汚書 而已
、
( 雖が 云ふ
、誠 に奇 特御 検 閲 に候
。 腹 部胸 部縦 横 相伝 の 秘説 進 ぜ候
。 やが て 可□
□
虫 損
。 雖 知苦 戸主 寧固 三誠
、憚 り多 しと 雖も 灸穴 詳弁 の御 志、 深 く感 じ入 り候
。御 明 鑑の 楮 傍 に召 して
「雖 が云 ふ」 と 墨を 以て 書 を 汚す のみ
。)
二
. 後 半 部
「 一 渓 先 生 秘 説 一 紙 也
」
以下
、⑰ から
⑲ ま でに は 匡郭 およ び 界線 が 記さ れて いる
。
⑰「 一 身命 名之 的 所
」と 題 され
、身 体 各部 の 名称 を三 十五 条に わた り記 す。 一渓
先 生秘 説 一紙 也
( 一渓 先生 秘説 一紙 なり
) 一身 命 名之 的 所
( 一身 命名 の的 所) 膈ハ
者 隔也
、所
下以 遮
二隔 濁気
一 レ不
中使 上
中薫 於心
上肺 也
、 肺系
ハ
、謂
ル
喉嚨 也
、 膊下 対
レ腋 処為
レ臑
、肩 肘之 間也
、 臑ノ
尽 処為
二
肘臂 節
一
也、 肘以 下 為ヲ レ
臂、 肩髃
ハ
、在
二
肩端 両 骨間 陥者 宛々
一中
、 挙レ ハ レ臂
レ有 空
、
( 膈は 隔な り。 濁気 を遮 膈 し て、 心 肺 を上 薫せ し めざ る 所以 な り。 肺 系は 謂る 喉嚨 なり
。 膊 の下 の腋 に対 する 処を 臑 と 為す
。 肩 と肘 の間 な り。 臑 の尽 る処 を肘 と為 す。 臂 の 節な り
。 肘 より 以下 を臂 と為 す。 肩 髃は 肩端 両骨 の間 の陥 な る 者宛 々 た る中 に在 り
、臂 を 挙げ れ ば空 有 り。
) 頭茎
ヲ レ為 頸
、耳 以 下 曲ノ
処為
レ
頬、 口前
ノ
小者
ヲ レ為 歯、
腮下 為
レ頷
、頷 中ヲ
為
レ頤
、 胸両 旁 高処 為
レ
膺、 股外
ヲ レ為 髀
、髀 内
ヲ レ為 股、 脛骨
ヲ レ為
䯒
、 跗ハ
足 面也
、 三里
ハ
、在
二
膝眼 下 三寸
一
、 腨ハ
、 腓腸 也、
( 頭茎 を頚 と為 す。 耳よ り 以 下の 曲 る 処を 頬と 為 す。 口 の前 小な る者 を歯 と為 す
。 腮 の下 を頷 と為 す。 頷の 中 を 頤と 為 す
。 胸 の両 旁の 高き 処を 膺と 為 す
。 股 の外 を髀 と為 す。 髀の 内 を 股と 為 す
。 脛 骨を
䯒
と 為す。 跗 は足 面な り。 三 里は 膝眼 の下 三寸 に在 り
。 腨 は腓 腸な り。
) 咽所
二
以嚥 物者
、居 喉之 前、
腕ノ
下 踝ヲ
為
二兌
一骨
、 臂骨 尽 処為
レ
腕
、 脊両 旁
レ為 膂、 肩後 之 下為
二
肩
一膊
、 椎骨 為
レ脊
、 尻上 横 骨為 腰
、 腓腸 上 膝後 曲 処、 為 膕、 膂内ママ
曰
レ
胂
、夾
レ脊 肉 也、 脱、 如 自脱
、 抜、 如 他抜
、 両乳
ノ
間為
レ
胸、
( 咽は
、物 を嚥 む所 以の 者
、 喉の 前 に 居る
。 腕 の下 の踝 を兌 骨と 為す
。 臂 骨の 尽る 処を 腕と 為す
。 脊 の両 旁を 膂と 為す
。 肩 後の 下を 肩髆 と為 す。 椎 骨を 脊と 為す
。 尻 上の 横骨 を腰 と為 す。
腓 腸の 上、 膝の 後、 曲れ る 処 を膕 と 為 す。 膂 の内ママ
〔 肉 の誤 であ ろう
〕を
胂
と 曰ふ。脊 を夾 む肉 な り
。 脱 は自 ら脱 する が如 し。 抜 は 他が 抜 く が如 し。 両 乳の 間を 胸と 為す
。) 脳戸 後
レ為 項、 目下 為
䪼
、 肩井ノ
的処
、以 三指 按取 之、
二当 中
一指 下陥 者、 脇、 胠 也、
䯒
外 為 輔骨、 外踝 以 上為 絶 骨、 足大 指 爪甲 後 為三 毛
、三 毛 後横 文為 聚毛
、 項骨
ノ
三椎 共二 十四 椎、 𩩲骬
ハ
即岐 骨也
、
( 脳戸 の後 を項 と為 す。 目 の下 を
䪼
と為 す。 肩 井の 的処、三 指を 以て 按 じ て之 を 取 る。 中指 の 下の 陥 なる 者 に当 た る。 脇 は胠 なり
。
䯒
の外 を輔 骨と 為す。 外 踝以 上を 絶骨 と為 す。 足 大指 の爪 甲の 後を 三毛 と 為 す。 三 毛 の後 の横 文 を聚 毛 と為 す
。 項 骨の 三椎 共に 二十 四椎
。 𩩲 骬は 即ち 岐骨 なり
。) こ
こ では
、経 穴 部 位を 記 す際 に、 あ るい は 経穴 を取 る際 に必 要な 用語 が解 説さ れて いる
。
⑱頭
、 胸腹 の横 規
( 経穴 部 位を 定め る 横の 寸 法) につ いて 記す
。 脳前
第 二行
、 去
コト レ
中各 一寸 五分
、 曲差
ハ
、在
二
神庭 旁 一寸 五分
一
、 五処
、 在上 星 旁一 寸 五分
、 承光 通天
( 脳前 の第 二行 は、 中を 去 る こと 各 お の一 寸五 分 なり
。 曲 差は
、神 庭の 旁ら 一寸 五 分 なり
。
五 処は
、上 星の 旁ら 一寸 五 分 なり
。 承 光。 通 天。
) 脳後 第 二行
、 去
レ中 一寸 三分
、 玉枕
ハ
、在 脳戸 旁一 寸三 分、
( 脳後 の第 二行 は、 中を 去 る こと 一 寸 三分 なり
。 玉 枕は
、脳 戸の 旁ら 一寸 三 分 に在 り
。) 脳第 三 行之 証 本神
、 在曲 差 旁一 寸 五分
、 然別 両間 相去 六寸
、
( 脳の 第三 行の 証。 本 神は
、曲 差の 旁ら 一寸 五 分 に在 り
。 然れ ば両 間 相ひ 去 るこ と 六寸 に別わ く
。) 胸前 第 二行 横 規、
二自 横
一骨 至
二肓
一兪 六穴
、去 中 各一 寸 半、 資 生、 十 四経 各五 分
、
二自 商
一曲 至
二幽
一門 五穴
、去 中 各五 分
、
二自 歩
一廊 至
二或
一中 五穴
、去
レ
中各 二寸
、
( 胸前 の第 二行 の横 規。
「 横骨 より 肓兪 に至 る六 穴
、 中を 去 る こと 各お の 一寸 半 なり
」、
『資 生
』。
『十 四経
』は
「 各お の五 分 なり
」 と。
商 曲よ り幽 門に 至る 五穴
、 中 を去 る こ と各 おの 五 分な り
。 歩 廊よ り或 中に 至る 五穴
、 中 を去 る こ と各 おの 二 寸な り
。) 胸腹 前 第三 行 横規
、 自気 戸
二至 乳根
一七 穴、
レ去 中 各四 寸、
二自 不
一容 至
二滑 肉門
一六 穴、 去
レ中 各三 寸、 自天 枢 至帰 来
、去 中 二寸
、 右各 雖
レ為
二
足陽 明
ノ
一経
一、 同
二上 中下
一
而有 八寸 六寸 四之 異、 云々
、明 堂正 面之 図宜
レ象
レ
之、
二自 人
一迎 至
二缺
一盆
、去
レ
中各 一寸 五分
、
( 胸腹 前の 第三 行の 横規
。 気 戸よ り乳 根に 至る 七穴
、 中 を去 る こ と各 おの 四 寸な り
。 不 容よ り滑 肉門 に至 る六 穴
、 中を 去 る こと 各お の 各三 寸 なり
。 天 枢よ り帰 来に 至る
、中 を 去 るこ と 二 寸な り。 右
、各 おの 足陽 明の 一経 と 為 すと 雖 も
、上 中下 を 同じ く して 八 寸六 寸 四〔 寸
〕の 異有 り、 云々
。『 明堂
』正 面の 図、 宜し く 之 に象 る。 人 迎よ り缺 盆に 至る
、中 を 去 るこ と 各 おの 一寸 五 分な り
。) 胸腹 第 四行 横 規、 天渓
、 胸郷
、 周栄
、 中府
、 去中 各四 寸五 分、
〔中 府、
〕 手 太陰 経也
、 足 太陰 会也
、
衝門
、 府舎
、 腹結
、 大横
、 腹哀
、去 中各 四寸 五分
、
( 胸腹 の第 四行 の横 規。 天 渓、 胸郷
、周 栄、 中府 は 中 を去 る こ と各 おの 四 寸五 分 なり
。〔 中 府は
〕手 太陰 経な り、 足太 陰の 会な り。 衝 門、 府舎
、腹 結、 大横
、 腹 哀は 中 を 去る こと 各 おの 四 寸五 分 なり
。) こ
こ では
、頭
、 胸 腹部 の 経穴 部位 を 定め る 横の 寸法 につ いて 記さ れて いる
。 頭 部
。「 脳前 第 二行
」で は 曲差 穴
、五 処 穴な どの 部位 を挙 げ、 中行
〔 正中
〕よ り「 一 寸五 分
」で あ ると 示す
。「 脳後 第二 行」 では 玉 枕穴 の 部位 を挙 げ
、 中行 よ り「 一寸 三 分」 で ある と示 す。
「脳 第三 行」 では 本神 穴の 部位 を挙 げ、 中行 より
「一 寸五 分」 であ ると 示 す。 胸 腹 部。
「 胸〔 腹〕 前第 二行
」で は横 骨穴 から 肓兪 穴を 挙げ
、『 針灸 資生 経』 では 中行 より
「一 寸半
」、
『 十四 経発 揮』 では
「五 分」 であ る と記 した 上 で
、中 行 より
「一 寸 半」 と 示す
。つ いで 商曲 穴か ら幽 門穴 では 中行 より
「五 分」
、歩 廊穴 から 彧中
(或 中) 穴ま で は中 行 より
「二 寸
」と 示す
。「 胸 腹前 第三 行」 で は気 戸穴 から 乳根 穴を 挙げ 中 行 より
「四 寸
」、 不容 穴か ら滑 肉門 穴を 挙げ 中行 より
「 三 寸」
、天 枢 穴か ら 帰来 穴を 挙げ 中行 よ り「 二寸
」と 示す
。「 胸腹 第四 行」 では 天渓 穴、 胸 郷穴
、周 栄穴
、中 府穴
、お よ び衝 門 穴、 府 舎 穴、 腹 結穴
、大 横 穴
、腹 哀 穴を 挙げ 中 行よ り
「四 寸五 分」 と示 す。
⑲奥 書 天正
二
(壬 戌
)歳
道三
( 天正 二の 壬戌 の歳
道 三
)
⑳前 述
⑫⑬ への 返 答 およ び
⑱に つい て の補 説
。 同身
之 横寸
、 先後 相 違之 不 審、 無余 儀候
、 導道 口 授之 相 伝
、ハ
両間 定ヲ 二
八寸
一、 其後
、 滑氏 十 四経 之 正面 背 後之 両図
ニ
、一 身竪 横寸 法、 誠的 解、 如指 掌、 即、 以
二乳 間九 寸五 分之
一説
、 胸 囲 腰囲 之 長、 耳 前 之寸
、 耳後 之 寸、
二参 考 之ヲ 一
、毫 里之 差違 無之 候故
、以 十四 経之 説、 為定 規而 已、 然間
、 先年 加 筆之 小 冊、 御 見せ 候事
、本 懐大 慶不 通之 候、
( 同身 の横 寸、 先後 相違 の 不 審、 余 儀 無く 候。 導 道が 口授 の相 伝は
、両 間 を 八寸 に 定 む。
其 の後
、滑 氏の
『十 四経
』 の 正面 背 後 の両 図に
、 一身 竪 横の 寸 法あ り
、誠 に 的解 なり
。指 掌の 如し
。 即 ち、 乳間 九寸 五分 の説 を 以 て、 胸囲 腰囲 の長
、 耳前 の寸
、耳 後の 寸、 之 を参 考と して
、毫 里の 差 違 之れ 無 く 候故
、『 十 四経
』の 説を 以て
、定 規と 為す のみ
。 然 れば
、先 年加 筆の 小冊
、 御 見せ 候 事
、本 懐大 慶
、之 の 通り な らず 候
。) 前
述
⑫⑬ への 返 答 およ び
⑱の 胸腹 の 横規
( 経穴 部位 を定 める 横の 寸法
)に つい ての 補説 であ る。
⑱ の「 胸腹 前第 三行 横規
」に は「 自 気戸 至 乳根 七穴
、 去 中各 四 寸。
(気 戸よ り乳 根に 至る 七穴
、中 を去 るこ と各 おの 四寸 なり
。)
」 と記 され てい る。 乳頭 に位 置す る経 穴 であ る 乳中 穴は こ こ に記 さ れる
「気 戸よ り乳 根に 至る 七穴
」に 含ま れ、 よっ てこ こで は両 乳間 は八 寸と する こと が分 かる
。あ るい は 上記
③ の経 穴部 位 を 決め る ため に用 い る計 測 法に つい て記 して いる 箇所 では
「雖 云、 予受 導道 之直 伝。 人身 竪横 之寸 法、 嘗 授与 於 意 庵畢
。以 乳間 定于 横八 寸也
。( 雖 が云 ふ、 予 導道 の直 伝 を受 く
。人 身竪 横の 寸法
、嘗 て 意庵 に授 与し 畢ん ぬ。 乳 間 を以 て 横八 寸 に定 むな り
。)
」 と述 べ て いる
。 こ の
⑳に は続 い て
、「 同 身之 横寸
、先 後 相違 之不 審、 無余 儀候
。( 同 身の 横寸
、先 後相 違の 不審
、余 儀 無 く候
。)
」と 宗巴 の疑 問を 肯 定し
、 さら に「 導 道 口授 之 相伝 ハ、 両 間定 八 寸
。( 導 道が 口授 の相 伝は
、両 間を 八寸 に定 む。
)」 と 道三 が師
・導 道よ り両 乳間 八寸 と 伝授 さ れた と記 さ れ る。 こ れは 上記
③ の記 述 と同 じで ある
。し かし
⑳で はさ らに 続い て、
「其 後、 滑氏 十四 経之 正面 背後 之両 図ニ
、 一身 竪 横寸 法、 誠 的 解。 如 指掌
。( 其の 後、 滑氏 の『 十四 経』 の正 面背 後の 両図 に、 一身 竪横 の寸 法あ り、 誠に 的解 なり
。指 掌の 如
し。
)」 と『 十四 経 発 揮』 目 録の 後に 付 され る
「仰 人尺 寸之 図」
「伏 人尺 寸之 図」 に記 され る人 身の 縦横 の寸 法が 明確 であ り簡 明で あ ると 述 べる
。そ し て
、胸 囲 腰囲 の長 さ
(『 十 四経 発揮
』で は「 胸囲 四尺 五寸
」「 腰囲 四 尺 二寸
」)
、 耳前 の寸 法( 耳の 前の 左右 の広 さ、
『十 四 経発 揮』 で は
「耳 前 当耳 門、 其 広一 尺 三寸
」)
、 耳後 の寸 法( 耳 の後 の 左右 の広 さ、
『十 四経 発揮
』で は「 耳後 当完 骨、 其広 九 寸」
)を
「乳 間九 寸五 分の 説」 を照 らし 合わ せて 考え ても 微塵 も差 違が ない
、よ って
「以 十四 経之 説、 為定 規而 已。
(『 十 四経
』の 説 を以 て
、定 規 と為 すの み。
)」 と 述べ る。 す な わち
、師 か ら伝 授さ れた 乳間 八寸 説を
、そ の後 に考 究し た『 十 四経 発 揮』 の記 述 に従 い 検証 し た結 果、 乳 間 九寸 五 分説 に改 め たと い うこ とで ある
。 こ こ から は道 三 は 当時 最 新の 経穴 研 究書 で あっ た『 十四 経発 揮』 を詳 細に 考究 し、 さら にそ の記 述を 文言 のみ の理 解で はな く、 人 体を 用 いて 検証 し て いた こ とが 明ら か にな る
。ま た
、そ うし て得 た見 解に は、 た とえ 師説 と異 なっ ても それ を採 用す ると いう 真摯 な 姿勢 が 窺わ れる
。