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企業家活動参加と家庭内労働負担への配慮

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女性が家事・育児等の家庭内労働を担いつつ、新たな起業による生産活動に参加する場合、各

種社会サービス(保育所、家政婦サービス等)の不備・高コストから家事負担の軽減が困難な状 況では、この生産活動と家事負担の二重の負荷は女性にとってかなり大きなものになる92。またこ うした女性の生産活動参加に対し、男性が理解を示さずこれを妨げる行動(家庭内暴力、資金の 流用、外出の制限等)に出ることもある93。このためどのドナー・NGO も女性が新たな生産活動に 支障なく参画できるような配慮をプロジェクトの一環として行っている。「保育サービスの提供

(Gregoria Apaza)」、「女性生産者組織を支援する男性グループの組織化(Oxfam)」、「教会を通じ た男性への啓発活動(Oxfam)」、「男女双方の参画による生産者グループ組織化(世銀)」などはそ の一例である。

4)今後の方針

今回聞取り調査を実施した各ドナー・NGO は、ボリビア国では女性に対する暴力が以前大きな 社会問題となっている94一方、伝統的なマチスモ95社会の中で、各種国内法の整備96にもかかわら ず、女性の人権擁護や自尊心の回復がいまだ十分になされていないことを認識している。そして、

女性に対する暴力事案を予防・解決するための法制度に基づいた県庁や市役所レベルでの女性の 権利擁護活動が現実には中々進展していない現状97において、行政側に人権擁護活動を法的に求め ていく従来の活動と合わせて、女性の側のエンパワーメントも強く進めていく必要があると考え ている。そしてそのアプローチの一つが女性の組織化と経済的能力の向上であると判断した上で、

今後もそれぞれの組織における支援分野と実施方針に基づき中長期的に当該分野において支援を 継続していく姿勢を示している。

(5)「ボリビア」国における課題と支援ニーズ 1)課題

ボリビア国女性企業家の課題としては、まず①「国内市場における競争激化と技術の改善の遅 れ」により、低い利益水準と生産性に苦しんでいることがあげられるが、その背景には②「生産 資本の脆弱性」、③「行政による女性企業家への具体的支援戦略・政策の欠如」、④「企業家とし ての生産活動と家庭内労働負担の両立問題」及び「女性企業家の活動に対する男性側の理解不足」

等の問題が存在し、これら要因が更に利益と生産性の低下に拍車をかけている現状がある。いか にこれら要因を説明する。

① 「国内市場における競争激化と技術の改善の遅れ」

ボリビア国内市場では、海外からの安価な輸入品の流入、ブランド製品等の模造品の氾濫もあ り、各生産セクター内での製品価格競争が更に激しくなっている。女性企業家が従来の低生産性 と低収入の状態から脱するためには、女性企業家が多く存在する限られたセクター(手工芸、縫 製業、食品業、小売業 etc.)に更に同業他社が随時参入してくる中で機能やデザイン、サービス 内容において競合他社とあまり差別化が図られていないものを安価な価格で提供しつづけなけれ ばならない現状から脱する必要がある。ここでは投資資金不足により新規設備の導入が進まない ことによる業務拡大と効率化への制約があることも確かではあるが、それ以上に、継続的な技術

92 UNWomen での聞取り(2016/2/10)

93 Oxfam での聞取り(2016/2/12)他、多数。

94 JICA(2014)、国別ジェンダー情報整備調査 ボリビア多民族国、P.12 参照

95 ラテンアメリカにおける男らしさを強調する生き方(P.14)。

96 法律 348「暴力から解放された生活を女性に保障するための総合的法律」(2013 年)等。

97 法務省機会平等次官室での聞取り(2016/2/23)等参照。

の向上による品質改善、高付加価値化、商品差別化、販売技術の向上、マーケティングによる販 路の開拓・確保・拡大など多くの課題があり、これらを総合的に対応することが必要となってい る。

② 「生産資本の脆弱性」

また上記のような技術改善を行うための生産資本へのアクセスの改善も必要となっている。現 在のボリビア国の MF では、起業経験が乏しく、担保を提示できない「個人」企業家に対しては資 金アクセスが困難である。またこれに対しては女性起業志望者の組織化やコミュニティ銀行や Pasanaku によるグループ融資で対応することが解決策として進められているが、いまだ女性生産 者の組織化、特に生産資本の共有等を伴った組織化は進んでおらず、零細小規模な女性個人企業 家がいまだ数多く存在しているのが実態である。またここには国内金融制度に関する適切な情報 が女性企業家に十分に適切に提供できていない現状がある他、起業に係る初期投資コストを下げ る仕組みや支援体制が整っておらず、初期企業家の資金調達負担が低減されにくいことにも問題 がある。

③ 「行政による女性企業家への具体的支援戦略・政策の欠如」

ボリビア国において男女別、雇用/被雇用別、フォーマル/インフォーマル別で労働者を区分し た場合、インフォーマル女性企業家層は最大グループを形成しており、また男性に比して低利益 と低生産性をその特徴としている。同グループが生産性を向上させ、利益水準を改善することは 当然ボリビア国国内経済において大きなインパクトになると想定される。また女性企業家はその 収入を事業への再投資よりも家計支出に振り向ける傾向が強い98ことから、間接的にも家計(ひい ては子どもの保健や教育)に好影響がもたらされるとも考えられる。

上記の観点からすれば、女性企業家支援の政策的重要度と支援実施による経済的インパクトが 大きいと考えられるにもかかわらず、ボリビア国政府及び地方自治体は男女企業家を等しくとら えた中小零細企業全般への技術支援を実施し、(地方自治体による社会開発的な側面からの女性企 業家支援の場合を除いて)戦略的な政策策定に基づく女性企業家向けの技術能力向上支援や資本 アクセスの改善の機会提供までは実施していない状況にある。また、地方自治体の政策策定能力 不足や予算制約から、ドナーや NGO 等の支援がない場合、段階的な能力開発プロセスを踏まえた 計画的支援活動の策定と実施までには十分に至っていないのが現状である。

④「企業家としての生産活動と家庭内労働負担の両立問題」と「女性企業家の活動に対する男 性側の理解不足」

女性が担っている家庭内労働負担は、企業活動そのものに対して、直接的影響を与えている。

例えば、自宅を作業場・販売所等とすることは、家事育児と生産活動との両立には適している一 方、顧客や取引先とのやり取りにおける制約、生産規模拡大における制約、情報不足による事業 機会の喪失につながる。またこの個人事業主の場合、特に初期企業家であれば外部からの資金調 達上で制約が存在する上に、女性の生産活動に対する男性側の理解が低く女性に家庭内資産の利 用権限を与えられない場合は、更に自己資金制約に陥ってしまう。また事業経験者であっても母 子家庭の場合、男性配偶者がいる場合より返済能力が低いと判断され、融資可能性が低い場合も

98 「起業と女性」(2011 年)、P.102

ある。

上記には、「仕事と家事の両立は女性の役割」と考えることを自然と捉えてきた社会背景がある。

ボリビア国女性の家庭内労働負担の分析が経済的側面から十分になされていないこと、またこの

「認識されてこなかった経済活動」がどれだけ女性企業家の潜在的可能性を制約しているかが政 策決定者に適切に理解されてこなかった99ことも、行政の対応の遅れの背景にある。

2)支援ニーズ

上記の課題を踏まえた結果、女性企業家に対する支援ニーズとしては、まずその国内市場にお ける競争に打ち勝ち、技術の向上により低生産性と低収入から脱出するための支援がある。そし てこれは、①「技術向上支援」、とこれを可能にする②「初期企業家への資金支援」、から成り立 つ。またその実施のためには、③「地方自治体に対する女性企業家支援プログラムの策定・実施 支援」を行う必要があり、また同支援プログラムにおいては、起業を目指す女性が継続的に支援 活動に参加し、かつ企業家としての能力を適切に向上することが可能となるように「3)留意点」

にて後述する「女性企業活動参画を促すジェンダー配慮」も合わせて実施されるべきである。

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