、三表現は、会話においては、意志 表明のモダリティとして主観性の強い表現となる傾向を示すということである。

 意志表明と述べ立ての比率に着目すると、「〜(よ)うと+思考動詞基本形」と「〜

(よ)うと+思考動詞ている形」は、第三期以降、同じような推移を示している。すな わち、第二期では、「〜(よ)うと+思考動詞基本形」は意志表明と述べ立てが拮抗し、

一方、「〜(よ)うと+思考動詞ている形」は述べ立てが優勢であるが、第三期では、

二表現ともに、意志表明が 56%程度、第四期では 70%前後となっており、「〜するつ もりだ」よりも意志表明の占める割合が低い。ただし、【表 4】(3.6.3)に示したとおり、「〜

(よ)うと+思考動詞ている形」は「〜(よ)うと+思考動詞基本形」と異なり、独立 する節は少なくなっていない。したがって、会話文の「〜(よ)うと+思考動詞基本形」

において独立する節が劣勢であるのは、主観的表現である意志表明のモダリティが「〜

するつもりだ」よりも少ないことが理由なのではなさそうである。

3.7.4.2 「~するつもりだ」の定着時期

 次に、会話文における意志表明と述べ立てに、地の文における述べ立てを加え、3 種 類のモダリティを比較して考察する。

 【表 6】から、まず、「〜するつもりだ」について、意志表明、会話文の述べ立て、地 の文の述べ立ての順に、各期における割合と用例数を示すと、次のようになる。

意志表明 会話文・述べ立て 地の文・述べ立て

【第一期】42.9%(3 例) 42.9%(3 例) 14.3%(1 例)

【第二期】79.1%(34 例) 16.3%(7 例) 4.7% (2 例)

【第三期】70.0%(56 例) 20.0%(16 例) 10.0%(8 例)

【第四期】60.9%(56 例) 15.2%(14 例) 23.9%(22 例)

 3 種類のモダリティのうち、最も早く優勢となるのは第二期における意志表明であ る。9 作品中 8 作品に見られ、出現の安定性も得られているので、「〜するつもりだ」は、

意志表明のモダリティが一義的であると考えられる。【表 4】(3.6.3)より判明した「〜

するつもりだ」の定着時期も第二期であり、「〜するつもりだ」は、第二期において、

意志表明を表すモダリティとして定着したといえる。

 意志表明は、第二期から第四期にかけて、79.1%→ 70.0%→ 60.9%と減少傾向を示す が、会話文の述べ立ておよび地の文の述べ立て、さらには述べ立て全体(会話文の述 べ立てと地の文の述べ立ての合計)に対して、常に優勢である。したがって、「〜する つもりだ」は、より主観的に用いられる表現であるといえる。

 ただし、述べ立て全体の占める割合は、21.0%→ 30.0%→ 39.1%と増加しており、そ の中の地の文の述べ立ては、第三期まで会話文の述べ立てより少ないが、第四期で優 勢に転じる。以上のことから、「〜するつもりだ」は、主観性の優位性を維持しつつ、

時代が下るにしたがって、客観性を増す傾向にあるということもいえるだろう。

3.7.4.3 「~(よ)うと+思考動詞基本形」の定着時期

 「〜(よ)うと+思考動詞基本形」について、各期における 3 種類のモダリティの割 合と用例数を次に示す。

意志表明 会話文・述べ立て 地の文・述べ立て

【第一期】60.0%(3 例) 20.0%(1 例) 20.0%(1 例)

【第二期】40.0%(20 例) 44.0%(22 例) 16.0%(8 例)

【第三期】39.7%(27 例) 30.9%(21 例) 29.4%(20 例)

【第四期】26.1%(24 例) 13.0%(12 例) 60.9%(56 例)

(1)従属する節の優位性

 第一期は全体の用例数が少ないので、第二期以降を考察する。第二期では、意志表 明(40.0%)と会話文の述べ立て(44.0%)が拮抗しており、ともに地の文の述べ立て に対して優勢である。したがって、「〜(よ)うと+思考動詞基本形」においては、意 志表明と会話文の述べ立てが、ともに一義的なモダリティであると考えられる。ただ し、安定性の面では、意志表明が 9 作品中 6 作品、会話文の述べ立てが 8 作品であり、

会話文の述べ立てのほうが安定している。意志表明は、その後も、第三期で 8 作品中 6 作品、第四期で 9 作品中 5 作品と、引き続き安定性が得られない。一方、第二期で安 定性をみせた会話文の述べ立てについても、第三期に 8 作品中 7 作品、第四期に 9 作 品中 5 作品と、安定性を欠く傾向を示すようになる。

 述べ立て全体で見ると、第二期でその占める割合は 60.0%となり、意志表明を上回る。

第三期も同様に、述べ立て全体(60.3%)が意志表明に対して優位性を維持し、第四期 では、さらにその優位性を増す(73.9%)。また、会話文の述べ立てと地の文の述べ立 てを比較すると、第三期では、それぞれ 30.9%、29.4%と拮抗しているが、第四期では、

地の文の述べ立て(60.9%)が会話文の述べ立て(13.0%)を上回る。さらに、意志表 明(26.1%)をも上回り、最も優勢となる。

 したがって、「〜(よ)うと+思考動詞基本形」は、やや客観性に重点を置きながら、

主観的にも客観的にも用いられ始めたが、客観的に用いられる傾向のほうが強くなり、

その客観性はさらに強まっているといえるであろう。

 以上のことから、二人称主体で現在形の疑問文を持たず(3.7.3)、「〜するつもりだ」、

「〜(よ)うと+思考動詞ている形」より使用範囲が狭い「〜(よ)うと+思考動詞基 本形」の意志表明は、さらに出現しにくくなる。同じ会話文であれば、述べ立てのほ うが客観性が強いので、意志表明より出現しやすいと推測されるが、調査結果では、

その用例数は、時代が下るにしたがって減少している(第二期以降、44.0%→ 30.9%

→ 13.0%)。これは、【表 4】(3.6.3)に示されているように、会話文においては、「〜(よ)

うと+思考動詞基本形」は、独立する節で用いられるよりも、モダリティ性が弱くな る従属する節で、より用いられやすいということであると考えられる。

 ただし、地の文の述べ立ては、会話文の述べ立てと同様、「〜するつもりだ」、「〜(よ)

うと+思考動詞ている形」より使用範囲が狭いにもかかわらず、二表現を大きく上回っ て用いられており、また、「〜(よ)うと+思考動詞基本形」の中では、最も多く用い

ドキュメント内 史的変遷 : 意志表現の定着と相互比較 (ページ 32-38)

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